郭中奇譚 くゎくちゅうきだん 洒落本 一冊
【作者】臼岡先生。別に淡海先生とも署名してゐる。本名未詳。
【畫工】岷江
【名稱】廓中は吉原をいふ。書中必ずしも吉原に限らないが、他を代表しての題號である。再摺本には「弄花巵言」また「船窓笑話」と外題がへをしてゐる。書中の小題を利用したのである。
【刊行】明和六年
【序跋】自序擬古文體。自跋漢文體。
【諸本】徳川文藝類聚第五巻・洒落本代表作集(近代日本文學大系)所収。
【内容】「船窓笑話」「弄花巵言」「掃臭夜話」の三章より成る。一は隅田川の船游山、客と藝者二人と太鼓持が吉原の遊女嫖客の噂、藝者の仲間の話をしたり、流行唄を謠つたりする。二は吉原。○馬道から駕籠で来た客が茶屋に入り、馴染の所を外して他所に行かうとする。折から朋輩の知らせをうけて馴染女郎が来て、客を拉れて行く。○遊女屋の座敷。若い者、茶屋の亭主を相手の遊び。○床の中、客頻りに馴染女郎の朋輩に気があるやうに持つて廻る。馴染との間に痴話よろしくある。○茶屋の迎へで客茶屋に寄つたなり歸る。あとで茶屋の亭主などが客の悪口をいふ。三は夜鷹と鳶の者らしい若衆の立ぱなし。
【解説】三話から成つてゐるが、眼目は勿論吉原の遊びにある。しかも狡猾めいて上手に遊ぶ客の様子を描き出すことを〓つてゐる。序にも跋にも、遊女は薄情だと相場が極ってゐるが、藝者も茶屋も薄情なものだ、それを承知の上で遊ぶべきだと斷る作者の態度を具體化してゐる。そこに皮肉が相應に活躍してゐる。これがこの作の價値と云ふべきだらう。前後に違った話を配置したのも、色どりを主とした趣向からであるが、特に夜鷹をあとに添へたことなどは、例の皮肉の現はれであらう。初期の洒落本の中では、最も注意すべき作である。           〔山口〕

新潮日本文学大辞典 山口剛

岩波日本古典文学大辞典 中野三敏
洒落本大成4
洒落本大系1


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Last-modified: 2022-08-08 (月) 10:05:46