春日政治
岩波講座日本文学
1933

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 はしがき
一、仮名
二、真仮名の発生(推古朝)
   漢字の使用 漢字の仮用法 漢字仮用法の溯源 仮名と発音
三、真仮名の発達(推古朝以後 奈良朝以前)
   時代の文献と仮名 此の期の仮名 略体文字の発生
四、真仮名の隆盛(奈良朝)
   国文の発生 奈良朝の仮名 真仮名文 略体文字
五、略体仮名の成立(平安朝初期)
   真仮名の簡易化 草仮名 片仮名 国語音の変化 仮名と文体

『春日政治著作集1仮名発達史の研究』


 自分が仮名字体の調査を始めたのは、つい数年前の事であつて、この方面の経験は極めて口の浅いことである。率直にいふと自分は故大矢透博士の調査された材料により、かつは恩師吉沢義則博士の指教を得て、訓点物の仮名について其の極めて少部分を見たに過ぎない。それ故仮名の発達史をものするには、余りに欠けた知識の多いことを思ふものである。従つて之を完全に書上げることは、自分には尚前途遼遠であると言はなければならない。只手始として、仮名発達の経路を展望して、この仕事の見当を附けて見たに過ぎない。精緻周到な研究を以て基礎づけられない展望の、甚だしい危険を含むものであることは知つてゐるが、只今の自分としてはそれよりすべき術はないのである。寧ろ蛇に怖ぢざる盲者の大胆さをもつてこの小稿を草して、諸先輩の是正を乞ひ、我が道を拓いて行きたいと思ふのである。殊に本稿には紙数の限りもあることであり、実際未だ全く手の及ばない所――殊に草仮名の調査の如き――も多いので、筆を略体仮名成立の所に打擱くことにする。かくて本稿はすべて甞試の展望であるといふ点と、かつは仮名発達の起源に止まるといふ点に於て、之を序説と題した所以であ、り、而して本論の真の構成は他日を待つといふ意味である。


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Last-modified: 2022-08-08 (月) 10:05:40