志賀直哉
小説

東京者のくせに大阪弁ばかり使う若い寄席芸人

「仲のええこと」と京都訛りを真似て冷やかした。

並んでいた外国人が英語で「貴方は英語を話しますか?」と云った。彼も英語で、「英語は話せません」と答えた。そして横浜に居た西洋人ならまるで日本語を知らないはずはないという気がしたので、彼は今度は日本語で「日本語は話せないんですか」と訊いてみた。若い外国人は当惑したようにちょっと首を傾けて赤い顔をした。

東京弁も気持よかった。

女はなぜか時々京都|訛りを真似た。「きったいなことを云いなはる」などいった。「奇体」と「怪体」を混同していると彼は思った。


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