衆議院事務局記録部 編
日本速記協会
1952

http://www.let.osaka-u.ac.jp/~okajima/PDF/kokkainokotoba.pdf


まえかき
 この本は、昭和二十五年七月から翌二十六年八月に至る約一箇年間に開かれた第八回ないし第十一回国会において衆議院の本会議及び委員会で発言せられた一切の言葉を集めたものである,
 この本は、元来、国会の議事速記の立場から、国会で発言せられる言葉の実相を明らかにし、速記士の言葉に対する理解と知識を深め、執務能率の向上に資するとともに、速記録における国語表記法の研究や、速記術の改良進歩の研究等の基礎資料として役立たせるために編集したものであって、次の特徴を持っている。
 一、国会の議事は、予算案、法律案、条約案の審議その他政治、経済、財政、外交、文教、産業、社会等国政全般にわたるものであり、発言者は議員、大臣、政府委員、説明員、公述人、証人、参考人等、第十国会だけを例にとっても約千名の多数に及び、発言の形式は演説、討論、公述、一問一答、証言等であり、しかも千二百時間を越える会議時間において発言せられた言葉を網羅している点から、(イ)会議体、演説体における話し言葉の実態を現わしでいること、(ロ)時事用語はもとより、固有名詞や各種の専門語、古語、新語、外国語等も一切取入れられて、その時代の言語の実相を現わしていること。
 二、言葉のあげ方は、耳から間いた言葉を正しく文字に表わす上に助けとなるようにということが根本の基準で、そのために、複合詞その他一かたまりの言葉として発言されるものは、すべでそのまま一項目としてこれをあげ、言葉と言葉の結びつきや、実際の働きを一見して知り得るようにし、噴火正しい言い方からくずれ火言い方、謨噴っカ言い方名、発言されたままの形であげられ、またたとえばーつの事物に対して幾通りもの言い方がされた場合もその発言されたままの形であげられていること。
 この本を第一集として、今後も各国会ごとに、あるいは各年度ごとに、国会における発言を集めてこれに補充して行くつもりであるが、この本がただに速記界に役立つのみでなく、広く国語の研究、教育の上に貢献することができれば幸いである。
昭和二十七年二月
衆議院記録部

凡例
一、この本に収めた言葉
 1 この本には、第ハないし第十一回国会の衆議院本会議速記録、第十、第十一回国会の衆議院の各委員会速記録について、総会議時間千二百七十八時間二十五分間に音声をもって発言された一切の言葉を集めた。各会議の名称及びその会議時間は別表の通りである。
2 地名のうち、単に請願人の住所等を朗読し引用した場合等は、これを省いた。
3 人名は、議員、政府委員、その他発言者関係の氏名及び請願人氏名を単に朗読し引用した場合等は、これを省いた。
4 数字、日付は、おおむねこれを省いた。
5 動詞、形容詞、助動詞等は、特に派出度の高い言葉(ある、いる、いたす等)において代表的に、速記録に現われた活用した形をそのままあげたが、一般には基本形が出ておればその形のみをあげ、活用形はこれを省いた。
 6 熟語、成句、ことわざ等はすべて一項目としてこれをあげるとともに、複合詞その他一かたまりに発言される言葉も、できるだけー項目としてこれをあげた。
 7 用例はすべて速記録に実際に現われたもののみを掲げた。

二、表記法は当然衆議院会議録用字例によっている。同用字例は、音読の言葉については漢字の使用について特に制限を設けないが、そのほかは内閣告示の当用漢字表、同音訓表、現代かなづかいの範囲内で会義録記の基準を定めたものである。但し引用その他によって、同用字例の基準からはずれた表記法も現われている。

三、配列は、表記法に関係なくすべて発音主義で配列した。
  〔例〕 (かっこ内は配列箇所)
  ー サービス(サアビス)
    イージー(イイジイ)
    牛乳(ギユウニユウ) スーパースウパァ)
    形成(ケエセエ) せいみ/゛\(セエゼエ) ケース(ケエス)
    どうこう(ドオコオ) 大阪(オオサカ) 光明(コオミョオ)
    ゾーン(ゾオン)
  2 学校(ガツコオ) 国家(コツカ)
  3 山積み(ヤマズミ) 荷づくり(ユズクリ) 地震(ジジン) 手続(テツズキ)
  4 ヴァリユー(ウァリユウ) フィッシュ(フイツシユ)

四、記号
「|」〔例〕「数年 ー前」生蝋年 数年前」
    「常道 議会政治の1」9「常道 読会政治の常直」
「・」〔例〕「資金運営・運用」「資金運営 資金運用」
    「正しい・き・く・さ」―「正しい 正しさ 正しく 正しさ」
    「立てる 方策・伺い・凱・暮しを」=「立てる 方策を立てる 伺いを立てる 顔を立てる 暮しを立てる」
( )はその言葉の注釈
 〔 〕はその言葉の発言された開題の範囲もしくは委員会名
    ( )〔 〕を用いない場今はすべて用例

五、委員会名の略記
   〔議運〕=議院運営委員会 〔通算〕=通商産業委員会 (電通)=電気通信委員会
   〔行監〕=行政監察特別委員会 〔引揚)=海外引揚特別委員会
 以上のほかは本文末尾の付表委員会名から「委員会」「特別委員会」の字句を省いて表わした。

六、この本に収めた言葉の量や範囲を考える上の参考のために、本文末尾に
  この本の言葉を収集した会議とその会議時間表………………三八九
  各国会における発言者数表………………………………………三九〇
 の二つの表を掲げておいた。


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