大佛次郎
横浜言葉
外国人の日本語
「今日は、銭は持っておるから、安心せい。なんだ! 金谷君、君ももっと飲まなけれアいかん。外国の言葉をやっとったって、士族は士族だ。なんで、奴らに負け申そうか。看板をひっぺがして持って来よ。どうだ、金谷君!」
大吉郎は、上機嫌で、日ごろは隠している国訛りがさかんに出ていた。単純に、情に厚い点も、やはり国者のせいで、江戸人には滅多にないもので、助太郎が好もしく思っている性質である。
「なあ、金谷君、英語学校へ行っているのが悪いなどと、漢文だって、もとをいえば、清国の学問で、日本のものじゃないじゃないか?」