井上ひさし
伊能忠敬

文庫1
p.308
「ええが、お捨、国がちがえば言葉も訛もがらっとちがってくる。おれは若い頃、京さも大坂さも江戸さも行った。陸奥もひとまわりまわって来た。けんどそん時、おれは言葉で苦労は少しもしねがったもんだ。なして(なぜ)か。始中終どげな時でもはっきりと喋ったからだ。ええか、はっきりと喋って居れば柏崎弁でも通じるもんだぞ。そうして居る内に自然にその土地の言葉が身に着えで来る。お前になんの餞別も呉でやれねえが、ま、これがおれの餞別だな」

文庫3
pp.121-122
「この箱館
では、住人の半分が江戸弁で用を足す。蝦夷地経営の総元締ともいうべき蝦夷掛役所があるのだから江戸弁の勢力の強いのは当然だろう。役所の役人はすべて江戸から来ているのだ。残る半分は、津軽言葉、南部訛、上方弁とに三分される。」

p.287
「江戸言葉はそういう洒落本や黄表紙をそらで言えるほどよく読んでいるうちに、自然に身についたようです。」


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Last-modified: 2022-08-08 (月) 10:03:19