漢音正辨は伊勢經峯(安濃郡の西)の僧素真の著で明和九年(二四三二)の序。二卷が五篇に分れて或は吾が國史に傳ふる漢音の何なるかを辨じ、或は聲音對、和學辨、和讀要領の非を明して居る。素眞は天台宗に傳へて例時作法や懺法などに用ひる漢音を以て純なるものとし、普通に漢音と稱するものを其の雑なるものとし、此等に對して俗なるものが今日の南京の音だと主張するのだから和讀要領などに今日の支那音を貴ぶのとは正面衝突ぜざるを得ぬので有る。今日の支那音よりも吾が國に伝はった音が古に否正に近いと看破したは卓見だが、しかし素眞の意は自家の漢音を貴む以外の根據には気附かなかったらしい。
(岡井慎吾『日本漢字学史』)
『國書解題』記述無し
序
素眞徳荘
[素眞之印][字白徳莊嚴]
附録
南勢 室羅麼那拏素眞著