#author("2020-08-31T14:08:05+09:00","default:kuzan","kuzan")
谷崎潤一郎
戯曲


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侍從 左樣でござります。今は鹽冶殿の御臺《みだい》におなり遊ばして、顏世殿と申されていらつしやいますが、大名とは申せ、あの鹽冶殿は[[出雲訛り]]の[[田舍言葉]]、その上聲は塔の鳩が啼くやうで、定めし夜半の睦言も鄙《ひな》びてゐることでござりませう。あれでは胡國《ここく》の夷とやらに嫁がれたと云ふ王昭君も同じこと、どんなにあぢきない月日を途つていらつしやるかと、人事ながらお可哀さうでなりませぬ。
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