久保田万太郎「戯曲の言葉」
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久保田万太郎
戯曲の言葉
『国語文化講座4国語芸術篇』
<!--
●
戲曲の言葉
久保田 万太郎
ある劇團がイプセンのある戯曲の上演を企て、演出者に、毫...
しね直
その戯曲の飜譯のすでに幾人遇の飜譯者によつて試みられて...
のイギヲス譯、ドイッ譯、フランス驛とともに、そのそれみ丶...
かるのち俳優たちをあつめて、その幾つもの飜譯の同じ個所、...
の讀合せを行つね。
その方法は、演出者に、まつその飜譯の良否を、つぎに鏖本...
かにすることが出來紀。そして、結果、ある學校の先生の一二...
戯画の官葉 ・ ...
---------------------[End of Page 1]---------------------
の十四五年まへに本にし把ものとが演出者の手に殘つたが、演...
意見を徴し托上、まへのものを捨て、あとのものを取つた。な...
くまでも確かだつ髯、が、壷詞としては:;すなはち舞韲の上で...
生硬にすぎ、晦澁に失した。
「諸君には{の言葉はいひこなせない。よしいひこなせねとして...
駄だ。」
演出者は俳優たちにかういつセ。::目でみては分つても、耳...
にその意味の捕捉出來ない言葉では壷詞として逋用しない:∴
ノ
そこへ行くと、あとのものは、しばノ丶省略があり、.また、...
譯さへ容易にみ出されたものの、それにもか丶はらす、さすが...
言葉の流れが自由で、暢達で、明晰だつた。壹詞として生かす...
た。
「これなら分る,これなら、諸君も、安心して役の性格が出せる...
省略は補へばい丶、誤譯は直せばい丶::」
---------------------[End of Page 2]---------------------
.濱出者は言葉をつ『けていつたo ...
口 ・
この分るといふことが・:・耳に聽いて分るといふことが舞壼...
つ以ての條件である。
が、分るばかbではいけない、同時に耳に::觀客の耳に快くつ...
ひジかなければいけない。それがそのあとにすぐ來る大切な條...
勿論、これは,盛詞を圭とする演劇::近代劇のための戯曲の場...
劇の如きは必すしもこれにあつからない。::といつたら、歌舞...
はないではないかといふ抗議…が出るにちがひない。が、歌舞伎...
に於ては、その中に、觀客に聽かせるだけの目的にかなふ言葉...
の中で、.いかほど多くの人物が、いかほど多くの言槊をかはし...
目的は、それ以上に出ないからである。しかし近代劇のための...
でもが觀客に聽かせるまへ、かれ自身まつかれの昌囂某を話さ...
士、かれら肩身の言葉をまつ話合はなければいけない。::そし...
---------------------[End of Page 3]---------------------
されるのである。 ...
自然さ。 ・
ぬきさしの出來ない自然さ。
.つねに暗示を忘れることの出來ない自然さ。
・:・戯曲の言葉の艱難はかくして盜きるところを知らない。
口 ・
わが國ではじめて「垂詞を主とし把演劇」を提唱しためは森...
たまくしげムみりうちしま
その把めに、先生は、ら玉篋兩浦嶼』を薔かれ、 「日.蓮聖...
替かれ、 『假面』を書かれ、 『靜』を誉かれ、 『生田川...
『玉篋.兩浦嶼』は明治三十五年の十二月に出版された。先生、...
れるのに中古の雅語に遞いものをもちひられ忙。
太郎 なに、浦島の、太郎とな , .
さら拭おんみの、とほつおやに
---------------------[End of Page 4]---------------------
.後の太郎
,
やへのしほぢに、こぎいりて
かへらぬひとの、ありどきかずや
げにげに。ことし、天長の
二年を距ること、三百年
すめちみニと
犬泊瀬幼武の、天皇の
みよしろしめす、二十二年
月さやかなる、あきのよに
とほつおやなる、浦島は
ひとり小ぷねを、こぎいでしが
いくひふれども、おほぞらに
雲なく、海に、なみなくして
ひともかへらず、ふねもかへちず
たれいふとなく、わたつみの
かみのみやゐに、ゆきぬとて
けふまでもよの、かたりぐさ。
それをおん身の、とひたまふは。
---------------------[End of Page 5]---------------------
太郎 その浦島こそ このおきな。
ずに
おんみはわが黹、たゴならぬ
ふなよそほひはな.にゆゑぞ。
後の太郎(下に居る)
● わが父なりし 浦島らの
とほきえみしを ・フちしより
夲安城の みよさかえ
みっぎするもの 讎化するもの
・ ひきもきらねど もののふの
.あ
・ こムろは聾かずひのもとの
武名をなほも あげんた.め
わだつみこえて と.ほつくにへ
わたらんとこそ おもひ候へ
太郎 おう。いさましや わたつみの
かみのみやこを わがいでしも
おなじこムろよ さりながら
---------------------[End of Page 6]---------------------
後の太郎
太郎
おもふは先薩
行ふは
子孫にこそあれ
もとらダ
矧しし
たまをば(地を指す)舟に つみゆきて
総囓をだにをかさざる
いくさのたすけに せらるべし
0
噸
-聖
ー飴物舮、倒「鴫7〜
●
といつね工合にである。
この作について、先生、 「獨逸の從米の戯曲と『日禺前』...
...
本と浦島との距離より大きいとは謂はれない」と語られてゐる...
を主とする演劇」のこの形式と内容とに於てのみなされなかつ...
その時代の批評家たちを狼狽させた。あるものの如きはこれを...
先生の嗤笑を買つた。
---------------------[End of Page 7]---------------------
画語塾構篇. ・ ...
『日蓮聖人辻諡法』は明治三十七年の三月蕨炎された。この...
如き,簡素な、清淨な歌舞伎劇::薹詞を童とした歌舞伎劇が出...
...
妙 (笠を取り、呼ぴ掛く)阿朗様、囗朗様。 (R朗...
たなあ。それにしても器はこはれる、油は流れる...
觚でござんする。
日朗 こはれた器、流れた油が、見ればとてなんとな...
妙 (笑ふ)ほんにさうでござんすなあ。おう、路い事...
ぢや程に、妾がさう申したというて、内のを持つ...
「
日朗 盜みて焚きし油にも、永劫身光の報あり。そん...
妙 (笑ふ)それはなんのお經やら。早う寄つて取つ...
・(日朗橋を渡りて去る。妙、暫し見邊りて、下手...
...
善春 (H朗とすれ違ひ橋を渡り來て)妙殿、まだそれ...
じやうみやう
交名に加へられ、今朝より由比ク濱にて、おん試...
刻に遲れんかと、事の果つるを待ちあへず、米町...
跡を慕うてまゐつてござろ。
妙 (萎れたろこなし)そのお志は、よう存じて居りま...
聖人様へ御鑒誓すやうにと・くれぐ輩しましたのを.おん燹...
やと、あなたが仰しやりましたとやら。それからといふも...
かな ...
と父のいひつけ、所詮願は協はぬものと、妾はもう諦念め...
善春 ざてはさやうの譯でおりやるか、たとひ御父上はなんと...
...
此善春は引かぬ所存。必ず氣にばしかけられな。 ...
妙 あなたに逢うて御親切な、そのお詞を聞くうちは争つい末...
目にか亠るまでは、苦勞の繕閼はござんせぬ。妾の心をよ...
くばかり、その御平癒の断願ぢやとて、かうして一人參る...
さい大路ながら、たまたまお目に掛むれまする。・二迸か...
.暹うならぬうち、急いで行つてまゐりませう。
あハたに
(花道へXる。善摩殘げ、心配の思入。老若の群、慌忙し...
「めでたい正月に忌まはしい」などの白ありて、舞蘯に留...
...
善春 さては噂の日蓮が、けふも醗敏に出でたるよな。去年の...
ヒ リ
・ 宗を罵臂すと聞きながら、たノ餘所事に思ひ居りしに、比...
やる。櫓き法師の何事を読くやらん。
(群集又どよめき一、そoや來居つたLと叫ぶ。中には石瓦...
---------------------[End of Page 9]---------------------
國語婆術篇
二七二
日巡 (糟笠にて面を掩ひ、橋を渡りて出で、舞痘に留まり、笠...
國に敏の地を拙ひ、目のあたりなる逸樂に、永劫猫せぬ苦...
そのをりをりの節物を、貌ふ心ぞおぞましき。たまたま信...
て、殊勝顔なる笑止さよ。 (群の中より「念佛がなんで笑...
粲の毒に醉うては、その笑止さがわかるまいの。敬の主な...
るを、帷子の里に行脚して、われまのあたりみしことあり...
● の邪法。
雜誌「歌舞伎」の臨時號に發衰された翌月、この作は、歌舞...
た市川八百蔵、主役日蓮に扮し、こ丶に拔きだしたこの「やら...
まくその名調子で亥へ、一部,敏養ある觀客のあひだの評判をと...
□ ...
『プルムウテ』の世に出たのは明治四十二年の一月である。古...
鰡七き復響を描くのに、先生は、淨珊璃風の七五調を基本とす...
...
敵將 (落ちたる冠を拾ひ持ちて、王の妹に)これが后の我...
亀
---------------------[End of Page 10]---------------------
我手から受けて下され。 (王の妹ためらふ)
姉の王女 〔王の妹を遮り'て、敵将の前に立つ。敵將と面を見...
ラぢ堕。妾は美しうないのかや。
にゆ
敵將 (氣色霽やかになる)なんどおん身が美しう無からう、美...
さうなが、それとて茨の美しさを添へるばかりで、・邪魔...
女か。ここへ、ここへ。 (妹の王女おそるおそる姉の左に...
.妹の王女 スルグと申しまする。
敵牆(微笑む)おう、おん身も好い子ぢや。 (姉の王女におん身...
某も氣が晴畷すろ。さりながら某は、髪をも焦す口を浴び...
...
務ぢや。ヂξシュクの王宮には、蕾の花の喚くを待ち、青き...
る。おん身二入は、.そこへ遖る。此冠は(冠を取り直す)某...
毒ん身の.頭に加へ申す田
王の妹 (思ひ定めたるさまにて脆き、頭に冠を受く)珠は碑け...
敵將 破れて國を治むるも、碎け.し珠を償ふも、某が手の申に...
姉の王女 (王の妹に)叔母上操。さき程からの御無禮はお許...
...
王の妹 おん身がさきの振舞は、仔紬がなうてはかなはねど、...
---------------------[End of Page 11]---------------------
は、思ふ仔細のある事ゆゑ(妃を見ろ)姉上濠もおん身...
妃 何事も國のため、民.のためぢやと思ふわいの。さうに...
事があらうやら。その幼ないスルグまで、 「しよに...
して悲しい辮ぢやわいの。
(姉妹の王女、后の傍に寄る。后二人の肩に手な掛けて...
口
が、先生は、 『玉篋兩浦嶼』の場含のやうに、また『日蓮...
ルム・ウラ』の場合でも、その試みられた丈髏に對して、御黨...
「・:・これも轡いてしまつてみると賊心しない、嫌に古めか...
をさへもらされね。 .
さういはれ忙ことが::すなはち第一作、第二作、第三作と經...
の年の十一月の『靜』になつて、さらに翌年の四月の『生田川...
生、行きつくところへ行きつかれ恒。
そこに現代語が::歔曲の冒葉としての現代語が先生を待つて...
---------------------[End of Page 12]---------------------
理代語・:・古代を描くのでもことさら古代語を必要としない...
入らなければ、 「・:・行かしませ」の狂言詞も入らない。 ...
い。様式さへ整へることが出來把ら牛明な現代語が一番い丶。...
も先生は現代語を使用患れたのである。、 、...
口
離 まあ、あなたなんぞも、そんな事を思つて入らつしゃ...
安逹 惣外ですか。
靜 (正直に)ええ。全くo
安逹 さうでせう。都で儲探偵をする。鍛倉では首斬役を...
. ・は無いと思っておいででしたらう。
罅 それをきうでない乏は申しませんわ。'ですけれど、ね...
...
く思ふやうな女だと思つて入らつしやると,それは違つ...
あたしの身の上はどうでせう。思ふお方には別れてし...
て入らつしやるといふことは、先づ覺朿ないのでござ...
ますでせう。そしてこちらへ引かれて參つて、お化粧...
hしまマでセう。それもまあ好いとして、女の子なら助...
戯曲の言,葉 ....
.
●
●
「」
---------------------[End of Page 13]---------------------
'
,
國艦…藝配伽醐励 ...
赤さんが男の子で、それを殺されてしまつたのに、ま...
いたしません。尼法師にもなりません。人間ら.しい考...
先に自分で自分を資めなくてはなりますまい。まあ、...
・以上は『靜』のある部分で、時は文治二年九月十六臼、場...
豫前司義縄の妾で、安逑といふのは錐倉方の筑士安達新三郎清...
經にわかれたあと、捕へられて銀倉に逾られ、頼朝のまへで義...
である。
1
母・これはお二人ともお揃で、好うこそお出で下さいました。
茅渟壯士 丁度こなたへまゐらうと存じまして、あの畢張の打...
菟會壯士 和泉のお客と落ち合ひまして。
茅渟壯士 鴨一朋つつ取のましたのを。
菟會壯士 鳶土碓に持つてまゐりました。
〔二人鴨を母の前に出す㌧
,母 まあ、揃ひも揃つた立派な鳥でございま丁ね.、娘。瞬へ...
潴擢堤女はい
---------------------[End of Page 14]---------------------
(鴨を取りて、右手へ入る)
茅渟壯士 (菟會壯士に)こなたの母刀自が、立派なと仰やつ...
れはまだあの儘浮いてをりませうかな。
菟會壯士 あの催をりませう。何處から飛んでまゐつたものか...
をのますろ。
母 あの、鵠がゐると仰やいますか。
茅濘壯士 さやうでござります。先程二人で鴨を射ますと、近...
が、直その向うに鵠が一朋立たずに浮いてを㊨ました。小...
ムたつゑ ...
きも、鵠は罅かに波を切つて、二丈ばかり退いたばかりで...
菟會壯士 雪のやうな眞白な、大きな鵠でござります。
母 それはまあ、珍らしい(少し間を置き、思案したる様子にて...
出がましうございますが、あなた方お二人で、その鵠を射...
あて ...
羽。お中なすつたその方を娘の婿に致しませう。
茅渟肚士 につ。これは何よOの仰でござ紅まする。菟會のお方...
菟會壯士 なろ程。御尤な母刀自の仰でござ0ます、わたくしも...
茅渟壯士 かういふ内も心が急く。直にこれから。さあ。
---------------------[End of Page 15]---------------------
菟會壯士さあ。
(二人弓を取⑳て立つ。處女、右乎より掛で、魂悔た...
....同時に處女の顔を見、さて同時に目を母の方寵移...
茅渟壯士 後程お目に掛かります。
菟會肚士 後程お目に掛かります。 . ...
母お待申してをのまする。
(二人の壯士、柴の戸を斟で、左手に入る)
以上は『生田川』のある部分で,時はとくに指定してないが、...
屋の里。::二入の男に同時に求愛され、おもひみまつた末、入...
傳論仁取材.し霍作である。
□
が、 『靜』も、 『生田川』も、はじめて世に出牝ときは...
な試み、よくいふものにしてわつかにさういつた、だけだつ忙...
で片附けた、かれらは現代語のその表而にうかぶ現實性だけを...
ノ
にまるつきり關心をも牝なかつ弛のである。先生の、抉して、...
---------------------[End of Page 16]---------------------
なかつたことにかれらは氣がつかなかつたのである。
憾士いや、失禮をいた七ましヵ.
夫人 (會繰して)どういたしまして。まことに御無理な...
博士 先日から山ロ君が見えますが。
夫人 實は其事で一寸伺ひましてございます。痰の御檢査...
診察を願ひに參らうと申してをりましたが、どんな工合...
ござますし、いつもと少しも變つた様子はございません...
ならぬ事だと存じますので、それを承りに參りましたの...
...
博士 さやう。御冤蒙つて一服もます。.(朮・上の葉卷を...
お掛けなさいまし。
夫人 恐れ入ります。 (腰を掛く)栞は義理のある弟では...
たより
あればかりを便にいたして、暑中休暇に歸りますのを樂...
. 潔になれば直ると申して、挙氣で大學へも通つてゐるの...
---------------------[End of Page 17]---------------------
長くなりますので、宅でも氣遣つてをりますのでござ...
博士 (葉卷に火を附け、椅子に掛く)御尤です。單純な...
夫人 (目かがやく)さやうでございますか。それでは。
博士 熱は少しもありませんし、大して御心配なさるに...
してはならないのです。
夫入 結核ではございますまいか。
、
これは、明治四十二年の四月噛 「プルムウ・7』のあとに...
あるのは杉村茂といふ醫學博士で、失人とあるのはその友人の...
.さをされてゐるのは山口栞といふ文科大學生で、場所は駿河壷...
は現代を描いた作である。・:・そのころの批評家たちのい丶加...
る現代語と,現代を描い拠この作の現代諮とを比較する知慧さへ...
現代諦墜牛明である。::準明なだけいくらでも盗荊としての...
あヤ
曲の言葉としての文がつけられるのである。
---------------------[End of Page 18]---------------------
第一作.第コ作㍗第三作と二:气玉篋兩浦嶼』.『日遘聖人辻...
川』と經て來られ紀その先生の辛苦は博識な先生にしてはじ...
●
わねくしは、その辛苦の筋みちをあきらかにするR的ばかちで...
だしい抄出を弑みねのではない。先生の戯曲の中にもられね...
.いかに自然だかといふことを:・・いかに歔曲の言葉の條件...
七
ね郡分でさへが惜みなく物語るであらうからである。 ...
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久保田万太郎
戯曲の言葉
『国語文化講座4国語芸術篇』
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●
戲曲の言葉
久保田 万太郎
ある劇團がイプセンのある戯曲の上演を企て、演出者に、毫...
しね直
その戯曲の飜譯のすでに幾人遇の飜譯者によつて試みられて...
のイギヲス譯、ドイッ譯、フランス驛とともに、そのそれみ丶...
かるのち俳優たちをあつめて、その幾つもの飜譯の同じ個所、...
の讀合せを行つね。
その方法は、演出者に、まつその飜譯の良否を、つぎに鏖本...
かにすることが出來紀。そして、結果、ある學校の先生の一二...
戯画の官葉 ・ ...
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の十四五年まへに本にし把ものとが演出者の手に殘つたが、演...
意見を徴し托上、まへのものを捨て、あとのものを取つた。な...
くまでも確かだつ髯、が、壷詞としては:;すなはち舞韲の上で...
生硬にすぎ、晦澁に失した。
「諸君には{の言葉はいひこなせない。よしいひこなせねとして...
駄だ。」
演出者は俳優たちにかういつセ。::目でみては分つても、耳...
にその意味の捕捉出來ない言葉では壷詞として逋用しない:∴
ノ
そこへ行くと、あとのものは、しばノ丶省略があり、.また、...
譯さへ容易にみ出されたものの、それにもか丶はらす、さすが...
言葉の流れが自由で、暢達で、明晰だつた。壹詞として生かす...
た。
「これなら分る,これなら、諸君も、安心して役の性格が出せる...
省略は補へばい丶、誤譯は直せばい丶::」
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.濱出者は言葉をつ『けていつたo ...
口 ・
この分るといふことが・:・耳に聽いて分るといふことが舞壼...
つ以ての條件である。
が、分るばかbではいけない、同時に耳に::觀客の耳に快くつ...
ひジかなければいけない。それがそのあとにすぐ來る大切な條...
勿論、これは,盛詞を圭とする演劇::近代劇のための戯曲の場...
劇の如きは必すしもこれにあつからない。::といつたら、歌舞...
はないではないかといふ抗議…が出るにちがひない。が、歌舞伎...
に於ては、その中に、觀客に聽かせるだけの目的にかなふ言葉...
の中で、.いかほど多くの人物が、いかほど多くの言槊をかはし...
目的は、それ以上に出ないからである。しかし近代劇のための...
でもが觀客に聽かせるまへ、かれ自身まつかれの昌囂某を話さ...
士、かれら肩身の言葉をまつ話合はなければいけない。::そし...
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されるのである。 ...
自然さ。 ・
ぬきさしの出來ない自然さ。
.つねに暗示を忘れることの出來ない自然さ。
・:・戯曲の言葉の艱難はかくして盜きるところを知らない。
口 ・
わが國ではじめて「垂詞を主とし把演劇」を提唱しためは森...
たまくしげムみりうちしま
その把めに、先生は、ら玉篋兩浦嶼』を薔かれ、 「日.蓮聖...
替かれ、 『假面』を書かれ、 『靜』を誉かれ、 『生田川...
『玉篋.兩浦嶼』は明治三十五年の十二月に出版された。先生、...
れるのに中古の雅語に遞いものをもちひられ忙。
太郎 なに、浦島の、太郎とな , .
さら拭おんみの、とほつおやに
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.後の太郎
,
やへのしほぢに、こぎいりて
かへらぬひとの、ありどきかずや
げにげに。ことし、天長の
二年を距ること、三百年
すめちみニと
犬泊瀬幼武の、天皇の
みよしろしめす、二十二年
月さやかなる、あきのよに
とほつおやなる、浦島は
ひとり小ぷねを、こぎいでしが
いくひふれども、おほぞらに
雲なく、海に、なみなくして
ひともかへらず、ふねもかへちず
たれいふとなく、わたつみの
かみのみやゐに、ゆきぬとて
けふまでもよの、かたりぐさ。
それをおん身の、とひたまふは。
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太郎 その浦島こそ このおきな。
ずに
おんみはわが黹、たゴならぬ
ふなよそほひはな.にゆゑぞ。
後の太郎(下に居る)
● わが父なりし 浦島らの
とほきえみしを ・フちしより
夲安城の みよさかえ
みっぎするもの 讎化するもの
・ ひきもきらねど もののふの
.あ
・ こムろは聾かずひのもとの
武名をなほも あげんた.め
わだつみこえて と.ほつくにへ
わたらんとこそ おもひ候へ
太郎 おう。いさましや わたつみの
かみのみやこを わがいでしも
おなじこムろよ さりながら
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後の太郎
太郎
おもふは先薩
行ふは
子孫にこそあれ
もとらダ
矧しし
たまをば(地を指す)舟に つみゆきて
総囓をだにをかさざる
いくさのたすけに せらるべし
0
噸
-聖
ー飴物舮、倒「鴫7〜
●
といつね工合にである。
この作について、先生、 「獨逸の從米の戯曲と『日禺前』...
...
本と浦島との距離より大きいとは謂はれない」と語られてゐる...
を主とする演劇」のこの形式と内容とに於てのみなされなかつ...
その時代の批評家たちを狼狽させた。あるものの如きはこれを...
先生の嗤笑を買つた。
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画語塾構篇. ・ ...
『日蓮聖人辻諡法』は明治三十七年の三月蕨炎された。この...
如き,簡素な、清淨な歌舞伎劇::薹詞を童とした歌舞伎劇が出...
...
妙 (笠を取り、呼ぴ掛く)阿朗様、囗朗様。 (R朗...
たなあ。それにしても器はこはれる、油は流れる...
觚でござんする。
日朗 こはれた器、流れた油が、見ればとてなんとな...
妙 (笑ふ)ほんにさうでござんすなあ。おう、路い事...
ぢや程に、妾がさう申したというて、内のを持つ...
「
日朗 盜みて焚きし油にも、永劫身光の報あり。そん...
妙 (笑ふ)それはなんのお經やら。早う寄つて取つ...
・(日朗橋を渡りて去る。妙、暫し見邊りて、下手...
...
善春 (H朗とすれ違ひ橋を渡り來て)妙殿、まだそれ...
じやうみやう
交名に加へられ、今朝より由比ク濱にて、おん試...
刻に遲れんかと、事の果つるを待ちあへず、米町...
跡を慕うてまゐつてござろ。
妙 (萎れたろこなし)そのお志は、よう存じて居りま...
聖人様へ御鑒誓すやうにと・くれぐ輩しましたのを.おん燹...
やと、あなたが仰しやりましたとやら。それからといふも...
かな ...
と父のいひつけ、所詮願は協はぬものと、妾はもう諦念め...
善春 ざてはさやうの譯でおりやるか、たとひ御父上はなんと...
...
此善春は引かぬ所存。必ず氣にばしかけられな。 ...
妙 あなたに逢うて御親切な、そのお詞を聞くうちは争つい末...
目にか亠るまでは、苦勞の繕閼はござんせぬ。妾の心をよ...
くばかり、その御平癒の断願ぢやとて、かうして一人參る...
さい大路ながら、たまたまお目に掛むれまする。・二迸か...
.暹うならぬうち、急いで行つてまゐりませう。
あハたに
(花道へXる。善摩殘げ、心配の思入。老若の群、慌忙し...
「めでたい正月に忌まはしい」などの白ありて、舞蘯に留...
...
善春 さては噂の日蓮が、けふも醗敏に出でたるよな。去年の...
ヒ リ
・ 宗を罵臂すと聞きながら、たノ餘所事に思ひ居りしに、比...
やる。櫓き法師の何事を読くやらん。
(群集又どよめき一、そoや來居つたLと叫ぶ。中には石瓦...
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國語婆術篇
二七二
日巡 (糟笠にて面を掩ひ、橋を渡りて出で、舞痘に留まり、笠...
國に敏の地を拙ひ、目のあたりなる逸樂に、永劫猫せぬ苦...
そのをりをりの節物を、貌ふ心ぞおぞましき。たまたま信...
て、殊勝顔なる笑止さよ。 (群の中より「念佛がなんで笑...
粲の毒に醉うては、その笑止さがわかるまいの。敬の主な...
るを、帷子の里に行脚して、われまのあたりみしことあり...
● の邪法。
雜誌「歌舞伎」の臨時號に發衰された翌月、この作は、歌舞...
た市川八百蔵、主役日蓮に扮し、こ丶に拔きだしたこの「やら...
まくその名調子で亥へ、一部,敏養ある觀客のあひだの評判をと...
□ ...
『プルムウテ』の世に出たのは明治四十二年の一月である。古...
鰡七き復響を描くのに、先生は、淨珊璃風の七五調を基本とす...
...
敵將 (落ちたる冠を拾ひ持ちて、王の妹に)これが后の我...
亀
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我手から受けて下され。 (王の妹ためらふ)
姉の王女 〔王の妹を遮り'て、敵将の前に立つ。敵將と面を見...
ラぢ堕。妾は美しうないのかや。
にゆ
敵將 (氣色霽やかになる)なんどおん身が美しう無からう、美...
さうなが、それとて茨の美しさを添へるばかりで、・邪魔...
女か。ここへ、ここへ。 (妹の王女おそるおそる姉の左に...
.妹の王女 スルグと申しまする。
敵牆(微笑む)おう、おん身も好い子ぢや。 (姉の王女におん身...
某も氣が晴畷すろ。さりながら某は、髪をも焦す口を浴び...
...
務ぢや。ヂξシュクの王宮には、蕾の花の喚くを待ち、青き...
る。おん身二入は、.そこへ遖る。此冠は(冠を取り直す)某...
毒ん身の.頭に加へ申す田
王の妹 (思ひ定めたるさまにて脆き、頭に冠を受く)珠は碑け...
敵將 破れて國を治むるも、碎け.し珠を償ふも、某が手の申に...
姉の王女 (王の妹に)叔母上操。さき程からの御無禮はお許...
...
王の妹 おん身がさきの振舞は、仔紬がなうてはかなはねど、...
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は、思ふ仔細のある事ゆゑ(妃を見ろ)姉上濠もおん身...
妃 何事も國のため、民.のためぢやと思ふわいの。さうに...
事があらうやら。その幼ないスルグまで、 「しよに...
して悲しい辮ぢやわいの。
(姉妹の王女、后の傍に寄る。后二人の肩に手な掛けて...
口
が、先生は、 『玉篋兩浦嶼』の場含のやうに、また『日蓮...
ルム・ウラ』の場合でも、その試みられた丈髏に對して、御黨...
「・:・これも轡いてしまつてみると賊心しない、嫌に古めか...
をさへもらされね。 .
さういはれ忙ことが::すなはち第一作、第二作、第三作と經...
の年の十一月の『靜』になつて、さらに翌年の四月の『生田川...
生、行きつくところへ行きつかれ恒。
そこに現代語が::歔曲の冒葉としての現代語が先生を待つて...
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理代語・:・古代を描くのでもことさら古代語を必要としない...
入らなければ、 「・:・行かしませ」の狂言詞も入らない。 ...
い。様式さへ整へることが出來把ら牛明な現代語が一番い丶。...
も先生は現代語を使用患れたのである。、 、...
口
離 まあ、あなたなんぞも、そんな事を思つて入らつしゃ...
安逹 惣外ですか。
靜 (正直に)ええ。全くo
安逹 さうでせう。都で儲探偵をする。鍛倉では首斬役を...
. ・は無いと思っておいででしたらう。
罅 それをきうでない乏は申しませんわ。'ですけれど、ね...
...
く思ふやうな女だと思つて入らつしやると,それは違つ...
あたしの身の上はどうでせう。思ふお方には別れてし...
て入らつしやるといふことは、先づ覺朿ないのでござ...
ますでせう。そしてこちらへ引かれて參つて、お化粧...
hしまマでセう。それもまあ好いとして、女の子なら助...
戯曲の言,葉 ....
.
●
●
「」
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'
,
國艦…藝配伽醐励 ...
赤さんが男の子で、それを殺されてしまつたのに、ま...
いたしません。尼法師にもなりません。人間ら.しい考...
先に自分で自分を資めなくてはなりますまい。まあ、...
・以上は『靜』のある部分で、時は文治二年九月十六臼、場...
豫前司義縄の妾で、安逑といふのは錐倉方の筑士安達新三郎清...
經にわかれたあと、捕へられて銀倉に逾られ、頼朝のまへで義...
である。
1
母・これはお二人ともお揃で、好うこそお出で下さいました。
茅渟壯士 丁度こなたへまゐらうと存じまして、あの畢張の打...
菟會壯士 和泉のお客と落ち合ひまして。
茅渟壯士 鴨一朋つつ取のましたのを。
菟會壯士 鳶土碓に持つてまゐりました。
〔二人鴨を母の前に出す㌧
,母 まあ、揃ひも揃つた立派な鳥でございま丁ね.、娘。瞬へ...
潴擢堤女はい
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(鴨を取りて、右手へ入る)
茅渟壯士 (菟會壯士に)こなたの母刀自が、立派なと仰やつ...
れはまだあの儘浮いてをりませうかな。
菟會壯士 あの催をりませう。何處から飛んでまゐつたものか...
をのますろ。
母 あの、鵠がゐると仰やいますか。
茅濘壯士 さやうでござります。先程二人で鴨を射ますと、近...
が、直その向うに鵠が一朋立たずに浮いてを㊨ました。小...
ムたつゑ ...
きも、鵠は罅かに波を切つて、二丈ばかり退いたばかりで...
菟會壯士 雪のやうな眞白な、大きな鵠でござります。
母 それはまあ、珍らしい(少し間を置き、思案したる様子にて...
出がましうございますが、あなた方お二人で、その鵠を射...
あて ...
羽。お中なすつたその方を娘の婿に致しませう。
茅渟肚士 につ。これは何よOの仰でござ紅まする。菟會のお方...
菟會壯士 なろ程。御尤な母刀自の仰でござ0ます、わたくしも...
茅渟壯士 かういふ内も心が急く。直にこれから。さあ。
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菟會壯士さあ。
(二人弓を取⑳て立つ。處女、右乎より掛で、魂悔た...
....同時に處女の顔を見、さて同時に目を母の方寵移...
茅渟壯士 後程お目に掛かります。
菟會肚士 後程お目に掛かります。 . ...
母お待申してをのまする。
(二人の壯士、柴の戸を斟で、左手に入る)
以上は『生田川』のある部分で,時はとくに指定してないが、...
屋の里。::二入の男に同時に求愛され、おもひみまつた末、入...
傳論仁取材.し霍作である。
□
が、 『靜』も、 『生田川』も、はじめて世に出牝ときは...
な試み、よくいふものにしてわつかにさういつた、だけだつ忙...
で片附けた、かれらは現代語のその表而にうかぶ現實性だけを...
ノ
にまるつきり關心をも牝なかつ弛のである。先生の、抉して、...
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なかつたことにかれらは氣がつかなかつたのである。
憾士いや、失禮をいた七ましヵ.
夫人 (會繰して)どういたしまして。まことに御無理な...
博士 先日から山ロ君が見えますが。
夫人 實は其事で一寸伺ひましてございます。痰の御檢査...
診察を願ひに參らうと申してをりましたが、どんな工合...
ござますし、いつもと少しも變つた様子はございません...
ならぬ事だと存じますので、それを承りに參りましたの...
...
博士 さやう。御冤蒙つて一服もます。.(朮・上の葉卷を...
お掛けなさいまし。
夫人 恐れ入ります。 (腰を掛く)栞は義理のある弟では...
たより
あればかりを便にいたして、暑中休暇に歸りますのを樂...
. 潔になれば直ると申して、挙氣で大學へも通つてゐるの...
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長くなりますので、宅でも氣遣つてをりますのでござ...
博士 (葉卷に火を附け、椅子に掛く)御尤です。單純な...
夫人 (目かがやく)さやうでございますか。それでは。
博士 熱は少しもありませんし、大して御心配なさるに...
してはならないのです。
夫入 結核ではございますまいか。
、
これは、明治四十二年の四月噛 「プルムウ・7』のあとに...
あるのは杉村茂といふ醫學博士で、失人とあるのはその友人の...
.さをされてゐるのは山口栞といふ文科大學生で、場所は駿河壷...
は現代を描いた作である。・:・そのころの批評家たちのい丶加...
る現代語と,現代を描い拠この作の現代諮とを比較する知慧さへ...
現代諦墜牛明である。::準明なだけいくらでも盗荊としての...
あヤ
曲の言葉としての文がつけられるのである。
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第一作.第コ作㍗第三作と二:气玉篋兩浦嶼』.『日遘聖人辻...
川』と經て來られ紀その先生の辛苦は博識な先生にしてはじ...
●
わねくしは、その辛苦の筋みちをあきらかにするR的ばかちで...
だしい抄出を弑みねのではない。先生の戯曲の中にもられね...
.いかに自然だかといふことを:・・いかに歔曲の言葉の條件...
七
ね郡分でさへが惜みなく物語るであらうからである。 ...
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