石垣謙二「作用性用言反撥の法則」
石垣謙二『助詞の歴史的研究』岩波書店


第一則
 國語に於ける總ての活用語は、終止形がイの韻に終るものとウの韻に終るものとの二種に分れる、而してこの二種に限る。前者を形状性用言後者を作用性用言と命名すれば、形状性用言は事物の形状を表し、作用性用言は事物の作用を表す。

第二則
 すべての名詞句は、事物の屬性を作用的な相に於て述定するものと、事物の屬性を形状的な相に於て裝定するものとの二種に分れる、而して此の二種に限る。前者を作用性名詞句、後者を形状性名詞句と命名すれば、作用性名詞句の用言は如何なる用言をも探り得るが、形状性名詞句の用言は必ず形状性用言に限る。但し形状性名詞句にして而も作用性用言を有するものは、必ず複文の主部となり其の複文の述語が必ず形状性用言である。

第三則
 名詞句を主部とする總ての複文は、主部の屬性を作用的な相に於て陳述するものと、主部の屬性を形状的な相に於て判定するものとの二種に分れる、而して此の二種に限る。前者を作用性複文、後者を形状性複文と命名すれば、作用性複文は形状性名詞句を主部とし且如何なる用言をも述語として採り得る。之に對して形状性複文は作用性名詞句を主部とし且形状性用言のみを述語とする。

第四則
 名詞句を主部とする總ての複文に於て、名詞句の用言か複文の用言か少くも何れか一方は必ず形状性用言である。名詞句の用言も複文の用言も共に作用性用言なる事は原則として絶對に存在しない。


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Last-modified: 2022-08-08 (月) 10:05:24