千田夏光
「正坊、ひさしぶりやな」すっかり大阪弁が板についた浜田順之助がたずねてきた。
関西弁と九州弁の会話であった。
はじめ大阪弁を使っていた順之助の口が、いつか少年時代の長崎弁へかわっていた。
生まれていらいそれしか使ったことのない長崎弁をならべた。「パパ」と言うのがキヌ子の知っている唯一の英語なのだった。
ポンポンはじけるようなその言葉が東京の下町弁だなどキヌ子は知るはずもなかった。