『国語学辞典』
方言区画 ホーゲンクカク *1 国語が幾つかの方言に分けられると考えた場合、その区画が方言区画である。この方言区画は個々の俚言現象の分布とは全く別個のものである。また、若干の音韻現象の分布傾向、若干の文法現象の分布傾向をもととして、音韻現象による方言区画、文法現象による力言区画を説くことは、一応許されるとしても、厳密な意味では、これは方言区画ではない。方言は、音韻・文法・語彙の体系を包括した言語体系であるから、方言区画は音韻・文法・語彙の全体の考慮の上で設定されなければならない。これには音韻・文法・語彙現象の若干の分布がほぼ一致することが前提となるが、このような一致は、よく地方言語の上に発見されるのである。
【大方言と小方言】方言は方言学の対象の単位であるが、この単位には大小の別を立てることができる。わが国では東西の二大方言の対立がよく説かれているが、東部方言だけをまた東北・関東などの小方言に分けることもできるし、さらに東北方言を北奥・南奥の小方言に分けることもできる。以下、地方言語体系の構造を精密に比較すれば、その精密度の進むに従って、力言はいよいよ下位の小方言に分けられて、あるいは町村の言語を単位とする場合もあろうと思う。ただし、方言は一つの言語社会を予想するから、社会の一員たる個人特有の言語は方言とならない。A村とB村との言語は方言であっても個人のaとbとの言語は方言ではない。また方言は常に相対観念であることも忘れてはならない。例えば青森の南部方言は津軽方言と対立するために方言なのである。   〔以上東条操〕
以下、金田一春彦【日本語の方言区画】


*1 方言

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