一萬圓便りの話(日置昌一『話の大事典』)†
第一世界大戦後に「幸運の手紙」ということが世界的に流行したことあり、これはこの便りをうけた者が、さらに同じ手紙を認めて十人の知人に送るとたちまち幸運が訪れるというものであった。しかるに昭和廿年の終戦直後より「一萬圓便り」なるものが全國的に流行しはじめた。これは手紙に三名の住所氏名があり、受けたものは最初の名あてに十圓を送りてのち其名を除き、最後に自分の名を入れ再び三人の名にしたもの十通を作りて十人の知友に退る、そうすれば自分の名の消されるとき十圓づつ一千通、即ち計一萬圓が送られて来る、というのである。