円地文子 小説
『新潮文庫の絶版100冊』


あの伯父は普段は標準語を使っているけれど、怒り出す時には完全に九州弁になるんだなあ。お前、あげな恥知らずの親の娘、嫁にすっとならば、おいにも覚悟あるばい、なんて力まれるとやくざの親分に乗り込まれたようで、凄く迫力があるんだよ


「そんなこと言ったって、あの伯父貴|怖《こ》えんだから……いつかなんかは日本刀を持ち出して、引っこぬきそうにしたもの」
 と達也はまだ後ろを見返りながら言った。
「九州男子の典型ってわけね」


「何しろ、日本刀を持ち出す九州男児ですからね。すべて大時代なんですよ」


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