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轉寢記
もの思ふことの慰むにはあらねど、ねぬ夜の友とならひにける...
降りみふらずみ定めなき頃の空のけしきはいとゞ袖の暇なき心...
「人しれず契りし中のことの葉を嵐ふけとは思はざりしを」
と思ひつゞくるにも、すべて思ひさまさることなき心のうちな...
「これやさはとふもつらさのかずかずに涙をそふる水莖の跡」
れいの人しれずなかみち近きそらにだに、たどたどしきゆふや...
「歎きつゝ(わひイ)身を早きせのそことだにしらず迷はむ跡...
身をもなげてむと思ひけるにや、たゞ今も出でぬべき心ちして...
「捨てゝ出でしわしのみ山の月ならで誰をよなよな戀ひ渡り...
ゆたのたゆたに物をのみ思ひくちにし果は、うつゝ心もあらず...
「陸奧のつぼのいしぶみかき絶えてはるけき中と成りにける...
日ごろ降りつる雨のなごりに、たちまふ雲まの夕づく夜のかげ...
「思ひ出づる程にも波はさわぎけりうきよをわけて中川の水...
あれたる庭に呉竹のたゞすこしうちなびきたるさへ、そゞろに...
「よとともに思ひいづれば呉竹の怨めしからぬ其のふしもな...
おのづからことの序になど、はかり驚かし聞えたるにも、よの...
「消えはてむ煙ののちの雲をだによも眺めじな人めもるとて」
とおぼゆれど、心のうちばかりにてくたしはてぬるはいとかひ...
「はかなしな短き夜はの草枕結ぶともなきうたゝねの夢」。
日頃ふれどとひくる人もなし。心ぼそきまゝに、きゃうづと手...
「おく露の命まつまのかりの庵に心細くも宿る月影」。
いづくにかあらむ、幽かに笛の音のきこえくる。かの御あたり...
「待ちなれし故里をだにとはざりし人はこゝまで思ひやはよ...
さても猶うきにたへたる命のかぎり有りければ、やうやう心ち...
「消えかへり又はくべしと思ひきや露の命の庭の淺ぢふ」。
歎きながら、はかなく過ぎて秋にもなりぬ。ながき思ひの終宵...
「越えわぶるあふさか山の山水はわかれにたえぬ涙とぞ見る...
あふみの國野路といふ處より、雨かきくらしふり出でゝ都の山...
「すみわびて立ち別れぬる故里もきてはくやしき旅衣かな」。
道のほど目留る所々多かれど、こゝはいづくいづくともけぢか...
「思ひいでゝ名をのみ慕ふ都鳥あとなき浪にねをやなかまし...
此の國になりては、おほきなる川いとおほし。なるみのうらの...
「これやさはいかになるみの浦なれば思ふ方には遠ざかるら...
みかはの國八はしといふ所をみれば、これも昔にはあらずなり...
「心からかゝる旅ねに歎くとも夢だにゆるせ沖つ白波」。
富士の山はたゞこゝもとにぞみゆる。雪いと白くてこゝろぼそ...
「忘るなよあさぎの柱かはらずはまたきてなるゝ折もこそあ...
この度はいと人ずくなに心ぼそけれど、都をうしろにてこしを...
「かきくらす雪まをしばしまつ程にやがて留むるふはの關守...
京に入る日しも雨降りいでゝ、鏡の山も曇りてみゆるを、くだ...
「このたびは曇らば曇れ鏡山ひとを都のはるかならねば」。
かく思ひつゞくれど、まことにかの人を都はちかき心のみばか...
「きみもさはよそのながめや通ふらむ都の山にかゝる白雲」。
暮れはつる程にゆきつきたれば、思ひなしにやこゝもかしこも...
「我よりは久しかるべき跡なれど忍ばむ人はあはれとも見じ...
轉寢記終
RIGHT:国文大観
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轉寢記
もの思ふことの慰むにはあらねど、ねぬ夜の友とならひにける...
降りみふらずみ定めなき頃の空のけしきはいとゞ袖の暇なき心...
「人しれず契りし中のことの葉を嵐ふけとは思はざりしを」
と思ひつゞくるにも、すべて思ひさまさることなき心のうちな...
「これやさはとふもつらさのかずかずに涙をそふる水莖の跡」
れいの人しれずなかみち近きそらにだに、たどたどしきゆふや...
「歎きつゝ(わひイ)身を早きせのそことだにしらず迷はむ跡...
身をもなげてむと思ひけるにや、たゞ今も出でぬべき心ちして...
「捨てゝ出でしわしのみ山の月ならで誰をよなよな戀ひ渡り...
ゆたのたゆたに物をのみ思ひくちにし果は、うつゝ心もあらず...
「陸奧のつぼのいしぶみかき絶えてはるけき中と成りにける...
日ごろ降りつる雨のなごりに、たちまふ雲まの夕づく夜のかげ...
「思ひ出づる程にも波はさわぎけりうきよをわけて中川の水...
あれたる庭に呉竹のたゞすこしうちなびきたるさへ、そゞろに...
「よとともに思ひいづれば呉竹の怨めしからぬ其のふしもな...
おのづからことの序になど、はかり驚かし聞えたるにも、よの...
「消えはてむ煙ののちの雲をだによも眺めじな人めもるとて」
とおぼゆれど、心のうちばかりにてくたしはてぬるはいとかひ...
「はかなしな短き夜はの草枕結ぶともなきうたゝねの夢」。
日頃ふれどとひくる人もなし。心ぼそきまゝに、きゃうづと手...
「おく露の命まつまのかりの庵に心細くも宿る月影」。
いづくにかあらむ、幽かに笛の音のきこえくる。かの御あたり...
「待ちなれし故里をだにとはざりし人はこゝまで思ひやはよ...
さても猶うきにたへたる命のかぎり有りければ、やうやう心ち...
「消えかへり又はくべしと思ひきや露の命の庭の淺ぢふ」。
歎きながら、はかなく過ぎて秋にもなりぬ。ながき思ひの終宵...
「越えわぶるあふさか山の山水はわかれにたえぬ涙とぞ見る...
あふみの國野路といふ處より、雨かきくらしふり出でゝ都の山...
「すみわびて立ち別れぬる故里もきてはくやしき旅衣かな」。
道のほど目留る所々多かれど、こゝはいづくいづくともけぢか...
「思ひいでゝ名をのみ慕ふ都鳥あとなき浪にねをやなかまし...
此の國になりては、おほきなる川いとおほし。なるみのうらの...
「これやさはいかになるみの浦なれば思ふ方には遠ざかるら...
みかはの國八はしといふ所をみれば、これも昔にはあらずなり...
「心からかゝる旅ねに歎くとも夢だにゆるせ沖つ白波」。
富士の山はたゞこゝもとにぞみゆる。雪いと白くてこゝろぼそ...
「忘るなよあさぎの柱かはらずはまたきてなるゝ折もこそあ...
この度はいと人ずくなに心ぼそけれど、都をうしろにてこしを...
「かきくらす雪まをしばしまつ程にやがて留むるふはの關守...
京に入る日しも雨降りいでゝ、鏡の山も曇りてみゆるを、くだ...
「このたびは曇らば曇れ鏡山ひとを都のはるかならねば」。
かく思ひつゞくれど、まことにかの人を都はちかき心のみばか...
「きみもさはよそのながめや通ふらむ都の山にかゝる白雲」。
暮れはつる程にゆきつきたれば、思ひなしにやこゝもかしこも...
「我よりは久しかるべき跡なれど忍ばむ人はあはれとも見じ...
轉寢記終
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