尚古仮字遣

http://dbrec.nijl.ac.jp/KTG_W_1057052

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/862355

世に仮字づかひの法を定めたるは行阿仮名遣?ぞはじめなるべき。それにつぎて類字仮名遣和字解等のふみどもあなれどみな後の世のおしはかりのみにして古書によらざれはすべてたしかなる證としがたし。さて契沖?阿闍梨の正濫抄並に要略 楫取魚彦古言梯等はもはら古書を證として物したるふみどもなれば古言をしるたよりにはよろしけれど中比の日記物語等の詞をばこと〴〵くもらされたればこれはたあかぬこゝちぞすめる。かくておのれこたびあらはせる此書はうひまなびのうなゐらがふところにしてふみかき歌よむ時のたづきとて廿一代集はさらにもいはず家々のしふ歌合百首等よりものがたり日記草紙等にいでたる詞をむねとあげてかの古事記? 日本紀? 霊異記? 本草和名? 延喜式? 新撰字鏡 和名抄?等に出たるいと物遠き草木虫魚の名また地名郡名郷名または調度雑具等の名は正濫抄古言梯等にゆづりておほくはもらしつ。そはそれらの仮字までをあげんにはいと〳〵こちたくてさゝやかなる書にものせんにはたよりあしければなり。さて引書をもかゝまほしけれどこれも處せければすべてもらしつ。
 物語日記草紙等に出たることばには詞はひとつにて意はいろ〳〵に聞ゆるあり。たとへばおふなくといふ詞もとはおふけなしといふ意なれど所によりては大かたといふ意にもまたねんごろといふ意にも聞ゆるがごとし。また意はひとつにて詞はいろ〳〵にかはるあり。たとへばおほどか おほどけ おほどく おいらか こめく このいつゝの詞はすこしづゝのけぢめはあれどみな俗に大やうといふ意なるがごとし。また上古と中比と詞はひとつにて意のかはるあり。たとへば なづさひといふ詞 古はなづむ意に用ひ中比はなれしたしむ意に用ふ。これらのたぐひ いひもてゆけば猶さま〴〵あなれどそはおのれ外に尚古仮字用格別記といふ書をつくりて仮字にあづかりたることはそれにこと〴〵くいはむとすれは ここには たゞその要をつみてしるせり。さて字音の仮字も草紙物語等におほく出てふみなどかくにしらではえあるまじきかぎりはこと〴〵くしるせり
文政五年?しはすとをかあまり五日の日 山本明清?


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