日本文法論 一冊
山田孝雄著。明治四十一年刊。徳川時代以來多くの文法學者に依って文法に關する書は數限り無い程であるがそれ等は殆んど全部實用的文典とも云ふべく日本文法の組織に關する基礎的な論理的研究は未だ現れなかった。本書はこの前人未開拓の重要問題に対して徹底的な究明を爲したるものである。先づ國語學の分科、文法學の内容、國語の性質等を記し日本文法論の研究方法及び記述の順序を述べてゐる。つぎに本論を分って二部とし「語論」「句論」としてゐる。語論に於いては品詞の分類法について前人の所説方法を仔細に檢討し名詞・動詞・形容詞・手爾波等各品詞の本質を究め著者の品詞分類法を示してゐる。
關係語……… 氐爾乎波の類
単語 観念語 副用語…………………副詞の類
自用語語…観念語……体言の類
陳述語……用言の類
右の分類に從って体言・用言・副詞・助詞・接辞等についてその性質効用を研究し、又語の連用、語の轉用、語の位格、語の用法の研究をして居る。扨、「句論」の方では句論と他の學科との區域、句論と語論との限界、句論の研究の基礎等を論じて句を分るには喚體句と述體句とにすべきであると云って更に句の性質・組織・連用等と項目に従って精密に研究して居る。その理論の正確、用意の周到はその嚴正な學術的態度と共に敬服されるもので多少の缺點はとに角全體として今後の日本文法研究の基礎たるべきものである。
【附記】「日本文法講義」一冊 山田孝雄著。大正十一年刊(同十三年訂正版)本書は「奈良朝文法史」「平安朝文法史」等と共に「日本文法論」の體系によって生れたものであって、現代の文語及び口語の文法を記した實用的文典である。從來の大槻博士の廣日本文典に據る諸文典とは組織・用語も異り難解の様であるがその所説は信頼するに足るものであリ。敬語法や音便の研究は従來のものより遥に進歩して居る。
(亀田次郎「国語学書目解題」)
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http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/992499
序論
國語學の分科
文法學の内容
國語の性質
西洋文典の應用
吾人の企圖
古學説の研究
研究方法
語論
句論
現今文典の状態
本論の記述順序
本論
第一部 語論
第一章 國語の單語分類法の沿革及批評
一 富士谷成章
二 鈴木朖
三 東條義門
四 富樫廣蔭
五 権田直助
六 鶴峯戊申
七 田中義廉 中根淑
八 大槻文彦
九 岡澤鉦次郎
十 歴史的研究の概見
第二章 國語の單語分類の方法
一 單語とは何ぞ
二 西洋文典流の分類は我が國語に適するか
一 名詞について
二 前置詞と弖爾乎波との比較
三 形容詞について 附分詞并動詞
四 代名詞及數詞
五 副詞について
六 接續詞について
七 間投詞について
三 古來我が國に發逹せる分類法は果して適當なるか
一 用言と靜辭
二 體言とかざし
三 動辭
四 單語類別の基礎
分類の方針 分類の法則. 西洋語の單語分類の基礎、
吾人の希望, 分類の目的
五 余が分類
第三章 語の性質
日本單語の特性 第三章の要旨
第一 體言
一 體言の一般性質及區分
二 名詞
一 名詞の性質意義
二 名詞中特別の注意を要するもの
三 代名詞
一 代名詞の性質及分類
二 稱格指示の代名詞
三 不定稱代名詞の性質
四 反射指示の代名詞
四 數詞
一 數詞の性質分類
二 量を示す數詞
三 抽象的の數をあらはす數詞
四 具體的に數及量を示すもの
五 助數詞といふものにつきて論ず
六 順序をあらはす數詞
七 數詞の用法上の特質
第二 用言
一 用言の一般性質及區分
二 形容詞
一 形容詞の性質定義
二 活用
三 語幹
三 動詞
一 動詞の性質
二 動詞の形體上の種類
三 活用
四 動詞の性質上の分類
四 形式用言
一 形式用言の性質種類
二 形式形容詞
三 形式動詞
四 おはすといふ用言のはたらきにつきての論
五 純粹形式用言
五 動詞の複語尾
一 複語尾の性質分類
二 屬性の作用を助くる複語尾
一 状態性間接作用
二 受身につきての論
三 發動性間接作用
三 統覺の運用を助くる複語尾
一 陳述の確めに關する複語尾
二 回想をあらはす複語尾
三 文法上の時の論
四 推量をあらはす複語尾
五 非現實性の思想をあらはす複語尾
第三 副詞 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/992499/245
一 副詞の形體及意義につきての論
二 副詞の職能及區分
三 時及處の副詞につきて論ず
四 情態副詞
五 程度副詞
六 陳述副詞
七 感應副詞
八 接續副詞 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/992499/282
九 將に退化せんとする副詞につきて論ず
第四 助詞
一 助詞の一般性質及區分
二 格助詞
三 副助詞
四 格副二助詞の關係及副助詞の性賀
五 接續助詞
六 係助詞
七 係助詞と格助詞との區分及關係
八 係助詞と副助詞との關係及區分
九 係助詞の特性及其の内容
一〇 係助詞相互の關係及接續助詞との關係
一一 終助詞
一二 間投助詞
第五 接辭
一 意義を添ふる接辭
一 單語の上にあるもの
二 單語の下にあるもの
二 資格を示す接辭
一 體言の費格を與ふるもの
二 用言の資格を與ふるもの(尾辭)
三 副詞の資格を與ふるもの
第四章 語の運用
句論との區別 本章の目的
第一 語の複合
一 疊語
一 體言の疊語
二 用言の疊語
三 副詞の疊語
四 疊語に於ける語形の變態
第二 熟語
一 熟語の體言
二 熟語の用言
三 熟語の副詞
四 熟語の助詞
第二 語の轉用
一 體言の取扱を受くるもの
一 用言が名詞の資格をうる種々の段階
二 準體言
三 目的準體言
二 代名詞に闕する資格轉換
一 稱格代名詞に擬せられたる名詞
二 代名詞の稱格の轉換
三 用言に關する轉換
一 「あり」と「す」との交渉
二 準形式用言
三 敬語動詞.
四 敬意をあらはす複語尾
第三 語の位格
一 呼格
二 主格
三 賓格
四 補格
一 動詞の補格
二 形容詞の補格
三 間接作用に於ける主語及補語
五 述格
六 連體格
七 修飾格
八 接續格
第四 語の用法
一 體言の用法
一 絶對成分としての體言
二 相對成分としての體言
二 用言の用法
一 用言の本幹と複語尾との連接
一 推量をあらはす複語尾
二 屬性の作用を助くる複語尾及非現實性思想をあらはす複語尾
三 回想をあらはす複語尾
四 陳述の確めに關する複語尾
五 動詞の音便
二 複語尾と複語尾との連接
一 間接作用の複語尾をうくるもの
二 統覺を助くる複語尾
三 複語尾多數の連結
三 用言より用言に連ぬる状態
一 同格連用語
二 從屬連用語
三 形容詞の連用形にあらはるゝ特種の状態
四 複語尾より用言への連接
四 裝法に立てる用言
五 述法に立てる用言
一 終結の用法
二 前提の用法
三 副詞の用法
一 連體語たる副詞
二 賓語としての副詞
三 修飾語としての副詞
四 結合素としての副詞
四 助詞の用法
一 語の集團を助くる助詞
二 引用の語句を示す助詞
三 體言の位置を占むる助詞
四 呼格附屬の助詞
五 主格附屬の助詞
六 賓格附屬の助詞
七 補格附屬の助詞
八 連體格附屬の助詞
九 修飾格附屬の助詞
一〇 述格附屬の助詞
一一 連用語に附屬する助詞
一二 助詞と助詞との連結
第五 本章の概括
第二部 句論
第一章 句論の概説
一 句論と他學科との區域
二 句論と語論との限界
三 句論の研究の基礎.
四 句とは何ぞ
玉 句の種類
六 句の運用及句論の極限
第二章 句の性質
第一 喚體の句
一 喚體の一般性質及區分
二 希望喚體の句
三 感動喚體の句
第二 述體の句
一 述體の一般性質及區分
二 命令體の句
三 叙述體の句
一 主格の語の状態
二 述格の語の状態
一 完結終止
一 用言にての終止
二 助詞にての終止
二 不完終止
一 省略述法
二 中止述法
三 擬喚述法
第三 係結法の論 附「詞の玉の緒」の價値
第四 喚體と述體の交渉
第三章 句の組織
第一 句の構造の單複
一 一の位格層内の語の數の多きもの
二 同一の位格の多數あるもの
三 修辭的副成分
四 修辭的結合
第二 句中に於ける語の配列
一 自然の配列
一 必然の法則
二 當然の法則
二 故意的配列
一 強き感情を寓する配列
二 對象を特示するもの
第三 句中に於ける語の相関
第四 不完體の句
一 未成體の句
二 略體の句
第四章 句の運用
第一 單文
一 單文の構成
二 單文の用法
一 稱格の方面より見たる用法
二 他の文との關係より見たる用法
一 單獨の用法
二 關係ある用法
第二 複文
一 重文
一 重文の構成,
二 重文の排列.照應.省略
二 合文
一 合文の構成
二 合文の排列.照應,省略
三 有屬文
一 有屬文の構成
一 引用句
二 準體句
三 連體句
四 修飾句
五 附屬句の位置
2 有屬文の照應及省略
第三 修辭的文結合
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