姫路中学校共究会
郁文館中学卒業
東京外国語学校
東京帝国大学専科

黒坂禎次の弟

柳田国男「故郷七十年」
和辻哲郎「自叙伝の試み」
和辻哲郎「芦田先生の思ひ出」
芦田恵之助「恵雨自伝」

私が姫路中学勤務の三年間に関係したのは、一年生の二学期から三年の終りまで続いて担任した三組の国語と漢文でした。その三組の中に、すべての学科に優秀な成績を示していた三人の少年を発見しました。それは黒坂達三君、和辻哲郎君、横山勇君でした。(中略)黒坂君は中学を卒業すると共に東京に出て、外務省に勤務し、かたわら学業にはげんでいました。中学にいた頃よりも明朗になって、誰にも嘱望敬愛せられていました。それが外交官試験をうけて間もなく自殺してしまいました。モルヒネを多量に飲んで、何の苦しむ所もなく、眠るがごとく死んでいたということでした。死を選んだ黒坂君には、死を以て解決しなければならぬ問題があったのでしょうけれども、君の死後を弔わねばならぬ父母・骨肉・師友・同僚の上に思いいたって、死は選ぶべからざる道だったと思いました。芝の青松寺で、北野元峰老師にょって追悼会が営まれた時、和辻君は学友を代表し、私は教師総代として弔辞を述べました。
 「黒坂君は、姫路の神屋に、あけくれ君の安否をきずかっていられる父母のあることを忘れた。今日の悲報を、老父母は何ときかれたことであろう。君は選ぶべからざる道を選んだ」と結びました。和辻君の弔辞の中にも、「黒坂君が遺書もなく、静かに死についたのは、まさに新傾向の自殺というべきだ」ということばがあったように記憶しています。
 勝部真長『青春の和辻哲郎』 勝部真長『若き日の和辻哲郎』 (黒阪達三)


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Last-modified: 2022-08-08 (月) 10:02:33