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『春日政治著作集1仮名発達史の研究』
省文
古訓点の資料
片仮名の形態
片仮名の系統
片仮名文
近来、国語・国文に関して同じやうな講座が頻出して、私の如きは何れの講座からも同じやうな題目を充てがはれて甚だ困惑するものである。これは私が他の事をば能くしないからといふのにも由らうが、実は同じやうな題目で甲にも乙にも書くといふことは、勢、事の反覆を敢へてしなくてはならないのである。これが反覆を避ける為には、同一題目の下にその一部一部を彼と是とに分けて書くより術はないのである。「片仮名の研究」は本講座が私に充てがつた題目であつて、この小稿も遂に曽て他の講座に書いたものと多少の重複を免れなかつたが、今度は主として片仮名の形態に就いて書いて見た――印刷方には随分迷惑だらうとは思ひながら――。従つて片仮名の問題に関しては真の一部分に過ぎないが、亦相当重要な一部分たることを信ずるものである。しかし書いて見ると一部分であるだけに意を尽さない個所を生じたのみならず、甚だ粗雑な展望になつて了つて、未だ科学などいふ域にはおぼつかないことを自ら憾むものである。