日影丈吉 小説 明治初年
「[…]あまり来《き》ねでくんせ。ウチにも嫁入り前の娘がいるんだかんね」 浜は船橋の在の生れで、江戸から東京にかけて、ながらく都ずまいしているくせに、がんこにナマリが抜けない。そのムチのようにひびく尻上りの調子で、ピシリといわれたのだ。