安藤正次 「国語音声学」
岩波講座日本文学
http://uwazura.seesaa.net/article/2382430.html


例言
一、國語音聲學のすべてにわたる事項を限られた紙數のうちに要約することは、もとより不可能なことであり、さりとて、特殊項目の一二について詳説を試みるといふことも、専門家に限らぬ読者にとつては、蝋を噛むが如き感があらう。そこで、わたくしは、執筆に當つて、一般的の題目のうちから、基本的のものを選び、これを専門的に取扱ふ方針を立てたのである。
二、前項のやうな事情の下に筆をとつたのであるから、發音器官の構造とか、音聲の分類とかいふやうな、初歩的、啓蒙的の記述は、全然これを省略することにした。しかし、また、母音構成の理論といふやうな、あまりに専門的な基本問題にわたることも、なるべく触れないでおくことにした。要は中庸を得るにあると考へたからである。
三、結局、本篇は、國語音聲學とはいふものの、単音論だけの説述に止まつて、連音論に及ぶを得なかつたのは遺憾であるが、これはやむを得ぬ次第である。読者の諒承を希ふ。
  昭和六年十二月                                  臺北にて
                           稿者


トップ   編集 凍結 差分 履歴 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2022-08-08 (月) 08:45:26