研究社學生文庫

｢研究社學生文庫」刊行趣意
新東亜建設の大任は懸つて次代國民の双肩にある。此れが爲め青年子弟の教育及び教養の擴充は體位の向上と共に全國民當面の重大問題である。研究社は年來英語英文學書出版の旁ら多数の圖書雑誌に據って少青年の啓發教化に力めて來たが、茲に現前の國情に鑑み、且つ皇紀二千六百年の記念として更に此の事業の積極化を示し、「研究社學生文庫」を逐次刊行する。本文庫は自習本位と教養本位との二部より成る。前者は現行中等教科書と程度を同じくするが、在来の自習書・參考書が多く教科書の從屬的出版物に留まるに對し、進んで豊富該博なる知識を授け且つ學の根本を把握せしむる事を理想とし、此の爲め各學科を重要項目により分册として現教育界の専門諸名家に擔當執筆を乞ひ、夫々獨立の講義たると共に、合すれば確然たる一科の講義を成す方法を探った。又改養本位の物は、類書が多く玉石混淆屡々子弟をして其の取捨に迷はしむるに鑑み、慎重精選に力め時には湮滅せる良著をも再刻する方針に出でた。 而して兩者を通じて、讀者をして學問に對する興味を深め知識を徹底せしむるやう、力めて平明なる文體を用ひ、且つ必要に應じては多數清新なる説明圖を挿むこととした。斯くて本文庫は中等學校・青年學校の學生及び實業子弟の自習書・教養書として極めて適切且つ斬新であり、併せてよく現下の國情に適へるものたる事を確信する。 願はくは諸賢、弊社が躍進日本の國運に寄與せんとする微意を諒とし、本文庫を博く活用し給はんことを。
皇紀二千六百年紀元節
小酒井五一郎

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