村上龍
九州弁小説
僕達が使う言葉を方言とすれば、山田正は炭鉱町独特の「大方言」とも言うべき、さらに屈折した言葉を使った。
そんな台詞になると僕は急に標準語になってしまう。べ平連が演説しているようなことを方言で言うのは、何かおかしい。どうしてだろうか?
例えばカミュの『ペスト』について方言で喋るとほとんど冗談になってしまう。『ペスト』はばいね、単なる病気の話やなかわけたい。それはメタファーでほんとはファシズムやら共産主義ば象徴しとるわけやろ…………方言は、借りものの言葉だとすぐにばれてしまう。
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