源了圓
中公新書 191
──日本的心情の一考察
昭和44年6月25日初版
はじめに
1 「情と共感」の文化
──日本的ヒューマニズム
日本文化の「情と共感」的性格
日本のルネサンス─安土・桃山時代の精神
「人欲を去るは人にあらず」
日本的ヒューマニズムの思想的基盤-宣長の「物のあはれ」論
「情」の性格
日本人の「人情」観
2 義理の構造
──個別主義的社会の人間関係
1 義理とは何か
「義理と人情」は「公と私」か
「冷たい義理」と「暖かい義理」
義理の個別主義的性格
辞典の義理解釈
戦前の義理研究
義理は普遍的なものか、日本的・特殊的なものか
義理の具体的条件
2 義理的事実と義理の観念
日本社会の構造と義理的事実の成立
超越的な一神教をもたない文化と義理
儒教的義理の日本化
義理究明の手続き
近世封建社会の構造と義理の観念
私の義理観
3 義理と人情の文学
『武家義理物語』から『人生劇場』まで
1 西鶴にみる義理と人情
義理の理想化
二つの支配原理の分裂と価値観の動揺
『武家義理物語』にみる義理の原初的形態
三つの義理の構造連関
信頼にたいする呼応としての義理
契約にたいする忠実としての義理
名誉の義理・意地の義理─戦国武士の世界
自己尊敬と集団の自愛心との合致
2 近松にみる義理と人情
愛の詩人近松
西鶴の愛と近松の愛─アニムス的愛とアニマ的愛
愛と死と性
愛の中核としての「情け」
愛の沈欝化と死の調べ
近松の描く義理の諸類型
義理と人情の葛藤
『女殺油地獄』にみる義理と人情
『心中天の網島』にみる義理と人情
「義理と人情」の悲劇の社会的背景
3 近松以後(一)浄瑠璃の世界
近松以後の浄瑠璃の変貌
義理観念の変化とその社会的・精神的背景
「義理と人情」即「公と私」
公的世界の義理と私的世界の義理
『摂州合邦辻』にみる義理・人情の病理化
4 近松以後(二) 人情本と読本の世界
江戸の文化と「通」の美意識
人情本にみる義理と人情
『春色辰巳園』の義理と人情
意志の文化と感性の文化の分離-馬琴の歴史的位置
私的世界の義理と人情─『三七全伝南柯夢』
公的世界の義理と人情─『頼豪阿闍梨怪鼠伝』
公(義理)が私(人情)に優先する社会
馬琴の精神的世界 馬琴の理想的人間像
5 明治以後 泉鏡花と尾崎士郎
義理・人情の連続性と非連続性
俗物根性との闘い
『婦系図』にみる義理と人情
義理・人情の挽歌─『人生劇場』
むすび
あとがき