国語文化講座

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      緒言
 辭書とは、一言にしてこれを言ひ表はせば、「語を蒐集して、これを索出する者に便利な順序に排列して説明を加へた書である」といへよう。ここに便利な順序とは、字畫順・音韻順・事項順・いろは順・五十音順・アルファベット順等が考へられ、事實その何れの方法も試みられてゐる。
 辭書を内容から大別すると、語義を主とするものと、語の表はす事柄を主とするものとにすることが出來る。前者は普通の辭書で、後者は專門辭書又はその綜合ともいふべき百科辭書である。普通辭書は、各國語の意義を闡明すゐのを主要の目的とするから、各品詞に渉り、その語原・發音・アクセント・變化、その表はす種種の意味・成語・成句・同義語・對語等を掲げることに努める。
 これに反して後者は、語そのものの意義よりも、その表はす事柄の解溌を主とすも。從つて殆ど名詞のみが對象となり、且つ専門的の解説が内容となる。尤も普通辭書と雖も、事柄の説明を缺くものではなく、比較的大なる普通辭書には、多少ともその説明が加へられてゐる。
 次に我が國に於て、注目すべきは漢字の辭書である。これは語の解釋といふよりは寧ろ文字の説明が主眼であつて、字典又は字書の名で呼ばれてゐるが、最近の字典には、文字の解釋の外に、それを用ひた熟語を掲げて、これが説明を掲げてゐるから、この意味では一種の辭書である。而して、その排列が字畫順によることは周知の事であらう。熟語の釋義を加へた字典と普通辭書との關係及びこれが統合に就いては、後に詳述する。
 本稿に於ては、本講座の性質上、普通辭書を主として述べるが、沿革の項では、百科辭書及び字典にも少し觸れておくこととした。


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Last-modified: 2022-08-08 (月) 10:03:02