庄野潤三
小説
「愛媛という字はなるほどそういう字だな」 と私は思った。 それをエヒメと読むのを知っている者には、何でもない字だが、知らない者には全く見当のつかない字だ。知らない字でも、見当をつけて読める字とそうでない字があるからな。知っているからこそ何とも思わないで読んでいるが、知らないと本当に困るだろうな。