飯尾憲士 小説
「方言が彼女の口を衝いて出た。」
「多分こんな表現で言ったのだろうと、金栗惣一は井柴サキの供述を、彼の出生地の隣県の方言に置き替えてみる。」
「おそらく彼女は、旅館の予約電話を客から受けたとき、叔父から教わった税・サービス料コミとか別々とかの用語を、山形の訛を出すまいと神経を使いながら電話口で応対したことだろう、と金栗惣一は思った。」
飯尾憲士『五高生殺人』所収