田辺聖子
小説
関西弁会話
神戸
文春文庫
p.24 「歯切れのいい東京弁」
海野さんは戦災に遭うまで大阪で育った人なので、大阪弁である。コーベ弁には「はる」という敬語がないので、五十ちかい中年男の海野さんが、
「……思てはる」
「……言いはる」などというと、モッチャリと、からみつくような、やさしい色気が感じられる。コーベ弁はもっと粗放でからっとしているので、海野さんの大阪弁はことさら耳につく。 しかしそれは、不快なものではない。p.68
p.103 「東京弁大阪弁、ごたまぜ、アクセントもどこのものとも分らない言葉である。」
p.158 「私は思わず、婦人の囗ぐせがうつって、上品な東京弁になってしまう。」
p.238 「来てくれとってやったん?」
p.392
「話ですワ……」の「ワ」がいい。気弱なひびきが正直に出てる。東京の人は、
「関西弁というのは、男も女言葉を使うんですね」と驚くが、関東弁では、女が男の言葉を使うではないか。関西で、男のつかうそれは、女コトバとちょいと違っていて、「語尾」に男っぽい表情がある。