出版界に一エポックを劃した「誠文堂10錢文庫」全百冊の中には、賣値は十錢でも、内容は一圓二圓のものに比して、些かも遜色のない名著作が多かった。
 しかし、賣値が十錢である以上、體裁と云ひ内容といひ、どうしても充分と云ふ譯には行き兼ねた點もあるので、茲に新たに「誠文堂文庫」の發行を計劃して、舊10錢文庫中の優秀本を増補改訂して、寫眞を改め、口繪を新たにし、頁を約倍數とし、或ひは「野球入門」と「野球の見方」の如く同種好評のものを、二者合本して、一册となし、更に之に數點の新規書下し新刊書を配し、大いに裝幀を凝らして、江湖に送ることになったのである。
 幸に御愛讀の上更に大方に御吹聽の程願上げる次第である。
  昭和七年八月 小川菊松


トップ   編集 凍結 差分 履歴 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2022-08-08 (月) 09:57:53