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和字大觀抄 わじたいくゎんせう 語學書 二卷二册
【著者】文雄
【刊行】寶暦四年八月刊行。明和四年十一月、「再治 和字大觀抄」と標して刊行。寛政七年春補刻。菅原爲範の序(寶暦三年四月)、龍公美の序(寶暦四年秋)及び原助の跋がある。
【内容】主として假名遣に關して説いたもので.假名遣の法を知らうと思ふなら.片假字五十字と、いろは四十七字の理をよくよくわきまへしるべきであるとし、片假名は吉備眞備の作である事、片假名の本字、直音拗音、假字反切等を説き.次に五十音に就いて、ア行カ行以下各行の相通、あかさたな以下各段の相通を擧げ、次に「いろはの題目」「いろはの作者」(空海)、「いろはの文意」を記してゐる(以上上卷)。
次に、「假名使の大事は、わゐうゑおの音にあり。其式、前のは、後のわ。端のい.中のゐ.奥のひ。前のう、後のふ。はしのへ、中のえ、奧のゑ、はしのほ、なかのを、おくのおと云。是を五類の假字と云」と説いて、以下それ等の假名の一々について實例を擧げ.次に音の輕重開合・反音・四聲.轉音・連聲・訓點・をこと點・和製の漢字・略字等について記してゐる。附録に「かな合字」と題して假名は自由に諸種の昔を寫すことが出來るけれど、四聲及び二合三合等の法がないから、假名のみで書いた文は、その意味を誤ることがあると云つて、片假名のみで文を書く一種の綴字法を工夫し(例へば、四餘有.諸有.私用.證等を假名のみで書き分ける法).この法を用ひて「古今集」の序文を書いてその實例を示してゐる(以上下巻)。
【價値】上卷に於て五十音の横竪の相通を説いてゐるが、轉音.音便.活用等をすべて相通と稱してゐる。而して相通を基礎として説いた假名遣法と、下卷の五類の假名遣法との間に統一を缺いてゐる。五類の假名遣は貝原益軒の「和字解」(別項)の説を殆どそのまゝに用ひたものである。從つて本書の説は、その大綱に於ては多くの價値を認め難いものである。が、細部に於ては見るべき點も少くない。著者は音韻の學には深い造詣があるので(磨光韻鏡參照)、その方面の知識に基づく拗音の假名(例へば源氏《グヱン》.根|元《グヱン》、|月《グヱツ》旦等).假名反切・反音(延約)等の説明は注意すべきものである。又附録の「かな合字」は、明治初年から國語學界の中心問題になつた國字改良論・分別書方(各別項)の先驅とも見ることの出來るもので、注目に値する。 〔龜田〕
Div Align="right">新潮日本文学大辞典・亀田次郎</Div>
和字大観鈔 二巻二冊
僧文雄著。寶暦四年刊本、明和四年刊「再治和字大観抄」、寛政七年刊補刻本等がある。主として假名遣に關して記してゐるもので、上巻には五十音の横堅の相通について記してゐる。即ち相通を基礎として假名遣法を説いてゐる。しかるに下巻に於ては貝原益軒の「和字解」の説をそのまゝ用ひて所謂五類の假名遣法を示してゐるので統一を缺いてゐる。この點からは本書の價値は多く認め難いものかあるが、細部に於いては拗音の假名、假名反切、反音(延約)等の説明に就いて音韻學に造詣深い著著はその方面の研究を應用してゐるので注目に値するものがある。また附録の「かな合字」の條は明治初年以後學界の中心問題になった國字改良論の先驅をなしたものと思はれる。
(亀田次郎「国語学書目解題」)http://www.let.osaka-u.ac.jp/~okajima/uwazura/kokusyokaidai/w/kokusyo_wa026.html
http://www.let.osaka-u.ac.jp/~okajima/uwazura/syomokukaidai/wa/kaidai_wa039.html
http://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/html/ho02/ho02_00074/index.html 再治
岩波日本古典文学大辞典 福永静哉