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送假名法。國語學
【名稱】副假名法とも。
【解説】送假名を使用するについての法則。古くから送假名の使用法は不統一で定規がなく、今日に於ても、社會一般に遵奉せられる規則はない。しかしこれを統一する目的でその規則を制定したものはある。江戸時代の末つ方に、活用言と不活用言、語根(語幹)と語尾との區別が研究され、明治時代になつて國文に於ける漢字の用ひ方が整理されて送假名法を見るに至つた。即ち、明治二十年には濱田健二郎の「副假名法規」が發行され、二十一年には内閣官報局の「送假名法」、二十八年には中根淑の「送假名大概」、四十年には國語調査委員會の「送假名法」が發行されその問に大同小異の「送假名法」が幾らも出来た。しかし何れも、その原則に於ては官報局の「送假名法」と大同である。即ち(第一原則)語尾変化セザルモノハ送假名ヲ附セズ。(第二原則)語尾變化スルモノハ其變化スル所ヨリ寫シテ送假名トス。(第一變則)語尾變化セザルモノト雖モ慣用ト便宜トニ從ヒ送假名ヲ附スルコトアリ(第二變則)語尾變化スルモノト雖モ罕《マレ》ニハ慣用ト便宜トニ從ヒ送假名ヲ附セザルコトアリ(以上官報局送假名法總則)。これを國語の品詞にあてゝ見ると、凡そ名詞や代名詞や数詞や感動詞は第一原則に屬し、形容詞や動詞や助動詞は第二原則に屬し、副詞や接續詞などは第一變則に屬し、動詞から出た名詞、その他副詞などは第二變則に屬してゐる。送假名法に彼と此と大同にして小異のあるのは、慣用と便宜といふ事を色々に見立てるからであつて、みだりに正不正を云はれない。同一の漢字を種々の品詞に當てて用ひる國文に於ては、送假名に不規則が出来ることは當然である。固定教科書の送假名法は國語調査委員會で定めた送假名法に準據してゐる。

【國語調査委員會の送假名法】その大要は次の通りである。
〔第一則〕漢字ヲ以テ活用語(動詞・形容詞・助動詞)ヲ書キアラハストキハ、語尾ノ活用スル部分ヲ送假名トナスペシ。
(1)普通ノ活用形(書カズ・死ニタリ・決スベシ・善ク・苦シク・學ブ可ク・花ノ如シ
(2)活用形ノ音便ニヨリテ他ノ音ニ轉ジタルモノ(燒イテ・思ウテ・積ンデ・遊ンデ・立ツテ・長ウナル・悲シイカナ)
(3)從來、延言ト稱シテ、活用形ノ延ビタルモノト見做シタルモノ。(願ハク・恐ラク・見マク・言ヘラク)
 〔除外一〕也ノ終止形、候ノ連體形、終止形ニハ送ラズ。
 〔除外二〕或、非、否ニハ活用ノル、ラヲ送ラズ。(或人・非ズ・否ズンバ)
 〔除外三〕曰ハハヲ送ラズ。(曰ク)

〔第二則〕活用語ノ活用セザル部分ニ、他ノ語ノ活用形ヲ含ムモノハ、送假名トシテ之ヲ書キアラハスベシ。
(1)動詞ノ中ニ他ノ動詞ノ活用形ヲ含ムモノ。(驚カス・惑ハス・行ハル・塞ガル・語ラフ・老イバム)
(2)動詞ノ中ニ形容詞ノ活用形ヲ含ムモノ。(怪シム・悲シブ・全クス・辱ウス・嬉シガル)
(3)形容詞ノ中ニ動詞ノ活用形ヲ含ムモノ。(騷ガシ・尠カシ・喜バシ・疑ハシ・歎カ
ハシ)

〔第三則〕 ケシノ語尾ヲ有スル形容詞ニ用ヰラレタル漢字ニハ、猛シノ一語ヲ除ク外、スペテケシヲ送假名トナスべシ。(遙ケシ.豐ケシ・長閑ケシ)

〔第四則〕形容動詞ニ用ヰラレタル漢字ニハ、語尾ノナリ、タリ、カリ、ヲ送假名トシテ書キアラハスベシ。(詳ナリ・異ナリ・巍然タリ・善カリ・苦シカリ)

〔第五則〕副詞ヨリ轉ジテ活用語ニ用ヰラレタルモノハ、活用以外、尚、副詞ノ送假名ヲ附スベシ。(再ビス・以テス・甚ダシ・專ラナリ・頻リナリ)

〔第六則〕漢字ノ二字以上ヲ以テ複合活用語ニ訓ジタル場合ニハ、ソレゾレ送假名ヲ附スベシ。 (流シ出ス・流レ出ヅ 折リ込ム・折レ込ム)
〔除外〕二音ノ動詞ノ上部ニ來リタルトキハ、時宜ニヨリ、ソノ送假名ヲ省クコトヲ得。(差出ス・引受ク)

〔第七則〕活用語ヨリ轉ジテ副詞、接續詞ニ用ヰラルルモノニハ、ソノ活用ヲ書キアラハシテ送假名トナスベシ。但シ副詞、接續詞ニノミ用ヰル漢字ノ場合ハ、尚第八則ノ例ニ據ル。(因ツテ・極メテ・總ジテ・及ビ・敢ヘテ・委シク・餘リニ)

〔第八則〕 二音ノ副詞モシ、ヨシ、ヨク、カク、ノ四語、及ビ三音以上ノ副詞、接續詞ニ用ヰラレタル漢字ニハ、最後ノ一音ヲ送假名トシテ添フベシ。(若シ・縱シ・能ク・斯ク・併シ・殆ド・必ズ・尤モ・但シ・聊カ・爭デ・自ラ・甚ダ・雖モ)〔除外一〕各、愈、偶、交、屡、抑、ノ如ク、二音以上ノ語ノ重音ニテ一字ノ漢字ヲ當ツルモノハ、誤讀ヲ生ズル虞アル時ニ限リ、語ノ右側下ニ〓ヲ附シ、送假名ヲ附セズ、〔除外二〕日外、加之、遮莫、流石、就中、假令、生憎、ノ如ク漢字ノ熟語ヲ訓讀シタルモノニハ、送假名ヲ附セズ。

〔第九則〕 副詞、接續詞ノ語尾ニ助詞接尾語アルモノハ、ソノ送ルベキ部分ヲ添ヘテ送ルベシ。(爭デカ・必ズシモ・聊カモ・併シナガラ)

〔第十則〕名詞、代名詞等ニハ送假名ヲ附セザルヲ通則トスレドモ、動詞ヨリ轉ジテ名詞トナレルモノノ中、左ノモノニハ、本ノ動詞ノ活用ヲ書キアラハシテ送假名トスベシ。
(1)漢字音ヲ活用シタル動詞ノ名詞トナレルモノ。(封ジ・通ジ・察シ・逹シ・書損ジ)
(2)第一則第三項ノ動詞ヨリ名詞トナレルモノ。(思ハク)
(3)第二則第一項ノ動詞ヨリ名詞トナレルモノ。(語ラヒ習ハシ)
(4)第十五則ノ動詞ヨリ名詞トナレルモノ。(赤ラミ・定マリ)
(5)動詞ニ助動詞ノ添ハリテ名詞トナレルモノ。(謂ハレ・使ハシメ)
(6)名詞ヨリ直ニ動詞ニ活用シ更ニ其ノ連用形ノ名詞トナレルモノ。 (宿リ)
(7)分詞ノ性質ヲ有シテ、名詞ト動詞トノ中間ニ在ルモノ。(聞キニ來ル・買ヒニ行ク)

〔第十一則〕動詞、形容詞ノ下ニサ、ミ、ゲ、ソノ他ノ接尾語ヲ附加シテ成レル名詞ハ、動詞、形容詞ノ送ルベキ部分ヲ添ヘテ送ルベシ。(可笑シミ・樂シサ・露ケサ・歸ルサ・傷マシサ.物思ヒゲ・心有リゲ・物思ハシゲ)

〔第十二則〕 動詞ヨリ轉ジデ名詞トナレルモノノ中、左ノ如キ場合ニハ、時宜ニヨリ送假名ヲ附スルコトヲ得。
(1)自他兩様ノ動詞ニ用ヰラルル漢字ニシテ、單獨ニ名詞トシテ用ヰラレ、又ハ複合名詞ノ一部分トシテ用ヰラレ、自他辨別ノ必要ヲ感ズルトキ。(殘リシ・渡リシ・預ケ人リ主
(2)漢字ヲ音讀セル同形ノ語アリテ、辨別ノ必要ヲ感ズルトキ。(變リナシ 變《ヘン》ナシ・讀ミ書キ 讀書)

〔第十三則〕數詞ハ一ツ、二ツ、三ツ等、數フルトキノツ、半バノバ、萬ヅノヅ、ヲ送ルベシ・(二ツ・五ツ紋)

〔第十四則〕連續セル語句ノ品詞トシテ用ヰラルルモノハ、各品詞ノ送ルベキ部分ヲ送ルベシ。(食ハズ嫌・然リト雖モ・怪シカラヌ)

〔第十五則〕 オヨソ單語ニ當テタル漢字、僅カニ其ノ一部分ニ該當セリト見ユル場合ニハ、其ノ他ハ送假名トシテ書キアラハスベシ。(指《ユビ》サス・棹《サヲ》サス・畫《ヱ》ガク・鞭《ムチ》ウツ・春《ハル》メク・黄《キ》ベム・赤《アカ》ラム・薄《ウス》ラグ・安《ヤス 》ラカニ・定《サダ》マル・連《ツラ》ナル・靜《シヅ》ケシ・横《ヨコ》タハル・元《モト》ヨリ)     〔日下部〕


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Last-modified: 2022-08-08 (月) 10:06:07