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田舎談義 洒落本 一冊
【作者】竹塚東子
【刊行】寛政二年
【諸本】洒落本集(日本名著全集)所収
【内容】千住辺くの金田村の或る寺に談義がある。それを聞きに行く若者達の居酒屋での會談、また寺内談義場に於ける會衆の雜談、及び談義僧の談義を、會話本位の文體で、田舎言葉のをかしさを中心として書いてゐる。附録として男女贈答の二篇の戀文があるが、これもまた田舎言葉で書いてゐる。
【解説】この諸の全體の構想は洒落本といふよりは、寧ろ滑稽本の範疇に屬すべきものである。江戸に見馴れぬ聞き馴れぬ田舎生活・田合言葉を興味の中心としてゐるからである。而も作者自らは飽くまで洒落本として扱ひ、本の體裁も洒落本の常格を守つてゐる。萬象亭の「田舎芝居」(別項)の摸倣作である。但し「田舎芝居」は、安永板、山手馬鹿人の「道中粹語録」の體を學んで、洒落本内容が固定したのを破らうとする點に意義があつたが、この書は別にさういふ主張があつたわけでない。田舎生活を題材にすることによつて、洒落本中に多少の異彩を放たうとするに過ぎない。この書は決して傑作でなく、描寫手法からいへば拙劣といふべきであるが、斯ういふ種類の作が何とはなしに續出することが、洒落本から滑稽本へ動きを助長するものであつた。「田舎談義」の田舎は、本来通俗などといふ程の義に用びられてゐるのであるが、此處では田舎そのものゝ意義が強く響いてゐる。この書の注意されるのは、その點にある。なほこの書の出阪には京傳が參與してゐる。前に「田舎芝居」の態度に依つて萬象亭と京厚との絶交問題も起つたのであるが、今、京傳は同じ態度の摸倣作の紹介に大に努めてゐる。これ亦注意すべき一點である。 〔山口〕

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岩波日本古典文学大辞典 神保五弥


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Last-modified: 2022-08-08 (月) 10:04:59