吉沢義則
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昭和六年二月廿五日發行
立命館大学出版部
日本語史概説書


緒言
明治以後に於ける國語史參考書の主なるもの
國語史概説引用書目
一 假名の發達
二 音韻の發達
三 音韻の退化
四 歌語と文語
五 中古語の完成
六 近代語の發達
七 東西二大方言の競爭
八 概括


緒言
 国語史は国語学の一部門である。
 国語について研究する学問が国語学であるが、その研究には大別して四つの方面が数へられる。その一は比較的研究で、国語を、それと同一の起源を持つと豫想せられる他の国語と比較して、その音韻・語彙・語法等の上から相互に如何なる関係があるかを究め、更に国語の祖先語は如何なるものかといふ問題を解決しようとする。その二は歴史的研究で、国語そのものについて、その音韻・語彙・語法等の時代的変遷と、その変遷の由来する所とを明かにして、国語が如何にして現状に至つたかを究めようとする。その三は理論的研究で、比較的研究と歴史的研究とを基礎として、国語の本質を明かにし、音韻・語彙・語法等に於て国語特有なる点を究めようとする。その四は実際的研究で、国語教育を如何にすべきか、種々なる国語問題を実行上如何に処理すべきかを究めようとする。その他世界人類のあらゆる言語を材料として、その間に存する言語現象の中に、一つの原則を発見しようとする研究が考へられてゐないではないが、それが果して学問として成立しうるや否や、今日に於てはまだ疑問の中にある。
 かくてわが国語史は、国語学の一部門として、その歴史的研究の方面を受持つものである。即ち国語が、音韻・語彙・語法等の上に如何なる変遷を経て現代に至つてゐるか、それを明かにしようとするのである。
 本書は、高等専門諸学校の教科書とも、また参考書ともなるやう、国語史の大体を述べたもので、主として国語の音韻・語法について、その変遷の大綱を講述しようとしたものである。もとより入門の書で、それとしても倉卒に筆を執った不整頓至極なもので、繁簡精粗の当を得ない点も少くないことは承知して居りはするけれども、かゝる種類の著述の未だ世に現はれてゐない今日に於て、この書が国語史の概念を得ようとする人々に、幾分なりとも役立つことがあつたら、著者の幸これに過ぐるものはない。
 終に臨み、忙しい中を、本書撰述の上に校正の上に多大の助力を賜はった文学士佐伯梅友氏に心からなる謝意を表する。
                       著者識


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Last-modified: 2023-10-03 (火) 09:07:28