秉燭譚』に、


○穴賢のこと
日本にて文尾に必あなかしこと書き、真字にては穴賢と書く。説者の云、上世の人は穴居して居る故、恙と云虫ありて人を害するに因て、互にあなかしこと相問ふと。此は無恙の義より傅会するなるべし。あなとは国語にて発語の音、かしことはおそるゝことなり。文尾にこれを書くは、甚可v畏と云意にて、中国の書牘に、恐懼恐惶と書より出るなり。古語拾遺に、上古石窟の前にて俳優を作り、相与に歌舞するに、その歌に云、阿波礼阿那於茂志呂阿那多能志阿那佐夜憩飫憩と、註に云、古語事之甚切者皆称2阿那1言2衆面明白1也と、又催馬楽呂の謌に安名|尊《たふと》と云あり。かしこと云は、賢知のことをもいひ、おそるゝことをもいふ。いともかしこき、かけまくもかしこき、又内侍所を賢所と云字は、賢の字をかけども、皆おそるゝ義なり。詩経の上帝甚威をかしこしと訓ず。彼此よせ合せてみれば、穴賢は甚恐の義たること分暁なり。(随筆大成1-6,p.154。原文・片仮名旧字)

『日本語源大辞典』で、『秉燭譚』は穴居説に入れられているが、「『秉燭譚』所引説者の付会説」か「『秉燭譚』所引の一説」とでもすべきところ。


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Last-modified: 2022-08-08 (月) 09:56:52