海音寺潮五郎 海音寺潮五郎『田原坂』 時代小説
「おかしいのは君らの言葉じゃ。そげん言葉は日本語じゃなかぞ。なあ、貴下《おはん》達」 変な調子の薩摩語がおかしいといって、子供らはまた笑いくずれた。 この応酬で、子供らはすっかりお巡りさんらと打ちとけて、口々に子供らしいおしゃべりをはじめた。半分以上もわからない薩摩弁がひどく早口に聞えて、まるで藪の中の雀の囀《さえず》りだった。