http://dbrec.nijl.ac.jp/KTG_W_2744

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石塚龍麿?


古言清濁考序

人のもろ〳〵の詞のこゑのすみにこりは   いやしくきたなき外国のさひつりこそは息もらすはなかけて出るか多くて濁るもいと〳〵おほかりけれ

古言清濁考序

古事記日本紀萬葉集の。仮字書をかむかふるに。もろ〳〵のことのはの清濁。今の世のと異なるそいとさはにありける。そはあらたまの代々をふるまに〳〵。かりこものみだれにみだれて。つね人のことどひはさらにもいはず。かしこきや。皇神たちの御名をしも。よこなまりてとなふるは。いともかなしき事なりけめ。そも〳〵すめら大御国は。いともくすしき。言魂のさきはふ御国にして。あがれりし代には。此清濁も。いと〳〵正しかりけるを。しかみだりになりぬるを。あらためたゞさずてやはあるべき。ふることまなびせむともがらは。心すべきわざなりかし。おのれとしころ。いかで此事わきためてしかもと。朝よひにおもひわたれど。あらそめのあさらなる心には。おもひうる事うとくて。たゞにいきどほろしくてのみありけるを。一年我鈴屋大人のみもとに。伊勢国に。ものならひにまゐでしに。大人はたこのみだれを。たゞさまにおもほしつきたまひて。かつ〳〵゛ものしたまふ にしありければ。この事。いとねもころになもしめし給へりける。かれその後は。いよゝ心をふりおこし。とひあきらめ。きゝあきらめて。やつをのつばき。つばらつばらに。さとしたまへる大人のをしへを。窓のともしびとかゝげて。くらき心のくまぐまをてらし。やへのくみかきかきつめたる。これの書になもある。

寛政の六年といふとしの秋のなかば
石塚龍麿

○古書に見えたる言の清濁。今の代に言と異なるいとおほし。こは古書のかなの用ひさま。みだりなるにはあらず。いにしへと今と清濁のかはれるなり。かれ今はいにしへのによりて。今のよこなまりをたゞさむとす。
○凡て此書に定むる清濁は。古事記日本紀の哥。又訓注。さては萬葉集の内の仮字書なるなどなり。かくて此三つの書のうちに。古事記はをさ〳〵あやまりなきを。日本紀万葉にはたがへるふしも。をり〳〵なきにはあらず。そはかしことこゝと考へあはせて。正しきかたをとり。又よりどころのおほきかた。よしとおぼしきかたによりて定めつ。又まれらには。言のさまによりて。よりどころはすくなきかたにもよれるあり。又よりどころはなき言をも。かたへの例によりて。かくやあらむと。おのが心もていへるもあり。猶その処々を見てしるべし。
○近き世となりて。古学おこりては。古書のかなの清濁の。わかれたる事をば。大かた人もしれゝども。そも猶濁音には。清音の字を通はし用ひたる事。おほしと心得て。今の世に濁るをば。皆濁りてよむは委しからず。こはいにしへと今と。清濁のかはれる事を。いまだわきまへずて。今の言になづみたるひがことなり。
○山の川をヤマガハ旅なる人をタビビトといふたぐひ。すべて二つをつらねて。一つにいふ言は。下の言のかしらを。必ず濁ることと。例を定めてよむはひが事なり。此例古書を考ふるに。今の世には濁るをも。古言には清めるも多ければ。必ずひたふるには定めかたし。古言によりてよむべし。凡て今の古学の輩。必ず清むべき言をも。濁るをふるしとして。みだりに濁る事おほきは。中々に古へにあらず。
○出雲風土記。続日本紀の宣命。仏足石歌。古語拾遺。姓氏録?。新撰字鏡。延喜式祝詞。神名帳。和名抄などのかなは。清濁わからざればより処としがたし。これらの書には。濁音の処に。清音のかなを用ひたるはさらにもいはず。清音の処に。濁音のもじをさへに用ひたり。されど古事記日本紀万葉のかなと合て。清濁をわかちてかけめと見ゆる処も。をりをりはなきにしもあらず。
○古言と今の言と。清濁のかはらぬをも挙げたり。そはかはれるがおほきにならひて。かはらぬも疑ひあらむ事をおもへばなり。
○神号を挙ぐる事。天之某。国之某。とまをすは。或はその天国によりて。阿類玖類にいだし。或は天之国之にはかゝはらず。その下の言による。こはその名のさまに従ひて。尋ぬるにたよりよからむがためなり。
○此書言毎に。古書の證を挙ぐるに。古上。古中某。古下某と記せるは。古事記上巻。中巻某段。下巻某段なり。紀某と記せるは。書紀のそれ〳〵の巻なり。万と記せるは万葉にて。一二三などは巻のついでなり。幾丁と記すは。考へ見むにたよりよからむために。その巻々の。ひらのついでを挙げたるなり。
○条毎に。その声の清濁を示すに。清には○としるし。濁には●としるす。あかゝがちの如き。上二つのか○ 下のか● ち○としるすがごとし。
〔凡例おわり〕

本文
http://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/html/ho02/ho02_04771/index.html


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Last-modified: 2021-01-02 (土) 09:53:45