三島由紀夫
三島由紀夫対談集『源泉の感情』

河出文庫による
p.420
祖母の一族が圧倒的勢力を振っているときに幼年期をすごし、江戸の旗本伝来の伝法な口のきき方から、御大層な恐惶謹言の演技まで悉く身につけ、その上、水戸ツぽの皮肉を学び、明治風の誇張したレトリックを習った。幼時から、人を見て言葉遣いを瞬時に変える訓練を受けていたから、学習院へ入って、あの極端な言葉遣いの二重性格をわがものとするのはわけもなかった。私が劇作家になったのは、九割方、この幼時の言葉体験の賜物と云ってよい。


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Last-modified: 2022-08-08 (月) 10:05:03