岡島昭浩「唐音語存疑」
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岡島昭浩
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唐音語存疑 岡島昭浩 『文献探究』 第25号 1990年3月
はじめに
「唐音語」と呼ばれる語群がある。『言海』の「採収語類別...
漢語を「字音語」と呼び替えることがあるが、これは〈字音...
さて、「和製唐音語」という言い方はないが、「唐音語」で...
漢音呉音と違う音形をとるものには唐音の他に慣用音がある...
しかし語彙研究においては「唐音語」と認定するに際してそ...
以下、「唐音語」である、と言われることのあるものについ...
このような極端なものは除いても、国語学の概説書などにあ...
「唐音語」という場合、さすがに現代中国語によるマージャ...
(1)音の上から中世唐音とも近世唐音とも考えられないもの
(2)中世(以前)から見える語であるのに中世唐音では説明のつ...
(3)呉音漢音であるのに唐音とされたもの
(4)その他
の四章に分けて考察することとする。
まず、考証すべき語を挙げ、その語を唐音語と認定している...
[一]
○「お侠」のキャン(NW)
『日本国語大辞典』では語源説の欄ではなく、項目の下に唐...
ところが「侠」は入声帖韻(三十九転四等、協と同音、胡頬切...
唐音説以外の説を掲げるものをあげると、
『大言海』(『言海』不立項)「きャん(名)■侠■[きんぴら娘...
日置昌一『ものしり事典 言語篇』(河出書房 昭和27年初版...
元禄時代の末から用いられたキホヒという言葉(それは採鉱の...
林甕臣・棚橋一郎『日本新辞林』(明治30年初版 33年9版に...
前田勇『江戸語の辞典』(昭和49年 講談社。講談社学術文庫...
これは人工唐音である可能性もある。「引くは跳ね」や「一...
○榻トン(YN、金沢庄三郎『辞林』、平凡社『大辞典』、山田...
榻は入声盍韻(四十転一等、吐盍切、透母。漢音呉音ともにタ...
〓[土敦]の字音か。平声魂韻、都昆切。Nは項目にこの字を...
○甲板カンパン(YKIN、林史典「日本における漢字」『岩波...
甲所(Y)、甲高い、甲乙 甲バシル(O)
甲は入声狎韻、古狎切。『聚分韻略』の唐音カ、『磨光韻鏡...
『大言海』では、
甲かふノ音便ナリ…かうノかんトナレルナリ庚申(カウシン)ヲ...
○納戸ナンド(YKI『国語学大辞典』「漢語」(森岡健二氏))
納は入声合韻(三十九転一等、奴答切。漢音ダフ呉音ナフ。『...
○橘飩キントン(IT、Qでは「京飩、金団、金段、経飩、橘飩...
これも入声字で、この字に唐音キンがあるとは考えられない。
『大言海』橘飩きっとんの転とし、浜田敦氏は「入声音の撥...
『守貞漫稿』二十八編食類「金団 きんとんと字音に云也」...
○四百八十寺シン(Y)
以上の項まではこの字は入声なのでン韻尾を持つはずがない...
また、小川氏によれば、敦煌資料で「十」をシムと読むのは...
「南朝四百八十寺」の「十」をシンと読むのは同化ではない...
○黄絹ホッケン(Y)『言海』「字ノ唐音。或云福建(ホクケン)ヨ...
黄は、もちろん入声ではなく、唐音でも促音に読まれる根拠...
○踐〓[心乍]・天〓[心乍]・重〓[心乍]センソ・テンソ・チョウ...
「〓[心乍]」は入声鐸韻、在各切だが、意味上、「祚」(去声...
『黒本本節用集』の「踐〓[心乍]」を除いて他は正しく作る...
[二]
例えば「湯婆」をタンポと読むのは近世唐音の特徴である。...
○強盗ガンドウ(NQ)他に『新明解古語辞典』、『小学館古語大...
初出は『色葉字類抄』、前田本は「強」に去声、「盗」に上...
「強」は平声陽韻、中世唐音ならばヤウ型を取る(『聚分韻略...
『角川古語大辞典』は「転音」と記す。
『大言海』がうだうノ転、五調(ガンデウ)に、強盛(ガンジヤ...
○龍膽リンダウ(YO、『言海』、Uの第三部第三章でも唐音と...
龍の属する通摂は中世唐音でもンをとることがあるのだが、...
『大言海』では「強盗がんだう庚申かんしんノ類」とするが...
強盗ガンダウ 龍膽リンダウ
強盛ガンジョウ 誦ズンず 冷泉レンゼイ 従者ズンザ
濫僧ラウソウ 困コウず 柑子カウシ 御覧ゴラウず
臨時リウジ 喧噪ケウサウ 勘事カウジ
判官ハウグワン 林檎リウコウ 輪鼓リウコ 乱ラウがはし
半靴ハウクワ 讒言サウケン 反故ハウグ 郡家クウケ
天気テイケ
紺屋コウヤ 宣耀殿セイエウデン 仁和ニイワ
昆明池コウメイチ 椀飯ワウバン 潅仏クワウブツ
勘文カウモン 面目メイボク
見参ゲンザウ 無慙ムザウ
以上のように、ダ行の前ではンになり、ザ行の前では揺れ、ガ...
いずれにせよ龍膽リンダウは唐音によるものではなく、リウ...
○鴨脚(SDQ3)・銀杏(YMW、U第三部第三章)イチヤウ
イチョウは鴨脚の中国音ヤーチャオの訛ったものであると説...
ところが、日本に渡ってきた音を見るに、中世唐音では精母...
なお銀杏の唐音の訛という説も、新村氏が黒川春村『碩鼠漫...
ギンナンと比較して、ギンより新しい形と思えるインと、ア...
また、新村氏も言うようにキャウからチャウへの変化が考え...
もちろん、一葉が語源でないことは、開合混乱以前の資料に...
[三]
○洗衣セイエ(Y)
「洗」は、広韻、上声薺韻、先礼切。漢音セイ、呉音サイと...
○居諸キシヨ(F)
広韻、平声之韻、居之切。姫と同音。韻鏡八転三等。助字。...
○向秀シヤウジウ(F)
広韻 去声漾韻、式亮切。餉と同音。中国近世語になってか...
○捺落ナラク(F)
仏教語。音訳語の場合、入声韻尾がない形で読まれるのは常...
○杜撰(O)
大修館『新漢和辞典』、岩垂憲徳『漢字声音談』昭和18年、...
撰には広韻で上声〓[犬爾]韻、士免切、述也定也持也、の他...
○荼毘(H)
呉音。なぜこれを唐音語にあげたのか不明である。
[四]
○急焼キビショウ(Y)
N「急焼」の唐宋音「きゅうしゃ」の変化した語。林大『言...
『広辞苑』、『三省堂大辞林』、『講談社日本語大辞典』。
Y支那語キプショウ(急焼)を訛ったもの。
村瀬栲亭『藝苑日渉』今人呼小茶瓶云急備焼。即急須也。須...
橘守部『俗語考』かゝる字音は南京をナンキンと云類の唐音...
松井羅州『它山石』キフシユの音が転じてキビシヨとなりた...
大槻文彦「若干語の語原」国学院雑誌大正4年「福建の音キビ...
唇内入声がまだ-pとして残っている段階の音から転訛した...
○祥瑞ションズイ(YO)『大言海』『大日本国語辞典』
「祥」は平声陽韻、似羊切。中世唐音ならシヤウ(『聚分韻略...
○法被ハッピ(YKI)
唐音において時折「石灰シックイ」「竹篦シッペイ」「直歳...
一方、小松英雄氏によると(注22)、「新来の宋音とは一応無...
この「法被」などのように舌内入声以外の入声が促音になっ...
「法被」の場合は『禅林象器箋』に見えることから、〈唐音...
さらに今で言う意味のこの「ハッピ」という語は新村出「法...
[五]
以上、いくつかの「唐音語」について、その唐音ならざるこ...
(注1)鈴木修次『漢語と日本人』(昭和53年みすず書房)には見え...
(注2)「唐音」自体は漢音呉音と同型であっても「唐音」である...
(注3)漢音呉音唐音である、というのは〈中国原音に基づく〉と...
(注4)例えば、新井白蛾『闇のあけぼの』「世俗の悪き事は何に...
(注5)ハイを「灰」の字音と見たり、火を「輝」などの字音と関...
(注6)有坂秀世「唐音を弁ずる詞と韻目を暗誦する詞」『国語音...
(注7)浜田敦「促音と撥音」『国語史の諸問題』(昭和61年和泉...
(注8)小川環樹「南朝四百八十寺の読み方-音韻同化assimilati...
(注9)高田時雄『敦煌資料による中国語史の研究-九・十世紀の...
(注10)有坂秀世「諷経の唐音に反映した鎌倉時代の音韻状態」...
(注11)(注10)の奥村三雄「喉内韻尾の国語化」
(注12)吉沢義則『国語史概説』(昭和6年初版同年再版本では65...
(注13)用例は、奥村三雄「韻尾国語化について」「説林」3-1昭...
(注14)藤堂明保「ki-とtsi-の混同は18世紀に始まる」『中国語...
(注15)尾崎雄二郎「大英博物館本蒙古字韻札記」『中国音韻史...
(注16)有坂秀世「諷経の唐音に反映した鎌倉時代の音韻状態」...
(注17)奥村三雄「古代の音韻」『講座国語史2音韻史・文字史』...
(注18)大槻文彦「国語語原考第五回」国学院雑誌26巻3号も同じ。
(注19)河野六郎「中国音韻史研究の一方向-第一口蓋音化に関...
(注20)佐藤武義「中世文化と唐音」『漢字講座6中世の漢字とこ...
(注21)-p,-t,-kという閉鎖が古くのようにフ、ツ・チ、ク・キ...
(注22)小松英雄「日本字音における唇内入声韻尾の促音化と舌...
(注23)いわゆる「慣用音」研究においてもこのことは考えにい...
参考文献
D藤堂明保『漢字の知恵-その生立ちと日本語-』昭和40年初...
D2藤堂明保『漢語と日本語』昭和44年初版48年5版による。
F藤原浩史「唐音一覧」『漢字講座6中世の漢字とことば』昭...
H外間守善・佐川誠義『日本言語学要説』朝倉書店昭和59年の...
I岩淵悦太郎『国語概説』学芸図書昭和23年初版31年9版による。
K『国語史辞典』「唐音(唐宋音)」の項(京極興一)昭和54年初...
M『時代別国語大辞典室町時代編』
N『日本国語大辞典』小学館縮刷初版による。
O大槻文彦「外来語原考」「学芸志林」14巻
Q中山久四郎「唐音考続編」「史学雑誌」29-11
Q2中山久四郎「唐音十八考」「東京文理科大学文科紀要」第三
Q3中山久四郎「唐音語の研究と其実例五則」『支那史籍上の日...
S鈴木真喜男・長尾勇『新編国語要説』学芸図書昭和54年初版5...
T東条操『国語学新講』筑摩書房昭和40年初版44年6刷による。
U湯沢質幸『唐音の研究』勉誠社昭和62年初版による。
W『岩波古語辞典』
Y山田孝雄『国語の中に於ける漢語の研究』昭和15年初版同年...
『聚分韻略』の唐音は奥村三雄『聚分韻略の研究』の慶長壬子...
-京都府立大学女子短期大学部講師-
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唐音語存疑 岡島昭浩 『文献探究』 第25号 1990年3月
はじめに
「唐音語」と呼ばれる語群がある。『言海』の「採収語類別...
漢語を「字音語」と呼び替えることがあるが、これは〈字音...
さて、「和製唐音語」という言い方はないが、「唐音語」で...
漢音呉音と違う音形をとるものには唐音の他に慣用音がある...
しかし語彙研究においては「唐音語」と認定するに際してそ...
以下、「唐音語」である、と言われることのあるものについ...
このような極端なものは除いても、国語学の概説書などにあ...
「唐音語」という場合、さすがに現代中国語によるマージャ...
(1)音の上から中世唐音とも近世唐音とも考えられないもの
(2)中世(以前)から見える語であるのに中世唐音では説明のつ...
(3)呉音漢音であるのに唐音とされたもの
(4)その他
の四章に分けて考察することとする。
まず、考証すべき語を挙げ、その語を唐音語と認定している...
[一]
○「お侠」のキャン(NW)
『日本国語大辞典』では語源説の欄ではなく、項目の下に唐...
ところが「侠」は入声帖韻(三十九転四等、協と同音、胡頬切...
唐音説以外の説を掲げるものをあげると、
『大言海』(『言海』不立項)「きャん(名)■侠■[きんぴら娘...
日置昌一『ものしり事典 言語篇』(河出書房 昭和27年初版...
元禄時代の末から用いられたキホヒという言葉(それは採鉱の...
林甕臣・棚橋一郎『日本新辞林』(明治30年初版 33年9版に...
前田勇『江戸語の辞典』(昭和49年 講談社。講談社学術文庫...
これは人工唐音である可能性もある。「引くは跳ね」や「一...
○榻トン(YN、金沢庄三郎『辞林』、平凡社『大辞典』、山田...
榻は入声盍韻(四十転一等、吐盍切、透母。漢音呉音ともにタ...
〓[土敦]の字音か。平声魂韻、都昆切。Nは項目にこの字を...
○甲板カンパン(YKIN、林史典「日本における漢字」『岩波...
甲所(Y)、甲高い、甲乙 甲バシル(O)
甲は入声狎韻、古狎切。『聚分韻略』の唐音カ、『磨光韻鏡...
『大言海』では、
甲かふノ音便ナリ…かうノかんトナレルナリ庚申(カウシン)ヲ...
○納戸ナンド(YKI『国語学大辞典』「漢語」(森岡健二氏))
納は入声合韻(三十九転一等、奴答切。漢音ダフ呉音ナフ。『...
○橘飩キントン(IT、Qでは「京飩、金団、金段、経飩、橘飩...
これも入声字で、この字に唐音キンがあるとは考えられない。
『大言海』橘飩きっとんの転とし、浜田敦氏は「入声音の撥...
『守貞漫稿』二十八編食類「金団 きんとんと字音に云也」...
○四百八十寺シン(Y)
以上の項まではこの字は入声なのでン韻尾を持つはずがない...
また、小川氏によれば、敦煌資料で「十」をシムと読むのは...
「南朝四百八十寺」の「十」をシンと読むのは同化ではない...
○黄絹ホッケン(Y)『言海』「字ノ唐音。或云福建(ホクケン)ヨ...
黄は、もちろん入声ではなく、唐音でも促音に読まれる根拠...
○踐〓[心乍]・天〓[心乍]・重〓[心乍]センソ・テンソ・チョウ...
「〓[心乍]」は入声鐸韻、在各切だが、意味上、「祚」(去声...
『黒本本節用集』の「踐〓[心乍]」を除いて他は正しく作る...
[二]
例えば「湯婆」をタンポと読むのは近世唐音の特徴である。...
○強盗ガンドウ(NQ)他に『新明解古語辞典』、『小学館古語大...
初出は『色葉字類抄』、前田本は「強」に去声、「盗」に上...
「強」は平声陽韻、中世唐音ならばヤウ型を取る(『聚分韻略...
『角川古語大辞典』は「転音」と記す。
『大言海』がうだうノ転、五調(ガンデウ)に、強盛(ガンジヤ...
○龍膽リンダウ(YO、『言海』、Uの第三部第三章でも唐音と...
龍の属する通摂は中世唐音でもンをとることがあるのだが、...
『大言海』では「強盗がんだう庚申かんしんノ類」とするが...
強盗ガンダウ 龍膽リンダウ
強盛ガンジョウ 誦ズンず 冷泉レンゼイ 従者ズンザ
濫僧ラウソウ 困コウず 柑子カウシ 御覧ゴラウず
臨時リウジ 喧噪ケウサウ 勘事カウジ
判官ハウグワン 林檎リウコウ 輪鼓リウコ 乱ラウがはし
半靴ハウクワ 讒言サウケン 反故ハウグ 郡家クウケ
天気テイケ
紺屋コウヤ 宣耀殿セイエウデン 仁和ニイワ
昆明池コウメイチ 椀飯ワウバン 潅仏クワウブツ
勘文カウモン 面目メイボク
見参ゲンザウ 無慙ムザウ
以上のように、ダ行の前ではンになり、ザ行の前では揺れ、ガ...
いずれにせよ龍膽リンダウは唐音によるものではなく、リウ...
○鴨脚(SDQ3)・銀杏(YMW、U第三部第三章)イチヤウ
イチョウは鴨脚の中国音ヤーチャオの訛ったものであると説...
ところが、日本に渡ってきた音を見るに、中世唐音では精母...
なお銀杏の唐音の訛という説も、新村氏が黒川春村『碩鼠漫...
ギンナンと比較して、ギンより新しい形と思えるインと、ア...
また、新村氏も言うようにキャウからチャウへの変化が考え...
もちろん、一葉が語源でないことは、開合混乱以前の資料に...
[三]
○洗衣セイエ(Y)
「洗」は、広韻、上声薺韻、先礼切。漢音セイ、呉音サイと...
○居諸キシヨ(F)
広韻、平声之韻、居之切。姫と同音。韻鏡八転三等。助字。...
○向秀シヤウジウ(F)
広韻 去声漾韻、式亮切。餉と同音。中国近世語になってか...
○捺落ナラク(F)
仏教語。音訳語の場合、入声韻尾がない形で読まれるのは常...
○杜撰(O)
大修館『新漢和辞典』、岩垂憲徳『漢字声音談』昭和18年、...
撰には広韻で上声〓[犬爾]韻、士免切、述也定也持也、の他...
○荼毘(H)
呉音。なぜこれを唐音語にあげたのか不明である。
[四]
○急焼キビショウ(Y)
N「急焼」の唐宋音「きゅうしゃ」の変化した語。林大『言...
『広辞苑』、『三省堂大辞林』、『講談社日本語大辞典』。
Y支那語キプショウ(急焼)を訛ったもの。
村瀬栲亭『藝苑日渉』今人呼小茶瓶云急備焼。即急須也。須...
橘守部『俗語考』かゝる字音は南京をナンキンと云類の唐音...
松井羅州『它山石』キフシユの音が転じてキビシヨとなりた...
大槻文彦「若干語の語原」国学院雑誌大正4年「福建の音キビ...
唇内入声がまだ-pとして残っている段階の音から転訛した...
○祥瑞ションズイ(YO)『大言海』『大日本国語辞典』
「祥」は平声陽韻、似羊切。中世唐音ならシヤウ(『聚分韻略...
○法被ハッピ(YKI)
唐音において時折「石灰シックイ」「竹篦シッペイ」「直歳...
一方、小松英雄氏によると(注22)、「新来の宋音とは一応無...
この「法被」などのように舌内入声以外の入声が促音になっ...
「法被」の場合は『禅林象器箋』に見えることから、〈唐音...
さらに今で言う意味のこの「ハッピ」という語は新村出「法...
[五]
以上、いくつかの「唐音語」について、その唐音ならざるこ...
(注1)鈴木修次『漢語と日本人』(昭和53年みすず書房)には見え...
(注2)「唐音」自体は漢音呉音と同型であっても「唐音」である...
(注3)漢音呉音唐音である、というのは〈中国原音に基づく〉と...
(注4)例えば、新井白蛾『闇のあけぼの』「世俗の悪き事は何に...
(注5)ハイを「灰」の字音と見たり、火を「輝」などの字音と関...
(注6)有坂秀世「唐音を弁ずる詞と韻目を暗誦する詞」『国語音...
(注7)浜田敦「促音と撥音」『国語史の諸問題』(昭和61年和泉...
(注8)小川環樹「南朝四百八十寺の読み方-音韻同化assimilati...
(注9)高田時雄『敦煌資料による中国語史の研究-九・十世紀の...
(注10)有坂秀世「諷経の唐音に反映した鎌倉時代の音韻状態」...
(注11)(注10)の奥村三雄「喉内韻尾の国語化」
(注12)吉沢義則『国語史概説』(昭和6年初版同年再版本では65...
(注13)用例は、奥村三雄「韻尾国語化について」「説林」3-1昭...
(注14)藤堂明保「ki-とtsi-の混同は18世紀に始まる」『中国語...
(注15)尾崎雄二郎「大英博物館本蒙古字韻札記」『中国音韻史...
(注16)有坂秀世「諷経の唐音に反映した鎌倉時代の音韻状態」...
(注17)奥村三雄「古代の音韻」『講座国語史2音韻史・文字史』...
(注18)大槻文彦「国語語原考第五回」国学院雑誌26巻3号も同じ。
(注19)河野六郎「中国音韻史研究の一方向-第一口蓋音化に関...
(注20)佐藤武義「中世文化と唐音」『漢字講座6中世の漢字とこ...
(注21)-p,-t,-kという閉鎖が古くのようにフ、ツ・チ、ク・キ...
(注22)小松英雄「日本字音における唇内入声韻尾の促音化と舌...
(注23)いわゆる「慣用音」研究においてもこのことは考えにい...
参考文献
D藤堂明保『漢字の知恵-その生立ちと日本語-』昭和40年初...
D2藤堂明保『漢語と日本語』昭和44年初版48年5版による。
F藤原浩史「唐音一覧」『漢字講座6中世の漢字とことば』昭...
H外間守善・佐川誠義『日本言語学要説』朝倉書店昭和59年の...
I岩淵悦太郎『国語概説』学芸図書昭和23年初版31年9版による。
K『国語史辞典』「唐音(唐宋音)」の項(京極興一)昭和54年初...
M『時代別国語大辞典室町時代編』
N『日本国語大辞典』小学館縮刷初版による。
O大槻文彦「外来語原考」「学芸志林」14巻
Q中山久四郎「唐音考続編」「史学雑誌」29-11
Q2中山久四郎「唐音十八考」「東京文理科大学文科紀要」第三
Q3中山久四郎「唐音語の研究と其実例五則」『支那史籍上の日...
S鈴木真喜男・長尾勇『新編国語要説』学芸図書昭和54年初版5...
T東条操『国語学新講』筑摩書房昭和40年初版44年6刷による。
U湯沢質幸『唐音の研究』勉誠社昭和62年初版による。
W『岩波古語辞典』
Y山田孝雄『国語の中に於ける漢語の研究』昭和15年初版同年...
『聚分韻略』の唐音は奥村三雄『聚分韻略の研究』の慶長壬子...
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