#author("2020-02-25T23:06:37+09:00","default:kuzan","kuzan")
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/977397
大正十一年

[[勝屋英造]]


「通人」と云ふと、普通、「花柳界のことに通じた人」と云ふ意味に使用されて居るが、「通人」と云ふ言葉には 「よく物事に通じた人」「よく人情に通じ、よく世の中のことになれた人」と云ふやうな意味もある。それで、こゝに云 ふ通人語とは広い意味のもので、花柳社会、演劇界、歌踊、音楽、書画骨董、茶の湯、生花、囲碁将棋相撲、相場、その他各方面の隠語、謎、地口、洒落、符牒、新らしい流行語、新らしい外来語と云ふやうなものを含んで居る。所謂江戸趣味もバタ趣味も、下町趣味も山の手趣味も、四畳半趣味もカフェー趣味も、吉原趣味も、回向 院趣味も歌舞伎趣味もオペラ趣味も本辞典に収めた言葉によつて辿り知ることが出来る。これ等各方面に亘り、 現代人として、今後の社会に立って活動する上に知らなくてはならぬ言葉、知って益はなくとも損にならぬ言葉 を捉へ来たり、興味本位に説明したものだ。

本辞典はなま〳〵して《ママ》日々盛んに使はれてゐる言葉の陳列である。 今の世にかう云ふ言葉を知らないために何んでもないことに赤い顔をしたり、つまらないことに損失を招く人は 決して少なくないのだ。さう云ふ人はこの辞典一冊を手にするだけで、通な人とまでは行かなくとも、少なくと も野暮な人として笑はれないやうにはなれる。

トップ   編集 差分 履歴 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS