藤本義一
小説
坪内寿夫をモデルとし、愛媛県方言風の会話多し。
佐賀などの九州方言風会話もあり
集英社文庫
p.295 緊張が解けたのか倫子は関西弁が出てきた。
p.302 博多訛
虱ちゅうのは、なかなかの風味じゃけに。フウミが訛ってシラミになったというのを、お前はんら知らんじゃろ。
強い訛のある大阪弁が返ってきた。
爽やかな関西訛である。語尾がはっきりしている。
「うちア、あんまりびっくりしたんで、つい博多弁が出てしもうた……」
上品な関西弁に、兵太郎は緊張と擽ったさが入り混じった。
倫子の言葉の調子が柔らかくなると同時に、関西訛が強まった。
日本語になった途端に安川の声は、女言葉になる。
言葉つきもまた亭主口調になっているのだった。
方言が大阪、九州と混じっている一団であった。
倫子は、いつの間にか土地の訛に染まっていた。