見返し
世に韻鏡の書、多しといへども、其伝受なくしては反切の法を得がたし。夫反切、名乗字の吉凶を考を緊用とす。此書は其伝受なき人にても五性の相生に就て、父字母字を定め、韻図を用ひず、即其帰納を得ることを発明す。誠に不学して其要を知と云べし
韻鏡反切/名乗即鑑
浪華書肆 柳原積玉圃藏
(原文カタカナ)
名乗即鑑叙 東海*1識
名乘即鑒敍
古者無考五性反名諱之例自 神祖御天下署有其職其法以韻鏡及切韻指掌切韻指南考之然非能知文字者無得其標的矣此書也雖不尽天下文字其捷徑無尚之因号名乗即鑑余応書肆之需且為玄晏先生 東海識
題名乗即鑑 東山力之光公暉
天明五年己巳之冬 東山力之光公暉
韻鏡反切名乗即鑑凡例
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2543208/4>
一 韻学の 本朝に講ずること、名諱を反切して其帰納の吉凶を考ふるを急務とす。此 本朝の故実にして、其の師伝無くしては容易に其法を得べからず。其法猥りに伝ふべきにあらざれども、名諱は人々の慎むべきことなるを以て、今韻鏡を知らざる人も即其法を暁るの捷徑を発明して、蒙士に授く。
其例左に挙ぐるが如し
一 名を命るは、父字を上とし、母字を下として、其帰納字の吉凶に就て定むることなり。其法は。此書。父字とある内の一字と。母字とある内の一字とを合はせて反切するなり。たとへば、公(父字)風(母字)の返し弓(子)の字。公隆の反も。貢雄の反も弓の字なり。餘はこれに准じて知るべし
一
一 反切の法数例ありといへども名諱には音和を用るを正法とす、故に此書に出す所の反切は、四同音和 三同音和 異位音和に歸する字を撰び、間憑切をも用ふ。其類隔往来等の変例は悉除て取らず
一 歸納の字は、古來気形器財の類を吉とすること故實也。気形とは牛兎雉等の字。器財とは弓琴臼等の字を云ふ。其餘、草木衣食の字をも用ふべし 但 鬼鳳龜虎龍等の字は平人の歸納字には用捨あるべきことなり
一 此書毎條見渓群疑等の字を附するは、各生ずる所の字母をしるせるなり。字母三十六字は一切の字音を総括して、韻鏡の図の起る所なるを以て此に附すること、原を尚へるなり。三十六字母とは、見渓群疑、端透定泥、知徹澄嬢、幇滂並明、非敷奉微、精清従心邪、照穿牀審禅、影暁匣喩、来、日を云なり。此書載する所、父字の数九百八十三字 母字の数九百四十一字、これを互に用る時は、凡そ九萬二千五百*2の名乗を生ずるなり
廣瀬幽閑末流 加州金澤 多田秀泂識
天明六年丙午三月発行
浪華書林 心齋橋北久太郎町
河内屋喜兵衞
韻鏡安見録の改題本(安永本の覆刻なるべし)
本文画像(大阪市大森文庫)
http://dlisv03.media.osaka-cu.ac.jp/infolib/user_contents/mori/706.djvu
(見返しに文字無し)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2543208
http://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/html/nu05/nu05_00729/index.html