屋名池誠
近世通行仮名表記」 「濫れた表記」の冤を雪ぐ」

『近世語研究のパースペクティブ』


1「同じ語形の異なる表記」を許す表記法
2異表記を許容する表記法 脱規範的性格
3異表記を許容する表記法 ジャンルの広がり
4異表記を許容する表記法 通行の時期
5多表記性表記システム
6多表記性表音表記システムとしての「近世通行仮名表記」
7「近世通行仮名表記」の原理
8「近世通行仮名表記」の特質と限界


【要旨】近世の戯作などの仮名表記は、かなつかいの規範と合致しないだけでなく、同じページで同じ語が別の表記であらわれたりするため、従来、無秩序であるとか、乱れているとか否定的に評価されることが多かった。しかし、これはわれわれが、かなづかいのような「一つの語形には一つの表記しかあってはならない」というありかたを当然のものとする色眼鏡を通して見ているからにすぎない。近世通行の仮名表記は、「ヨミが一つに定まりさえすれば、一つの語形に表記がいくつあってもかまわない」という原則のもと正碓にヨミを伝えていた立派な表音表記なのである。


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Last-modified: 2022-08-08 (月) 09:56:36