昭和50年3月25日 初版発行
學生社シンポジウム日本語
出席者
森岡健二〈司会〉
柴田武〈司会〉
山田俊雄
樺島忠夫
野村雅昭
第一章 言葉と文字・音韻
〈報告〉 柴田武
一 文字論は日本語研究においてこそ開発すべきユニークな分野
欧米における文字研究
日本人の文字観と文字の特質
日本人はなぜ文字に関心をもつか
文字に開する種々の用語
国語学における文字論の領域
二 言語における文字の位置をどう考えるか
文字観の対立
A山田孝雄とB西洋言語学
図解をめぐって
〈クイズa> xや〓は文字か
〈クイズb> 鯢は文字か
〈クイズc> 読めない漢字
文字と音と意味の関係
〈クイズd> どぜう・ぢ・シウマイ
C図の検討
文字は言語の一部か、言語の外にある記号か
文字の示差性とは何か
三 ことばの変化と文字の変化
漢字によることばの変化
文字による語形の変化
略語と外米語
ホホ、ハハの発音と文字
文字の入れ替えによって語は変化するかしないか
文字表記の揺れは語形の揺れより大きい
四 正書法の安定と不安定
日本における正書法の不安定な安定
正書法についての日本人の意識
残された問題
第二章 文字の研究 〈報告〉山田俊雄
一 従前の文字研究の到達点
これまでの文字研究の概観
かなの起源とかなづかいの研究
江戸期の漢学者の業績
中国語彙の受け入れと
世話字風の漢語と分解式の漢語
辞書の歴史でなく日本における漢字の歴史を
二 文字研究の体質と特徴
文字体系――組織としての研究の欠如
かなづかい研究の特質
上代特殊仮名遣いは果たしてかなづかいか
文字組織の研究
――体系的研究とは――
表記体系の記述と表記意識
方法論にかかわる種々の問題
三 将来の問題
文字研究の着眼点――種々の問題の発見
一つの文章あるいは文章ジャンルの含む文字量
文字の解読
異体字と別字
――同じ字か違った字か――
使用語藁と使用文字
文字教育の問題
第三章 かなと漢字の機能《報告〉野村雅昭
一 表意・表音という分類は文字の機能を説明するのに有効か
表音機能と表意機能
表音性・表意性の強弱とバランス
表音文字と表意文字の根本的な差は何か
純粋な表意文字というのは存在するか
漢字の表意性、表音性の特質
文字列の構造
二 漢字はどのような言語単位と対応するか
漢字の音と訓の関係
音訓対応の意識
音訓の歴史と辞書に見える音訓
辞書に登録した漢字とその読みの特質
訓の固定と万葉がな
現代の音訓意識
現代人における和語・漢語の意識
三 字音語の表記と和語の表記
字音語の漢字表記に対し、和語のかな表記がふえる傾向
かな表記の生じる契機
かな表記のゲシュタルト
分かち書きの問題
漢字の意味分化からかたかな表記の問題へ
表記のスタイルと文体
現代語表記の一つの傾向
四 かなは語のまとまりを示すのにどのような役割を果たすか
語のまとまりを示すかなの事例
かなにおける表語機能と新旧かなづかい
現代かなづかいの問題点
かなづかいと発音のずれ
漢語のかな表記の場台
第四章 日本語の表記体系 〈報告〉樺島忠夫
文字体系と表記体系
体系把握の方法
"あらさ""複雑"という用語について
文字体系はどのようにしてきまってくるか
ルールは異なった文掌・体系にもあてはまるか
文字体系のあらさと語や文への分割の自由度
表記要素という概念
表記要素の切れ目と語の切れ目
文字列と音列は意味を媒介として対応するということ
文字列と音列との対応に対し、意味はどんな関係にあるか
今後の問題
再び「言語にとって文字はいかなる位置にあるか」
あとがき
索引