有明夏夫
小説
越前大野藩
蘭学
p.108
大野では、「あの」の呼びかける言詞は「あのお」と伸び、「これが」と指差す言詞は「これがあ」と伸びて、母音に力点がかかるが、この響きが実に愛くるしいのだ、と慎蔵は注釈した。
「ほう、そんなもんですけの」
龍湾はいつも大野弁丸出しでしゃべっているから、そこまでは気づかない。
p.154 相手の長崎弁につられて、宮五郎にも出さないつもりの大野弁が出た。
p.160 ここでの吉十郎はいささか他人行儀、長崎弁はおくびにも出さない。
p.162
冒頭にヒュースケンは宣言した。
「私ハ、日本語ヲ、一切使ワナイデ、モッパラ、英語卜蘭語ヲ、喋ルコトニシマス。ソノホウガ、アナタノタメニモ、良イト思イマス。アナタハ、ドウ思イマスカ?」
p.262
最後の「す」が「すう」と抜けた。懐かしい訛りだった。
「越前だな?」