時枝誠記『日本文法 口語篇』
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日本文法口語篇
[[時枝誠記]]著
岩波全書114
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はしがき
日本語は非常にむづかしい言語のやうに思はれ、また云はれ...
3
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はしか巻
のやうな不安を裏書きすることにもならないとは限らない。し...
日本語について、結論的な文法書が出てゐないといふことは...
今日、文法學の基礎知識は、日本語についてよりも、むしろ...
4
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ばしかき
の文法は、日本語そのものに即して觀察されないかぎり、正し...
右のやうな考へは、また次に述べる日本語は變則的、例外的...
5
---------------------[End of Page 5]---------------------
はしがき
いのである。明治以後の文法研究者の惱みはそこにあつた。最...
私の見るところでは、その基礎的構造の理論をつかみ得るな...
6
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比して、比較的簡明な文法を持つた言語であると云ふことが...
今日の日本文法學は、その組織の末節にある異同を改めたり...
ちなみに、本書に用ゐた學術用語は、殆ど古來の使用と現在...
7
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9
ぱしが
概念内容を改めて行くことに力を注いで、努めて薪造語を避け...
以上のやうな理由に基づいて、本書では、日本文法の組織の...
また、本書に用ゐた「かなづかひ」については、私は「現代...
(一) 國語審議會答申の「現代かなづかい」について(國語と...
(二) 國語假名づかひ改訂私案(國語と國文學 第二十五卷第...
8
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目次
はしがき
第一章 総論
日本文法學の由來とその日的
文法學の對象
言語の本質と言語に於ける單位的なもの(一)
言語の本質と言語に於ける單位的なもの(二)
文法用語
用言の活用と五士音圖及び現代かなづかい
第二章 語論
総説
イ 言語に於ける單位としての語
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ロ 語の構造
ハ 語の認定
二 語の分類 詞と辭
三 詞
總説
體言と名詞
代名詞(一)
代名詞(二)
形式名詞と形式動詞
動詞
形容詞
動詞の派生語 自動・他動 受身 可能 敬讓 使役
形容詞
いはゆる形容動詞の取扱ひ方
連體詞と副詞
接頭語と接尾語
結
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四 辭
總説
接續詞
感動詞
助動詞
指定の助動詞 だ
指定の助動詞 ある
打消の助動詞 ない
打消の助動詞 ぬ
打消の助動詞 まい
過去及び完了の助動詞 た
意志及び推量の助動詞 う よう
推量の助動詞 だらう
推量の助動詞 らしい
推量の助動詞 べし
敬譲の助動詞 ます です ございます でございます
助詞
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總説
格を表はす助詞
限定を表はす助詞
接續を表はす助詞
感動を表はす助詞
第三章 文
一 總説
二 詞と辭との意味的關係
三 句と入子型構造(こ
四 句と入子型構造(二)
五 用言に於ける陳述の表現
六 文の成分と格
總説
述語格と主語格
述語格と客語、補語、賓語格
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修飾語格
對象語格
獨立語格
第四章 文章論
総説
文の集合と文章
文章の構造
文章の成分
文章論と語論との關係
その他の諸問題
索引
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第一章 總論
日本文法學の由來とその目的
早總 論
日本文法がどのやうなものであり、また日本文法研究がどの...
今日見るやうな日本文法の研究は、江戸時代末期に、オラン...
當時輸入された外國の文法書は、學問的な文法研究書といふ...
1
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一 日本文法學の由來きその目的
のであつた。即ち、文法書は、國語の、特に文語の讀解と表現...
日本文法の全面的な組織と體系化は、右に述べたやうに、外...
2
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論
第一章總
あつた。何となれば、古典の言語は、現代に於いては意味不通...
3
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一 日本文法學の由來とその目的
現代に於ては、口語文が一般に行はれて文語文は甚だ稀にし...
博士は、口語文法の教授を以て、文語文法に入る階梯準備と...
廣く國語教育の立場から見れば、文法の知識は、我が國語の...
口語法の教授は、言語の表現、理解のためといふ實用的見地...
4
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第一一章總
昭和六年の教授要目にある「文法ノ教授ニ於テハ國語ノ特色ヲ...
國語教育といふ立場だけからでなく、一般に教育といふ立場か...
文法科の任務を、ただ國語についての認識を高めるばかりで...
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Pt 日オ・文法學の由來とそのll的
普通教育に於ける文法科は、以上述べたやうに、文化現象と...
文法學は、確かに人間の精神や文化を研究する學問の一つで...
6
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第一章 總論
の形態は、人間一生の生活を通じて、片時も離れることの出來...
口語法の教授に、實用的見地が否定されるやうになつたのは...
7
---------------------[End of Page 21]---------------------
一 日本文法離の由褒とその目的
または文法書の組織といふものは如何にあらねばならないかと...
學校教育に於いて、文法學科を研究的に、開發的に行ひ、生...
---------------------[End of Page 22]---------------------
録一章總
由が考へられる。その一は、言語現象は自然現象と異なり、極...
以上のやうな理由によつて、學校教育に於ける文法科は、生...
9
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一 日ズ文注攣の由來とその口的
があることを理解するならば、當然のことであると云はなけれ...
私は余り文法學の教育的な面ばかりを述べ過ぎたやうである...
文法學とその實用的意義との交渉は、單に文法學の理論が、...
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私は本書に於いて、以上述べたやうな文法學の體系を組織す...
(一) 『新文典別記初年級用』の新文典編纂の趣意及び方針...
(二) 『國語學と國語教育』(岩波講座 國語教育、橋本博士...
(三) 同上書
呂 文法學の對象
第一章總論
文法學は、言語の事實全般を研究對象とする言語學の一分科...
---------------------[End of Page 25]---------------------
=二 女法ξ}fの麥㌃象
を研究するものであるのか。文法學の對象が、文法であるとす...
文法を以て、言語構成に關するすべての法式、または通則と...
すべて言語構威の法式又は通則を論ずるのが文法又は語法であ...
事實、文法研究の中に、音聲組織の研究や語源研究をも含め...
右のやうな説に對して、山田孝雄博士は、文法學の概念を限...
12
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られる。
これ(筆者註、文法學を指す)は語の性質、運用等を研究する部...
即ち文法學は、語の研・究に限定されることになるのである。...
語の相互間の關係を規定する法則をさして語法といふ。(三)
といはれたのは、山田博士の意味するところと大體同じである...
このやうな語及び語の相互關係の研究に對して、文字或は音...
以上述べたところによつて、文法研究の對象が、言語の要素...
13
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二文注堵の對象
音聲論、意味論などと異なり、言語自身を一體として、それの...
(一) 『國語學概論』(橋本進吉博士著作集 第一巻 二九頁)
(二) 『日本文法學概論』一五頁
(三) 『國語學通考』二九五頁
三 言語の本質と言語に於ける單位的なもの(一)
言語の本質が何であるかといふ言語本質觀には、今日、全く...
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論
第一章總
てゐる。その一は、言語は思想と音聲或は文字が結合して出來...
---------------------[End of Page 29]---------------------
嘗 言語の木質と言語に於ける單位伽なもの(一)
て言語から、音聲と思想との二要素が抽出される。音聲を更に...
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章總
言語構成觀の當然の結論であると見ることが出來るのである。
言語構成觀は、既に述べたやうに、自然科學的物質構成觀か...
次に擧げるところの言語観は、言語を人間が自己の思想を外...
言語過程觀は、日本の古い國語研究の中に培はれた言語本質...
一 言語は思想の表現であり、また理解である。思想の表現...
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三言語の本質と言語に於ける甲位的なもの(一)
が言語であると考へるのである。
ニ 思想の表現がすべて言語であるとはいふことが出來ない...
三 言語は、從つて人間行爲の一に屬する。言語を行爲する...
四 言語が人間的行爲であり、思想傳達の形式であるといふ...
五 構成的言語觀で、言語の構成要素の一と考へられてゐる...
18
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一章總
六 構成的言語觀で、言語の構成要素と考へられてゐる音聲...
七 言語は、常に言語主體の目的意識に基づく實踐的行爲で...
八 言語を實踐する言語主體の立場を主體的立場といび、言...
九 言語の觀察者が、他の言語主體によつて生産された言語...
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四 言語の本質と磊語に於ける1'i;位的なもの`二)
一〇 言語研究者の觀察の對象となるのは、常に特定個人の...
以上は、言語過程觀の最も根本的な言語に對する考方であつ...
(一) 『國語學原論』三九頁
四 言語の本質と言語に於ける單位的なもの(二)
言語構成觀に對立する言語過程觀の概略は、以上述べたやう...
---------------------[End of Page 34]---------------------
第一章總論
言語の究極的單位として單語を考へ、單語を基本とし、出發點...
一 語
二 文
三 文章
ここにいふ語及び文は、從來の文法研究に於いて取扱はれた...
今、この三つのものを文法研究の單位と稱する時、ここに用...
---------------------[End of Page 35]---------------------
四 言語の本質と言語に於ける單位的なもの(二)
にして置くことは、右の對象設定の推論を明かにする上に有效...
一般に、語が言語に於ける單位であると云はれる場合と、私...
---------------------[End of Page 36]---------------------
第…章綜
それぞれに書籍の單位として取扱ふのと同様に考へることが出...
語と文とを言語研究の對象とすることは、從來の文法學に於...
文章が、今日専ら修辭法の問題として取上げられてゐること...
---------------------[End of Page 37]---------------------
四 言語の捧質と毒語に及ける軍位的なものに⇒
の立場から論ぜられたのと同じである。規範を論ずるには、そ...
文章を對象として研究することは、一個の教材をそれ自身一...
ここで再び最初の文法學の對象は何であるかの問題に立返つ...
---------------------[End of Page 38]---------------------
の間に存する法則を明かにする學問であつて、同じく言語研究...
以上のやうな單位設定の方法に對して、著しい對照をなすも...
25
---------------------[End of Page 39]---------------------
四 言語の本質と昆語に於ける單位的なもの(二)
たのである。しかしながら、自然科學的な單位の概念を、言語...
設定することに既にそれが現れて居る。山田孝雄博士が、語を...
單位とは分解を施すことを前提としたる觀念にしてその分解...
といはれる時、その單位の意味は、正に原子論的單位の意味で...
單語とは語として分解の極に逹したる單位にして(二)
といはれる時は、既に「語として」といふ質的統一體としての...
語といふは思想の發表の材料として見ての名目にして、文と...
---------------------[End of Page 40]---------------------
の名目なり(三)
といふやうに説明して居られるのであるが、文の中の語が、思...
(一) [[『日本文法學概論』>山田孝雄『日本文法学概論』]]二...
(二) 『改訂版日本文法講義』九頁
(三) 『日本文法學概論』二〇頁
五 文法用語
今日文法學上用ゐられてゐる用語には、體言、用言、係《か...
---------------------[End of Page 41]---------------------
五文法用語
ーロッパ諸國語特にオランダ、イギリス文法の用語の飜譯に基...
---------------------[End of Page 42]---------------------
第一章總
戒める必要があると思ふのである。ただここで注意したいこと...
今日の文法用語の大部分が、外國文典の飜譯に起原するもの...
次に、現在の私の見解に基づいて、問題とすべき文法上の用...
一 形容詞
---------------------[End of Page 43]---------------------
五女浤用語
本來、adjective或はattributiveの譯語として出來たもので...
イ 美しい鳥
ロ 飛ぶ鳥
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第一章總
イの美しいが形容詞と呼ばれるならば、ロの飛ぶも當然形容詞...
---------------------[End of Page 45]---------------------
五交法用語
二 助動詞
この品詞名も今日廣く行はれてゐるものであるが、その起源...
助動詞ハ、動詞ノ活用ノ、其意ヲ盡サヾルヲ助ケムガ爲ニ、...
これは全く、英文法などの概念に從つて、動詞の意義を補助...
32
---------------------[End of Page 46]---------------------
ゴリーに所屬させたために、これらの語の眞義が全く忘れ去ら...
本書では、助動詞の眞義を古來のてには研究の中に求めて、...
---------------------[End of Page 47]---------------------
五 〕文 ξ去 /lj 語
し適切な名稱を求めるとするならば、動辭、活用あるてには、...
代名詞の名稱とその内容についても問題とすべきことが多い...
文節の名稱も、橋本進吉博士の提唱以來、國定教科書などに...
(一) 明治三十一年三月、『復軒雜纂』に收む。
(二) 富士谷成章の『|裝《よそひ》圖』に於いては|状《さ...
34
---------------------[End of Page 48]---------------------
第一章總
六 用言の活用と五十音圖及び現代かなづかい
五十音圖はもと梵語學の影響の下に作られた國語の音韻表で...
近世以來、五十音圖が國語の活用現象をよく説明するところ...
---------------------[End of Page 49]---------------------
六 用言の活用と五十昔圖及び現代かなづかい
定されてゐるのである。しかし、この音圖が假名で書かれるや...
---------------------[End of Page 50]---------------------
第一章鮒
つたのである。活用について、ハ行四段活用などと云はれてゐ...
國語を純然たる表音主義によつて記載しようとする場合には...
「現代かなづかい」は、その根本方針として、國語の表音主...
今試みに現代語の音韻文字表を作製して見ると別表のやうに...
37
---------------------[End of Page 51]---------------------
考 備 行段
節 音 韻 母
及書の互の尾語中語はげるれらゐ用に◎の詞助び るれらゐ用に...
τb ま は な た さ か や わは あ
ら ま は な た さ か や わは あ
に昔の守の尾語中語はび 鹽〕 るれらゐ用 リ ミ ヒ 二 ...
り み ひ に ち し き おひ
り み ひ に ち し き い
丿レ ム フ ヌ ツ ス ク 工 ウ
る む ふ ぬ つ す く ゆ うふ
る む ふ ぬ つ す く ゆ う
〔 「るれらゐ用に己の詞助は...
れ ・め へ ね て せ け えゑへ
れ め へ ね て せ け えへ
るれらゐ用に包の詞跏堰i 口 モ ホ ノ ト ソ コ ヨ オ
ろ も ほ の と そ こ よ おをほ
ろ も ほ の と そ こ よ おを
五十音圖による音韻と文字との對照表
---------------------[End of Page 52]---------------------
第一章總
表の解説
一 表に於いて、片假名は音韻を表はし、平假名は、その音...
二 〔ア〕〔ワ〕〔ヤ〕三行の音は、これを母韻と認めて、...
三 右のやうに整理することによつて、〔ア〕行と〔ワ〕行...
四 〔ア〕〔ワ〕〔ヤ〕三行の音は母韻であるから、〔カ〕...
ことも許されるのである。例へば、〔カ〕は、〔キャ〕或は〔...
五 音韻に相當する假名は、歴史的假名づかひの場合を上段...
---------------------[End of Page 53]---------------------
六 用言の活用と五十普厨及び現代かなイかい
を下段に置いて示した。
表について見れば明かなやうに、歴史的かなづかひに於いて...
---------------------[End of Page 54]---------------------
論
第一章總
活用はワ行四段活用となり、次のやうに活用する。
思う ーわ ーい ーう ーえ
問題は意志の表現「思はう」(現代かなづかいは、「思おう」...
---------------------[End of Page 55]---------------------
六 用言の活用と五十言圖及び現代かなづかい
う」といふ語句から、記載のままに活用形を抽出することは困...
次に第二の方法は、「書いて」の「書い」を一個の別の活用...
42
---------------------[End of Page 56]---------------------
もおう」の「う」は長音記號であつて助動詞ではないが、歴史...
四段活用の未然形に意志を表わす助動詞が附いた場合はこれ...
書か-意志の助動詞……書こう
買わ-意志の助動詞……買おう
(この三行は「現...
43
---------------------[End of Page 57]---------------------
第二章語論
總説
イ 言語に於ける單位としての語
總論に於いて述べたやうに、本書に於いては、語を文及び文...
語を單位として認定することに關しては、右に述べたことと...
---------------------[End of Page 58]---------------------
論
第二章語
文法研究の直接の對象は言語にありといふ、その研究の基礎...
とし、この疑問を次のやうに解決しようとされた。
語といふは思想の發表の材料として見ての名目にして、文と...
この考方は、材料とその運用の關係に於いて、語と文との相...
本書の基調とする言語過程觀に從ふならば、語は思想表現の...
---------------------[End of Page 59]---------------------
の單位の性質にどのやうな相違があるかといふことでなければ...
語に對する考方の第二は、語は文の分析によって得られる究...
單語とは語として分解の極に逹したる單位にして、ある觀念...
とあるのはその一例である。
その第三は、單語を以て、文節から歸納、抽出されたもので...
實際に物を言う場合には、文節以上に短く句切って發音する...
櫻が 咲く。
櫻を 植える。
見渡す 限り 櫻です。
---------------------[End of Page 60]---------------------
第二章語
この三つの文における「櫻が」「櫻を」「櫻です」という文...
以上いづれの考方に從つても、單語は、言語の主體的意識に...
するものとする考方と甚しく相違するものであるが、單語が分...
私の好きな學科は、國語と數學です。
といふやうな思想表現に於いて、これを句切つて發音すれば、
私の 好きな 學科は、國語と 數學です。
のやうになり、「これ以上句切って發音すると、實際の言葉と...
47
---------------------[End of Page 61]---------------------
論
一總
語」「數學」といふやうな語が、それ自身統一體としての單位...
語が、言語の分析或は歸納的操作の結論でないことは、從來...
(一)『日本文法學概論』十九頁
(二)同上書 二〇頁
(三)小林英夫譯、ソシュール著『言語學原論』序説第四章「言...
(四)山田孝雄『改訂版日本文法講義』九頁
(五)文部省『中等文法』(口語)四頁
(六)文部省『中等文法』(口語)三頁
---------------------[End of Page 62]---------------------
ロ 語の構造
語は、文及び文章とともに、言語に於ける單位として、既に...
49
---------------------[End of Page 63]---------------------
らない。以下、語がその構造上、文及び文章とどのやうな點に...
「語の構造がどのやうなものであるかを、結論的に云ふならば...
---------------------[End of Page 64]---------------------
集二章語
以上述べるところによつて、一語と云はれるものの構造上の...
のであるが、なほ次のやうな場合をどのやうに説明すべきかと...
である。十字科に屬して「あぶらな」と云はれてゐる植物をと...
と云つた場合、この構造は、前の「つばきのはな」と同一でな...
はな」は、一個の花が何に屬するものであるかの説明であるの...
花そのものを云ひ表はすところの一囘過程の表現であることが...
のはな」は、「花」を〔ハナ〕と云ふ場合の一囘過程とは幾分...
「なのはな」が一囘過程の表現でありながら、その中になほ觀...
る〔ナ〕〔ノ〕〔ハナ〕といふ三囘の過程を包含してゐること...
ところの一語であつて、これを圖解すれば次のやうになる。
イ A……→a 「はな」の場合
ロ A bc「なのはな」の場合
ABCはそれぞれ語によつて表現される事物或は思想を意味し...
51
---------------------[End of Page 65]---------------------
説
總
する音聲を意味するならば、イの場合は、Aといふ思想が音聲...
一般にこのやうな構造を持つた語を複合語或は合成語と呼ん...
以上述べて來た語の定義に於いて、二の重要な點が觀取され...
52
---------------------[End of Page 66]---------------------
現過程が一囘に過ぎないからである。「社會」「デパート」「...
その二は、語の單複の決定は、その語の表現主體の意識によ...
以上述べたことは、言語過程觀に立つた語に對する考方であ...
53
---------------------[End of Page 67]---------------------
總
言語過程説は、以上のやうな困難な點を克服して、語の單複...
單位としての語と、單位としての文の構造上の相違は、文論...
54
ハ 語の認定
ある語が一語であつて二語でないと云はれる根據は、その過...
に於いてこれを明かにした。單位としての語は、本來主體的意...
問的な歸納、分析の操作によってはじめて求められるものでな...
のであるが、このやうな語の認定に關しては、なほ多くの困難...
「川」「犬」「猫」等が一語として認定され、かつそれが主體...
であることについては、恐らく問題が無いであらう。ところが...
文法書に於いては、「靜かだ」「ほがらかだ」「綺麗だ」を一...
稱してゐる。その根據は、「靜か」「ほがらか」「綺麗」等は...
---------------------[End of Page 68]---------------------
れることなく、常に「だ」と結合して用ゐられるからであると...
55
---------------------[End of Page 69]---------------------
二訊の分類
ば觀念的に、思辨的になる危險があるのであるが、ただ現象的...
二 語の分類
詞と辭
語はすべて同様な性質を持つものではなく、種々の點から同...
---------------------[End of Page 70]---------------------
二章語
て意味は、語の品定めであり、語の種類別であるから、語種、...
譯である。
語の種類別であるから、その分類の根本的基準は語といふも...
であるかといふことに對する考方に基づくと同時に、また語の...
つて區々であるから、分類の方法も、實際に即して、それぞれ...
て來なければならないのである。ここに外國語に於ける語の分...
適用することが出來ない理由があり、國語の分類には、國語に...
要求される所以である。
語の分類をするからには、何よりも先づ語そのものの性質が...
檢討から入るのが正しい順序であらう。
一の語を規定するものは、言語構成觀に從へば、思想内容と...
この考へに從ふならば、一切の語は、思想内容と音聲形式との...
於いては語はすべて同一であると云はなければならないのであ...
---------------------[End of Page 71]---------------------
二語の分類
の語が獨立觀念を持つか持たないかといふ點に分類の基準を求...
一切の單語は之を同の方面より見ればそが單語たるに於い...
其の中に異を求めてこれを分類せざるべからず。かくて、こ...
りて區別すれば、一定の明かなる具象的觀念を有し、その語...
思想をあらはし得るものと然らざるものとあり。一は所謂觀...
的觀念を有せざるものなり。この一語にて一の思想をあらは...
るものはかの豆尓乎波の類にして專ら觀念語を助けてそれら...
なり。(中略)この故に、先づ單語を大別して觀念語と關係語...
即ち、山田博士は、これを具象的な獨立觀念の有無といふこ...
であるが、てにをは《、、、、》或は助詞といはれるものが、...
たないかといふのに、必しもさうとは云へないのである。博士...
の中にも、極めて抽象的な概念しかあらはさない「こと」「も...
係語の中にも、「か」「も」の如く疑問、強意の如き且ハ象的...
獨立觀念といふ點で、この兩者を截然と分つことは困難である...
58
---------------------[End of Page 72]---------------------
論
二章語
に思想をあらはし得るものと、さうでないものとの別を以て説...
類基準は、橋本進吉博士もとられたところのものであつて、博...
續きの上から、一はそれ自らで獨立して文節を構成し得るもの...
て文節を構成し得るものに二大別され、前者を詞、後者を辭と...
ら、語が獨立して用ゐられるか否かといふことは、必しも絶對...
する絶對的な條件とはすることが出來ないものである。例へば...
の「行け」は、「ば」と結合してのみ用ゐられるものであつて...
を構成するものとは考へられない。また「八百屋」「肉屋」の...
獨立して文節を構成するものとは考へられないにも拘はらず、...
ことはない。獨立する語、附屬する語の二大別は、國定の文法...
普及するやうになつた分類基準であるが、それは語そのものの...
單に用法上の相違に基づいたものであるといふ點から見ても、...
既に理論的に薄弱であると云はなければならない。語の分類基...
上に相違を見出すことが出來なかつたのは、語を構成的に見る...
59
---------------------[End of Page 73]---------------------
==語の分・灘嘆
あつたのである。
60
語の根本的性格を、表現過程に求めた言語過程觀は、語の類...
程的構造形式に求めるのである。・→切の語について、その愚の...
次のやうな二の重要な相違を見出すことが出來る。
一概念過程を含む形式
二概念過程を含まぬ形式
一は、思想内容或は表現される事柄を、一旦客體化し、概念...
字によつて表現するところのものである。人間を取りまく森羅...
既にそれが客體化されて居るものであるから、これを表現する...
化の作用を經過するのは當然である。「花が険いた。」といつ...
目前の具體的な「花」をあらはすことに於いて、その花を客體...
的な花そのものをあらはしてゐるのでなく、これを概念化して...
るのである。鈴木朖は、このやうな表現に於ける働を、「さし...
ある。(蠶)この働きはく○屋け篝9(表象する)の作用に似てゐる...
---------------------[End of Page 74]---------------------
論
二章語
このやうな作用を經て表現するところのものである。このやう...
於いては勿論であるが、主觀的な情意に關することをも同樣な...
來る。「よろこび」「悲しみ」「要求」「懇願」等の語はこの...
語のあるものは、このやうにして、表現される事物を客體化...
されるものであると同時に、それらが表現される事物の個々の...
ゐるのでなく、これを概念化して、一般的なものとして表現す...
べきことである。「花が険いた。」と云つても、それは、我が...
ままに表現してゐるのではなく、これを「花」として一般化し...
これを「櫻が険いた。」と表現した場合でも、具體的な櫻を、...
のである。語が常に概念しか表はすことが出來ないといふこと...
質であつて、從つて個物をいくらかでも具體的に表現するため...
な櫻」とか、種々な修飾語がこれに冠せられるのであるが、そ...
それが概念的なものであることには變りはないのである。
以上のやうな經過をとる表現に對して、よろこび、かなしみ...
---------------------[End of Page 75]---------------------
二語の分類
せず、また概念化せず、そのまま直接に表現する語がある。そ...
このやうな語の類別は、國語に於いては、既に古く鎌倉時代...
---------------------[End of Page 76]---------------------
第==章語
てゐる。玉とこれを貫く緒によつて、裝飾品が出來るのである...
これらの比喩を通して我々が觀取出來ることは、詞と辭とは...
上の鬪が示すやうに、CiDの表現...
丶、
D
噺 AO
CIDは零體黒であり
AlBは言語主髀の情意である
「語 「詞はでいをかならでは働|篤《ま》 係について述べて...
係について述べてゐるのである。
それぞれに獨立したものでなく、相互に緊密な關係があるも
のである。このことは、文論に於いて詳細に論ずる豫定であ
るが、既に宣長が云つたやうに、詞は布であり、辭はそれを
縫ふ技術として相互に結付く關係にあり、(六)鈴木朖もまた
てにをはは|詞《、、、、》ならではつく所なしL・七)と云...
留贈安ε{'ノ、脅二彩〜
63
---------------------[End of Page 77]---------------------
二語の分類
語を構成的に見るかぎり、一切の語は、音聲と思想との結合...
類する何等の差別をも見出し得ないのであるが、言語を表現過...
こに右に述べたやうな極めて著しい表現性の相違の存在するこ...
この事實は、文法に於ける品詞分類の第一基準として、文法學...
のでなければならないのである。
語に次元を異にした詞と辭の區別の存在することは、日本語...
---------------------[End of Page 78]---------------------
と辭の合體したものに相當するものであると云へるのである。...
(一)
(二)
(三)
(四)
(五)
(六)
v(七)
『日本文法學概論』八四頁
『國語法要説』(橋本逖吉博ま著作集 第二巻 五三頁)
『言語四種論』
同上書
『詞の玉緒纏糊論』
同上書
『言語四種論』
論
舞_章語
三 詞
イ總 詮
ぐ系懸
詞は、「シ」「ことば」と呼ばれ、語の分類に於いて辭に對立...
(15
---------------------[End of Page 79]---------------------
詞
三
硬楓3臆
・ざ
的性質は、大體次のやうに要約することが出來る。
一 表現される事物、事柄の・客體的概念的表現である。
二 主體に對立する客體化の表現である。
三主觀的念情・籍でも・これを客體的に・概念的に表現するこ...
る・
四纂籍合して蠡的な田鑾現となる. 勝
五 辭によって統一される客體界の表現であるから、丈に於...
序である「格」を持つ。
以下、詞の下位分類について述べることとする。
ロ 體言と名詞
コ喜物・事柄の客體的、概念的表現である詞を分つて・體言・...
體言、用言の別は、詞が、他の語との接續關係に於いて、そ...
---------------------[End of Page 80]---------------------
論
二章語
體言といひ、その語形式を變ぺるものを用言といふ』しこの分...
の方法とその命名法に從つたもので、國語の性質をよく反映し...
認められる。體言をはたらかぬ語、用言をはたらく語といふの...
ら云つたものである。
體と用との意義については、今日學者の聞に説が分れて居つ...
面を特に重視する山田孝雄博士は、體言といふ名稱は、概念を...
活用せぬ語を體言といふのは誤つてゐると詳細に述べて居られ...
に、體用の名稱は、その起源的意味に於いては、確かに、實體...
ものであらうが、それだからとて、國語學上に於ける體用の名...
するのが正しいとは云へないのである。用言に語形變化がある...
の觀念とは別に學者によつて注Rされて居つたことで、それを、...
またそのやうな現象を、ひらくとかはたらくとか稱し、それに...
「ひらきなき語」とか、「はたらかぬ語」といふ風に呼んでゐ...
稱が連歌等に用ゐられて一般に普及して居つたので、この名稱...
G7
---------------------[End of Page 81]---------------------
詞
ので、ここで體用といふ名稱は、國語學上では、語形變化をし...
の意味に用ゐられるやうになつたのである。事實が先で、名稱...
きは、語を先づ二大別し、體言の中に、活用のない辭、即ち今...
用言の中に、活用のある辭、即ち助動詞をも所屬させてゐるが...
の詞と辭の二大別に對して、活用するかしないかといふことを...
調したものと見ることが出來るのである。山田博士の文法體系...
はす概念内容の性質を特に重視された爲に、體用の名稱につい...
於いて見ることを避けられたものと想像されるのであるが、既...
源的意味は、これらの名稱が現實に使用されて來た實際とは距...
知る必.要がある。
さて、以上のやうに、語形變化をしない語を體言とする時、...
「あめ」(雨)といふ語が「くも」(雲)といふ語と結合する時、...
ね」が「ふなうた」となるやうな|揚《O》合、「あめ」「ふね...
用言とすべきであるかといふ疑問が提出されるのであるが、こ...
63
---------------------[End of Page 82]---------------------
場合に起こる一時的な音聲現象に過ぎないのであるから、...
ことは出來ない。從つて、「あめ」「ふね」のやうな語は...
ないのである。これに反して、用言と云はれる語は、他の...
た規則的に語形を變化するところの語である。
以上のやうに、體言の名稱は、語の形式に基づくもので...
これをヨーロッパ諸國語に於ける目oβ昌或は餮びω蜜暮ぞ①...
者が實在に對する名稱の意義に用ゐられて居つて、むしろ...
あることに於いて、山田博士のいはゆる起源的意味に於け...
礼出來るであらう。ご|國《7》語に於ける體言の中に、比較的...
ゆ の出來るものを名詞と稱するならば、それはけoq昌或はωβ...
詞に近づくであらう。自由に主請、述語、修飾語になるこ...
論
にその實在を指摘し、また考へることが出來るやうな語で...
、中、このやうな語を便宜、名詞と呼ぶことにする。名詞とい...
|二《ゴ㍉》 て發生したものでなく、外國語學の名稱を借用し...
し9
---------------------[End of Page 83]---------------------
詞 宜的のものであつて、體言の中、どこまでを名詞とするか...
三}論困難であ匝
體言の中、「山」「川」「犬」「猫」「正直」「親切」「...
るに相應しいものであるが、體言の中には、次のやうな、い...
相應しくないものがあることを注意しなければならない。
一 いはゆる形容動詞の語幹と云はれてゐるもの
暖か のどか はで 綺麗 丁寧 嚴重 急 批到的
二 形容詞の甑㎜幹
あま(甘) から(辛) ひろ(廣) ちか(近)
三 いはゆる形式名詞
知らない筈がない。
大きいのがいい。
おいで下さる由。
出かけるつもりです。
70
---------------------[End of Page 84]---------------------
語 論
四 接尾語の中、活用のないもの。
赤さ つよみ 私たち 歸りしな
五 漢語の中、語の構成に用ゐられるもの。
族館 圖書館 映晝館
商人 役人 小作人
平和的 國際的 立體的
驛長 事務長(長は獨立しても用ゐられる)
六 接頭語
お寫眞 御夫婦 玉音
ボ書に於いては、右のやうに、名詞とするにはふさはしくない...
かつ語形變化をしないものを體冨とした㎞嫁β㍉広③翼
(一) 『國語學史要』第九項、『日本文法學概論』第六章
71
---------------------[End of Page 85]---------------------
詞
ハ 代名詞(一)
代名詞の名稱は、オランダ文法などからの直譯によつて出來...
までもないのであるが、今日、英文法などでも、この名稱が、...
してゐるかどうかといふことについては、學者の間に問題があ...
について考へるに當つても、この名稱を一往離れて、事實その...
とが必要であらうと思ふ。
一般に代名詞の代表的なものとして擧げられてゐるものに、...
第一人稱に屬するものに、私(わたくしわたし)、僕、俺等があ...
た、君、おまへ等があり、第三人稱に屬するものに、あのかた...
れらの語は、語形が變化しない點から云つて、體言に屬するこ...
明瞭な個體的事物を表現することに於いて、名詞と同樣に見る...
ころで、これらの語が、何故に、文法上一般の名詞とは別に、...
たのであらうか。これが先づ考へるべき重要な點である。 一...
72
---------------------[End of Page 86]---------------------
論
第二章語
との別にかかはりなく、事物の概念を表現するものである。「...
いふ語も、ともに名詞であることは明かである。既に擧げたと...
が何等かの人を表現するものであることに於いて名詞「商人」...
のであるが、ヨれらの名詞と異なるところは、人稱代名詞は、...
物との關係を表現する場合にのみ用ゐられる語であるといふこ...
する語には、「親」とか「兄」とか「先生」等の語があるが、...
との關係の表現にだけ用ゐられるといふものではない。聞手と...
との關係に於いても、「親を大切になさい。」といふ風に用ゐ...
きますか。」といふ場合の「君」は、必ず話手に對して聞手の...
み用ゐられるのである。第一人稱の代名詞は、話手が自分自身...
表現する時にのみ用ゐられ、第二人稱の代名詞は、話手が他者...
て表現する時にのみ用ゐられ、第三人稱の代名詞は、話手が他...
係に於いて表現する時にのみ用ゐられるのである。從つてどの...
人でも、人そのものの概念内容に關せず、話手との關係によつ...
73
---------------------[End of Page 87]---------------------
となり、「彼」となるのである。このやうに見て來るならば、...
との關係概念を表現するところにあると云ふことが出來ゐ随...
とは、話手との關係といふことであつて、話手との關係とい...
るか、話題の人物であるか、或は話手自身であるかといふこ...
名詞の特質を、以上のやうに、話手との關係概念の表現とい...
やうな關係に置かれるものが人であるか物であるかといふこ...
るものではない。そこで、そのやうな關係にあるものが、事...
は、これを指示代名詞といふ。事物、揚所、方角等は、話手...
つたり、聞手となつたりすることは、擬人的用法以外には考...
第三人稱の立場に立つのである。人稱代名詞が、話手との關...
そのやうな關係に立つ「人」そのものをも含めて表現するや...
やうな關係に立つ「物」を同時に含めて表現する。「これ」...
ある。
代名詞と云はれる語が、事物の概念を表現するのでなく、...
74
---------------------[End of Page 88]---------------------
論
第二章語
内容との關係を表現するものであるために、進んで、話手と表...
次のやうな差別の表現が考へられてゐる。印ち、萄表現内容が...
聞手に近い關係にあるか、或は兩者に對して第三者的…關係にあ...
の識別の表現であ伶例へば、表現内容になつてゐる人物や事物...
いつ」「あいつ」「どいつ」といふ語が對立するのはそれであ...
様に、「ここ」「そこ」「あそこ」「どこ」、或は「こちら」...
どと區別するのである。一般に代名詞に於ける近稱、中稱、遠...
事實で、この關係の識別の表現は、國語に於いては、諸外國語...
てゐる事實である。(一)これらの代名詞に於いて、關係概念を...
「そ」「あ」「ど」であるところから、佐久間博士は、代名詞...
て把握して居られることは注意すべきことである。このやうに...
は、すべて話手との關係を規定し表現するところに特色がある...
の讐或は名詞と明かに區別せられなければならないものなので...
は、話手の屬性的概念の表現にあるのでなく、全く話手との關...
75
---------------------[End of Page 89]---------------------
文法研究に於いて、犖霧慮されねばならない;の事例といふこと...
以上述べて來た 代名討は、話手との關係概念を表現すると...
事物の概念をも含めた表現であるが故に、これらを體言或は名...
名詞的代名詞と云つてもよい譯である()。
次に、左の文について見るに、
この繪は立派な繪ですね。この作者は誰ですか。
ここに用ゐられてゐる「この」といふ語は、「庭の櫻」「川...
の」等が、或る事物的概念を表現して、「櫻」或は「水」の修...
して、話手と事物との關係概念を表現して、「繪」或は「作者...
で、既に述べて來た代名詞の性質に共通してゐるものである。...
質的には右の代名詞の範疇に所屬せしむべきものなのである。...
或は名詞的代名詞と異なるところは、「この」の「こ」が、話...
を表現して、そのやうな關係にある物を含めてゐないといふこ...
形式は、このやうな關係概念だけを表現すべきものであるかも...
---------------------[End of Page 90]---------------------
論
第二章語
も含めるといふことは、代名詞と名詞との複合語と認むべきも...
のかた」は、「話手とこのやうな關係にある方」の意味で、「...
めることも出來るのである。「ここ」は「
めることも出來るのである。「ここ」は「こ|處《へ》 こと...
ことである。前の例文に於いて、「この繪」の「こ」が、純粹...
とは以上の如くであるが、同じ例文中の「この作者」の場合の...
手と作者との關係を云つたものではなく、 この話手とこの繪...
の關係に置かれた事物即ちここでは、「繪」をも含めて表現し...
かである。して見れば、この第二の場合は、既に述べて來た名...
きものである。
御意見は結構ですが、その具體案を示して下さい。
いつか承つた事件、あの結末はどうなりましたか。
右の「そ」「あ」は共に「その御意見」「あの事件」の意味...
右のやうな「この」「その」「あの」「どの」等については...
離して他の助詞に結合して用ゐられることなく、常に「の」と...
77
---------------------[End of Page 91]---------------------
詞
三
用ゐられることから、これを一語と見るべきであるといふ説が...
させる考方があるが、既に述べたやうに、これらの語は、話手...
から、代名詞以外の品詞に所屬させることは、理論上からも實...
はない。ただし、人稱代名詞、指示代名詞が名詞に對應すると...
名詞と名づけたと同樣に、「この」「その」等を連體詞的代名...
であらう。
以上のやうな理由で、次のやうな語もこれに所屬させること...
こんな そんな あんな どんな
形容詞といふ名稱を、もし連體修飾語として用ゐられる語の...
るならば、これらの語に形容詞的代名詞の名稱を用ゐることが...
連體修飾語的代名詞に對して、次のやうな例が見られる。
かう、こんなに
かう忙しくてはやり切れない。 こんなにも考へられま...
さう、そんなに
---------------------[End of Page 92]---------------------
さう忙しくては本も讀めないでせう。 そんなに考へて...
ああ、あんなに
ああ忙しくては體に惡いのではないのですか。 あんな...
何とかするつもりでせう。
どう、どんなに
どうするつもりなのですか。 どんなに考へて見ても駄...
右のやうな語は、連用修飾語としてのみ用ゐられるので、こ...
ことが許されるであらう。
第二章語論
79
---------------------[End of Page 93]---------------------
情態
一
O
O
こんな
かう
こんなに
そんな
さう
そんなに
あんな
ああ
あんなに
どんな
どう
どんなに
關 方
所
係
○
O
この
その
あの
副詞的代
名詞
どの
連體詞的
代名詞
角
○
○
こちら
こつち
そちら
そつち
あちら
あつち
どちら
どつち
○
○
ここ
そこ
あそこ
どこ
物 人
○
○
茫
そそ
れ
あ
あれ
どど
れ
わたくし
僕
あなた
君
このかた
そのかた
あのかた
どのかた
どなた
名詞的代
名詞
/
/
/の關係「話
話手と
鶲類/∠(第
手
聞
廴
人稱)「(第二人稱)宮
稱
中嚠
汽咋
f↑
遠
稱
不定稱
事
柄
(第三人稱)
80
代名詞分類表
---------------------[End of Page 94]---------------------
9
論
語
輩
二
右の表についての説明
一 右の表を理解するについては、第一に、言語の成立條件...
される事柄の關係とそれらの性質をよく理解しなければならな...
二 話手及び聞手は一般に人であり、表現される事柄は、人...
態等の種々のものが含まれる。
三 代名詞の最も基本的なものは、右の表の中の「關係」を...
れは常に「の」と結合して潼體修飾語としてしか用ゐられない。
四 その他の代名詞は、この關係概念を表はす代名詞に、そ...
含めて云つたものである。「このかた」は「こ」の關係にある...
五 以上のやうであるから、.代名詞は、體言や名詞の中の一...
體詞や副詞と並ぶ一類の品詞でもなく、それらに對應して別個...
てあることが分る。代名詞が、常に話手を軸として、それとの…...
他の品詞との根本的な表現上の相違を見出すことが出來る。
...
(一) 佐久悶鼎『現代日本語の表現ど語洪』前篇 第五
---------------------[End of Page 95]---------------------
詞
三
V(二) 『國語學原論』總論 第五項
82
二代名詞(二)
,訴
〜こ、しP ハ'二
以上、私は、』、磐代名詞と呼ばれて來た品詞の性質を吟味し...
事柄との關係概念を、話手の立場に於いて表現するものと解し...
柄は、その事物的概念の相違にかかはらず、話手との關係をひ...
例へば、商人であれ、官吏であれ、使用人であれ、その人が話...
る時、これを、「あなた」「君」「おまへ」と呼ぶことが出來...
法上第二人稱の代名詞と呼ぶのである。この代名詞中の小變異...
區別ですらも、聞手そのものの事物的概念によるのではなく、...
よるのであるが、これらの代名詞が、代名詞と云はれる根本の...
對立する聞手であるといふ關係の表現にかかつてゐる譯である...
特質を持つた語を從來代名詞と稱して來たのであるが、ここに...
うな語を代名詞と呼ぶことの可否である。代名詞といふ名稱が...
レ』『蘯響璽靨巳鼕 ー
---------------------[End of Page 96]---------------------
論
語
章
二
第
ひ表はしてゐると見るべきか、或は名稱と事實とは全く別のも...
の邊の事情を明かにして置かないと、思はぬ混亂が生じないと...
最初に、これは極めて通俗的、常識的な用語法に屬すること...
人とは、理窟ばかり逹者で、實行力を件はない人間を云ふ代名...
場合の代名詞の名義である。これは云はば名詞に代用される別...
味に用ゐられた場合で、嚴密な文法上の用語法とは云ふことが...
名詞の皮相な觀察から、右のやうな代名詞觀が生まれて來ない...
と呼ぶ代りに「あなた」と呼び、同じ人を「先生」と呼んだと...
生」も、「鈴木さん」といふ名稱の代用であるから代名詞であ...
ることである。このやうな見解からは、代名詞の眞義が理解出...
りである。
次に、從來屡ー用ゐられて來た代名詞の定義は、代名詞はも...
方に基づくものである。
代名詞とは名目をいふ代りに用ゐる詞の義にして、體言の...
63
---------------------[End of Page 97]---------------------
詞
三
を直接にあらはさずして、ただ其を間接にさすに|用ゐらるる...
84
代名詞は事物を指していふ語です。(昌)
なほ、佐久間鼎博士は、代名詞を「指す語」の體系として述...
代名詞を指す語として規定することは、これも外國文法の飜...
代名詞を指す語として理解することにはなほ多くの問題がある...
根本に於いて表現であるとする時、代名詞の特質としての「指...
如何なることを云ふのであるかを明かにしなければならない。...
ると見る考方に從ふならば、表現される事柄と表現との關係に...
によって、表現される事柄をさすものであるといふことが出來...
「物事をさし顯して詞となる」(弓と云つてゐるのは、正にその...
である。語が常にそのやうな性質のものであるならば、代名詞...
定することは不充分である。代名詞を「指す語」と規定した一...
ことは、既に述べたやうに、代名詞は表現される事物そのもの...
概念しか表現しない。`例へば、一個の机を「これ」と云つたと...
---------------------[End of Page 98]---------------------
を意味するとは受取られない場合が多い。何となれば、「これ...
机の上の紙でも鉛筆でも意味することが出來るからである。そ...
に、指なり、眼なりによつて、事物それ自體を指示することが...
「指す語」と規定するやうになつた一の理由ではないかと考へ...
うだとすれば、それは代名詞の表現の特質を云つたものである...
結果について云つたものであるから、そこに我々は代名詞の特...
さなければならないのである。
既に述べて來たところで明かにされたやうに、「代名詞が、...
とに於いて、他の詞と共通するのであるが、その概念が、話手...
ることに於いて、他の詞と根本的に相違するものであるPこのこ...
代名詞を規定したことになるのである。
論
隻二章語
本項を終はるに當つて、代名詞研究の重要性について一言し...
究の重要性は、要するに、言語の表現上から云つて、代名詞が...
---------------------[End of Page 99]---------------------
味するのである。
第一に、代名詞は、話手と事柄との關係の概念的表現である...
る一切の事柄を、すべて同一の代名詞を以て表現することが出...
らしい經濟である。會話の場合などは、環境の補助によつて、...
することは、あまねく知られてゐることである。しかしながら...
關して、ただその關係概念か、事柄の極めて抽象的な概念しか...
聞手は、屡ー同一關係にある數種の事柄の中、いづれを採るべ...
は當然である。そこに誤解の原因が生ずるのであるから、代名...
が表はす事柄が、明瞭に理解出來るやうに用ゐられなければな...
言語の場合でも、また文字言語の場合でも同じであるが、現場...
・確實性を追求する機會もなく、かつ比較的複雜な内容を表現...
合には、特に細心の注意が拂はれなければならない。例へば、
一般の歴史の上に於いて、民衆に關する研究は、あまり多...
究さるべきものであつて、しかも歴丱ハ棚究から逸し、かつ...
---------------------[End of Page 100]---------------------
といふやうな文章に於いて、傍線のある「これ」といふ代名詞...
る事柄を承けてゐることは事實である。そこで、それが何であ...
は、直前の「民衆に關する研究」を承けて層るのではないかと...
こで、この語をもう一度再現して來れば、次のやうになる。
……あまり多く開けてゐない。民衆に關する研究は研究さる...
並も:.:.
これで意味が通じないといふ譯ではないが、「研究は研究さる...
表現は上乘のものとは云ひ得ない。そこで、「これは」によつ...
うに改めることによつて、その承接を一暦論理的にすることが...
民衆に關することの研究は、あまり多く開けてゐない。...
あつて、
即ち、後文は前文を承けて、「民衆に關することは研究さるべ...
る。しかしながら、また、前文を虚心に讀み下して行くならば...
次のやうな文の展開を導く方がより自然のやうにも考へられる...
---------------------[End of Page 101]---------------------
詈詞
民衆に關する研究は、あまり多く開けてゐない。これ(「...
ことが出來る。」)は研究の困難に原因するのである。
とでも展開すべき勢を持つてゐる。何となれば、「これ」とい...
の最も近い關係を表はし、かつそのやうな關係にある事柄を表...
し以上のやうな展開が最も自然であると假定するならば、それ...
文章の理解を難澁にし、時にはその論理的把握を誤らせる結果...
單に一語によつて表はされる事柄を承けるばかりでなく、右に...
つて表はされるやうな複雜な事柄をも表はすものであることも...
代名詞は、文章の理解を正しくするためにも、また表現を確...
意されなければならないことである。このことは、本書の文章...
ることである。
ゾ
((ノ画丶
ゝノ))
『日本文法學概論』一一九頁
『新文典別記初級用』五二頁
『現代日本語の表現と語法』前篇
第四
88
---------------------[End of Page 102]---------------------
/四)
『言語四種論』界ミマへ
ホ 形式名詞と形式動詞
第二章語論
形式名詞といふ用語は、從來文法學上用ゐられたものであり...
いても學者の間で問題にされたことである。(一)木枝塘一氏は...
られる。(昌)
實質名詞といふのは名稱に對してそれに相當する一定の實...
的にせよ)のあるものを言ひ、形式名詞といふのはその名稱に...
をもつてゐないもので、單に名詞としての一般的形式しかも...
ある。從つてこの形式名詞を用ひる時は、その上に必ず之を...
なければならないのである。
それはどのやうな語を指すかといふのに、例へば、
そはわが欲するところにあらず。
すつぼんのことを上方にてはまるといふ。
89
---------------------[End of Page 103]---------------------
詞 前後の事情から考へてそんな矧がない。
三
に於ける「ところ」「こと」「筈」のやうな語を指すのであ...
としての一般的形式しかもつてゐないと見ることは疑問であ...
念を表現するものであることは間違ひないであらうが、ただ...
的であるために、常にこれを補足し限定する修飾語を必要と...
方が適切である。從つて、これらの語が表現する概念内容が...
接尾語と極めて近いのであるが、異なるところは、接尾語は...
語を構成することが出來るのに對して、形式名詞は、他の語...
した名詞と同じやうに用ゐられるが、それだけで獨立して用...
とである。例へば、接尾語「さ」は、「暑さ」「淋しさ」...
るが、形式名詞「こと」は、「あついこと」「さびしいこ...
「あつこと」「さびしこと」などとは云はれない。形式名...
の概念内容の問題ではなく、それが常に何等がの修御語を...
なり、述語なりに立ち得る非獨立性の名詞であるといふ點...
90
---------------------[End of Page 104]---------------------
問
第_章
三二托
Il純
形式體言として、數詞と代名詞とを擧げて居られるが、(三)こ...
を表現するものではあるが、ここにいふ形式の意味とは異なる...
の項に述べるやうに、話手と或る事柄との關係概念を表現する...
に云ふ形式名詞の中に入れるべきものではない。形式名詞とい...
當ではあるが、ここでは既に述べたやうに、概念内容の極めて...
出來ない名詞について云ふことにする。もし形式名詞、形式動...
するならば、不完全名詞、(穹不完全動詞の名稱を用ゐる方がよ...
の名稱は、一般には、活用形の整はない、例へば、「敢へ」「...
ふ場合に用ゐるので、ここではこれを避けることとした。
形式名詞の例
たび(度) このたび 私が會ふたびに
筈 そんな筈はない。 行く筈です。
ため 子供のためを考へる。 雨が降つたた...
まま 思うたままを書く。
---------------------[End of Page 105]---------------------
詞
窕
の
わ
け
折
やう
こと
うへ
ゆゑ
|間《かん》
件
點
あげく
もの
さういふ譯です。
私が話したのは誤です。(橋本博士はこれを準體助詞として助詞...
入れられたが、形式名詞と考へるのが適當であらう。佐久間博...
詞とされる。)
參上の折
人のやうでもない。
嬉しいことだ。
お目にかかつた上で
病氣のゆゑを以て
その間
お話しの件 使用の件 購入の件 雜件 用件
指摘して下さつた點は
散々使つたあげくに
馬鹿にしたものでもない。
92
---------------------[End of Page 106]---------------------
ーー-ー
ー盈墨}ゴノ
丶
論
第二章
111
ところ あなたの云ふところは正しい。
よし 病氣のよし
形式名詞(體言)に對して、當然、形式動詞或は形式用言が考...
連して、形式用言の名稱が、山田博士の文法學によつて一般に...
博士の形式用言の説について見ることにする。
山田博士は、從來動詞に所屬させられて居つた「あり」を動...
を形式用言と命名された。これと他の實、質用言としての動詞...
云へば、
實質用言とは陳述の力と共に何らかの其體的の屬性觀念の...
にして、形式用言とは陳述の力を有することは勿論なるが、...
示す屬性の意味甚だ稀薄にして、ただその形式をいふに止ま...
のはただ存在をいふに止まり、進んでは單に陳述の力のみを...
り。(識)
と述べて居られるやうに、ここで形式的といふのは、概念内容...
93
---------------------[End of Page 107]---------------------
詞
軍
94
れてゐるのであるから、博士のいふところの形式用言は正に上...
の性質を同じくするものであると考へて差支へないのである。...
の表現する概念内容の異同といふことを、根本的な基準として...
あるが、本書のやうに、表現性の相違といふことを語の類別の...
ば、形式用言を特に實質用言と區別する必要を認めないことは...
ある。そこで、璃書では、形式用言といふものを特立せず、動...
て稀薄にして、從つてそれには常に何等かの補足する語を必要...
詞として述べようと思ふ・9}この場合でも、形式名詞の場合と...
えず注意する必要がある。
形式動詞としてまず注目されるのは「ある」であるが、今日...
を表現する助動詞として・廣く用ゐられてはゐるが(助動詞の項...
あまり用ゐられず、むしろ「ゐる」を多く用ゐてゐる。
「ゐる」は極めて抽象的な存在、袱態の概念を表現するため...
定する修飾語を必要とする。例へば、
---------------------[End of Page 108]---------------------
花が嘆いてゐる(文語の「花咲きてあり」「花咲きたリ」に...
川が流れてゐる。
右は、「花」「川」の存在、状態を表現してゐるのであるが、...
では全く意味をなさず、連用修飾語「険いて」「流れて」を伴...
る。これは形式名詞が連體修飾語を作つて始めて意味が完全に...
「する」も同樣で、
暖かくしてお出かけなさい。寒いから、
見もしないで、あんなことをいふ。
びくびくする。ぬらぬらする。
それが駄目だとすれば、かうやつて見よう。
何としてもそれはまつい。
右は「す」(爲)の一般的な意味である身體的な動作の意味から...
の極めて漠然とした形式動詞になつたために、多くの場合、こ...
必要とする。,このやうに「する」の表現する内容が稀薄である...
---------------------[End of Page 109]---------------------
詞
冒
表はす辭に轉換して行つたと同様な徑路をとつて、殆ど陳述を...
合もある。
君にしては、上出來だつた。
月清くして、風涼し(文語)。
「なる」もまた形式動詞に數へることが出來る。
水がぬるくなる。
あの方もおいでになる。
私は實業家になる。
氣が樂になる。
右は「水がなる」「私はなる」では意味の表現が全く不完全で...
して、「ぬるく」「實業家に」といふ連用修飾語を必要とする...
全く完全な意味を表はすことの出來ない動詞の意味を補ふため...
といふことがある。形式動詞について、もし補語を認めるなら...
もこれを補語とすべきであるといふ湯澤幸吉郎氏の論は傾聽に...
96
---------------------[End of Page 110]---------------------
第二章譜
また文法操作の上に、便宜なものであると考へられる。曇
「なす」は「す」と殆ど同義語で、一般に敬讓の接尾語を添...
用ゐられる。
お讀みなさる。
はらはらなさるQ
御出席なさる。
「いたす」も前項と同様、「す」と同義語である。
おねがひいたす。 承知いたす。
「やる」「もらふ」「あげる」「くださる」等の語も、それ...
でなく、次のやうに用ゐられた時、やはりこれを形式動詞とい...
甲が乙に讀んでやる。
甲が乙に讀んであげる。
甲が乙に讀んでもらふ。
甲が乙に讀んでくださる。
97
---------------------[End of Page 111]---------------------
詞
「給ふ」「申す」「あそばす」についても同じである。
-(一)
(二)
〆(三)
(四)
・(五)
(六)
『日本文法學概論』一〇三頁。
『高等國文法薪講』品詞篇 七五頁
『日本文法學概論』一〇四頁
吉澤義則『高等國文法』
『日本文法學概論』一八九頁
『修飾語に關する考察』(國語と國文學
へ 動 詞
昭和六年五月)
動詞は用言の一種である。用言は體言に對立する品詞の總括...
の用法に從つて語形の變化するものをいふ。語形が變化する語...
が、動詞は形容詞と異なつて、語尾が五十音圖の行に從つて變...
である丿㌧∵、〔 .
動詞の定義には、しばしば、その表現する概念内容から、「...
存在をいふ語である」といふことが云はれて居り、動詞といふ...
L■ーし集夢
---------------------[End of Page 112]---------------------
毒亀-
ジ
.ノ丶号
、
論
第二章語
な意味を示してゐるやうに考へられるが、概念内容の上から動...
場合と同樣、國語の性質から見て適切でない。本書では、動詞...
である語形變化といふ點から規定することとした。
動詞を觀察するには、次の諸點に注意しなければならない。
一 活用と接續 二 語尾と語幹 三 活用形 四 ...
一 活用と接續
動詞の品詞的性質が、語形の變化する語であることは既に述...
ことを別の語で云へば、活用或は活用するといふことである。...
なことは、動詞における活用の意味である。語が變化するとい...
ば、英語、ドイッ語、フランス語等のく①Hびのoo且q㎎㊤氏o目...
出來るのであるが、oo⇔冒σQ9試○目と國語の活用とは、同じ語形...
的に異なつてゐる。8且¢σq㊤怠o昌は、一語が、人稱、單複數...
ることを意味するのであるが、國語の場合は、これと異なり、...
或はそれ身で登したりする場合に起こる語形變化である。幗携...
---------------------[End of Page 113]---------------------
詞 詞の斷續による語形變化であつ|匡これを動詞の活用といふ...
三
が以上のやうなものであることは、活用研究の雁史が明かに...
ば、本居宣長の門下である鈴木朖に、『活語斷續譜』といふ...
険か ーき ーく ーけ
のやうに、排列するやうになつた結果、活用とは、語形の變...
動詞の活用と、oo且qσqp怠o昌の相違は以上述べた通りであ...
100
---------------------[End of Page 114]---------------------
こる變化の現象であるとするならば、これと活用の相違はどの...
ひ消或は連用修飾的陳述、連體修飾的陳述等に應ずるところの...
♂しすべての動詞を通じて法則的に行はれるところに特色があ晩...
引 イきれい劇水
・ 流れる陥水
-、『イの連體修飾的陳述を表はす指定の助動詞「な」に相當す...
⑳論によつて表現されず曇記號になつて居るが、その語に相當す...
101
---------------------[End of Page 115]---------------------
踊である。活用現象はたしかに陳述の機能を含むものではある...
花は険かない。
花が険き、鳥が歌ふ。
花が咲く。
右の三の例の「咲く」は皆述語として、そこには陳述が想...
二 語尾と語幹
語尾とは、動詞がそれだけで絡止したり、他の語に接續し...
1U2
---------------------[End of Page 116]---------------------
第二章
ば、「険けーば」の「け」が語尾であるといふことになる。今...
険かない。
険きます。
嘆く時、
嘆けば、
嘆d。
右の傍線の部分が、接續而或は絡上面であつて、この接續面或...
越えない。
越えます。
越える時、
103
---------------------[End of Page 117]---------------------
詞
三
越えれば、
越える。
右のやうに、「ない」「ます」に接續する語尾は、「え」であ...
ある動詞については、語幹と語尾が同じになつてゐて、語幹...
三 活用形
動詞について活用形といふことを云ふ場合、一往それは動詞...
104
---------------------[End of Page 118]---------------------
論
第二章語
語形であるといふことが出來る。例へば、「険けば」といふ句...
1C5
---------------------[End of Page 119]---------------------
詞
の語群に應ずる活用形として、未然形、連用形といふ名稱が成...
未然形 連用形 絡止形 連體形 假定形(文語では巳然形...
未然形 助動詞「ない」が附く語形。
讀まない 起きない 來ない
連用形 敬讓の助動詞「ます」が附く語形。
受けます します
終止形 切れる語形。
書く。 考へる。
連體形 體言例へば、「時」が附く語形。
見る時 する時
---------------------[End of Page 120]---------------------
論
第二章語
假定形 助詞「ば」が附く語形。
起きれば 考へれば
命令形 命令を表はし、或は命令の意味の助詞「よ」が附く...
押せ。 投げよ。
このやうな活用形の研究は、近世においては、全く文語を基礎...
り、明治以後になつて、やうやく口語の活用形が整へられるや...
は、一般の動詞については、絡止形に接續する語群と、連體形...
續關係の相違を認めることが出來ないので、むしろこれを統合...
用形を立てることも一の方法であるが、文語法との關連上から...
については、今日なほ連體形「な」「の」の形が行はれてゐる...
形、連體形の名稱を保存する理由もあるのである(指定の助動詞...
活用形についてその接續關係を考へる時、助動詞「た」は、...
る。即ち、
圓耐た
107
---------------------[End of Page 121]---------------------
詞
三
立つた
譖矧だ
これらを「た」の接續する特殊の活用形と見て、學者によつて...
て呼ぶことがある。(e現代口語の事實に即するならば、確かに...
たやうな特殊な語形から接續するのであるが、このやうな接續...
行動詞を除いたものについて存在し、サ行四段及びその他の活...
す」の一群に屬する語と同樣に、一律に連用形に接續する。印...
劃Uた
劉た
劑た
して見れば、「た」は原則的には連用形接續の語と認め、「険...
「い」「つ」「ん」は、連用形の語尾の變形したものと認める...
かつこれを歴史的に見れば、或る時代には、「険い」「立つ」...
「讀み」の音便現象として並立して行はれたのであるから、こ...
108
---------------------[End of Page 122]---------------------
論
第二章語
別の活用形として立てる理由はないのである。以上述べた音便...
の根本に觸れる問題を含んでゐるのであつて、文法的處理は、...
することは許されないのであつて、現象の奥にひそむ法則を探...
されるのである。さればと云つて、現象を無硯して法則を立て...
の事實に浩はないこととなる。現象の奥にひそむ法則の探求と...
語學的證明に堪へるものがなければならないのは當然である。
次に、活用形の名稱について屡}起こる誤解について説明をし...
未然形といふ名稱から、「行か」「受け」といふ語形そのもの...
あると考へるのは大きな誤解である。この名稱は、この語形に...
とつて借りに命名したのであるから、誤解を避ける意味からす...
形と名づけ、順次、第二、第三と命名するのも一方法と思ふの...
除くならば、從來の名稱も便宜であるのでこれに從ふこととし...
四 動詞の活用の種類
動詞において活用形が明かにされるといふことは、その動詞...
109
---------------------[End of Page 123]---------------------
調
ことを意味する。活用形の研究によって、動詞の接續關係は簡...
に進んで、それぞれの動詞の活用形の語尾を整理分類すること...
それぞれに一定數の基本形式に分屬させることが可能である。...
たものが動詞の活用の種類である。動詞の種類の分類は、いろ...
することが出來るであらう。例へば、自動詞、他動詞による分...
動詞と歌態性動詞等の別が考へられるであらうが、動詞の品詞...
する語印ち用言にあり、そのことは換言すれば、活用形の變化...
點に着目して分類することは、國語の動詞の性質の上から見て...
當然のことである。活用形の變化は、これを動詞の語尾の變化...
る。そして語尾の變化は、これを五十昔圖の假名の上に配當す...
することが出來る。例へば、語尾が、五十音圖の何行のあいう...
が何行四段活用であり、同樣にして、い及びい段に「る」、「...
るものが上一段活用である。ここに「|上《カミ》」といふのは...
界にして、あいうが上であり、うえおが下であると考へたとこ...
110
●バト
---------------------[End of Page 124]---------------------
1
萩』丶」-丿14
第二章語 論
して今日、口語において認められてゐる活用の種類は次の通り...
四段活用
上一段活用
下一段活用
外に「來る」「する」の二語だけが、例外的な活用をするので...
る。
か行變格活用
さ行變格活用
以上正格三種、變格二種あはせて五種の活用が認められてゐる...
りである。
動詞について何行といふのは、語尾の音韻に即していふので...
れた假名に即していはれてゐることである。故に、「笑ふ」が...
のは、この動詞の語尾が、五十音圖の「は」行文字に活用する...
尾を表音的に訂正した場合のことについては、總論第六項を參...
111
---------------------[End of Page 125]---------------------
詞
三
(一) 『國語學史』一五七頁。今日の活用表に當る。
(二) 橋本進吉『新文典』初年級用
112
●
}
---------------------[End of Page 126]---------------------
f鴫ー
〜翼・9《覧響」尾亅ワ{亀4
〜
活用の種類を示す表
第二章語論
活
用
重詞 形
の種類
四段活用
(書く)
上一段活用
(起きる)
下一段活用
(捨てる)
力行變格活
用
(來る)
サ行變格活
用
(爲る)
未然形
1か
-き
1て
一
せし
連用形
1き
ーき
1て
き
し
終止形
1く
!きる
1てる
くる
する
連體形
ーく
1きる
ーてる
くる
する
假定形
ーけ
ーきれ
1てれ
くれ
すれ
命令形
ーけ
ーき
1て
一
せし
五
十
普
圖
配
當
一
㊨⑯⑤②お
あ⑭うえお
あいう②お
あ⑭⑤え⑤
あ⑭⑤えお
あ⑯⑤②お
113
---------------------[End of Page 127]---------------------
詞
三
ト
動詞の派生語
接尾語が、體言的なもの、用言的なものを通じて、語の構成...
作ることは後に述べる豫定である。接辭が附いて出來た語を派...
であるが、ここでは、これら派生語の中で、極めて普遍的に行...
て述べることにする。
一 自動詞と他動詞との對立
日本語では、客語(或は目的語)○び冨9を表示する記號が無い...
有無といふことで、太來的に動詞について、自動、他動を決定...
意味の上から、或は接尾語によつて、動詞の對立が考へられる...
といひ、他を他動詞といふことがある。
(一)自・他ともに同じ活用形のもの
、塘す (自、サ行四段) 水が培す。
〆塘す (他、サ行四段) 水を塘す。
114
邇
陰}覧ー
---------------------[End of Page 128]---------------------
ー
{
ご'
〜
、
第二章語論
、吹く (自、カ行四段) 風が吹く。
〆吹く (他、力行四段) 火を吹く。
ヘニ) 自.他が活用の種類は同じで、行の相違によつて分れる...
{
あまる (自、ラ行四段) 費川があまる。
あます (他、サ行四段) 費用をあます。
{
おこる (自、ラ行四段) 事件がおこる。
おこす (他、サ行四段) 事件をおこす。
(三) 自.他が活用の行は同じで、種類の相違によつて分れるもの
hあく (自、力行四段) 門があく。
〆あける (他、カ行下一段) 門をあける・
{
くだける (自、力行下一段) 氷がくだける。
くだく (他、カ行四段) 氷をくだく。
(四) 自・他が活用の行と種類の相違によつて分れるもの
駄埋まる (自、ラ行四段) 堀が埋まる。
115
---------------------[End of Page 129]---------------------
調
ミ
〆埋める (他、マ行下一段) 堀を埋める。
揚がる (自、ラ行四段) 旗が揚がる。
{
揚げる (他、力行下一段) 旗を揚げる。
(五) 自動詞の語尾(未然形)に、他動の意味を表はす接尾語...
附いて自・他に分れるもの。
癖す
思ふ
{
思はせる
護る
〆寢させる
二 受身
動詞の語尾に、
(自、力行四段)
(他、サ行四段)
(自、ハ行四段)
(他、サ行下一段)
(自、ナ行下一段)
(他、サ行下一段)
子供が驚く。
子供を驚かす。
昔を思ふ。
昔を思はせる。
子供が寢る。
子供を寢させる。
受身を表はす接尾語「れる」「られる」をつけ...
活用の未然形に、「られる」はその他の活用の未然形につく。
116
、
》
'
bb〜りーみ
---------------------[End of Page 130]---------------------
〜
ーノ」7 、
ノナ も
論
第二章語
丶笑ふ .(自、他ハ行四段) 子供が(を)笑ふ。
〆笑はれる (受、ラ行下一段) 弟に笑はれる。
丶蹴る (他、ラ行四段) 石を蹴る。
|厂《ノ》蹴られる (受、ラ行下一段) 馬に蹴られる。
また、サ變の動詞が受身になる場合は、「しられる」とは云は...
〔議論する
八
厂議論される
不問にする
{
不問にされる
右のやうに、受身の動詞を作る接尾語「れる」「られる」は、...
れて來たのであるが、その項にも述べるやうに、これらの接尾...
屬するものではなく、詞の中の用言に屬する接尾語として考へ...
る。一般に助動詞の附いたものは、例へば、「授けない」は「...
の句であつて、どこまでも二語として取扱はなければならない...
117
---------------------[End of Page 131]---------------------
詞 いたものは、「授けられる」のやうに、これを複合動...
匿 出來るのである。從つて、主語との照應も受身の場合...
てその述語となることが出來る。
ぐ戸訴嚼陂は賞を與へない.(主語「彼」に對する述語は「姐三...
、/彼は賞を與へられる。(主語「彼」に.對する述語は...
以下、可能、自發、敬譲、使役についても同じこと...
三 可能
動詞の語尾に、可能を表はす接尾語「れる」「られ...
る」の接續のしかたは、前項の受身の揚A口と同じであ...
へ讀む (マ行四段) 私は本を讀む。
〆|讀《、》まれる (可能 ラ行下一段) 私は...
》寢る (ナ行下一段) 早く寢る。
ノ广寢られる (可能 ラ行下一段) 私はよく...
可能を表はすには、自他の野立の場合の(三)のやうに...
118
ーら塾f6【ー
ーゝ》ポー匳》廴夛ー丶ドー3k櫨ーp3'
}ート、L尸'
---------------------[End of Page 132]---------------------
ど丶ー』弓、」署塾「-
電
」ー丶ー.ー、
`へ
1潤
第二章語
も表はすことが出來る。
水を飲む。 マ行四段
この水は飲める。 マ行下一段
四段以外の動詞についても、「起きられる」を「起ぎれる」、...
「受けられる」を「受けれる」などといふこともある。可能の...
を用ゐることはない。
四 自發或は自然可能
動詞の語尾に、自發或は自然可能を表はす接尾語「れる」「...
「れる」「られる」の接續のしかたは、前項の受身、可能の揚…...
用ゐないことは可能の場く口と同じである。
、北日のことを思ひ川す(サ行四段)。
〆昔のことが思ひ出される(ラ行下一段)。
、あなたの來るのを待つ(タ行四段)。
〆あなたの來るのが待だ,れる(ラ行下一段)。
119
---------------------[End of Page 133]---------------------
詞
三
自發と可能との間には意味の本質的な區別があるわけではな...
五 敬讓
動詞の語尾に、敬讓を表はす接尾語「れる」「られる」をつ...
る」の接續のしかたは前項と同じで、この場合には時に命令形...
私は今日出かける(力行下一段)。
{
先生は昨日出かけられた(ラ行下一段)。
人の厚意を受ける(力行下一段)。
{
人の厚意は素直に受けられよ(ラ行下一段)。
敬讓の接尾語による敬讓の表現は、話手の敬意の表現と考へ...
の敬讓の意の直接的表現ではなくして、事柄について、それを...
て表現するところに右のやうな敬譲の表現が成立つのである。...
亅20
---------------------[End of Page 134]---------------------
論
第二章語
と比較するとこ暦明かにすることが出來る。
先生は昨日出かけられた。
先生は昨日お出かけなされた。
先生は昨日お出かけになつた。
即ち、或る動作を、事實そのままのものとして表現せず、「...
を用ゐて、そのやうな事實が、「出來する」「威就する」とい...
それが敬讓の表現となるのと同じである。
以上述べた受身、可能、自發、敬譲の表現に用ゐられる接尾...
その起源に於いては、恐らく、存在を意味する動詞「あり」の...
悉のではあるまいかと考へられる。
また、これらの接尾語がついたものは、一語として考へられ...
も考へられるのであつて、次のやうな用例についてこれを見る...
如何に困難であるかを知られるのである(『夜明け前』、原...
右の「知られる」は「知る」と「れる」との結合した複合動...
121
---------------------[End of Page 135]---------------------
詞
語と見れば、當然右の文は、「困難であるかが知られる」とな...
るが、例文のやうに、「……を知られる」となつてゐるのは、「...
語として、「……を」といふ助詞が用ゐられたものと解されるの...
島と島との間を見通せないので(『志賀直哉全集』巻七)
右の「・…:の聞を」は、「見通す」(他動、サ行四段)の客語...
下一段の可能の動詞として次へ續いて行くのであるから、この...
一語でありながら、意味的には二語の複合語と同じやうに用ゐ...
妻を殺きれ、子を殺されて、われ亦死しては竟に釜なし(『...
「殺す」の客語は、「妻」及び「子」で、その主語はその殺...
主語は、この文の話手「われ」であつて、「殺され」といふ動...
同様に、二語に分離して用ゐられてゐる。
私は電話をかけられて困つた。
事の顳末を報告されて、私も安心した。
右の文は、次の文とは當然意味が異なつて來る。
122
---------------------[End of Page 136]---------------------
事の顛末が報告されて、 一切が明かになつた。
前の文では、「肇の顴末」は、「報告す」の客語であるが、...
六 使役
他動詞の語尼に、更に他動を表はす接尾語「す」「せる」「...
讀ます (使、サ行四段) 本を讃ませば、讀め...
讀ませる (使、サ行下一段) 本を讃ませれば、讀...
受けさせる (使、サ行下一段) 試驗を受けさせた。
「す」「せる」は必しも和通じて用ゐられるとは限らないや...
ゐられる。
、やらした やらせば、やります(「す」を附けた場八口...
〆やらせた やらせれば・やります(「せる」を附けた場...
、持たした 筆を持たせば、立派に書く。
123
---------------------[End of Page 137]---------------------
詞
一に
戸持たせた 筆を持たせれば、立派に書く。
サ變の他動詞を使役にする場合には、「發見しさせる」とは云...
使役とは、他動詞に更に他動の接尾語が付いたものであるか...
いふことが出來る。それが複合語的性絡を持つて分離されるこ...
ある。
私は彼に劇をやらせた。
右に於いて、「私」は「やらせ」の主語であるが、「劇」は「...
使役の構成は、二重他動にあるのであるから、自動詞に「す...
ても使役にはならない。
沈む(自)
一
霈輪)(使讐す(他)
浮く(自)
{浮かす(他)浮か茎他)
124
---------------------[End of Page 138]---------------------
〆
ー亅4生ー
'
-气〜ー1《
尸浮かさせる(使)
喜ぶ(自)
{
喜ばす(他) 喜ばせる(他)
寢る(自)
{
寢す(他) 寢かす(他) 寢かせる(他)
寢させる(使) 寝かさせる(使)
ただ、「せる」「させる」のついた他動詞は、そのまま使役に...
ある。
論
第二章語
チ形容詞
、鴫.ババ灯ハ◎巽
〔形容詞は用言の一種であつて、動詞と異なるところは、活用...
は無關係に、一律に「く」「い」「けれ」と活用す磁ことであ...
關係から活用形を持つが、それぞれの活用形に接續ナる語は、...
また、動詞の場合には、語尾變化だけで命令を表はすことが出...
125
---------------------[End of Page 139]---------------------
詞
ξ
指定の助動詞「ある」を附け、その命令形によつて表はすから...
化としては命令形を缺いてゐる。また、動詞の場合ては、活用...
との出來る推量、並に過去及び完了は、形容詞の場合には、指...
て附く。
命令の表現
正しくあれ(「あれ」は形容詞の連用形に附く)。
推量の表現
寒からう(寒くーあらーう)。
過去及び完了の表現
美しかつた(美しくーあつーた)。
形容詞の活用形は次の通りである。
未然形 助動詞「ない」が附く語形。(こ
正しくない。 高くない。
連用形 助詞の「て」或は用言が附く語形。
126
---------------------[End of Page 140]---------------------
論
第二章
塑1
5覧;■
丸くて大きい。 美しく見える。
終止形 切れる語形。
流れが早い。 損害が大きい。
連體形 體言、例へば「こと」が附く語形。「
勇ましいこと 高い山
假定形 助詞「ば」が附く語形。
早ければ待ちませう。 恥かしければ止めよ。
語尾及び語幹については既に動詞の項で觸れたが、|動詞の語...
(一) 手なが 足ばや 待ち倒
(二) 高値 遠ざかる 細長い
三)瀏さ矧さ 珈
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詞
竇
はた、「ほそぼそ」「近々」のやつに覊を重ねて一語を構成し...
や到着した」のやうに一語としての機能を持つことが多い。
以上のやうな形容詞の語幹の性質から到斷して、形容詞の語...
よりも、むしろ活用を持つた接尾語と見る方が適切であると云...
語として、「しい」「ない」「らしい」「がましい」等がこれ...
的には接尾語或は獨立の一語と見るべきものもあるであらうが...
語尾と語幹は全く一語に結合して殆ど遊離性を持たない點で形...
(一) 助動詞「ない」の代りに、打消助動詞「ぬ」を用ゐる...
のやうにいふ。この場合「ある」は形容詞の連用形につ...
面白からぬ傾向(面白くーあらーぬ)
リ
いはゆる形容動詞の取扱ひ方
黛、
㌃(
Y ㌔
歌
本書では、形容動詞の品詞目を立てなかつた。そこで、從來...
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4
論
第二童語
まつ、形容動詞と考へられて來た語を擧げて見るのに、
一 「白からう。」「白かつた。」といふ云ひ方に於いて、...
詞の活用形と認めるのである(文語に於いて第一種形容動詞とい...
二 「靜かだ。」「丈夫だ。」の如き類である(文語に於い...
の)。
三 「堂々たる風采」「確乎たる意志」に於ける「堂々たる...
活用形と認めるのである(文語に於いて第三種形容動詞といはれ...
橋本進士口博士に從へば、右の中、第一の場合は、活用形も...
ゐられず、かつ助動詞「う」と「た」とに接續する場合だけで...
活用系列の中に收めて、特に第二種形容動詞といふものを立て...
については、體言に連る場合にかぎられるから、これを連體詞...
して取扱ふ必要はないとされた。(一)かくして、口語で形容動...
第二種形容動詞に當るものだけに限られ、その活用形は次のや...
129
---------------------[End of Page 143]---------------------
詞
三
靜か 纛釐
だら 未然形
にでだつ 連用形
終亅}=形連體形
な
なら 假定形
命令形
1eo
以上は橋本博士の見解であつて、これは國定教科書に採用さ...
である。なほ、他の學説も紹介すべきであるが、それらについ...
附説することにして、ここでは直に本書の見解を述べることと...
第一に、「靜かだ」「丈夫だ」を一語と考へ、そこからこれ...
てるべきであるといふ考へが出て來るのであるが、これらの語...
一の問題として取上げられなければならない。一般に我々の常...
「靜か」「丈夫」といふやうな語は、「親切」「綺麗」「勇敢...
などの語と共に、一語として考へられ、辭書に於いても一般に...
これは、文法を取扱ふ上の一の重要な根據である。橋本博士は...
ゐられないことを理由として、一語と認めることを不穩當であ...
ー
匪
・監■瞹
---------------------[End of Page 144]---------------------
癰竃、ー|耄《・ 鮨》亅1墾量丿ヨ墾・〜弓
2Jq{・
論
第二章語
「たちまち」「すぐ」といふやうな語も、連用修飾語以外に主...
ことのない、用法の限られた語であるが、これを一語でないと...
つ、「靜かだら」「靜かなら」といふやうな語もそれだけ單獨...
これを一語とすることは不穩當であると云はなければならない...
今、「靜か」「丈夫」を一語とするならば、「靜かな」「靜...
髀言 指定助動詞
彼は私の親友だ。
髀言 指定助動詞
彼は親切だ。
ただ右の二例について懾別されることは、意味の上から云つて...
131
---------------------[End of Page 145]---------------------
詞
三
であるのに對して、後者の「親切」が形容詞的であり、從つて...
に」といふやうな連用修飾語を加へることが出來る。しかし、...
とで、「親友」「親切」の二語が語性を異にしてゐるためであ...
へば、「健康」「單純」「單調」といふやうな語をとつて見て...
彼は健康を誇にしてゐる。
彼は非常に健康だ。
單純を選ぶ。
極めて單純な事柄。
單調に飽いた。
すこぶる單調だ。
これらがいづれを名詞とし、いづれを形容動詞とするかは容易...
あつて、教育上からも極めて困難な問題である。これらの相違...
らるべき事柄ではなくして、名詞の意味論に所屬する問題であ...
ゐる語の中にも次のやうな用法がある。
132
---------------------[End of Page 146]---------------------
論
第二章話
明日から學校だ。
水に入つたら、てんで金槌だ。
名詞や體言が、連用修飾語をとることについては、文論の述語...
形容動詞を立てることの不合理は、その敬語的表現の説明に...
「静かだ」に對應する敬語的表現は「靜かです」となるのであ...
動詞と立てるならば、「静かです」も當然形容動詞としてその...
ばならない筈であるが、國定教科書に於いては、「です」を斷...
「靜かです」は形容動詞の語幹に「です」が附いたものといふ...
なつたのであるが、もし「靜か」を一語と見ることが出來ない...
ば、「靜…かです」も當然それだけで一語と見なければならない...
斷定を表はす語であると見ることも出來ない譯である。本書に...
は「靜かでございます」の場合も、「静かだ」の場合と同樣に...
「でございます」が附いたものとして説明した。
橋本博士は、「確かである」「立派でございます」のやうな...
133
---------------------[End of Page 147]---------------------
三謁
「立派です」などとは別で、副詞「確かで」と、補助用言「あ...
(一) 『國語の形容動詞について』橋本進吉博士著作集 第...
(二) 『新文典別記』上級用(昭和十三年二月版)二九八頁
(三) 『國語の形容動詞について』橋本進吉博士著作集 第...
(四) 『新文典別記』 口語篇 三七.}只
134
---------------------[End of Page 148]---------------------
語
讌
鍬
日本語に於いて認定される單語は、一般に格の記號を持たな...
格性であるといふことが出來る。從つて、そこから導き出され...
念を件はない。これに反して、ヨーロッパの言語のあるもの、...
語の如きに於いては、名詞は必ず何等かの格記號を件ふのが常...
「机」といふ語に和賞するラテン語、ドイツ語を考へることは...
には、主格を以て代用するのである。印歐語は元來このやうに...
そこから導き出された品詞の概念の中には、他の語との關係の...
騨&Φo怠く①鴇㊤αくΦHび のやうな口m詞は、これらの語が、常...
的關係から命名されたものである。動詞くΦ筈に對する見方にも...
詞の陳述をすることに、その本質的性格を認めようとするので...
の概念的表現とが不可分離のものとして融合してゐる。
以上のやうな印歐語の性格に對して、國語に於いては、格は...
135
---------------------[End of Page 149]---------------------
'
詞
冒
つて表現される。從つて、名詞と格表現との結合である句が、...
る一語に相當する譯である。同様にして、國語の動詞は、用言...
て理解される以外に、それが陳述の機能を持つと考へることは...
於ける陳述の表現參照)。
ところが國語に於いても、}或る種類の語は、連體修飾語か、...
れないといふやうなものがある。即ちこれらの語は、格表現が...
てゐると見るべきものなのである。そこで、これらの中、連體...
るものを連體詞といひ、連用修飾語としてのみ用ゐられるもの...
これらの名稱は、體言、用言、動詞、形容詞等の品詞の概念が...
質に基づいてゐるのに對して、文構成上の役目をも含めて呼ぶ...
見出すのである。これらの品詞と他の品詞との關係を明かにす...
いて説明を試みてみる。
イ 昔のことです。(體言)
ロ ある日のことです。(連體詞)
136
---------------------[End of Page 150]---------------------
論
第二章語
イの「昔」といふ語は、助詞「の」を件つて、下の體言「こと...
つてゐるが、修飾的陳述の表現である「の」を除いた「昔」と...
それは他の別の格にも立つことが出來る語である。換言すれば...
語に用ゐられてゐるので、ここでは、體言としての品詞の性質...
別のものと考へられる。これに反して、ロの「ある」は、語形...
一往體言とすることが出來るが、この語は、英語のけぼρ爵暮等...
ゐられたものを、αΦ日8ω零暮ぞ①㊤&Φo試くΦと呼ぶやうに、その...
語であるから、その文構成上の職能をも含めて連髏詞と呼ぶこ...
といふ名稱は、近頃の學者の考案したものであるが、既に總論...
て置いたやうに、いはゆる形容詞といふ名稱は、このやうな形...
めに保留して、連體詞と呼ぶ代りに、これらをこそ形容詞と呼...
ふ。從つて、これらの語は、形容詞的職能を持つ品詞の意味に...
稱は、このやうに職能を含めた名稱であるから、これを擴張し...
の」を、その修飾的陳述を表はす「の」を含めて、連體詞と云...
---------------------[End of Page 151]---------------------
る譯である。嚴密な意味に於ける連體詞に於いて、右のやうな...
一 本問題 該事件等の漢語に屬するもの。
二 とんだ災難 いはゆる秀才型 大きな(一).家 ...
三 イ こんな話 あんな出來事
ロ この本 その時
三は、これらの語の性質上、むしろ代名詞の系列に所屬させ...
次に、副詞について述べる。
イ 昔おちいさんとおばあさんがありました。
ロ 會議はすでに終つてゐた。
---------------------[End of Page 152]---------------------
論
第二賣語
イの「昔」は、逋體詞の場合と同樣に、品詞としては體言であ...
語として用ゐられたものである。ところが、ロの「すでに」は...
等のいはゆる形容動詞と云はれてゐる語が、「靜か」と「に」...
解して二語の結合と考へられるのに對して、これだけで一語と...
そしてイの場合と異なるところは、この語が體言として種々の...
性のものではなく、逋用修飾語として以外には用ゐられない語...
用修飾語としての性質をその中に持つてゐると見ることが出來...
にして概念と同時に修飾的陳述を含む語を特に副詞と名づける...
な例に於いて、
花が美しく喚いてゐる。
「美しく」を形容詞と見るべきか、副詞と見るべきかについて...
詞と見る立場は、この語を用言の一活用形と見るのであつて、...
文に於ける職能といふものは考慮の外に置かれてゐる。それは...
用言として、本來、無格性のものであるから、この語の品詞が...
---------------------[End of Page 153]---------------------
ば、右のやうに答へるのは當然である。今、この語を副詞と見...
用修飾的陳述をも含めて云ふのであつて、實は、そのやうな連...
形式を以てこの語に別に加へられたものと解することは、無格...
に於いて當然認められなければならないことである。これを圖...
鬨し-π
即ち、「美しく」と、零記號の陳述とを含めて始めて副詞とい...
もし副詞の名稱も廣義に解するならば、この語の、この場合の...
とが許されるのは、連體詞の場合と同樣である。しかし、「美...
らば、
美しく、赤い花
とも云はれるやうに、連體修飾語にも立ち得る語であり、更に...
ならば、一義的に副詞とは云へないことは明かである。ヨーロ...
を添加して連用修飾語的職能を一語の中に表示するのと異なり...
決して格を表示するものではないのであるから、一語に郎して...
140
---------------------[End of Page 154]---------------------
論
第二章
容詞の連用形を副詞といふことは出來ないのである。ところが...
のやうに、一語の中に連用修飾的陳述を含めてゐるのがあるの...
取扱ふのである。
ここで連體修飾語及び連用修飾語の名稱について一言するな...
とは、活用形の名稱の適用であると思ふのであるが、この名稱...
續關係を形式的に云つたもので、そこには、文の職能に關する...
ある。文の構成要素の間の職能關係は、體言、用言等の品詞別...
係に於いて成立するのであるから、文構成の職能に關する用語...
形容詞的修飾語及び副詞的修飾語の名稱を使用するのが合理的...
詞、副詞の名稱は、語の意味的な機能關係について云はれるこ...
きつばりお言ひでしたか。
明日から學校だ。
に於いて、「きつぱり」は常に副詞的修飾語に用ゐられる語で...
づけることは既に述べた。そしてこの語は、下の「お言ひ」と...
141
---------------------[End of Page 155]---------------------
量
を修飾する關係に立つてゐる。しかし、「きつばり」といふ副...
係してゐるのでなく、この語の持つ動作的意味に關係してゐる...
日」は、助詞「から」によつて格が表示され、連用修飾語に立...
一般には、用言との關係が豫想されるのであるが、ここでは、...
る。これも、實は體言そのものが關係してゐるのでなく、「學...
關係するのである。「學校」は、ここでは建築物の意味でなく...
ゐられ、動作、歌態を意味するのである。從つて、「明日」と...
ふよりは、副詞的修飾語と呼ぶのが適切である。橋本博士は、...
飾語、特に形容詞的修飾語の名稱は、適當でないとして、連用...
つて居られるが、三)それは、形容詞の名義が國語に於いては特...
て居ることが理由とされるからである。右に述べた私の提案は...
ゆる連體詞の名稱に保溜した場合にのみ成立するものであるこ...
副詞の修飾關係を右のやうであるとして見れば、
一 大履靜かな家 もつと穩かな日
142
---------------------[End of Page 156]---------------------
論
第二蕈
安r紀
質日
に於いて、副詞「大騒」「もつと」は、從來、形容動詞「靜…か...
ると考へたので、連用修飾語として差支へなかつたのであるが...
定して、これを、體言「靜か」「穩か」と「な」の結合とした...
然體言を修飾するものと考へなければならない。これらの副詞...
状態的意味の修飾語と考へられるのである。
二もつとゆつくり歩け。
だいぶんはつきり見える。
右の傍線の副詞は、「ゆつくり」「はつきり」といふ體号口に...
同樣に、これらの語の歌態的意味に關係することによつて副詞...
三 わつか三人で仕上げた。
すこし右へよれ。
ずつと晋の話
右の例は、甚[だ難問であつて、確實な説明は下しにくいが、「...
人」が量的な歌態を表はしたものと考へられる。「すこし右」...
143
---------------------[End of Page 157]---------------------
詞
一二
方向でなくして、そこには、動作の概念が含まれて居るものと...
場合の「昔」も同樣に、時間を遡つて行くといふ思考上の動作...
つて、過去の年代が決定されて居る場合、例へば、「ずつと寛...
ない。「はるか頂上には雲がただよつてゐる。」といふやうな...
に視覺的な動作が拌ふが故に云はれることであらうと思ふ。右...
り歩き」「いちや漬け」のやうな複合語の要素聞の關係につい...
かと思ふ。これらに於いては、「ひとり」「いちや」はそれぞ...
味に對して副詞的修飾語に立つてゐるのではないかと思ふ。
最後に、從來副詞の用法として擧げられて來たものの中で、...
ものは、いはゆる陳述の副詞と云はれてゐるものである。例へ...
明日は恐らく晴天だらう。
彼はあのことを決して忘れない。
もし君が行けば、僕も行く。
右の傍線のある「恐らく」「決して」「もし」は、それぞれ「...
144
---------------------[End of Page 158]---------------------
メ
勺月u
、丿i>
論
第二章語
けLの零記號の陳述に「ば」を伴つた假定的陳述を修飾してゐる...
一般に云はれてゐる。今まで述べて來た副詞の諸例は、そのす...
あるが、ここに擧げた陳述副詞は、辭を修飾するのであるから...
めて異例に屬するものと云はなければならない。そこで、これ...
所屬して副詞と云ふことが出來るものであるかどうかといふ疑...
思ふに、これらは、副詞として詞に所屬するものでなく、辭に...
話手に對立する一切の事柄を表現するのである。「おほかた仕...
だいた。」等の傍線の語は、事柄のありかたを表現して詞であ...
に關係する事柄に通じて用ゐることが出來る。ところが、これ...
に、更に話手の心持ちに關する表現に限定されるやうになると...
やうになる。
おほかた 仕事もすむ頃だらう。
45
多分 うまく行くだらう。 ...
---------------------[End of Page 159]---------------------
詞 右の「おほかた」「多分」は、十中八九は斷定し得るが、...
三
氣持を表現してゐるのである。これらが、辭とみなされる理...
第三者の心持ちの表現匹は用ゐることが出來ないからである...
な語も、本來は「誰が見ても異議がなく」の意味で、
勿論、次のやうな場合は例外である。
,のやうに用ゐられるのであるが、これが次第に話手のことに...
の表現として陳述の辭と呼應して來る。「斷じて」といふ語...
通じて、「斷じて行へば、鬼祚も遞く」といふやうに用ゐら...
明かであるが、この語が、話手の心持ちの表現に限定されて...
氣持の表現として、特に否定辭と呼應して、「斷じて不正は...
れる。この場合、「行ふ」の主語が、どのやうな人稱に屬し...
手の否定に關して云はれることである。かうなると、もはや...
ければならない。
佐久間鼎博士は、
146
---------------------[End of Page 160]---------------------
論
第二章語
この料理は だんじてうまい。
あの映識は だんじておもしろかつた。
といふやうな方言的用例を擧げて居られるが、これは述語の状...
詞としての副詞の轉義であるから陳述に關係がない。・四
以上のやうに、陳述副詞と云はれてゐるものは、云はば、陳述...
れたもので、「無論……だ」「決して……ない」「恐らく……だらう...
きであら亀古く話手の禁止表現として行はれた
吹く風をな來その關と思へども
の「な……そ」と同類と見ることが許されはしないか。暫く疑ひ...
ことにした。次に、いはゆる陳述副詞の例を擧げるならば、
響「だ」「です」或は用言の零記諜譚應する.
きつし
決してノ
---------------------[End of Page 161]---------------------
詞
三
とても
斷じて
おほかたμ
恐らく、
どうか〆
強い否定の「ない」に呼應する。
どうぞ楓
想像、推量の辭「だらう」「でせう」に呼應する。
もし
懇願を表はす辭即ち命令形に呼應する。
假定的陳述に對應する。
148
(一) 「大きな」は、「靜かな」「ほがらかな」等のいはゆる...
容動詞の場合には、「靜か」「ほがらか」を一語として、...
來ることについては前項に述べたが、「大きな」について...
出來ない。「大き」といふ語には一語としての意識がない...
以外には用ゐられない語である。
(二) 「曲つた」の「た」は、起源的には「たり」から出たも...
ゐる」といふ訣態を表はす詞としての用法と、過去及rび完...
次第に助動詞的用法に移つて行つたのであるが、「たり」...
---------------------[End of Page 162]---------------------
の用法が並立してゐる。詞としては、「尖った帽孑」「腐...
れるが、これはすべての動詞について規則的に云はれる譯...
「倒れた人」等は、「走ってゐる」「泳いでゐる」「倒れ...
た、右の状態を表はす詞としての「た」は、ただ連體形と...
に用ゐられるので、「帽子が尖った」は「帽子が尖ってゐ...
見れば、右の朕態を表はす「た」は、連體修飾語としてし...
するのが遖切である。右のやうな「た」は、状態を表はす...
(接頭語と接尾語の項及rび過去及び完了の助動詞の項參照)。
(三) 『改制新文典別記』 口語篇 一コニ○頁
(四) 佐久聞鼎『現代日本語法の研究』九〇頁
ル接頭語と接尾語
第二章語
接頭語、接尾語は、接頭辭、接尾辭ともいひ、これを總括し...
することの出來るやうな語をいふのである。從つて、それは、...
149
---------------------[End of Page 163]---------------------
詞 考へられ、これを研究するのは、文法學以前の語の語源學...
三
接頭語、接尾語の多くは、古くは一語としての獨立の機能と...
つて來るのであつて、これを全く語の内部的な構成要素と見...
を認めるかといふことは、國語の構造の問題にも關連し、ひ...
重要な關連を持つ問題となつて來るのである。
一 接頭語
接頭語は、鷲Φ臣図の譯語で、明治以後新しく加へられた文...
籾立した一語としての機能を持たない造語成分を云ふのである...
められるものもあり、かつそれだけで一定の意味を有するも...
出・來た語は、複合語と認むべきものである。現代語として...
擧げるならば、
す
15J
---------------------[End of Page 164]---------------------
す足 すつばだか すがほ
お
お米 おいそがしい おつかれ
ま(まつ)
ま夜中 ま新しい まつか(貫赤)
こ
こうるさい こぎれい こやかましい
びく
ひつたくる ひつかく ひきはがす
ぶつ
ぶつたたく ぶつかける ぶちのめす
なほこの外に漢語起源のものを擧げれば、
ふ(不)
不案内 ふたしか 不都合
151
ぶんなぐる
まつくら
---------------------[End of Page 165]---------------------
詞
三
ぶ(無)
無器量 ぶしつけ 無風流
ご(御)
御馳走 倒苦勞 dたいそう
ぜん(全)
全日本體育連盟
二 接尾語
勤翻尾萱、qh・図の譯語で、獨亠ユした壽としての機能を持た...
あるが、英語などと比較して、國語の接尾語は、機能上、單...
|第《、》壽として取扱ふ方が適切で巉英語などの麓語も、起源...
持つたものが、相當多かつたのであらうか、今日接尾語と云...
部的構成要素となつてしまつてゐるものについて云はれる。...
の品詞性を與へるものと考へられてゐる。例へば、ζを附け...
しての資格が與へられる。このやうな接尾語の概念を、その...
152
---------------------[End of Page 166]---------------------
論
二章語
ことが出來るかは甚だ疑問である。例へば、山田孝雄博士は、...
ふるものと、一定の資格を與ふるものとし、後者に於いて、更...
資格を盥ハふるもの、形容詞の資格を與ふるもの、動詞の資格...
與ふるものといふ風に分類して居られる。(一)しかしながら、...
語の性格を如實に説明出來るかどうかは甚だ疑はしい。第一に...
尾語と云はれてゐるものは、單純に或る品詞性を附與するもの...
が、皆それぞれに或る概念内容を持つものであることに於いて...
甚しく相違する。例へば、動詞の資格を與ふる接尾語として山...
見ると(山田博+は接尾辭と云はれてゐる)
めく-春めく 時めく
がるーおもしろがる 見たがる
が擧げられてゐるが、これらの接尾語は、もとの語に、ある別...
であるといふよりは、更に別の意味を加へてゐるものであるこ...
れ自身が或る概念内容を表現してゐるのである。英語で昌oび一...
153
---------------------[End of Page 167]---------------------
罰 ンス語でげ①霞Φq図からげΦ母ΦqωΦ日①昌けが出來る場合...
三
の品詞を決定するもので、語の意味に新しいものを附...
に、國語に於いては、接尾語は他の語との關係に於いて...
と考へられることである。例へば、次の例、
私に何か云ひたげにしてゐた。
地に屆きさうな様子です。
㌃あなたにほめられた瀏にそん董をするのです・
に於いて、⇒接尾語と云はれてゐる「げ」「さう」「さ」...
絢、塔さう」「ほめられたさ」で壽を襞してゐるのでは奮、「...
知 「あなたにほめられた」に附いたものと考へなくては...
を以て、「私に何か云ひたい」といふ句全體によつて修...
罫それは一語の構成要素といふ吉も、それ|自《ノ》竺語として...
・・ 合してゐるものである。異なるところは、一般の語で...
子」といふ風に、これも形容詞を構成する接尾語と云は...
154
---------------------[End of Page 168]---------------------
論
第二'3
一庄
【1口
續するのに對して、この場合は、語幹から直に接續してゐる。...
である。そしてまた、「げ」「さ」「さう」は、それだけで獨...
かの修飾語を件ふといふ相違がある。國語の接尾語は以上のや...
これらと、他の語、特に獨立しない語との間に明確な一線を劃...
ば、助數詞と云はれる「二羽」「三羽」の「朋」、「四本」「...
れてゐるが、これらと獨立した用法を持つ「二箱」の「箱」、...
或は動詞的接尾語の中、「ばむ」「めく」の如きものと、獨立...
る」「時めかす」の「ぶる」「めかす」と本質的に異なつたも...
である。そこで、一國語の接尾語をもし定義するならば、比較...
て一語を構成することの出來る語とでも云はなければならない...
來るといふ點で、いはゆる形式名詞のやうなものと區別するこ...
いてはその項に既に述べた。
右のやうな接尾語の概念は、これ.を潼途mの場く口にも遖用出...
館(寫眞館、本館) 店(商店、藥店)
---------------------[End of Page 169]---------------------
調 手(歌手、運轉手) 人(病人、役人、軍人、法人)
霊 以上のやうなものと、獨立した用法もある長(驛長)、感(讀...
的な相違は認め…難い。
1,r
體言的接尾語の例
げ 1文語的な云ひ方に殘る。
がた ー殿がた あなたがた
かた ー讀みかた 泳ぎかた
がてら1人を訪ねがてら、京都へ行きました。(e
たしさささ
ちなうま
1寒さ
ー1-山下さま(敬稱)
-悲しさうな顏 あの人は、うれしいさうです。
1東京を立ちしなに
ll君たち
---------------------[End of Page 170]---------------------
丶
[岡
第二章語
だらけi泥だらけ
ども1私ども
て -賣詞 讀みて(「てがない」といふ時は獨立する)
なみ 1軒なみ 足なみ 人なみ(人と同等の意)
ながらー本を譲みながら歩く 皮ながら食べる
「こはいながらも通りやんせ」「芳いながらしつかりし...
たややもめみ
うと
域
ー赤み すごみ
ーこはいめ 三番め つぎめ
t枕もと手もと
1書きやう 今やう 返事のしやう
1餅や わからずや
1尖つ掴 曲つだ(これが附いた豁は、連體詞と認むべきことは...
の項で述べた。)
ー職域地域
157
---------------------[End of Page 171]---------------------
詞
三
然線觀化間
ー1東京大阪聞 一年開(「その聞」などと用ゐられる時は形式...
1能率化 具體化
-世界觀側面觀
-東海道線本線
-政治家然 殿樣然
糞㌘4鳶
用言的接尾語の例
がる 寒がる 悲しがる いやがる
がましいーおしつけがましい 催促がましい
がたい1讀みがたい 濟度しがたい
きる ーやりきる 食べきる
しい(い)i赤い 目星い 大人しい 腹立た図 たのも図
させる(使役)1起きさせる 受けさせる
じみる1世帶じみる 老人じみる
158
'
・-ーーー ー 畢レ¶
サ
4
---------------------[End of Page 172]---------------------
、
聲,ー6喝〜も
亀丶1■
第二章語 論
す(他動)ーおこす あるかす
だつ 1殺氣だつ 目だつ きはだつ
だす 1動きだす(始める意) さぐりだす(出す意)
たがる1行きたがる 見たがる
たい -行きたい 見たい
つく 1産氣つく 怖氣つく 物心づく
つける1行きつける 見つける 叱りつける 呼びつける
なす 1山なす大波 瀧なす汗
ばむ 1汗ばむ 黄ばむ
ぶる ー大人ぶる 學者ぶる
めく 1春めく 田舍めく
らしい-ー男らしい 馬鹿らしい いやらしい
れる、られる1叱られる 受けられる
159
---------------------[End of Page 173]---------------------
三
用言的接尾語の中、動詞に規則的に附く受身、可能、使役、...
γ(こ『日本文法學概論』五八〒五全ハ頁
(二) 木枝氏は,『高等國文法薪講 品詞篇』 八蝋=一頁に...
160
ヲ結
以上述べた詞の下位分類の中には、形式名詞、形式動詞の...
競一釁口(名詞を含む)
! 二 用言
イ 動詞
---------------------[End of Page 174]---------------------
ロ 形容罰
三 代名詞
ノ・ 名詞的代名詞
ロ 連體詞的代名詞
ハ 副詞的代名詞
四 連體詞
五 副詞
四 辭
論
二章語
イ總 論
辭は、「ジ」「てには」「てにをは」と呼ばれ、語の二大別の...
161
---------------------[End of Page 175]---------------------
四辭
大體次のやうに要約することが出來る。
(一) 表現される事柄に對する話手の立場の表現である。
(二) 話手の立場の直接的表現であるから、つねに話手に關...
(三) 辭の表現には、必ず詞の表現が豫想され、詞と辭の結...
(四) 辭は格を示すことはあつても、それ自身格を構成し、...
ロ 接續詞
接續詞は、一般に、語、句、文を續ける語であると定義され...
---------------------[End of Page 176]---------------------
第二章語
イ 山また山を越えてゆく。
ロ 彼は英語も話せ、かつドイッ語も讀める。
ハ それは私も讀んだ。しかし面白い本ではない。
右の例の傍線の語は、それぞれに、語、句、文を接續する接續...
---------------------[End of Page 177]---------------------
四辭
立場の相違で、「かつ」はそのやうな立場の表現を明かにした...
彼は英語が話せ、ドイツ語が讀める。
ハの場合も同様で、ただ事實をそのまま記述するならば、
私も讀んだ。面白い本ではない。
となるのであるが、この二の事實に因果關係を見出すのは、話...
---------------------[End of Page 178]---------------------
接續詞の性質を理解するためには、これを詞との關係に於い...
イ いづれまたおうかがひいたします。
ロ 昨日はお邪魔しました。またその節は御馳走樣になり...
イの場合の「また」は、「おうかがひいたします」といふ動作...
「なほ」といふ語についても、
イ そんなことをされては,なほ困る。
ロ 明日御注文の品をお屆けします。瀏その時くはしく御...
イは前項の「また」と同様、困りかたの度が一暦はげしくなる...
165
---------------------[End of Page 179]---------------------
四辭
副詞的修飾語として用ゐられたので、詞に屬する。ロは、説明...
次に、接續詞は、意義上、接續助詞といはれる一群の助詞と...
山と、山を越えて行く(助詞)。 山また山を越えて行く(...
166
---------------------[End of Page 180]---------------------
それは私も讀んだが、面白い本ではなかつた(助詞)。 ...
彼は英語も話せるし、ドイツ語も讀める(助詞)。 彼は...
上段の助詞の場合は、形式上、上の語或は句に密接し、それで...
けれども、私は行かなければなりません。
しかし、もう駄目です。
のやうな文は、それに先行するものとして、「今日はひどい雨...
167
---------------------[End of Page 181]---------------------
盡しました。」といふやうな思想を受けて、はじめて「けれど...
ここに接續詞と接續助詞との密接な關係が考へられるのであ...
雨がひどく降つた。だが道はさほど惡くない。
「だが」は、先行文の陳述を「だ」で受け、それに助詞「が」...
また次のやうな例に於いて、
雨が止んだ。すると急に鳥が鳴き出した。
雨が止んだ。それで鳥が鳴き出した。
168
---------------------[End of Page 182]---------------------
第二章語
「すると」の「する」は、「雨が止む」といふ動詞を受けたも...
雨が止んだ。と急に鳥が鳴き出した。
そこで、前項、の「だが」「が」を接續詞と認めたと同様な意...
以上の説明の中、「それで」といふ接續詞については、なほ...
169
---------------------[End of Page 183]---------------------
四辭
ある。「それで」は、その成立について云へば、「それ」と助...
170
---------------------[End of Page 184]---------------------
二章 語
な關係を持つことは以上の論明によつて明かにされたと思ふ。
それならば、接續詞はどのやうにして、二の思想を結ぶので...
雨が止んだ。それで鳥が鳴き出した。
右の接續詞を伴ふ表現は、その意味に於いて、
雨が止んで、鳥が鳴き出した。
と同じである。そして、「雨が止んで」を一般に、副詞的(或は...
171
---------------------[End of Page 185]---------------------
四
辭
それはただ思想の轉換することを直接的に表現したので、「そ...
イ 彼は私に水を飮ませて呉れました。それから路銀のた...
ロ 私は○月東京に着いた。それから急いで彼の家にかけつ...
右の中、イの場合は、辭としての「また」「なほ」と同樣に、...
172
---------------------[End of Page 186]---------------------
を明かに承けてゐるので、「それ」を下の述語の副詞的修飾語...
接續詞の概念を明かにするために、凡そ語・句・丈の接續の...
一 語に關して
1 接續詞による
犬或は猫 老人及び病人
2 單に語を並べる(この場合符號の助を借りることがある)
山川草木 金・銀・釧∵鐵
二 句或は節に關して
173
---------------------[End of Page 187]---------------------
1 接續詞による
鳥が鳴き、そして花が咲く。
風が吹き、かつ雨がはげしい。
2 接續助詞による
鳥が鳴いて、花が倹く。
春が來たけれども、花が嘆かない。
3 用言、助動詞の連用中止法による
鳥が鳴き、花が咲く。
風が寒く、温度が降る。
彼は健康で、氣分も朗かだ。」
三 文に關して
コ 接續詞による
鳥が鳴く。そして花が咲く。
風が吹く。団れど寒くない。
174
---------------------[End of Page 188]---------------------
第二章語
2 文をただ連ねる
鳥が鳴く。花が咲く。
風がはげしく吹きつける。船は木の葉の樣に奔弄され...
思想の展開、接續は大體以上のやうな方法で表現されるのであ...
175
---------------------[End of Page 189]---------------------
四辭
零記號の辭の未完結形式(用言の連用中止法)ー接續助詞ー...
以上述べたところによつて明かなやうに、接續詞の持つ機能...
とは充分に認められてよいのではないかと思ふ。
接續詞として認められてゐるものを左に掲げて置く(中に問題...
が かつ けれど(も)
さて さらに されば
しかし しかしながら したがつて しかるに
すると すなはち
そうすると そうして そこで そして そもそも その...
それで(も) それとも それに それどころか それ故
それから それなら それだから そのくせ
ただ ただし だが だから だつて だけど だのに ...
176
---------------------[End of Page 190]---------------------
ついては つぎに
で では でも ですが でしたら
》}
ところが ところで とはいふものの
なほ ならびに
はた はなしかはつて
また または もつとも
ゆゑに よつて
論
二章話
(一) この場合の「と」を助詞と考へることについては、次の...
本書に於いては、右のやうな「と」を不完全形式を持つ指...
雨が止んだ。雨が止み急に鳥が鳴き出した。
右の傍線の概念内容冖を省略し、ただその陳述性のみを殘...
177
---------------------[End of Page 191]---------------------
辭 雨が止んだ。と急に鳥が鳴き出した。
四 になると見ることが出來る。從つて、この「と」は...
雨が止んだ。[]固急に鳥が鳴き出した。
同じやうなことは、助動詞「だ」の連用形「で」につ...
雨が止んだ。で急に鳥が鳴き出した。
右のやうな助動詞の連用形が、用言の連用形と共に、...
ノ〆(二) 『日本文法學概論』三九二頁以下
178
ハ 感動詞
感動詞は、感歎詞、間投詞とも云はれ、話手の感情や呼びか...
出來ゐい感動詞が常に話手の感情、應答の表現であつて、第二...
---------------------[End of Page 192]---------------------
や、應答を、「おや」とか「まあ」といふ風に表現出來な...
第二章語
一主客未剖の表現であると見るべきで逡礎つて虐動詞は、それ...
「感動詞は右に述べたやうに、主客未分の表現であるから、感...
179
---------------------[End of Page 193]---------------------
四辭
ああ、面白い本だ。
に於いて、「面白い本だ。」といふ表現は、「ああ」といふ感...
の相違が以上の如くであり、かつ、感動詞を後續文の修飾語と...
感動詞は、感動と應答の音聲的表現であるが、それならば、...
180
---------------------[End of Page 194]---------------------
.X一) 『日本文法學餌悃論』 三{ハ九百ハ
二 助 動 詞
論
語
章
二
助動詞の名稱が不適當なものであり、從つて今日一般に文法...
以上述べたやうに、助動詞は辭に屬するものとして、辭の一...
181
---------------------[End of Page 195]---------------------
四辭
ることの出來ないものであり、常に詞と結合して始めて其體的...
相鵞贈繁立場の翫募讐郵繋ガで萱そのことのために・
助動詞は、多くの場合に活用を持つことになるのであゐb用言は...
の場合は、一般には零記號の形に於いて陳述が表現される。換...
|劇が|劇日 |嚠だコ。(「な」「だ」は指定の助動詞...
|暖《用言》かい日 暖かい。(「な」「だ」に相當する...
助動詞によつて表現される陳連と、それに屬する語は次のや...
一 指定 だ ある
二打消 ないぬまい
三 過去及び完了 た
四 意志及び推量 う よう だらう らしい べし
182
---------------------[End of Page 196]---------------------
五 敬譲
ー指定
ー打稍
-推量
ます です でございます ございまず
ません でありません ありません
でせう
(一) 指定の助動詞 だ
論
第二章語
だ 語活劉
で 未然形
とにで 連用形
だ 終止形
のな 連體形
なら 假定形
o)零1形L
〆
」
め
指定の助動詞は、話手の單純な肯定到斷を表はす語である。...
は、從來助詞として取扱はれてゐたものであるが、下に擧げる...
183
---------------------[End of Page 197]---------------------
四 辭
る。本書に於いては、形容動詞を立てないから、從來形容動詞...
未然形(一)
體が健康でない。
連用形
體が健康である。(「ある」は指定の助動詞であるから、こ...
とが出來る)
體が健康であらう。(健康だらう)(二)
體が健康で、性質が楡快だ。(中止の場合)
私は健康で働いてゐます。(連用修飾的陳述を表はす場合)
月明かに、風涼し。(中止の場合、文語だけに用ゐられる)
元氣団、楡快悶、働いてゐる。(連用修飾的陳述を表はす)
隊伍整然と行進する。(連用修飾的陳述を表はす)
184
---------------------[End of Page 198]---------------------
論
二章語
花が雪と散つてゐる。(右に同じ)
「今日は行かない」と(三)云つてゐた。(右に同じ)
野となく、山と(鴎)なくかけまはる。
終止形
今日は日曜だ。(さ
連體形さ
それが駄目な時
僅かの御禮しか出來ない、
假定形(さ
明日おひまなら、お出かけ下さい。
氣分が惡いなら、お止めなさい。
あなたが行くなら、一緒に行きませう。
(ごつ跡動詞「ない」の癢する活用形を未然形の「で」としたの...
一般に未然形に付くのを原則とするところから、考へたこ...
185
---------------------[End of Page 199]---------------------
四辭
助動詞として「ない」の外に「う」があるが、「で」の場...
(二) 「であらう」の結合した「だらう」を本書では、別に推...
分析的に考へれば、「で」は指定、「あら」も指定、「う...
(三) 引用文を受ける「と」も全く同じで、引用文全體に、連...
(四) この場合も前例と同樣であるが、打消の助動詞「ない」...
とある家の側に(「と」の上にあるべき連體修飾語が省略...
一っとして上手に出來たものがない。
186
---------------------[End of Page 200]---------------------
第二章語
また次のやうな例も同樣に考へることが出來る。
雪子は晋を戀ふるあまり、さういふ義兄の行動を心の中...
つと白分と同樣に感じて、草葉の蔭から義兄を批難して...
やうどその時分、ー父が死んで間もない頃(『細雪』上)
(五) 「だ」はどのやうな品詞に接續するかと云へば、
(一) 名詞及び體言 山だ。 それは僕の生命だQ 行くの...
元氣だ。 駄目だ。
(二) その他、方言では用言の零記號の陳述の代用に用ゐ...
それはいけないだQ もつとやらすだ。
從來、形容動詞の終止形の語尾と考へられたものは全部こ...
嬢) 「な」「の」は、屡ー共通して用ゐられるが、語によつて...
場合とがある。「駄日の」「僅かな」とも云ふことが出來...
「の」がつき、「親切」「孤獨」「あやふや」等には、大...
(七) 「なら」は「ならば」とも用ゐられる。體言について假...
く。この場合は、用言の假定形に「ぱ」のついたものと同...
の指定の助動詞とが同じ價値になるわけである。
187
---------------------[End of Page 201]---------------------
四 跡
188
(二) 指定の助動詞 ある
楚
ある
未然形
あら
連用形
あり
終止形
ある
逹體形
ある
假定形
あれ
命令形
あれ
指定の助動詞「ある」は、元來、詞としての動詞「あり」が...
もので、指定の意味から云へば、前項の「だ」と同じであるが...
い「に」「と」と結合して、「なり」「たり」といふ助動詞を...
は、他の用言或は助動詞の接續機能を助ける役目を持つ。「あ...
表はす助動詞であるから、これが附いても、陳述の内容に變化...
めるやうな場合もある。前項の「だ」に於いて、推量の陳述を...
らば、未然形に「う」を附ければよいのであるが、「だ」の場...
---------------------[End of Page 202]---------------------
第二章語論
「う」を附けることが出來ない。そこで、「で」と「う」の中...
彼は正直でーあらーう(正直だらう)。
從つて、意味は、單に陳述に推量の加つたものに過ぎない。こ...
合にも適用される。
風が寒くーあらーう(寒からう)。
形容詞の零記號の陳述が、「ある」といふ助動詞に置換へられ...
ある。同樣のことが、過去及び完了を表はす場合にも起こる。
彼は正直でーあつーた(正直だつた)。
風が寒くーあつーた(寒かつた)。
「あり」が附いても、陳述の内容に變化が無いから、前項の「...
る」を加へても、同じ意味を表はすことが出來る。.肯定到斷が...
陳述が一層念入りになつたとも見ることが出來る。伊∵距ご。
彼は政治家でーあり、また音樂家でーある(政治家で、音樂...
189
---------------------[End of Page 203]---------------------
四辭
波がおだやかでーあれば、楡快でーある(おだやかなら楡快だ...
「ある」が否定を表はす打消助動詞に加つた時も、從つて、打...
我が生活樂にならずーあり(ならぎり、ならず。文語)。
未然形(一)
君はいやであらう。
花もちき咲くであらう。
連用形
今日は休日であり、大變な人出です。
昨日は寒くあつた(寒かつた)。
終止形
成績は良好である(「良好だ」と同じ)。
色は紅にーあり(紅なり。文語)。
前途洋々とーあり(洋々たり。文語)o
連體形
190
---------------------[End of Page 204]---------------------
彼が健在であることは輯もしい(「健在なこと」と同じ)。
假定形
正直であれば、きつと成功する(「正直なら」と同じ)。
命令形
勤勉であれ。
(】) 「であらう」は「だらう」ともいひ、それ全體で推量の...
謝剔詞の項点少照)o
(三) 打消の助動詞 ない
(推量の助
第二章語 論
γ
ない
未然形
○
連用形
なく
終止形一纛形
ない
ない
假定形
なけれ
命令形
O
未然形(一) 口語では用ゐられない。
191
---------------------[End of Page 205]---------------------
四辭…
連用形(昌)
風も吹かなくて、楡快な遠足でした。
體も丈夫でなく、余り無理は出來ない。
氣温も寒くなく、快適だ。
終止形
一向本も讀まない。
今日は暑くはない。
體は丈夫でない。
本も讀まないで、遊んでゐる。
病氣はたいして惡くないらしい。
連體形
あの人が來ないのは珍らしい。
このことを知らない人はありませんの
假定形
192
---------------------[End of Page 206]---------------------
勉強しなければ、駄目だ。
寒くなければ、出かけよう。
接續のしかたは、動詞形容詞においてはその未然形に附く。た...
机の上には本がない(「本があらない」とは云はない)。
また、助動詞「だ」の未然形「で」にも附く。
論
二章語
(一) 一般に未然形に附く推量の「う」は、連用形から「ある...
病氣ではなくーあらーう(なからう)と思ふ。
また、「食べなくない」「なくない」といふ二重の打消…も...
的少いので、未然形を缺くこととした。
(二) 動詞の未然形に附く「ない」は、 一般に助動詞と認め...
「ない」は、助動詞でなく、形容詞であるとされてゐる。...
寒くはない。 寒くもない。
といふやうに、形容詞と「ない」との間に、助詞「は」「...
らといふのであるが、それは、この「ない」を形容詞であ...
193
---------------------[End of Page 207]---------------------
四 辭
動詞に附く時と同樣に、打消であることに變りはないP動詞に附...
助詞を次甲のやうにして用ゐる。
流れはしない。 流れもしない。
即ち、動詞の場合には、「しない」が打消助動詞と同じ資格に...
の「し」は、形式動詞の項に述べたやうに、殆ど陳述性のみの...
が出來る。このやうな表現法は、文語の形容詞の否定表現にも...
寒くはあらずQ 寒くもあらず。
に於いて、「あら」は、詞としての動詞から陳述の表現である...
が全體で否定の辭としての役目をしてゐる。印語形容詞にっく...
置換へられたも.であ琢幽礁助鞠詞と考へられなければならない。
右・
194
(四) 打消の助動詞 ぬ
弖筏
口目
活用
ぬ
未然形
O
連用形
ず
終止形
連體形
ぬ(ん) ぬ(ん)
假定形
ね
命令形
O
---------------------[End of Page 208]---------------------
鎌二章語論
{亀⊆1弓{も
打消助動詞「ぬ」は、文語の殘存形として、或は方言として...
未然形 口語では用ゐられない。
連用形
飮まず、食はず、歩く。
そんなことにとんちやくせず、仕事を續ける。
絡止形
そんなことは引受けられん。
誰も來んね。
連體形
早くやらんことには、間に合はん。
假定形
切符を買はねば乘れません。
接續のしかたは、動詞においては未然形に附く。ただし四段活...
い。必要のある時は、形容詞の「ない」を用ゐることは、打稍...
195
---------------------[End of Page 209]---------------------
四辭
同じである。
サ變の動詞に附く時は、「しぬ」と云はずに、「せぬ」と云...
であるために、文語γ變動詞の未然形に接續する形が殘されてゐ...
形容詞においては、そのまま附かずに、助動詞「ある」を介...
暑からず、寒からず、まことに楡快だ(暑くーあらーず、寒...
好ましからぬ評到を聞く。
「ぬ」は右に述べた活用系列の外に、連用形の「ず」に「あ...
はれるが文語的用法である。
いらざることを云ふものだ(「いらずーあるーこと」の意、...
思はざるも甚しい。
橋本進吉博士は、右のやうに、「ず」と「ある」とが結合し...
の一助動詞として居られる。さうすれば、同樣に、「ない」「...
「べくーある」の結合した「なかる」「べかる」も一助動詞と...
なる。
196
---------------------[End of Page 210]---------------------
二章語論
(五) 打消の助動詞 まい
活用
語
まい
未然形
O
連用形
O
終止形
まい
疆迄假定形
(まい)
○
命令形
○
終止形
その話は知るまい。
つまらぬことは考へまい。
連體形
あるまいことでもない。
接續のしかたは、四段活用の動詞においてはその絡止形に、そ...
の未然形に附く。
「まい」は、第一人稱に關する動詞に附く時は、打消に意志...
197
---------------------[End of Page 211]---------------------
辭 動詞に附く時は打消に推量の意が件ふ(「多分、私は行かれ...
四 私は行く剖(意志)。
あの人は行くまい(推量)。
(六) 過去及び完了の助動詞 た
tg8
騒
た
未然形
たら
連用形
○
終止形
た
連體形
た
假定形
たら
命令形
○
「た」は、起源的には接續助詞「て」に、動詞「あり」の結...
意味の上から云つても、助動詞ではなく、存在或は歌態を表は...
をみなへしうしろめたくも見ゆるかなあれ刳宿にひとり立...
老いたる人
右のやうな例は、「荒れてゐる」「老いてゐる」の意味である...
---------------------[End of Page 212]---------------------
丶
論
語
章
二
る。このやうな「てあり」の「あり」が、次第に辭に轉成して...
存在、状態の表現から、事柄に對する話手の確認到斷を表はす...
助動詞と云はれるものはそれである。過去及完了と云へば、客...
やうに受取られるが、この助動詞の本質は右のやうな話手の立...
習慣に從つて過去及び完了の語を用ゐることとした。山田孝雄...
ふ語を用ゐて居られるのは以上のやうな理由に基づくのであら...
「た」の起源が以上のやうな有樣であるために、現在でも、...
尖つた帽子 曲つた道 さびた刀
しかしこのやうな用法はすべての動詞にあるわけではなく、...
「讀んだ人」は、「走つてゐる」「泳いでゐる」「讀んでゐる...
のやうな存在、状態を表はす「た」は接尾語と見て「尖つた」...
として連體詞に所蜀させるのが遖當である。そして、單語とし...
と認めるべきである。
199
---------------------[End of Page 213]---------------------
未然形
汽車が着いたらう。
終止形(昌)
昨日は風が吹いた。
勝負はきまつた。
風が寒かつた(寒くーあつーた)。
連體形
君に逡つた手紙
私が讀んだ本
假定形
着いたら、電報を下さい。
話したらば、驚くでせう。
接續のしかたは、動詞にはその連用形に附き、形容詞には、助...
の連用形に附く。
200
---------------------[End of Page 214]---------------------
サ行以外の四段活用の動詞に附く時は、その連用形は音便に...
は、「た」が連濁になつて、「だ」となる。
書いた( 書いた(イ|音《む》 勝つた(|促音...
勝つた(|促音便)
呼んだ( 呼んだ(|撥《む 》 ,、(一) 『日本...
,、(一) 『日本文法學概論』錦十五章複語尾各説
く一→ゾ 「た」が事柄の・客觀的な状態の表現でなく、話手の...
ル|朕《ロ》
ント、
\
論
第二章語
すものであることは、例へば、「勝負はきまつた」といふ表現...
勝負が既に完了した時ばかりでなく、話手が、勝負の數を見通...
な場合でも云ふことが幽來るのである。甲は「勝負はきまつた...
のやうに表現しない場合がある。話手の立場によつて定まるの...
ない。しかしながら、そのやうな話手の立場は、事柄の客観的...
この兩者には相互に密接な關連がある。(「|手《\》紙が來な...
到斷は同時に、『手紙」「風」についての…状態を表現してゐる...
ない」をそ憑七れ形容嗣と謬こ壕催譲學原論』二憾八頁、註を...
201
---------------------[End of Page 215]---------------------
四
(七) 意士心及び推量一の助動詞
う よう
202
肇
、ハノ
未然形
○
よ、つ
O
連用形
O
○
終止形
、つ
よ・つ
連體形
(う)
(よう)
假定形
○
○
命令形
O
O
「う」「よう」は、起源的には話手の推量の意を含めた陳述...
今日ではむしろ意志を表はす助動詞と云つた方が適切である。...
容をなす述語は、第一人稱に限られてゐる。例へば、
明日は出かけよう。
と云へば、述語「出かける」の主語は、第一人稱の「私」で...
ではない。從つて、第二人稱或は第三人稱の動作に關しては用...
---------------------[End of Page 216]---------------------
論
第二章語
父は明日出かけよう。
あなたは明日出かけよう。
などとは云ふことが出來ない。
しかしながら、「う」「よう」は、本來、推量を表はす助動...
には今日でも例外的に推量を表はすものとして用ゐられてゐる。
月が登らうとしてゐる。
そんなこともあらう。
それもよからう(よくーあらーう)。
「う」「よう」が話手の意志の表現に轉用されるやうになつ...
別に用意されるやうになつた。それが次項に述べる「だらう」...
ての人稱を通じて推最を表はす語として用ゐられてゐる。
絡止形
今日は大にがんばらう。
もう起きよう。
203
---------------------[End of Page 217]---------------------
四 辭
さぞうれしからう(推量)。
それを云は引としてゐた(推量)。
連體形
そんなことを信じよう筈がない(推量)。
接續のしかたは、「う」は四段活用動詞の未然形に附き、「...
形に附く。形容詞には、助動詞「ある」を介して附く。
204
(八) 推量の助動詞 だらう
楚
だらう
未然形
O
連用形
O
終止形
だらう
連體形
(だらう)
假定形
O
命令形
○
前項に觸れて置いたやうに、
終止形
話手の推量的陳述を表はす。
---------------------[End of Page 218]---------------------
第'烹章語
彼も多分來るだらう。
さぞかし淋しいだ酬-引σ
あれは山だらう。
今夜は風もおだやかだらう。
連體形
彼が承諾するだらうことは望めない。
接續のしかたは、「う」「よう」が專ら動詞に附くのに對し...
205
---------------------[End of Page 219]---------------------
辭 「だらう」が一語として機能するのに對して、「だつた」...
四
寒いだつた」とは云はれないから、「だつた」はやはり「で...
2C6
(九) 推量の助動詞 らしい
ら 語
し1い 活紛
iO 未然
形
ら 連
し 用
く 形
ら 終
し 止
い 形
ら 連
し 體
い 形
○ 假定
形
○ 命令
形
丿
一
「う」「よう」は、時間的に見て、將來起こり得る事實に對...
あるに對して、「らしい」は現在起こつてゐる事實に對する推...
父は出かけるらしい。
「出かける」といふ動作は、現在の事實であるが、それが確...
そのやうに推測されるといふことを表はす。
♪
---------------------[End of Page 220]---------------------
〜、、
論
第二章語
頭が痛いらしい。
「頭が痛む」といふ事實は、現に起こつてゐる事實であらう...
から推量される場合である。「らしい」といふ到斷には、常に...
到斷の根據になつてゐる點で「だらう」と異なる。
「頭が痛いだらう」といふ推量到斷には、必しもそのやうな...
状況を必要としないが、「らしい」といふ推量到斷が、右のや...
るところから、接尾語の「らしい」と密接な關連を持つことが...
玄關に來たのはお客さんらしい(推量の助動詞)。
すつかり商人らしくなつた(接尾語)。
〜|前《フ》者は、「お客さん」であると推定される客觀的條件...
讐は・籟的状況の商人的であることを一至てゐるので・そこに...
るのではなくして、事柄の屬性概念が表現されてゐる。後者の...
結合して一個の複合形容詞を構成してゐるのであるb
連用形
---------------------[End of Page 221]---------------------
四辭
彼は氣分が惡いらしく、ふさいでゐた。
あまり氣乘りしないらしうございます。
大變心配らしかつた(らしくーあつた)。
どこかへ出かけるらしくて、いそいでゐた。
終止形
父は喜んでゐるらしい。
母は淋しいらしい。
海はおだやからしい。
雨が大分降つたらしい。
連體形
そのことには不服らしい樣子です。脚
何か起こつたらしいけはひだ。
接續のしかたは、「らしい」は動詞、形容詞の絡止形及び體言...
「ない」「た」の終止形にも附く。
208
}
---------------------[End of Page 222]---------------------
「らしい」は元來推量的陳述を表はす語であるから、當然そ...
てゐる筈であるが、時に次のやうに、指定の助動詞「である」...
計豊の實行は困難であるらしい(「困難らしい」と同じ)い左
(一〇)推量の助動詞べし
楚
べし
未然形
O
連州形
べく
終止形
○
連體形
べき
假定形
○
命令形
○
論
第二章語
「べし」は本來、文語の助動詞であるが、口語の中にも屡≧こ...
ただし、その用法は次のやうに極めて限定され、終止形が全然...
助動詞が口語特有のものでないことを示してゐる。
方言では、「ぺし」の轉訛した「べい」が終止形として用ゐ...
連用形
209
---------------------[End of Page 223]---------------------
四辭
御期待に添ふべく、努力しよう。
それは云ふべくして、行はれない。
連體形
そんなことはなすべきことではない。
恐るべき病處のとりことなつた。
多かるべき筈がない。
接續のしかたは、動詞にはその終止形に附き、形容詞には、...
止形)を介して附く。
多かるべき筈がない(多くーあるーベき)。
210
(一一) 敬讓の助動詞 ます です ございます でござい...
話手が聞手に對する敬讓の心持ちを表現する語の中で、特に...
助動詞といふ。「あの方は私の先生です。」といふ表現で、「...
關する語であるが、「,です」は、この表現の相手である聞手に...
---------------------[End of Page 224]---------------------
ジ
魂
{ノq,
第二章語 論
表現する語であつて、敬讓の意を含めない、通常の指定の助動...
ある。
既に述べて來たやうに、陳述を表はす助動詞は、(一)指定 (...
び完了 (四)意志及び推量に分類されるが、聞手に對する敬讓...
あるわけであるから敬譲の助動詞は、次のやうに分類すること...
(一) 指定の敬讓助動詞
(二) 打消の敬譲助動詞
(三) 過去及び完了の敬讓助動詞
(四) 推量の敬譲助動詞(意志を表はす敬讓の助動詞は含まな...
これらの敬讓助動詞は、それぞれに、通常の指定、打消、過...
に對應するので、これを表に示せば次のやうになる。
211
---------------------[End of Page 225]---------------------
四辭
!
瓢/
《隨口匹》|《ズ 》|/
/1
/待1
タ
/遇
/
指
定
打
消
ます
ございます
です
でございます
ません
ありません
でありません
ございません
でございませ
・ん
1了完び及去過
ました
でした
ございました
でございまし
た
敬讓 の 表 現
雨が降ります(逋語が勤詞の場合)
今日は寒うございます薤語が形容詞の場合)
今日は天氣です(遞語が體言の場倉
今日は天氣でございます(逋語が體言の揚倉
逋常 の 表現
雨が降る嬲
今日は寒い翳
今日は天氣だ
今日は天氣だ
天氣である
天氣である
雨が降りません(逋語が動肖の場合)
今日は寒くありません読語が嘱容詞の場合)
今日は天氣でありません广諦語が體言の場合)
今日は寒く(う)ございませ細(講鷹攤舮容)
今日は天氣矧ございません(讖鷹軅餾)
昨日は雨が降りました
昨日は天氣でした
昨日は寒うございました
昨日は天氣でございました
雨が降らない
今日は寒くない
今日は天氣でない
今日は寒くない
今日は天氣でない
}昨日は雨が降つ矧
昨日は天氣だつた天氣であつた
昨日は寒かつた(寒くあつた)
昨日は天氣だつた天氣であつた
=
212
、
要
、
塾。 隻
参
}も
---------------------[End of Page 226]---------------------
論
第二章語
ませう(意志)
でせう
ございませう
推
でございませ
、つ
量
らしいです
らしうござい
ます
行きませう 受けませう
明日は雨が降るでせう
明日は塞いでせう
明日は天氣でせう
明日は寒うございませう
明日は寒いでございませう
明周は天氣でございませう
今日は雨が降るらしいです
今日は寒いらしいです
今日は天氣らしいです
今日は雨が降るらしうございます
行かう受けよう
明日は雨が降るだらう
明日は寒いだらう
明日は天氣だらう
明日は寒いだらう
明日は寒いだらう
明日は天氣だらう
今日は雨が降るらしい
今日は寒いらしい
今日は天氣らしい
今日は雨が降るらしい
一
ノ〉今
日 日
は は
天寒
氣い
ら ら
し し
、 、
つ つ
ご ご
ざ ざ
い い
ま ま
すす
一
今今
日 日
は は
天i寒
氣い
ら ら
し し
い い
輻一一 一
213
---------------------[End of Page 227]---------------------
四辭
右の表についての總括的補足的説明。
一 右の表は、話手の聞手に對する敬讓の表現が、通常の表...
するかを示したものである。敬讓と通常の表現を含めて待遇と...
一一 「ます」に對應する通常表現の説明に用ゐた盥の記號...
に表現されてゐないことを示す。「ます」といふ敬讓の助動詞...
零記號の陳述に對應するものである。
三 指定の敬讓助動詞に、「あります」「であります」を加...
用形について「寒くあります」、體言について「天氣でありま...
の用法は打消の場合には、「寒くありません」「天氣でありま...
られる。
四 「です」が動詞の終止形について「降るです」と用ゐら...
はない。形容詞の終止形について「寒いです」といふ云ひ方は...
になつた。それは、「寒い」と「寒うございます」の中間に位...
ると考へられるためであらう。
214
---------------------[End of Page 228]---------------------
第二章
蕪
rl口
五 「ます」の命令形「ませ」「まし」は、「くださる」「...
け附く。
六 「降らない」「寒くない」「天氣でない」の打消敬讓...
「寒くないです」「天氣でないです」などといふ云ひ方もある...
逆になつたものである。
七 過去及び完了の敬讓表現には、「降つたです」「塞かつ...
八 「ませう」は、意志ばかりでなく「降りませう」といふ...
る。また、「降るでせう」「寒うございませう」などを、「で...
せう」「寒うございますでせう」などともいふ。陳述の累加し...
なる。
九 種類の異なつた陳述を重ねた場合には、敬讓の表現は、...
雨が降つたらしうございます,(過去及び完了と推量)
雨が降らなかつたでせう(打消、過去及び完了と推量)
215
---------------------[End of Page 229]---------------------
四辭
ホ 助 詞
ρ
)ね
乙
二貿、
%
誌・sも
1丶
む
㌔/
216
(一)總説
助詞が辭として持つ一般的性質については、辭の總論の項に...
詞と助詞との相違點についても、助動詞の項に概略を附説した...
に陳諦ち到斷襄はすものであり、從つて、その點、文の中に用...
樣に、その連用上、多く活用を且ハ備するのであるが、助詞は...
活用を持たな㌫近世の國語學者がこれを靜辭と云つたのは、活...
文法上、助詞をどのやうに分類、整理するかについては種々...
その一は、他語との接續關係から分類することである。助詞は...
詞と結合して句を構成するものであるところから、最近は、專...
の見地からこれを整理することが行はれて來た。(一)
橋本博士の助詞の分数法は、博士の文法體系が、詞と辭の結...
---------------------[End of Page 230]---------------------
論
第二章語
る文節を出發點とするところから、詞との接續關係に重點が注...
常然の歸結であるが、辭を常に詞との接續關係に於いて見るこ...
とであらうか。辭の根本的意義は、客體的な事柄に對する話手...
つて、如何なる詞と結合するかといふことは、辭の根本的性質...
文論の總論に於いて述べるやうに、辭には常に客體的な事柄を...
ことを考へるなちば、それらが、話手のどのやうな立場の表現...
現を有機的に理解し、文の構造を明かにする上に大切なことで...
朝起きてから、夜癪るまで勉張した。
に於いて、助詞「から」「まで」、助動詞「た」が、それぞれ...
そこで、本書では、助詞を次の四種に分つこととした。
217
---------------------[End of Page 231]---------------------
辭 格を表はす助詞
四
限定を表はす助詞
接續を表はす助詞
感動を表はす助詞
右に述べた助詞によつて表現される格以下の思想内容は、...
雨測。
となり、「か」は感動を表はす助詞として詞と結合してゐる...
218
---------------------[End of Page 232]---------------------
第二章語
このことは、格を表はす助詞についても云へることである。次...
乙 甲と乙と二の棒が、右のやうな關係に置...
/〈甲「甲が乙によりかかつてゐる」と云ふ認定≒「乙が...
(一) 橋本逖吉博士の『新文典』には、語を獨立する詞と附...
(二) 格を表はす助詞
事柄に對する話手の認定の中、事柄と事柄との關係の認定を...
が 風が吹いてゐる。 病氣が恐ろしい。(じ
は 萬葉集は歌集である。(e
219
---------------------[End of Page 233]---------------------
四辭
の
に
へ
を
と
から
より
で
まで
(一)
(二)
(三)
(四)
(五)
池の水
庭に木を植ゑる。
町へ行く。
木を切る。
茶碗と箸
はじめから絡りまで
そんなことよりこれをおやりなさい。
庭で遊んでゐる。
どこまで行くのですか。
上の「が」が主格を表はすのに對して、下の「が」は對象格...
(三)の「限定を表はす助詞」の「は」
上の「の」は、所屬格を表はし、下の
れら「の」は、指定の助動詞「だ」の連體形の
「政治家になる」といふ場合の「に」は、指定の助動詞「だ」
「に」は場所、「へ」は方向を表はすのであらうが、現代口...
海の見える丘。へ三)
甲にひとしい。へ四}
紙へ書いて置いた。(玳)
梯子をのぼる。
友だちと出かける。
そんなことから失敗するのだ。
夏より暑い。
耳で聞く。(さ
夏まて續ける。(七)
(文論對象格の項參照)。
と相違して、他と區別する意味はない。
「の」は、從屬句の主格を表はす時に用ゐられる。こ
「の」とは異なる。
の連用形であるo
220
---------------------[End of Page 234]---------------------
守られてゐない。ただし、その區別が極めて明かな場合に...
のやうに、「に」「へ」の囁別を有效に使ひわけるやうで...
(六) 「耳で聞く。」「健康「で暮す。」「節約で切拔ける。...
(七) 限定を表はす「まで」と比較すれば、格を表はす助詞の...
論
第二章 語
(三) 限定を表はす助詞
「限定を表はす」といふ説明が當つてゐるかどうかは疑問で...
括することとした。實例を以て云ふならば、例へば、甲が勉強...
の表現は、ただこの事實そのものが表現を成立させるばかりで...
話手の事實に對する認定に相違があり、從つて表現も異なる。...
外に、乙も丙も勉強してゐる場合、甲以外は乙も丙も勉強して...
が勉強してゐる場合、優等生である甲が勉強してゐる場合等に...
の認定のしかたを異にする。從つて次のやうな表現が成立する。
甲が勉強してゐる。
221
---------------------[End of Page 235]---------------------
四辭
甲も勉張してゐる。
甲でも勉強してゐる。"
甲は勉強してゐる。
甲だけ勉強してゐる。
甲ばかり勉強してゐる。
甲まで勉張してゐる。
右の表現における助詞には、話手の甲に對する期待、評價、...
とが分る。
さやもはか
へ
ばかり(ご
ペンか鉛筆・かを貸して下さい。 行くか止めるかを決めよう。
ぼくは駄目です。 日曜は家です。
私もお件します。 笑ひもしません。
みかんや林檎がある。 あれやこれやと忙しい。
これさへ出來れば、あとは簡單だ。 一寸顏を出しさへすれば...
水ばかり飮む、 百圓ばかり貸して下さい。
222
---------------------[End of Page 236]---------------------
嘉
へ
ノ
第二章語 論
ぐらゐ(昌)
やだほづきこたなしだで
らのどつりそりりかけも
二里ぐらゐある。
お茶でも飮みませう。
百圓だけ貸して下さい。
君しか持つて來ない。
日なり耳なり働かせなさい。
寢たり起きたりの生活です。
それこそ私の得意のところ。
それきり何とも云つて來ない。
三つづつ・配る
一時間ほど經つた時
ああだのかうだの云つてゐる。
靴やら下駄やらがいつばいです。
など これなどはよい方です。
これぐらゐはかまはない。
明日でもお屆けします。
見るだけでよろしい。
そんなことしか出來ない。
行くなり止まるなり、君の御隨意です。
讀んだり書いたり出來ますか。
ようこそお出で下さいました。
二日きりしかもたない。
五人つつに組を分ける。
私ほど愚かなものはない。
本だのペンだのが散らばる。
譬者を呼ぶやら藥を買ひに行くやら、大變
です。
「大丈夫だ」などと云ふものですから
223
---------------------[End of Page 237]---------------------
四辭
まで三)衣類は勿論、族費まで惠んで呉れた。 そんなにまで...
(一) 「ばかり」には二の意味がある。上はその事柄に集注さ...
ドは、漠然たる限定を表はす。
(二) 「くらゐ」は元來、程度を意味する體言であったものが...
漠然たる限定を表はす。
このくらゐ飮んでも差支ない(飮んで差支ない分量を云ふ。...
これぐらゐ飮んでも差支ない(飮んで差支ない物の範圍を云...
ただし、第二の「これ」が分量を云ふ時は、第一と同じ意...
(三〉 格助詞の「まで」と比較する必要がある。
224
(四) 接續を表はす助詞
同時的に存在する物と物との關係は、格助詞によつて表現さ...
時的に存在する動作及び行僞、或は時間的に繼起する事柄と事...
よつて表現される。この一群に屬する助詞は、陳述に件ふ點で...
のである。元來、陳述と陳述との關係は、用言の活用形の中、...
---------------------[End of Page 238]---------------------
論
第二章語
るのであるが、特殊な關係は、更にそれに助詞を加へることに...
用言の活用形が、辭と同じ機能を持つものであることは既に述...
に所屬する助詞を考へるに當つては、まづそのことを念頭に置...
雨が降り、地が固まる(零記號の陳述に相當する用言の連用...
雨が降ると、地が固まる(「と」は指定の助動詞「だ」の連...
する)。
雨が降るなら、地が固まる(「なら」は指定の助動詞「だ」...
「と」に相當する)。
雨が降つて、地が固まる(因果關係を明かにするために、陳...
右の「て」は、「雨が降る」といふ事實が原因であることの...
文に即して云へば、前句を後句に結合する役目をしてゐるやう...
を表はす助詞と一般に呼んでゐるのであるが、語そのものが接...
のは、單に比喩的にのみ云ふことが許されるものであることを...
必要があるのである。
225
---------------------[End of Page 239]---------------------
四辭
ばが
ててと
も§i∋
から
けれど(けれども)
し 雪も降るし、風も吹いて來た。
ながら(三) 話を聞きながら、記録する。
のに 雨が降るのに、出かけた。
ので 雨が降るので、止めた。
つつ 惡いと知りつつ、やつてしまつた。
老人だが、元氣だ。 私も知つてゐるが、彼は親...
雨が降れ圃、中止する。 風がつめたけれぱ、のどを...
れない。
腰をかけると、窓を閉めた。 谷へ下りると、水がある。
圖書館に行つて、しらべて見る。 外をのぞいて見る。
話しても、だめでせう。 體が小さくても、元氣です。
本を讀んでも、頭に入らない。
水が出るから、お洗ひなさい。 氣候がはげしいから、風を...
叱るけれど、ききめがない。 暖いけれど、風...
山は高いし、谷も深い。
貧しいながら、よく勉強する。
學生なのに、一向勉張しないΩ
學生なので、遠慮した。
水は次第に減少しつつある。
226
---------------------[End of Page 240]---------------------
(一) このやうな「と」を一般に接續の助詞として取扱つてゐ...
連用形の中止法と認むべきではないかと思ふ。古くは、こ...
「に」が通用して用ゐられたやうである。
いそぎ滲らせ御覽ずるに、めづらかなる兄の御かたちな...
外日しつればふと忘るるに、にくげなるは罪や得らむと...
(二) 「て」は同哮的な事柄、繼起的な事柄のいづれの接續に...
(三) 「ながら」は状態の持續をいふ體言であつたものが、接...
と下との「ながら」に意味の相違が認められるが、それは...
ちとしては、兩者とも、「その趺態に於いて」の意眛に過...
論
第二章語
(五) 感動を表はす助週鉾N氾柔ゐ願
か(こ これはあなたの帽子ですか。
おや、雪か。
かしら 今日は雨かしら。
よ 鳥が飛んでゐるよ。
蝶よ。舞へく。
そんなことが分らないのか。
今日はやつて來るかしら。
これを御覽よ。
227
---------------------[End of Page 241]---------------------
四 辭
な(なあ) よく廻るな(なあ)。
ね(ねえ) 可愛いいね。
さ 早く起きるさ。
な 枝を折るな。
ろ(よ) みんな起きろ。
そ そら、押すそ。
わ 私も行きますわ。
ものか(もんか) 行つてやるものか。
とも
の
や
こと
(一)
勉強するとも。
いらつしやいますの?・
花や、一寸おいで。
まあ、すばらしいこと。
第二の限定を表はす「か」と根本的に區別があるわけではな...
持ちを表現する場合は、これを限定の助詞と見て麗く。
名人だな(なあ)。
よく出來たねえ。
その道の逹人さ。
ぐつくするな。
じつくり考へて見よ。嚇
これは大金だぞ。
綺麗ですわ。
悲しいもんか。
それでいいとも。
いいえ、いただきませんの。
そんなことよせや。
お利口だこと。
ここに舉げた例は、陳逑に拌ふ場合で、
228
4
---------------------[End of Page 242]---------------------
---------------------[End of Page 243]---------------------
第三章文論
230
總説
文が、語或は文章とともに、文法學の對象として、言語にお...
文の性質を説明する方法として、從來一般にとられた方法は...
---------------------[End of Page 244]---------------------
この統一原理を明かにすることが、文の性質を明かに...
文の性質を規定するものとして、大體、次の三つの條...
具體的な思想の表現であること。
神抱三)統程があることQ
…6 (三) 完結性があること。
以下、右の三點について説明を加へようと思ふ。
論
女
諌
(一) 具體的な思想の表現であること。
語も、文と同じく思想の表現であるが、語は、話手の客體的...
231
---------------------[End of Page 245]---------------------
説
總
はどのやうなものであるかと云へば、人間は絶えず外界の刺戟...
犬だ。
といふ表現になると、客體界の表現「犬」と同時に、それに對...
---------------------[End of Page 246]---------------------
論
第一曽章
犬だ。
具體的な思想の表現と云つても、それは常に主體的表現と客...
まあ!驚いた。
「まあ」は主體的な感情の表現であるが、この表現には、こ...
犬!
においては、 一單語の表現のやうに見えるが、ここには語と...
233
---------------------[End of Page 247]---------------------
説
一總
國語においては、用言は一般にはそれだけで概念と同時に陳...
あぶない。
右の表現は、表面上は一語でありながら、零記號の陳述が件...
以上述べるところは、説明が演繹的になつてゐるが、實は素...
234
(二) 統一性があること ...
---------------------[End of Page 248]---------------------
第霊賣
て、客體的な表現が纏まりを持ち、統一性を獲得するのであゐ⑩...
國語において、主體的なものの表現として辭があり、その中...
更に、用言に伴ふ零記號の陳述を、陳述を表はす指定の助動...
---------------------[End of Page 249]---------------------
一總
一 用言に件ふ陳述 二 助動詞 三 助詞
次に、これらの語が、どのやうな形式において文に統一性を...
一 用言に伴ふ陳述
裏の小川がさらさら流れる。
右の表現において、これを統一する陳述は、特別な語によつ...
園の小川がさらさら流れ降互.芋、.∴、,.、、v
即ち、陽記號で示される話手の陳述が、「裏の小川云々」全...
236
---------------------[End of Page 250]---------------------
の鬪形の示すやうな統一形式と著しい野照をしてゐる。英・佛...
二 助動詞
今日は波の音も靜かだ。
右の表現における陳述は、明かに語の形式をとつて、「だ」...
---------------------[End of Page 251]---------------------
三 助詞
今日もまた雨か。
右の表現においては、陳述「である」が省略されて、助詞「...
238
(三) 完結性があること
よ、『つ文の成立條件として、統一性があるといふことは、同...
裏の小川はさらさらと流れ
といふ表現において、陳述は零記號の形式で存在はしてゐる...
---------------------[End of Page 252]---------------------
ながら、更に展開する姿勢を取つてゐる。換言すれば、この表...
の最後が、終止形にょつ毒態珍楚劉".嘉必譽條件となる・國語...
概法の場合を除いて、文の終りが完結形式でなければならない...
も云ふことが出來るであらうφのことは、活用における羅の現象...
であ毎
助動詞によつて統一された場合も同様で、それが終止形によ...
助詞の場合も同じで、ヂベての助詞は、それの附く語に或る...
---------------------[End of Page 253]---------------------
二詞と辭との冠叺的關係
以上は、文をその構成要素によつて挽明せず、文成立の基本...
二 詞と辭との意味的關係
詞と辭によつて表現される思想内容を、思想内容そのものと...
2≦0
---------------------[End of Page 254]---------------------
第三章女論
於いて、話手の感動を表はす「よ」といふ語は、この場合、話...
「故郷の山」に對する感動の表現であつて、この主體、客體の...
Aを言語主體(話手)とする時、弧...
B
客體界の表現、點線A8は、客體界C...
cA④Dの耄あぞA皇CDあ間に些志向作用恚向
對象との關係が存在し、ABCDが即...
であると云ふことが出來るのである。國語に於いては、この主...
故|郷《魔尠》の山|よ
この關係は、また別の言葉で云へば、客體的なものを、主髏...
241
---------------------[End of Page 255]---------------------
二 詞と辭との意味的關係
に於いては次のやうに圖解することにする。
一故郷の凹固或は故郷の山測
客體的表現、詞が、主體的表現、辭によつて包まれ、また統...
書家によつて選ばれる。客體的なものに羯する豊家の志向の表...
---------------------[End of Page 256]---------------------
論
第三章文
れによつて繪を包み、かつ統一し、この兩者によつて繪がはじ...
本書に於いて、圖解に用ゐた[(11は机の難と引手との關係を羲...
このやうな詞と辭との關係は、鈴木朖も既に次のやうな譬喩...
詞 辭(てにをは)
物事をさし顯はして詞となり、 其の詞につける心の聲なり
詞は器物の如く それを使ひ動かす手の如し
詞はてにをはならでは働かず 詞ならではつく所なし
かくして、
字を書く。
字も書く。
字だけ書く。
243
---------------------[End of Page 257]---------------------
二 詞と辭との意味的關係
宇ばかり書く。
に於いて、複線を以て示した語は、すべて辭であり、單線を以...
汽車が來ます。
汽車が來ました。
汽車が來るらしい。
複線の語は辭であつて、この場合も前例同樣に、ただ「汽車...
凡そ辭と云はれるものは、すべて右のやうな性質を持つてゐ...
244
---------------------[End of Page 258]---------------------
第三章文
は常に話手の認定の對象になる客體的なものと密接に結びつき...
辭のうちで、感動詞はいささか特例と考へられるのであつて...
詞と辭の關係が、以上のやうに、客體的なものとい・轟睡的...
245
---------------------[End of Page 259]---------------------
---------------------[End of Page 260]---------------------
論
第三章文
詞辭の結合が完結形式をとつて、「春だ。」と云はれる時は...
句が、詞と辭の結合で音聲的に一のまとまりをなして居ると...
ここに句切れが出來ると云つても、それは單なる生理的條件...
サクラガ サイタ(櫻が険いた)。
247
---------------------[End of Page 261]---------------------
三 句とス子墾構造(一)
は、決して
サクラ ガサ イタ
と云はれないのは、辭は常に上の詞と結合して一まとまり(句)...
國語に於いては、用言には特に陳述を表はす辭を用ゐること...
いふことが出來る。
日程を變へ翊、明日出發する薩
辭を件はないのは、用言の場合ばかりでなく、前例の「明日...
次に、句と句との闇には、意味上或は構造上、どういふ關係...
梅の非化が険いた。
248
---------------------[End of Page 262]---------------------
論
第登章文
といふ文は、これを句に分つて見れば、これを次のやうに圖解...
桐d一柑洲嘆い彑
即ち三の句に分つことが出來る。召れならば、文は句がこの...
梅の花が
右の圖解によつても明かなやうに、「が」といふ辭は、詞「...
249
---------------------[End of Page 263]---------------------
三 句と入子型構造(一)
右の辭「た」は、ただ單に「咲く」といふ語だけに附いたもの...
では「梅の花」)を持つた述語に附いて句をなすと考へなくては...
は次のやうに圖解されることとなる。
梅の花が険いた
即ち、右の文は、全體として、詞と辭の結合した句と見なす...
杓の花が険いた
この圖型を、既に用ゐた枡型式に改めるならば、
羸回花窶∴因
のやうになる。右の圖形によつて、語の連結がどのやうにして...
250
---------------------[End of Page 264]---------------------
論
第只章
このやうな單位の排列と統一の形式を照ヂ型構造と呼ぶので...
中盃bは、更に小盃aをその上に載せて、...
た三段組の盃を構成してゐる。abcはそれ...
部分の關係に立つと同時に、bがcに對す...
に對するのではなく、aを含んだbとして...
cは盃自體として見れば一の統一體ではあ...
更に含むことにょり三重の盃としての統一を完成するのである...
以上述べた入子型構造は、物質に關することであり、かつ察...
251
---------------------[End of Page 265]---------------------
四 句と入子型構造(二)
とするならば、以上のやうな入子型構造に於いて理解するのが...
四 句と入子型構造 (二)
前項に於いて、私は、主體的意識に於ける詞と辭との表現性...
A利がここに句と呼ぶところのものは、實は橋本進吉博士が文節...
に對する批到の上に成立つてゐ燈ので、まづそのことを明かに...
「橋本博士は、文に於ける切Rを文節と命名されたが、それは音...
252
---------------------[End of Page 266]---------------------
に對して、博士の文節は、必しも文に於ける單なる思想表現の...
從つて撚節の分析は、思想表現の意味的曲折及びその統一形...
253
---------------------[End of Page 267]---------------------
四 句と入子型構造(二)
久方の一ひかりのどけき一春の凵に一静心なく一花の散る...
に於いて、初句は一文節から成り、二句は「光」「のどけき」...
光猛のどけき幽
右は句を含む句と考へられるから、文節としても當然二句全...
花の散るらむ
以上のやうにして、句は句を含んで思想の統一が完成して行...
254
---------------------[End of Page 268]---------------------
ることを知るのである。更に一二三句を合して上句といひ、四...
天つ風雲のかよひ路ふきとちよ
少女の姿しばしとどめむ
に於いて、上句は、そこで思想が完結するにもかかはらず、な...
---------------------[End of Page 269]---------------------
五 用言に於ける陳逮の表現
いのであつて、文法上から云へば句と呼ぶことが出來ないこと...
句の名稱は、またbぽ9ω①の譯語として一般に通用してゐる。...
(一) 『國語學概論』橋本進吉博士著作集 第一巻 二三頁...
256
五 用言に於ける陳述の表現
詞は、それが概念作用による事柄の客體化の表現として、辭...
山、川、犬、猫等は前者でこれを鶻言といひ、走る、受ける...
---------------------[End of Page 270]---------------------
第匿章文論
これを用言といひ、その中に動詞と形容詞とが區別されること...
犬が走る。
篌が
のやうに、それは概念ばかりでなく、判斷即ち文法上にいはゆ...
抑も用言の用言たる所以はこの陳述の能力あることによるこ...
と述べて、用言に於ける陳述性を彊調して居られる。ところが...
---------------------[End of Page 271]---------------------
載 用言に於ける陳述の表現
ふかは重要な問題である。外形だけから考へるならば、陳述は...
関が圏言
蘭候が暖い吻
右のやうな説明法は、「故郷の山よ」といふ表現に於いて、...
瘋郷の凹翻
として圖解説明するのと同じである。
以上のやうに、國語に於いては、用言は常にそれだけで別に...
268
---------------------[End of Page 272]---------------------
第三三章女
を以て陳述を表現することがある。また、「日中は暖い。だが...
用言に零記號の陳述を想定することは、以上のやうな述語的...
流れる小川
寒い夜
右の用言「流れる」「塞い」は、それぞれ「小川」「夜」の...
259
---------------------[End of Page 273]---------------------
五 用言に於ける陳連の表現
在してゐると見なければならない。更に次のやうな例に於いて...
さらさら流れる小川
ひどく寒い夜
修飾的陳述は、「さらさら流れる」「ひどく寒い」を統一し...
國語に於ける用言と陳述との關係を右の如く解する時、ヨー...
〉`α○啝→目βω・
のやうな表現は、一般に次のやうに論明されてゐる。
》α。ひqヨ饕巨晨即ち[旧冨臼巴
のやうに、陳述を表はす辭が、Aと13との中間にあつて、兩者を...
260
---------------------[End of Page 274]---------------------
犬 走る。
といふ表現は、AB二の觀念の配列に於いて英語の場合と全く同...
これを次の如く解さなければならない。
犬走る互
即ち、AB二觀念を統一する辭は、AB二觀念の外から、これを...
てゐるのである。前者を天秤型統一形式と呼ぶならば、後者の...
ゾ(一) 『日本文法學概論』六八一頁
2Gユ
---------------------[End of Page 275]---------------------
六 文の威分と格
六 文の成分と格
2G2
イ總説
前數項に亙つて述べて來たことを、ここで一往概括して昆る...
…詞 画
次に、右のやうな文の構造を構成するものの中、主體的な辭...
文に於いては、詞は常に辭と結合して句を構威してゐるので...
---------------------[End of Page 276]---------------------
第三章文論
考察するといふことは、そのやうに辭によつて規定された詞に...
文の成分及び格の概念は以上の如くであるから、h成分及び格...
花が嘆いた。
右の表現に於ける文の成分は、句「花が」「険いた」から助...
ロ 述語洛と主語格
すべて陳述の助動詞或は零記號の陳述によつて統一されたもの...
2G3
---------------------[End of Page 277]---------------------
六 丈の成分と格
勉彊家です。
靜かだ。
暖い笏。
2G4
飛んでゐる翻。
右の例は、すべて辭と結合して句をなしてゐるが、それらの...
彼は勉強家です。
波が靜かだ。
風は暖い。
鳥が飛んでゐる。
これら傍線の部分は、語の結合であるが、陳述によつて統一...
---------------------[End of Page 278]---------------------
「波」と、「勉彊家」「静か」との間に文の成分上の關係が問...
論
第監章文
彼1
は1
匿
右の鬪形は、「です」によつて統一されたものとして、「彼...
265
---------------------[End of Page 279]---------------------
六文の成分と格
いL「腹が立つ」「氣が長い」等の語が、それぞれに一の詞とし...
次に、春の圖形から結論することが出來る轟な點は・副語に於...
對立するものではなくて、述語の中から抽出されたものである...
特性として、主語の省略といふことが云はれるが・右の鑾から...
述語に對する主語の關係を以上のやうに見て來るならば、f誰...
---------------------[End of Page 280]---------------------
私には出來ません。
「私」は、述語に對して、事實としては「出來ません」とい...
ハ述語絡と客語、補語、賓語格
論
第胃章 文
主語が、述語から抽出されたものであり、修飾語と異なると...
267
---------------------[End of Page 281]---------------------
ナ丈の威分と格
飾語を、客語、時には目的語、或は補語といふことが出來、ま...
橋を渡る。
空を飛ぶ
右の傍線の語のやうなものは、單に行爲の行はれる場所を云...
補語は、述語に對する論理的關係によつて規定された成分で...
268
---------------------[End of Page 282]---------------------
第豈童文
窒を暖かくする。 私はびくびくする。
氣が樂になる。 科學者になる。
右の傍線の語を除けば、この文は成立しないことになる。し...
7國語に於いて、主語、客語、補語の間に、明確な區別を認める...
實は、それらが、すべて述語から抽出されたものであり、述語...
私は六時に友人を驛に迎へた。
に於いて、「私」「六時」「友人」「驛」といふやうな成分が...
---------------------[End of Page 283]---------------------
六 女の成分と格
に對して、同じ關係に立つてゐるのである。その點ヨーロッパ...
ただし、國語に於いて、成分の間の關係を表はす格助詞の分...
次に、賓語について云ふならば、從來の文法書では、用言は...
波が靜かだ。
に於いて、「静かだ」を用言に匹敵するものと考へたので、更...
270
---------------------[End of Page 284]---------------------
べき資格はない。陳述された内容が述語であるから、右の例に...
○日本文法學概論 ○本書
述格 陳述と述語格とに分れる
賓格 述語格
補格 客語、補語等の修飾語格
論
第三章文
註 山田博士の述格は、實質概念と陳述との結合を意味する場...
271
---------------------[End of Page 285]---------------------
六文の成分と格
を峻別する立場をとつた。從って、山田博まの賓格に相當する...
二 修飾語格
修飾語の問題としては、 慧黛編煮害吻
(一) 前項に述べたやうに、諭凶語の構造上、主語、客語、...
次のやうな例文をとつて見るのに、
學校に行く。
親切に世話する。
「學校に」「親切に」の「學校」「親切」はともに體言であ...
---------------------[End of Page 286]---------------------
第三章女
じく修飾語であると云つても兩者に何等かの相違があるべき筈...
親切に世話する。……心よく嬲世話する。
すみやかに流れる。……早く鰯流れる。
そして、これらの修飾語は、事柄の屬性概念の表現であること...
六時に出發した。
東京に着く。
電車に乘る。
のやうに、事柄それ自髏の屬性ではなく、事柄に關係する外的...
このことは、助動詞「と」と、助詞「と」の間にも云はれる。
雨諷U散る。……はげしく翩故る。
茫然と暮す。……淋しく嬲慕す。
273
---------------------[End of Page 287]---------------------
格 右は助動詞の場合であるが、
飢 1ー
成 友と遊ぶ。
如 甲は嵐同じ・
六
は助詞の場合であつて、兩者の間には前の「に」と同様の...
《 ー粛r上のやうにして、修飾語と云つても、格助詞の附いた...
一.ン搾では、事柄の外部に關するものと、内部に關するものと...
-沈のやうに區別するかが問題にならなければならないのである...
いて、格助詞と認むべき場合と、助動詞と認むべき場合と...
ので、この問題は必ずしも容易ではないのである。ともか...
表現を識別するに役立つであらう。
近く見える。
近くに見える。
前者は、「見え方」の如何を云つたものであり、後者は...
---------------------[End of Page 288]---------------------
第三章文
(二) 修飾語と被修飾語との關係は、結局、語と語との關係...
體言であるか、用言であるかに從つて、連體修飾語と連用修飾...
星が美しく輝いてゐる。(連用修飾語、形容詞連用形)
星が澤山に輝いてゐる。(連用修飾語、體言、助動詞「に」...
美しい星が輝いてゐる。(連體修飾語、形容詞連體形)
澤山な星が輝いてゐる。(連體修飾語、體言、助動詞「な」...
連用修飾語は、用言へ接續するのであるから、一般に用言の...
今日は、お早い御出發ですね。(修飾語は連體形、被修飾語...
今日は、お早く御出發ですね。(修飾語は連用形、被修飾語...
275
---------------------[End of Page 289]---------------------
六丈の成分と格
即ち、述語が體言であるにもかかはらず、潼用形を以て修飾...
的な意味を持つためである。一般に個體的な意味に決定されて...
修飾語が用ゐられるが、歌態性、動作性の意味を持つ體言に對...
ことが可能になつて來る。
綺麗な花です。(連體修飾語)
勉強する學生だ。(連體修飾語)
明日から學校です。(連用修飾語)
一所懸命に勉強です。(連用修飾語)
以上のやうに見て來ると、連體とか連用とかの名稱が、既に...
で、これに對して、形容詞的修飾語、副詞的修飾語の名稱を用...
考へられる。これに關しては、もちろん、品詞としての形容詞...
に保留されることを前提とするのである(總論「文法用語」滲照...
276
---------------------[End of Page 290]---------------------
論
第三章
この一般には用ゐられてゐない術語を、ここに用ゐる理由は...
現・象に基づくのである。まつ、
山が高い。 川が流れてゐる。
の例に於いて、述語「高い」「流れてゐる」の主語が、それぞ...
容易に理解されることである。ところが、
仕事がつらい。 算術が出來る。
の例に於いて、「仕事」「算術」を、「つらい」「出來る」の...
ふと、ここに問題がある。主語は、それとは別に、
私は仕事がつらい。 彼は算術が出來る。
に於ける「私」「彼」を主語と考へるべきではないかといふ議...
術」をどのやうに取扱ふべきかが問題になる。ここで、「私」...
るので、「仕事」「算術」は、述語の概念に對しては、その對...
いふところから、これを對豫計と名づけることとしたのである...
山が見える。
277
---------------------[End of Page 291]---------------------
六 文の膩分と格
汽笛が聞える。
犬がこはい。
話が面白い。
等の傍線の語は、皆同じやうに、主語ではなく、對象語と認む...
しかしながら、以上の諸例に於ける傍線の語を、主語として...
と考へられないのは何故であらうか。素朴な態度を以て、以上...
ば、當然、主語として考へられるであらう。これは、次のやう...
の諸例に於ける述語、例へば、「見える」「こはい」をとつて...
は、∠方では、主觀的な知覺、感情の表現であると同時に、他方...
感情の機縁、條件となる客觀的な事柄の屬性を表現してゐる。...
觀、客觀の總合的な表現で、我々がこれらの語を用ゐる時、必...
だけを表現してゐるのでもなく、また、客觀的なものだけを表...
の場合に從つて、「山が見える」と云へば、客觀的なものの表...
と云へば、主觀的なものを意圖してゐるのである。一この點、...
---------------------[End of Page 292]---------------------
第.章女
るLに於いては、述語「高い」「流れてゐる」は、全く客觀的な...
主語が一義的に決定される。また一方、「足が痛い」「水がほ...
い」「ほしい」は、全く主觀的な感覺感情の表現であるから、...
ことは全然許されない?ここに對象語の概念が必要になつて來る...
の中間に位する語については、主語と認めるか、對象語と認め...
なつてゐると見なければならないのである。對象語の概念は以...
主語と對象語とは、全く相排斥する矛盾概念ではないのである...
用ゐられる用言の意味に關係することで、それは同一時代、同...
異なつて、
町が淋しい。(「淋しい」は、客觀的な状態、「町」は主語)
獨りでゐるから、淋しい。(「淋しい」は主觀的な朕態、主...
のやうに用ゐられると同時に、時代によつても異なる。
琴の音ゆかし。(「ゆかし」は琴の昔が聞きたいといふ希望...
語、主語は省略)
---------------------[End of Page 293]---------------------
六丈の鼠分と絡
人柄がゆかしい。(「ゆかしい」は、人柄の歌態を意味し、「人...
へ 獨立語格
280
以上述べた諸格は、すべて述語を基本にして、そこから抽出...
概念の表現として、それら相互には、相對的な關係があつた。...
であり、對象語は、主語及び述語に對する關係から規定された...
格は、すべて陳述によって統一されるので概括していふならば...
が出來る。ここに獨立語格といふのは、右のやうな相對的な關...
獨の格を云ふのである。画へば、驚きの感情を以て「火事!」と...
於いて既に述べたやうに、この表現は、感情(この場合に零記號...
象である一の事柄の詞的表現である「火事」との結合であるか...
ればならない。この文の格は、この表現の詞について云はなけ...
この詞は、「火事だ」といふ表現のやうに、指定の助動詞「だ...
ではないから、述語絡とはいふことが出來ない。このやうな格...
---------------------[End of Page 294]---------------------
論
第三章文
この場合、「火事」といふ語は、驚きの感情の對象であるから...
疑問が起こるであらうが、格は常に客體界の秩序で、詞相互の...
場合の感情は、詞として表現されてゐないのであるから、「火...
出來ないのである。
火事がこはい。
といふやうな場合は、全く別で、この時は、感情が「こはい」...
てゐるのであるから、この「こはい」といふ詞(この場合は述語...
に對して、「火事」を對象語といふことが出來るのである。獨...
伴ふことがあるが、それが獨立語に統合されて、結局、一語と...
獨立語は一語文と認むべきものである。
荒海や佐渡に横たふ天の川
右の文は、「荒海や」「佐渡に横たふ天の川」の二の獨立語...
てゐる。そして、それは次のやうに鬪解される。
[鬮凹圖 關闘凹吻
281
---------------------[End of Page 295]---------------------
六文の成分と絡
上の文は、詞である「荒海」が、感動を表はす助詞「や」に...
こには陳述による統一がなく、感動による統一があるだけであ...
を持たず、それだけで獨立格をなす。下の丈は、「佐渡に横た...
で全體を一語として取扱ふことが出來、かつこれを統一するも...
零記號の感動であるから、形式としては、上の丈と全く同じ獨...
て、この上下二つの文は、感動に包まれた、自然の二つの情景...
體の景觀を想像させたものであると云ふことが出來る。
このやうな獨立語による表現は、外形上の形式は同じでも次...
るものである。
昨日は何處へ行つたの?・箱根。
右の問に對する「箱根」といふ答は、「箱根です」或は「箱...
省略形で、そこには、陳述が省略されてゐると認められるので...
含まれる修飾語格と見なければならないのである。
また、次のやうなものも獨立語とは認められない。
282
---------------------[End of Page 296]---------------------
しかしその電燈の光に照らされた夕刊の紙面を見渡しても...
く、世間はあまりに凖凡な出來事ばかりでもちきつてゐた...
漬職事件、死亡廣告。1私はトンネルへはいつた。(芥川龍...
右の傍線の語は、それぞれ獨立語を構成してゐるのではない...
述の省略された述語或は主語とは認められない。換言すれば、...
味に於いても、文或は文の一部とは云へないのである。それな...
廣告。」までは、何と解すべきであらうか。それは、この作者...
次々に語として表現したのであるから、それは、語の羅列に過...
論の總論にも述べたやうに、語は、文より歸納されたものとし...
が一の單位として扱はれると同樣に、語もまた言語の一單位と...
するものであることを示すのである。
2S3
---------------------[End of Page 297]---------------------
第四章文章論
2S4
總説
文章研究が、文法學上の一單位として、その一領域を占める...
二 文の集合と文章
---------------------[End of Page 298]---------------------
第四章 交章論
文の集合が決して文章にならないことは明かである。一日の...
書或は日記の記事のやうなものと、漱石の草枕や午家物語のや...
あるとは考へられない。前者は單なる文の集合であるのに對し...
一された全體である。文の性質が、語の集合として理解するこ...
の性質が文の集合として、或は語の推積として論明することは...
文章は文の説明原理とは別の原理を以て説明されなければなら...
ことは、常識的にも大體想像されることであつて、我々が文章...
題を問題にし、結論を尋ね、或はその結構、布畳の如何を問題...
丈以上のものであることを常識的に認定してゐるためである。...
章の性質を文によつて説明しようとし、或は語によつて規定し...
が、文法學において正當な位置を要求されてゐないことにもよ...
て物を、その究極の構成要素によつて説明し、説明することが...
方によることが多いのではないかと思ふ。
285
---------------------[End of Page 299]---------------------
三文章の構造
三 文章の構造
文章はその根本において言語的表現であるから、文章の性質...
言語としての性質を持つものであることが確認されなければな...
は、これを音樂的表現、繪書的表現、彫刻的表現などと對比す...
特質を把握することが出來る。云ふまでもなく、言語は、それ...
とにおいて、著しく音樂的表現に類似し、繪書、彫刻などと相...
表現においても同樣であるが、特に文章表現において著[しく目...
間的な流動展開といふことが、文章の性質を規定する重要な點...
の文章研究において、ややもすれば看過されて居たことである...
比較され、平面的構造、或は空間的構造のものとして理解され...
て分析されることが多かつた。作文を意味する○○といふ語にも...
な文章觀が反映してゐるのではないかと思ふ。
286
---------------------[End of Page 300]---------------------
第四簟女章論
このことは、藝術的な文章の觀察において著しく現れて來るや...
其體的な例を以て説明するならば、ある一の文章が藝術的で...
---------------------[End of Page 301]---------------------
三文章の構造
れることと、對照をなすものである。文章に於ける右のやうな...
288
---------------------[End of Page 302]---------------------
四 文章の成分
第四章文章論
文の成分が、個々の單語でなくして、格と云はれるものであ...
289
---------------------[End of Page 303]---------------------
五 文章論と語論との關係
文章の直接の成分的要素は、文でもなく、語でもないが、文...
290
---------------------[End of Page 304]---------------------
第四章文章論
代名詞についても同様なことが云へる。文論の範圍では、代...
291
---------------------[End of Page 305]---------------------
六 その他の諸問題
(一) 文を如何なる基準によつて分類するかの問題と同樣に...
(二) 語論においても、文論においても、これを歴史的に考...
(三) 文章論は、文章の類型を求め、一般法則を抽象するこ...
(四) 音樂に於いて、テンポが表現效果に重要な關係がある...
292
---------------------[End of Page 306]---------------------
れる。短い文の連續は、思想の急速度の轉換を意味し、そこに...
(五) 文體の問題も、文章研究に於いてはじめて取上げるこ...
(六) 繪畫が、歴史的物語をそのままに描出すことが出來な...
(七) 文論に於いて、主體的表現と客體的表現とを論じたや...
文章論については、なほ多くの課題が考へられるであらうが...
293
---------------------[End of Page 307]---------------------
索引
あ
あげく(形式名詞)92
あげる 97
あける(形式動詞)97
あそばす(形式動詞)98
脚結《あゆひ》抄 104
あり 93,121,18
あり(指定の助動詞)188
ある(形式動詞)94,126
ある(──日) 136
或は 173
安藤正次 13
あんな 138
い
意志及び推量の助動詞 202
已然形 106
いたす 97
一語文(sentence equivalent) 233
一囘過程の表現 50
ゐる 94
入子《いれこ》型構造 246,251,252
いはゆる 138
う
う(意志及び推量の助動詞) 202
受身 116
──の接尾語 117,160
──の動詞を作る接尾語 117
動くてには 18|1
打消の助動詞 191,194,197
うへ(形式名詞)92
お
お(接頭語) 151
を(格を表はす助詞) 220
恐らく 144,148
おほかた 145,148
大きな 138
大概文彦 28,32
及び 173
和蘭字典文典の譯述起原 28
をり (形式名詞) 92
音聲 18,19
音聲言語 86
音便形 108
か
か(感動を表はす助詞)227
か(限定を表はす助詞) 222
が(格を表はす助詞)219
が(接續を表はす助詞) 167, 226
が(接續詞) 176
概念 73,231
概念化 60
概念過程 60
概念的 240
か行變格活用 111,113
格 66,135,140,162,262
一を表はす助詞 219
かくて 291
確認 201
過去及び完了の助動詞 198
かしら(感動を表はす助詞) 227
かた(接尾語) 156
がた(接尾語) 156
がたい(接尾語)158
かつ(接續詞) 163,167,174,176
活語斷續譜 100
活用 99,125,216
一の種類 109
活用形 104,140
─(形容詞の) 126
活用表 100
假定形 106,107,127
過程的言語觀 17
假定的陳述 148
がてら(接尾語)156
可能 118
──を表はす接尾語 118, 160
がましい(接尾語) 158
上一段活用 110,111,113
から(格を表はす助詞)220
から(接續を表はす助詞)226
がる(接尾語) 153,158
かん(間,形式名詞)92
關係 81
關係概念 74,75,76,81,291
關係語 58
漢語 71,155
觀察的立場 19
感歎詞 178
間投詞 178
感動詞 62,178,245
觀念語 58
き
木枝檜一 89
聞手 18,73,81
起句 289
技術 19
既然形 106
きつと 147
客觀的 199,201,207,278
客語 114,267
客體化 60,62,66,256
客體界 66,232,240,241
客體的 179,217,231,262,278
客體的概念的表現 66,246
客體的表現 242
きり(限定を表はす助詞)223
きる(接尾語) 158
切字《きれじ》 239
く
句 246,247,253
句切れ 247,255
具體的思想 182,232,241
具體的思想表現 66,162,231
くださる(形式動詞)97
ぐらゐ 223
け
げ(接尾語)154,156
形式動詞 89
形式名詞 70,89
形式用言 93
敬讓 120
──を表はす接尾語120,160
──の助動詞 210
形容詞 29,98,125,137,142,161
──的修飾語 31,141
──的代名詞 78
──の語幹 127
形容動詞 54,70,128
結句 289
決して 144,147
けれど(接續を表はす助詞) 226
けれど(も)(接續詞) 176
けれども(接續詞) 167,174
けれども(接續を表はす助詞) 226
けん(件,形式名詞)92
言語 17,18
──に於ける單位 14,20
──の成立條件 18,81
──の本質 14,20
──の要素 15
言語過程觀 17,45
言語構成觀 15,57
言語主體 18,44,73,240
言語的表現の特質 286
言語本質觀 14
現代かなづかい 8,37
限定を表はす助詞 221
こ
こ(接頭語) 151
ご(接頭語) 152
語 21,44
──の構造 49
──の認定 54
──の分類 56
口語文法の教授4
──の研究 3
合成語 52
構成的言語觀 15,18,19
構成要素 154
語幹 102,127
語形の變化 68,71,99
心の聲 62
ございます(敬譲の助動詞) 210
語辭體語 32
五十音圖 35,110
語辭用言 32
こそ(限定を表はす助詞) 223
こと(感動を表はす助詞) 228
こと(形式名詞) 92
事柄 66,81,162,166,217,219,256
この 138
語尾 102,127
これ 291
コンジュゲイション(conjugation) 99
こんな 138
コンプリメント(complement) 271
コンポジション(composition) 286
さ
さ(感動を表はす助詞) 228
さ(接尾語) 154,156
さう(接尾語) 154,156
さへ(限定を表はす助詞) 222
さ行變格活用 111,113
佐久間鼎 75,84,146
指す語 83,84,85
させる(助動詞) 181
させる(接尾語) 123,158
さて(接續詞)176
さま(接尾語) 156
さらに(接續詞) 176
さらば(接續詞)176
去る 138
ざる(打消の助動詞)196
されば 291
し
し(接續を表はす助詞) 167, 226
詞 56,62,65,165,240,241,243
──と辭との意味的關係 240
辭 32,56,62,146,161,181,240, 241,243
──の根本的意義 217
しい(い)(接尾語) 158
使役 123
──の接尾語 160
しか(限定を表はす助詞) 223
しかし(接續詞) 163,167,176
しかしながら(接續詞) 176
しかるに(接續詞) 176
時間的流動 286
次元の相違 63
指示代名詞 74
自然可能 119
──を表はす接尾語 119
思想 18
──の展開 175
思想傳逹の形式 18
したがつて(接續詞) 176
實質用言 93
實踐的行爲 19
指定の助動詞 131,134,183,188
自動詞 114
しな(接尾語)156
しない(打消)194
自發 119
──を表はす接尾語 119
事物 74
事物的概念 76
じみる(接尾語) 159
下一段活用 111,113
終止形 106,127
修飾語 170
──と被修飾語との關係 275
修飾語格 272
修飾的陳連 137,139,260
主觀客觀の總合的な表現 278
主觀的な 278
──情意 61
主客の合一 233
主語 170,230,266
主語格 263
主體 66
主體的意識 47,54,55
主體的立場 19,47,234
主體的な 231,262
──感情 179
主體的表現 242
述語 170,230,266
述語格 263,267
述語と主語との關係 266
承句 289
助詞 32,58,62,168,216,238
助數詞 155
助動詞 32,62,168,181,237
す
す(接頭語) 150
す(接尾語) 123,159
ず(打消の助動詞)194
推量の助動詞 204,206,209
數詞 91
すこし 143
鈴木朖 60,62,84,100,243
すつ(接頭語) 151
ずつと 143
すでに 138
すなはち(接續詞) 176
する(形式動詞) 95
すると(接續詞) 168,176
せ
靜辭 32,216
接辭 149
接續 173
接續を表はす助詞 165,224
接續詞 62,65,162,290
接頭語 71,149
接尾語 71,90,94,114,128,149,181,199
せる(助動詞) 181
せる(接尾語) 123
ぜん(接頭語)152
前置詞 65
そ
そ(感動を表はす助詞) 228
そうして(接續詞) 176
そうすると(接續詞) 176
屬性的概念 75
そこで(接續詞)176
そして(接續詞)174,176,291
その 138
そのうへ(接續詞) 176
そのくせ(接續詞)176
そもそも(接續詞)176
それから(接續詞)172,176,291
それだから(接續詞)176
それで(接續詞) 168
それで(も)(接續詞)176
それどころか(接續詞) 176
それとも(接續詞) 176
それなら(接續詞)176
それに(接續詞) 176
それ故(接續詞) 176
た
た(過去及び完了の助動詞) 198,199,201
た(助動詞) 107
一た(連體詞) 138,148,157,199
だ(過去及び完了の助動詞) 201
だ(指定の助動詞) 107,129,131,134,183,187,237,280
たい(接尾語)155,159
體 67
髄言 30,66,75,127,131,142,144,160,165,257
體言的代名詞 76
對象語格 276
大暦 142
だいぶん 143
代名詞 34,72,82,138,161,170
──の遠稱 75
──の近稱 75
──の中稱 75
代名詞分類表 80
だが(接續詞) 168,176
だから(接續詞) 176
たがる(接尾語) 153,159
だけ(限定を表はす助詞)223
だけど(接續詞)176
だす(接尾語)159
ただ(接續詞)176
ただし(接續詞)176
たち(接尾語) 157
だつ(接尾語)159
だつたら(接續詞)176
だつて(接續詞)176
他動詞 114
だの(限定を表はす助詞)223
だのに(接續詞)176
たび(度)91
多分 145
たまふ(給ふ,形式動詞)98
ため(爲)91
たら(過去及び完了の助詞) 198
だらう(指定の助動詞) 189
だらう(推量の助動詞) 148,186,204
だらけ(接尾語) 157
たり(指定の助動詞) 188
たり(限定を表推す助詞)223
たる(連體詞の)129
たる(過去及び完了の助動詞) 198
たる(指定の助動詞) 186
單位 14,20,22,26,44
單語 16,21,26,46
断じて 146,148
断續 100
ち
直接的表現 162,219
陳述 55,101,135,147,216,256
──と陳述との關係 224
──の副詞 144
つ
ついては(接續詞) 177
つぎに(接續詞)177
つく(接尾語) 159
つける(接尾語)159
つつ(接續を表はす助詞)226
つつ(限定を表はす助詞)223
て
て(接續を表はす助詞) 174, 226
て(接尾語)157
で(格を表はす助詞)220
で(指定の助動詞) 131,134,174,183
で(接續詞)177
であらう 186
である 134
でございます(敬讓の助動詞) 133,134,210
でしたら(接續詞)177
です(敬譲の助動詞)133,134,210
ですが(接續詞)177
でせう(想像・推量の辭)148
でなく(打消の助動詞)192
てにをは 32,58
てには 32,56
|手爾葉《てには》大概抄 56
では(接續詞) 177
ても(接續を表はす助詞)226
でも(限定を表はす助詞)223
でも(接續詞)177
てん(點,形式名詞)92
轉句 289
天秤型統一形式 237,261
テンポ 292
と
と(接續詞)169,177
と(指定の助動詞)183
と(格を表はす助詞)220
と(接續を表はす助詞)226
とある 186
どうか 148
動詞 98,135,169
重力辭 32
東條義門 68
どうぞ 148
獨立語格 280
獨立する語 59
ところ(形式名詞)93
ところが(接續詞)177
ところで(接續詞)177
とする 186
とても 148
とはいふものの(接續詞) 177
とも(感動を表はす助詞)228
ども(接尾語) 157
とんだ 138
な
な(指定の助動詞) 101,107,183,187
な(感動を表はす助詞) 228
なあ(感動を表はす助詞)228
ない(打消の助動詞)191,193
ない(否定の)148
ながら(接續を表はす助詞) 226
ながら(接尾語) 157
なす(形式動詞)97
なす(接尾語) 159
など(限定を表はす助詞) 223
|靡《なびき》 104
なほ(接續詞)165,177
なほ(副詞) 165
なみ(接尾語) 157
なら(指定の助動詞) 131,183, 187
ならびに(接續詞)177
なり(限定を表はす助詞)223
なり(指定の助動詞)188
に
に(格を表はす助詞)220
に(指定の助動詞) 131,132,18
日本文法學の目的 1
日本文法學の由來1
人稱代名詞 72
ぬ
ぬ(打消の助動詞)128,193
ぬ(ん)(打消の助動詞) 194
ね
ね(打消の助動詞)194
ね(感動を表はす助詞)288
ねえ(感動を表はす助詞) 288
の
の(形式名詞)92
の(格を表はす助詞)220
1の(感動を表は鋤詞)228
1の(指定の助動詞) 107,137, 183,187
ので(接續を表はす助詞)226
のに(接續を表はす助詞)226
は
は(格を表はす助詞)219
は(限定を表はす助詞)222
ば(接續を表はす助詞)226
ばかり(限定を表はす助詞) 222
橋本進吉 3,12,16,33,34,59,129,142,252
場所 74
はず(筈,形式名詞)91
派生語(動詞の一) 114
はた(接續詞)177
はたらく 6|7
はなしかはつて(接續詞)177
話手 18,73,81
──の感情 178
──の立場 162,164,166,181,182,217
ばむ(接尾語)159
パラグラフ (paragraph) 253
ひ
ひく(ひつ(接頭語)151
表現 17,18
表現過程 17
表現される事柄 81
表現性の相違 94,246
表現の主體18
ひらく 6|7
賓語 270
品詞 56
ふ
ふ(接頭語)151
ぶ(接頭語) 152
不完全動詞 91
不完全名詞 91
複合語 52,53,121,127
複合動詞 118,121
複語尾 33
副詞 135,161
副詞的修飾語 141,165,171
副詞的接續詞 173
副詞的代名詞 79,161
冨士谷成章 104
附屬語 216
附屬する語 59
ぶつ(接頭語) 151
不定稱 75
ぶる(接尾語)159
フレイズ(phrase)256
プレディケイト(predicate) 271
風呂敷型統一形式 261
文 21,239
──の完結性 238
──の構成要素170
──の集合 284
──の職能 141
──の性質 230
──の成分と格 262
──の統一性234
文章 21,170,284
──の藝術性288
──の藝術的價値
──の構造 286
──の成分 162,289
──の美 287
──の分類 292
──の歴史的研究 292
文章論 284,292
一と語論 290
文節 16,33,34,47,59,217,245,252
丈和當のもの(sentence equiva]ent) 179
文法 12
文法學の對象 11,24
文法用岳 27
ヘ
へ(絡を表はす助詞)220
べい(推量の助動詞・方言) 209
べし(推量の助動詞)209
變格活用 111
ほ
方角 74
補語 96,268
補助用言 134
|發句《ほつく》 255
ほど(限定を表はす助詞) 223
ま
ま(接頭語) 151
まい(打消の助動詞)197
まうす(申す,形式動詞)98
ます(敬讓の助動詞)210
また(助詞) 166
また(接續詞)163,165,166,177
また(副詞) 165
または(接續詞) 177
まつ(接頭語) 151
まで(格を表はす助詞)220
まで(限定を表はす助詞)224
まま(形式名詞)91
み
み(接頭語) 157
未然形 106,126
む
無論 146
め
め(接尾語)157
名詞 66,69,75,132
──的代名詞 76,τ61
命令形 106,107,148
めく(接尾語) 153,159
も
も(限定を表はす助詞)222
目的意識 19
目的語(object)114
もし 144,148
勿論 146
もつと 143
もつとも(接續詞) 177
もと(接尾語)157
本居宣長 62,100
もの(形式名詞)92
ものか(感動を表はす助詞) 228
もらふ(形式動詞)97
もんか(感動を表はす助詞)228
丈字 18,19
丈字言語 86
や
や(限定を表はす助詞)222
や(感動を表はす助詞) 228
や(接尾語) 157
やう (接尾語) 157
やう(形式名詞)92
山田孝雄 12,26,33,44,57,67,68,90,93,153,171,180,199,257
やら(限定を表はす助詞) 223
やる(形式動詞) 97
ゆ
ゆえ(ゆゑ,形式名詞) 92
ゆゑ(形式名詞) 92
ゆゑに(接續詞) 177
湯澤幸吉郎 96
よ
よ(感動を表はす助詞)227
よう(意志及び推量の助動詞) 202
よう(やう,形式名詞) 92
よう(やう,接尾語) 157
用 67
用語 30,66,69,98,160,257
──の陳述性 236
要素 15
よし(由,形式名詞) 93
四段活用 111,113
よつて(接續詞) 177
より(格を表はす助詞) 220
ら
らしい(接尾語) 159,207
らしい(推量の助動詞) 206
られる(助動詞) 181
られる(接尾語) 117,118,120,159,181
り
理解過程 17
理解の主體 18
零記號 101
──の陳述 140,145,147,175,182,214,234,236,259
れ
歴史研究 86
歴史的假名づかひ 39
れる (助動詞) 181
れる (接尾語) 117,118,120,159
連體形 106,127
連體詞 31,129,135,149,161,199
一的代名詞 78,138,161
連體修飾語 77,81,95,136,141
連體修飾的陳述 101
連用形 106,126
連用修飾語 79,95,133,136,141
連用修飾的陳述 101,140
連用中止法 174,175
ろ
ろ(感動を表はす助詞)228
わ
わ(感動を表はす助詞) 228
わけ(譯,形式名詞) 92
わづか 143
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時枝誠記
1900年東京に生る.
1925年東大文学部卒業,国語学を
専攻,東大名誉教授,文学博士.
著書:「国語学史」「国語学原論」
「国語研究法」「国語問題と国語教育」「日本文法文語篇」
日本文法口語篇
岩波全書114
終了行:
日本文法口語篇
[[時枝誠記]]著
岩波全書114
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はしがき
日本語は非常にむづかしい言語のやうに思はれ、また云はれ...
3
---------------------[End of Page 3]---------------------
はしか巻
のやうな不安を裏書きすることにもならないとは限らない。し...
日本語について、結論的な文法書が出てゐないといふことは...
今日、文法學の基礎知識は、日本語についてよりも、むしろ...
4
---------------------[End of Page 4]---------------------
ばしかき
の文法は、日本語そのものに即して觀察されないかぎり、正し...
右のやうな考へは、また次に述べる日本語は變則的、例外的...
5
---------------------[End of Page 5]---------------------
はしがき
いのである。明治以後の文法研究者の惱みはそこにあつた。最...
私の見るところでは、その基礎的構造の理論をつかみ得るな...
6
---------------------[End of Page 6]---------------------
比して、比較的簡明な文法を持つた言語であると云ふことが...
今日の日本文法學は、その組織の末節にある異同を改めたり...
ちなみに、本書に用ゐた學術用語は、殆ど古來の使用と現在...
7
---------------------[End of Page 7]---------------------
9
ぱしが
概念内容を改めて行くことに力を注いで、努めて薪造語を避け...
以上のやうな理由に基づいて、本書では、日本文法の組織の...
また、本書に用ゐた「かなづかひ」については、私は「現代...
(一) 國語審議會答申の「現代かなづかい」について(國語と...
(二) 國語假名づかひ改訂私案(國語と國文學 第二十五卷第...
8
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目次
はしがき
第一章 総論
日本文法學の由來とその日的
文法學の對象
言語の本質と言語に於ける單位的なもの(一)
言語の本質と言語に於ける單位的なもの(二)
文法用語
用言の活用と五士音圖及び現代かなづかい
第二章 語論
総説
イ 言語に於ける單位としての語
---------------------[End of Page 9]---------------------
ロ 語の構造
ハ 語の認定
二 語の分類 詞と辭
三 詞
總説
體言と名詞
代名詞(一)
代名詞(二)
形式名詞と形式動詞
動詞
形容詞
動詞の派生語 自動・他動 受身 可能 敬讓 使役
形容詞
いはゆる形容動詞の取扱ひ方
連體詞と副詞
接頭語と接尾語
結
---------------------[End of Page 10]---------------------
四 辭
總説
接續詞
感動詞
助動詞
指定の助動詞 だ
指定の助動詞 ある
打消の助動詞 ない
打消の助動詞 ぬ
打消の助動詞 まい
過去及び完了の助動詞 た
意志及び推量の助動詞 う よう
推量の助動詞 だらう
推量の助動詞 らしい
推量の助動詞 べし
敬譲の助動詞 ます です ございます でございます
助詞
---------------------[End of Page 11]---------------------
總説
格を表はす助詞
限定を表はす助詞
接續を表はす助詞
感動を表はす助詞
第三章 文
一 總説
二 詞と辭との意味的關係
三 句と入子型構造(こ
四 句と入子型構造(二)
五 用言に於ける陳述の表現
六 文の成分と格
總説
述語格と主語格
述語格と客語、補語、賓語格
---------------------[End of Page 12]---------------------
修飾語格
對象語格
獨立語格
第四章 文章論
総説
文の集合と文章
文章の構造
文章の成分
文章論と語論との關係
その他の諸問題
索引
---------------------[End of Page 13]---------------------
---------------------[End of Page 14]---------------------
第一章 總論
日本文法學の由來とその目的
早總 論
日本文法がどのやうなものであり、また日本文法研究がどの...
今日見るやうな日本文法の研究は、江戸時代末期に、オラン...
當時輸入された外國の文法書は、學問的な文法研究書といふ...
1
---------------------[End of Page 15]---------------------
一 日本文法學の由來きその目的
のであつた。即ち、文法書は、國語の、特に文語の讀解と表現...
日本文法の全面的な組織と體系化は、右に述べたやうに、外...
2
---------------------[End of Page 16]---------------------
論
第一章總
あつた。何となれば、古典の言語は、現代に於いては意味不通...
3
---------------------[End of Page 17]---------------------
一 日本文法學の由來とその目的
現代に於ては、口語文が一般に行はれて文語文は甚だ稀にし...
博士は、口語文法の教授を以て、文語文法に入る階梯準備と...
廣く國語教育の立場から見れば、文法の知識は、我が國語の...
口語法の教授は、言語の表現、理解のためといふ實用的見地...
4
---------------------[End of Page 18]---------------------
第一一章總
昭和六年の教授要目にある「文法ノ教授ニ於テハ國語ノ特色ヲ...
國語教育といふ立場だけからでなく、一般に教育といふ立場か...
文法科の任務を、ただ國語についての認識を高めるばかりで...
---------------------[End of Page 19]---------------------
Pt 日オ・文法學の由來とそのll的
普通教育に於ける文法科は、以上述べたやうに、文化現象と...
文法學は、確かに人間の精神や文化を研究する學問の一つで...
6
---------------------[End of Page 20]---------------------
第一章 總論
の形態は、人間一生の生活を通じて、片時も離れることの出來...
口語法の教授に、實用的見地が否定されるやうになつたのは...
7
---------------------[End of Page 21]---------------------
一 日本文法離の由褒とその目的
または文法書の組織といふものは如何にあらねばならないかと...
學校教育に於いて、文法學科を研究的に、開發的に行ひ、生...
---------------------[End of Page 22]---------------------
録一章總
由が考へられる。その一は、言語現象は自然現象と異なり、極...
以上のやうな理由によつて、學校教育に於ける文法科は、生...
9
---------------------[End of Page 23]---------------------
一 日ズ文注攣の由來とその口的
があることを理解するならば、當然のことであると云はなけれ...
私は余り文法學の教育的な面ばかりを述べ過ぎたやうである...
文法學とその實用的意義との交渉は、單に文法學の理論が、...
---------------------[End of Page 24]---------------------
私は本書に於いて、以上述べたやうな文法學の體系を組織す...
(一) 『新文典別記初年級用』の新文典編纂の趣意及び方針...
(二) 『國語學と國語教育』(岩波講座 國語教育、橋本博士...
(三) 同上書
呂 文法學の對象
第一章總論
文法學は、言語の事實全般を研究對象とする言語學の一分科...
---------------------[End of Page 25]---------------------
=二 女法ξ}fの麥㌃象
を研究するものであるのか。文法學の對象が、文法であるとす...
文法を以て、言語構成に關するすべての法式、または通則と...
すべて言語構威の法式又は通則を論ずるのが文法又は語法であ...
事實、文法研究の中に、音聲組織の研究や語源研究をも含め...
右のやうな説に對して、山田孝雄博士は、文法學の概念を限...
12
---------------------[End of Page 26]---------------------
られる。
これ(筆者註、文法學を指す)は語の性質、運用等を研究する部...
即ち文法學は、語の研・究に限定されることになるのである。...
語の相互間の關係を規定する法則をさして語法といふ。(三)
といはれたのは、山田博士の意味するところと大體同じである...
このやうな語及び語の相互關係の研究に對して、文字或は音...
以上述べたところによつて、文法研究の對象が、言語の要素...
13
---------------------[End of Page 27]---------------------
二文注堵の對象
音聲論、意味論などと異なり、言語自身を一體として、それの...
(一) 『國語學概論』(橋本進吉博士著作集 第一巻 二九頁)
(二) 『日本文法學概論』一五頁
(三) 『國語學通考』二九五頁
三 言語の本質と言語に於ける單位的なもの(一)
言語の本質が何であるかといふ言語本質觀には、今日、全く...
---------------------[End of Page 28]---------------------
論
第一章總
てゐる。その一は、言語は思想と音聲或は文字が結合して出來...
---------------------[End of Page 29]---------------------
嘗 言語の木質と言語に於ける單位伽なもの(一)
て言語から、音聲と思想との二要素が抽出される。音聲を更に...
---------------------[End of Page 30]---------------------
章總
言語構成觀の當然の結論であると見ることが出來るのである。
言語構成觀は、既に述べたやうに、自然科學的物質構成觀か...
次に擧げるところの言語観は、言語を人間が自己の思想を外...
言語過程觀は、日本の古い國語研究の中に培はれた言語本質...
一 言語は思想の表現であり、また理解である。思想の表現...
---------------------[End of Page 31]---------------------
三言語の本質と言語に於ける甲位的なもの(一)
が言語であると考へるのである。
ニ 思想の表現がすべて言語であるとはいふことが出來ない...
三 言語は、從つて人間行爲の一に屬する。言語を行爲する...
四 言語が人間的行爲であり、思想傳達の形式であるといふ...
五 構成的言語觀で、言語の構成要素の一と考へられてゐる...
18
---------------------[End of Page 32]---------------------
一章總
六 構成的言語觀で、言語の構成要素と考へられてゐる音聲...
七 言語は、常に言語主體の目的意識に基づく實踐的行爲で...
八 言語を實踐する言語主體の立場を主體的立場といび、言...
九 言語の觀察者が、他の言語主體によつて生産された言語...
---------------------[End of Page 33]---------------------
四 言語の本質と磊語に於ける1'i;位的なもの`二)
一〇 言語研究者の觀察の對象となるのは、常に特定個人の...
以上は、言語過程觀の最も根本的な言語に對する考方であつ...
(一) 『國語學原論』三九頁
四 言語の本質と言語に於ける單位的なもの(二)
言語構成觀に對立する言語過程觀の概略は、以上述べたやう...
---------------------[End of Page 34]---------------------
第一章總論
言語の究極的單位として單語を考へ、單語を基本とし、出發點...
一 語
二 文
三 文章
ここにいふ語及び文は、從來の文法研究に於いて取扱はれた...
今、この三つのものを文法研究の單位と稱する時、ここに用...
---------------------[End of Page 35]---------------------
四 言語の本質と言語に於ける單位的なもの(二)
にして置くことは、右の對象設定の推論を明かにする上に有效...
一般に、語が言語に於ける單位であると云はれる場合と、私...
---------------------[End of Page 36]---------------------
第…章綜
それぞれに書籍の單位として取扱ふのと同様に考へることが出...
語と文とを言語研究の對象とすることは、從來の文法學に於...
文章が、今日専ら修辭法の問題として取上げられてゐること...
---------------------[End of Page 37]---------------------
四 言語の捧質と毒語に及ける軍位的なものに⇒
の立場から論ぜられたのと同じである。規範を論ずるには、そ...
文章を對象として研究することは、一個の教材をそれ自身一...
ここで再び最初の文法學の對象は何であるかの問題に立返つ...
---------------------[End of Page 38]---------------------
の間に存する法則を明かにする學問であつて、同じく言語研究...
以上のやうな單位設定の方法に對して、著しい對照をなすも...
25
---------------------[End of Page 39]---------------------
四 言語の本質と昆語に於ける單位的なもの(二)
たのである。しかしながら、自然科學的な單位の概念を、言語...
設定することに既にそれが現れて居る。山田孝雄博士が、語を...
單位とは分解を施すことを前提としたる觀念にしてその分解...
といはれる時、その單位の意味は、正に原子論的單位の意味で...
單語とは語として分解の極に逹したる單位にして(二)
といはれる時は、既に「語として」といふ質的統一體としての...
語といふは思想の發表の材料として見ての名目にして、文と...
---------------------[End of Page 40]---------------------
の名目なり(三)
といふやうに説明して居られるのであるが、文の中の語が、思...
(一) [[『日本文法學概論』>山田孝雄『日本文法学概論』]]二...
(二) 『改訂版日本文法講義』九頁
(三) 『日本文法學概論』二〇頁
五 文法用語
今日文法學上用ゐられてゐる用語には、體言、用言、係《か...
---------------------[End of Page 41]---------------------
五文法用語
ーロッパ諸國語特にオランダ、イギリス文法の用語の飜譯に基...
---------------------[End of Page 42]---------------------
第一章總
戒める必要があると思ふのである。ただここで注意したいこと...
今日の文法用語の大部分が、外國文典の飜譯に起原するもの...
次に、現在の私の見解に基づいて、問題とすべき文法上の用...
一 形容詞
---------------------[End of Page 43]---------------------
五女浤用語
本來、adjective或はattributiveの譯語として出來たもので...
イ 美しい鳥
ロ 飛ぶ鳥
---------------------[End of Page 44]---------------------
第一章總
イの美しいが形容詞と呼ばれるならば、ロの飛ぶも當然形容詞...
---------------------[End of Page 45]---------------------
五交法用語
二 助動詞
この品詞名も今日廣く行はれてゐるものであるが、その起源...
助動詞ハ、動詞ノ活用ノ、其意ヲ盡サヾルヲ助ケムガ爲ニ、...
これは全く、英文法などの概念に從つて、動詞の意義を補助...
32
---------------------[End of Page 46]---------------------
ゴリーに所屬させたために、これらの語の眞義が全く忘れ去ら...
本書では、助動詞の眞義を古來のてには研究の中に求めて、...
---------------------[End of Page 47]---------------------
五 〕文 ξ去 /lj 語
し適切な名稱を求めるとするならば、動辭、活用あるてには、...
代名詞の名稱とその内容についても問題とすべきことが多い...
文節の名稱も、橋本進吉博士の提唱以來、國定教科書などに...
(一) 明治三十一年三月、『復軒雜纂』に收む。
(二) 富士谷成章の『|裝《よそひ》圖』に於いては|状《さ...
34
---------------------[End of Page 48]---------------------
第一章總
六 用言の活用と五十音圖及び現代かなづかい
五十音圖はもと梵語學の影響の下に作られた國語の音韻表で...
近世以來、五十音圖が國語の活用現象をよく説明するところ...
---------------------[End of Page 49]---------------------
六 用言の活用と五十昔圖及び現代かなづかい
定されてゐるのである。しかし、この音圖が假名で書かれるや...
---------------------[End of Page 50]---------------------
第一章鮒
つたのである。活用について、ハ行四段活用などと云はれてゐ...
國語を純然たる表音主義によつて記載しようとする場合には...
「現代かなづかい」は、その根本方針として、國語の表音主...
今試みに現代語の音韻文字表を作製して見ると別表のやうに...
37
---------------------[End of Page 51]---------------------
考 備 行段
節 音 韻 母
及書の互の尾語中語はげるれらゐ用に◎の詞助び るれらゐ用に...
τb ま は な た さ か や わは あ
ら ま は な た さ か や わは あ
に昔の守の尾語中語はび 鹽〕 るれらゐ用 リ ミ ヒ 二 ...
り み ひ に ち し き おひ
り み ひ に ち し き い
丿レ ム フ ヌ ツ ス ク 工 ウ
る む ふ ぬ つ す く ゆ うふ
る む ふ ぬ つ す く ゆ う
〔 「るれらゐ用に己の詞助は...
れ ・め へ ね て せ け えゑへ
れ め へ ね て せ け えへ
るれらゐ用に包の詞跏堰i 口 モ ホ ノ ト ソ コ ヨ オ
ろ も ほ の と そ こ よ おをほ
ろ も ほ の と そ こ よ おを
五十音圖による音韻と文字との對照表
---------------------[End of Page 52]---------------------
第一章總
表の解説
一 表に於いて、片假名は音韻を表はし、平假名は、その音...
二 〔ア〕〔ワ〕〔ヤ〕三行の音は、これを母韻と認めて、...
三 右のやうに整理することによつて、〔ア〕行と〔ワ〕行...
四 〔ア〕〔ワ〕〔ヤ〕三行の音は母韻であるから、〔カ〕...
ことも許されるのである。例へば、〔カ〕は、〔キャ〕或は〔...
五 音韻に相當する假名は、歴史的假名づかひの場合を上段...
---------------------[End of Page 53]---------------------
六 用言の活用と五十普厨及び現代かなイかい
を下段に置いて示した。
表について見れば明かなやうに、歴史的かなづかひに於いて...
---------------------[End of Page 54]---------------------
論
第一章總
活用はワ行四段活用となり、次のやうに活用する。
思う ーわ ーい ーう ーえ
問題は意志の表現「思はう」(現代かなづかいは、「思おう」...
---------------------[End of Page 55]---------------------
六 用言の活用と五十言圖及び現代かなづかい
う」といふ語句から、記載のままに活用形を抽出することは困...
次に第二の方法は、「書いて」の「書い」を一個の別の活用...
42
---------------------[End of Page 56]---------------------
もおう」の「う」は長音記號であつて助動詞ではないが、歴史...
四段活用の未然形に意志を表わす助動詞が附いた場合はこれ...
書か-意志の助動詞……書こう
買わ-意志の助動詞……買おう
(この三行は「現...
43
---------------------[End of Page 57]---------------------
第二章語論
總説
イ 言語に於ける單位としての語
總論に於いて述べたやうに、本書に於いては、語を文及び文...
語を單位として認定することに關しては、右に述べたことと...
---------------------[End of Page 58]---------------------
論
第二章語
文法研究の直接の對象は言語にありといふ、その研究の基礎...
とし、この疑問を次のやうに解決しようとされた。
語といふは思想の發表の材料として見ての名目にして、文と...
この考方は、材料とその運用の關係に於いて、語と文との相...
本書の基調とする言語過程觀に從ふならば、語は思想表現の...
---------------------[End of Page 59]---------------------
の單位の性質にどのやうな相違があるかといふことでなければ...
語に對する考方の第二は、語は文の分析によって得られる究...
單語とは語として分解の極に逹したる單位にして、ある觀念...
とあるのはその一例である。
その第三は、單語を以て、文節から歸納、抽出されたもので...
實際に物を言う場合には、文節以上に短く句切って發音する...
櫻が 咲く。
櫻を 植える。
見渡す 限り 櫻です。
---------------------[End of Page 60]---------------------
第二章語
この三つの文における「櫻が」「櫻を」「櫻です」という文...
以上いづれの考方に從つても、單語は、言語の主體的意識に...
するものとする考方と甚しく相違するものであるが、單語が分...
私の好きな學科は、國語と數學です。
といふやうな思想表現に於いて、これを句切つて發音すれば、
私の 好きな 學科は、國語と 數學です。
のやうになり、「これ以上句切って發音すると、實際の言葉と...
47
---------------------[End of Page 61]---------------------
論
一總
語」「數學」といふやうな語が、それ自身統一體としての單位...
語が、言語の分析或は歸納的操作の結論でないことは、從來...
(一)『日本文法學概論』十九頁
(二)同上書 二〇頁
(三)小林英夫譯、ソシュール著『言語學原論』序説第四章「言...
(四)山田孝雄『改訂版日本文法講義』九頁
(五)文部省『中等文法』(口語)四頁
(六)文部省『中等文法』(口語)三頁
---------------------[End of Page 62]---------------------
ロ 語の構造
語は、文及び文章とともに、言語に於ける單位として、既に...
49
---------------------[End of Page 63]---------------------
らない。以下、語がその構造上、文及び文章とどのやうな點に...
「語の構造がどのやうなものであるかを、結論的に云ふならば...
---------------------[End of Page 64]---------------------
集二章語
以上述べるところによつて、一語と云はれるものの構造上の...
のであるが、なほ次のやうな場合をどのやうに説明すべきかと...
である。十字科に屬して「あぶらな」と云はれてゐる植物をと...
と云つた場合、この構造は、前の「つばきのはな」と同一でな...
はな」は、一個の花が何に屬するものであるかの説明であるの...
花そのものを云ひ表はすところの一囘過程の表現であることが...
のはな」は、「花」を〔ハナ〕と云ふ場合の一囘過程とは幾分...
「なのはな」が一囘過程の表現でありながら、その中になほ觀...
る〔ナ〕〔ノ〕〔ハナ〕といふ三囘の過程を包含してゐること...
ところの一語であつて、これを圖解すれば次のやうになる。
イ A……→a 「はな」の場合
ロ A bc「なのはな」の場合
ABCはそれぞれ語によつて表現される事物或は思想を意味し...
51
---------------------[End of Page 65]---------------------
説
總
する音聲を意味するならば、イの場合は、Aといふ思想が音聲...
一般にこのやうな構造を持つた語を複合語或は合成語と呼ん...
以上述べて來た語の定義に於いて、二の重要な點が觀取され...
52
---------------------[End of Page 66]---------------------
現過程が一囘に過ぎないからである。「社會」「デパート」「...
その二は、語の單複の決定は、その語の表現主體の意識によ...
以上述べたことは、言語過程觀に立つた語に對する考方であ...
53
---------------------[End of Page 67]---------------------
總
言語過程説は、以上のやうな困難な點を克服して、語の單複...
單位としての語と、單位としての文の構造上の相違は、文論...
54
ハ 語の認定
ある語が一語であつて二語でないと云はれる根據は、その過...
に於いてこれを明かにした。單位としての語は、本來主體的意...
問的な歸納、分析の操作によってはじめて求められるものでな...
のであるが、このやうな語の認定に關しては、なほ多くの困難...
「川」「犬」「猫」等が一語として認定され、かつそれが主體...
であることについては、恐らく問題が無いであらう。ところが...
文法書に於いては、「靜かだ」「ほがらかだ」「綺麗だ」を一...
稱してゐる。その根據は、「靜か」「ほがらか」「綺麗」等は...
---------------------[End of Page 68]---------------------
れることなく、常に「だ」と結合して用ゐられるからであると...
55
---------------------[End of Page 69]---------------------
二訊の分類
ば觀念的に、思辨的になる危險があるのであるが、ただ現象的...
二 語の分類
詞と辭
語はすべて同様な性質を持つものではなく、種々の點から同...
---------------------[End of Page 70]---------------------
二章語
て意味は、語の品定めであり、語の種類別であるから、語種、...
譯である。
語の種類別であるから、その分類の根本的基準は語といふも...
であるかといふことに對する考方に基づくと同時に、また語の...
つて區々であるから、分類の方法も、實際に即して、それぞれ...
て來なければならないのである。ここに外國語に於ける語の分...
適用することが出來ない理由があり、國語の分類には、國語に...
要求される所以である。
語の分類をするからには、何よりも先づ語そのものの性質が...
檢討から入るのが正しい順序であらう。
一の語を規定するものは、言語構成觀に從へば、思想内容と...
この考へに從ふならば、一切の語は、思想内容と音聲形式との...
於いては語はすべて同一であると云はなければならないのであ...
---------------------[End of Page 71]---------------------
二語の分類
の語が獨立觀念を持つか持たないかといふ點に分類の基準を求...
一切の單語は之を同の方面より見ればそが單語たるに於い...
其の中に異を求めてこれを分類せざるべからず。かくて、こ...
りて區別すれば、一定の明かなる具象的觀念を有し、その語...
思想をあらはし得るものと然らざるものとあり。一は所謂觀...
的觀念を有せざるものなり。この一語にて一の思想をあらは...
るものはかの豆尓乎波の類にして專ら觀念語を助けてそれら...
なり。(中略)この故に、先づ單語を大別して觀念語と關係語...
即ち、山田博士は、これを具象的な獨立觀念の有無といふこ...
であるが、てにをは《、、、、》或は助詞といはれるものが、...
たないかといふのに、必しもさうとは云へないのである。博士...
の中にも、極めて抽象的な概念しかあらはさない「こと」「も...
係語の中にも、「か」「も」の如く疑問、強意の如き且ハ象的...
獨立觀念といふ點で、この兩者を截然と分つことは困難である...
58
---------------------[End of Page 72]---------------------
論
二章語
に思想をあらはし得るものと、さうでないものとの別を以て説...
類基準は、橋本進吉博士もとられたところのものであつて、博...
續きの上から、一はそれ自らで獨立して文節を構成し得るもの...
て文節を構成し得るものに二大別され、前者を詞、後者を辭と...
ら、語が獨立して用ゐられるか否かといふことは、必しも絶對...
する絶對的な條件とはすることが出來ないものである。例へば...
の「行け」は、「ば」と結合してのみ用ゐられるものであつて...
を構成するものとは考へられない。また「八百屋」「肉屋」の...
獨立して文節を構成するものとは考へられないにも拘はらず、...
ことはない。獨立する語、附屬する語の二大別は、國定の文法...
普及するやうになつた分類基準であるが、それは語そのものの...
單に用法上の相違に基づいたものであるといふ點から見ても、...
既に理論的に薄弱であると云はなければならない。語の分類基...
上に相違を見出すことが出來なかつたのは、語を構成的に見る...
59
---------------------[End of Page 73]---------------------
==語の分・灘嘆
あつたのである。
60
語の根本的性格を、表現過程に求めた言語過程觀は、語の類...
程的構造形式に求めるのである。・→切の語について、その愚の...
次のやうな二の重要な相違を見出すことが出來る。
一概念過程を含む形式
二概念過程を含まぬ形式
一は、思想内容或は表現される事柄を、一旦客體化し、概念...
字によつて表現するところのものである。人間を取りまく森羅...
既にそれが客體化されて居るものであるから、これを表現する...
化の作用を經過するのは當然である。「花が険いた。」といつ...
目前の具體的な「花」をあらはすことに於いて、その花を客體...
的な花そのものをあらはしてゐるのでなく、これを概念化して...
るのである。鈴木朖は、このやうな表現に於ける働を、「さし...
ある。(蠶)この働きはく○屋け篝9(表象する)の作用に似てゐる...
---------------------[End of Page 74]---------------------
論
二章語
このやうな作用を經て表現するところのものである。このやう...
於いては勿論であるが、主觀的な情意に關することをも同樣な...
來る。「よろこび」「悲しみ」「要求」「懇願」等の語はこの...
語のあるものは、このやうにして、表現される事物を客體化...
されるものであると同時に、それらが表現される事物の個々の...
ゐるのでなく、これを概念化して、一般的なものとして表現す...
べきことである。「花が険いた。」と云つても、それは、我が...
ままに表現してゐるのではなく、これを「花」として一般化し...
これを「櫻が険いた。」と表現した場合でも、具體的な櫻を、...
のである。語が常に概念しか表はすことが出來ないといふこと...
質であつて、從つて個物をいくらかでも具體的に表現するため...
な櫻」とか、種々な修飾語がこれに冠せられるのであるが、そ...
それが概念的なものであることには變りはないのである。
以上のやうな經過をとる表現に對して、よろこび、かなしみ...
---------------------[End of Page 75]---------------------
二語の分類
せず、また概念化せず、そのまま直接に表現する語がある。そ...
このやうな語の類別は、國語に於いては、既に古く鎌倉時代...
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第==章語
てゐる。玉とこれを貫く緒によつて、裝飾品が出來るのである...
これらの比喩を通して我々が觀取出來ることは、詞と辭とは...
上の鬪が示すやうに、CiDの表現...
丶、
D
噺 AO
CIDは零體黒であり
AlBは言語主髀の情意である
「語 「詞はでいをかならでは働|篤《ま》 係について述べて...
係について述べてゐるのである。
それぞれに獨立したものでなく、相互に緊密な關係があるも
のである。このことは、文論に於いて詳細に論ずる豫定であ
るが、既に宣長が云つたやうに、詞は布であり、辭はそれを
縫ふ技術として相互に結付く關係にあり、(六)鈴木朖もまた
てにをはは|詞《、、、、》ならではつく所なしL・七)と云...
留贈安ε{'ノ、脅二彩〜
63
---------------------[End of Page 77]---------------------
二語の分類
語を構成的に見るかぎり、一切の語は、音聲と思想との結合...
類する何等の差別をも見出し得ないのであるが、言語を表現過...
こに右に述べたやうな極めて著しい表現性の相違の存在するこ...
この事實は、文法に於ける品詞分類の第一基準として、文法學...
のでなければならないのである。
語に次元を異にした詞と辭の區別の存在することは、日本語...
---------------------[End of Page 78]---------------------
と辭の合體したものに相當するものであると云へるのである。...
(一)
(二)
(三)
(四)
(五)
(六)
v(七)
『日本文法學概論』八四頁
『國語法要説』(橋本逖吉博ま著作集 第二巻 五三頁)
『言語四種論』
同上書
『詞の玉緒纏糊論』
同上書
『言語四種論』
論
舞_章語
三 詞
イ總 詮
ぐ系懸
詞は、「シ」「ことば」と呼ばれ、語の分類に於いて辭に對立...
(15
---------------------[End of Page 79]---------------------
詞
三
硬楓3臆
・ざ
的性質は、大體次のやうに要約することが出來る。
一 表現される事物、事柄の・客體的概念的表現である。
二 主體に對立する客體化の表現である。
三主觀的念情・籍でも・これを客體的に・概念的に表現するこ...
る・
四纂籍合して蠡的な田鑾現となる. 勝
五 辭によって統一される客體界の表現であるから、丈に於...
序である「格」を持つ。
以下、詞の下位分類について述べることとする。
ロ 體言と名詞
コ喜物・事柄の客體的、概念的表現である詞を分つて・體言・...
體言、用言の別は、詞が、他の語との接續關係に於いて、そ...
---------------------[End of Page 80]---------------------
論
二章語
體言といひ、その語形式を變ぺるものを用言といふ』しこの分...
の方法とその命名法に從つたもので、國語の性質をよく反映し...
認められる。體言をはたらかぬ語、用言をはたらく語といふの...
ら云つたものである。
體と用との意義については、今日學者の聞に説が分れて居つ...
面を特に重視する山田孝雄博士は、體言といふ名稱は、概念を...
活用せぬ語を體言といふのは誤つてゐると詳細に述べて居られ...
に、體用の名稱は、その起源的意味に於いては、確かに、實體...
ものであらうが、それだからとて、國語學上に於ける體用の名...
するのが正しいとは云へないのである。用言に語形變化がある...
の觀念とは別に學者によつて注Rされて居つたことで、それを、...
またそのやうな現象を、ひらくとかはたらくとか稱し、それに...
「ひらきなき語」とか、「はたらかぬ語」といふ風に呼んでゐ...
稱が連歌等に用ゐられて一般に普及して居つたので、この名稱...
G7
---------------------[End of Page 81]---------------------
詞
ので、ここで體用といふ名稱は、國語學上では、語形變化をし...
の意味に用ゐられるやうになつたのである。事實が先で、名稱...
きは、語を先づ二大別し、體言の中に、活用のない辭、即ち今...
用言の中に、活用のある辭、即ち助動詞をも所屬させてゐるが...
の詞と辭の二大別に對して、活用するかしないかといふことを...
調したものと見ることが出來るのである。山田博士の文法體系...
はす概念内容の性質を特に重視された爲に、體用の名稱につい...
於いて見ることを避けられたものと想像されるのであるが、既...
源的意味は、これらの名稱が現實に使用されて來た實際とは距...
知る必.要がある。
さて、以上のやうに、語形變化をしない語を體言とする時、...
「あめ」(雨)といふ語が「くも」(雲)といふ語と結合する時、...
ね」が「ふなうた」となるやうな|揚《O》合、「あめ」「ふね...
用言とすべきであるかといふ疑問が提出されるのであるが、こ...
63
---------------------[End of Page 82]---------------------
場合に起こる一時的な音聲現象に過ぎないのであるから、...
ことは出來ない。從つて、「あめ」「ふね」のやうな語は...
ないのである。これに反して、用言と云はれる語は、他の...
た規則的に語形を變化するところの語である。
以上のやうに、體言の名稱は、語の形式に基づくもので...
これをヨーロッパ諸國語に於ける目oβ昌或は餮びω蜜暮ぞ①...
者が實在に對する名稱の意義に用ゐられて居つて、むしろ...
あることに於いて、山田博士のいはゆる起源的意味に於け...
礼出來るであらう。ご|國《7》語に於ける體言の中に、比較的...
ゆ の出來るものを名詞と稱するならば、それはけoq昌或はωβ...
詞に近づくであらう。自由に主請、述語、修飾語になるこ...
論
にその實在を指摘し、また考へることが出來るやうな語で...
、中、このやうな語を便宜、名詞と呼ぶことにする。名詞とい...
|二《ゴ㍉》 て發生したものでなく、外國語學の名稱を借用し...
し9
---------------------[End of Page 83]---------------------
詞 宜的のものであつて、體言の中、どこまでを名詞とするか...
三}論困難であ匝
體言の中、「山」「川」「犬」「猫」「正直」「親切」「...
るに相應しいものであるが、體言の中には、次のやうな、い...
相應しくないものがあることを注意しなければならない。
一 いはゆる形容動詞の語幹と云はれてゐるもの
暖か のどか はで 綺麗 丁寧 嚴重 急 批到的
二 形容詞の甑㎜幹
あま(甘) から(辛) ひろ(廣) ちか(近)
三 いはゆる形式名詞
知らない筈がない。
大きいのがいい。
おいで下さる由。
出かけるつもりです。
70
---------------------[End of Page 84]---------------------
語 論
四 接尾語の中、活用のないもの。
赤さ つよみ 私たち 歸りしな
五 漢語の中、語の構成に用ゐられるもの。
族館 圖書館 映晝館
商人 役人 小作人
平和的 國際的 立體的
驛長 事務長(長は獨立しても用ゐられる)
六 接頭語
お寫眞 御夫婦 玉音
ボ書に於いては、右のやうに、名詞とするにはふさはしくない...
かつ語形變化をしないものを體冨とした㎞嫁β㍉広③翼
(一) 『國語學史要』第九項、『日本文法學概論』第六章
71
---------------------[End of Page 85]---------------------
詞
ハ 代名詞(一)
代名詞の名稱は、オランダ文法などからの直譯によつて出來...
までもないのであるが、今日、英文法などでも、この名稱が、...
してゐるかどうかといふことについては、學者の間に問題があ...
について考へるに當つても、この名稱を一往離れて、事實その...
とが必要であらうと思ふ。
一般に代名詞の代表的なものとして擧げられてゐるものに、...
第一人稱に屬するものに、私(わたくしわたし)、僕、俺等があ...
た、君、おまへ等があり、第三人稱に屬するものに、あのかた...
れらの語は、語形が變化しない點から云つて、體言に屬するこ...
明瞭な個體的事物を表現することに於いて、名詞と同樣に見る...
ころで、これらの語が、何故に、文法上一般の名詞とは別に、...
たのであらうか。これが先づ考へるべき重要な點である。 一...
72
---------------------[End of Page 86]---------------------
論
第二章語
との別にかかはりなく、事物の概念を表現するものである。「...
いふ語も、ともに名詞であることは明かである。既に擧げたと...
が何等かの人を表現するものであることに於いて名詞「商人」...
のであるが、ヨれらの名詞と異なるところは、人稱代名詞は、...
物との關係を表現する場合にのみ用ゐられる語であるといふこ...
する語には、「親」とか「兄」とか「先生」等の語があるが、...
との關係の表現にだけ用ゐられるといふものではない。聞手と...
との關係に於いても、「親を大切になさい。」といふ風に用ゐ...
きますか。」といふ場合の「君」は、必ず話手に對して聞手の...
み用ゐられるのである。第一人稱の代名詞は、話手が自分自身...
表現する時にのみ用ゐられ、第二人稱の代名詞は、話手が他者...
て表現する時にのみ用ゐられ、第三人稱の代名詞は、話手が他...
係に於いて表現する時にのみ用ゐられるのである。從つてどの...
人でも、人そのものの概念内容に關せず、話手との關係によつ...
73
---------------------[End of Page 87]---------------------
となり、「彼」となるのである。このやうに見て來るならば、...
との關係概念を表現するところにあると云ふことが出來ゐ随...
とは、話手との關係といふことであつて、話手との關係とい...
るか、話題の人物であるか、或は話手自身であるかといふこ...
名詞の特質を、以上のやうに、話手との關係概念の表現とい...
やうな關係に置かれるものが人であるか物であるかといふこ...
るものではない。そこで、そのやうな關係にあるものが、事...
は、これを指示代名詞といふ。事物、揚所、方角等は、話手...
つたり、聞手となつたりすることは、擬人的用法以外には考...
第三人稱の立場に立つのである。人稱代名詞が、話手との關...
そのやうな關係に立つ「人」そのものをも含めて表現するや...
やうな關係に立つ「物」を同時に含めて表現する。「これ」...
ある。
代名詞と云はれる語が、事物の概念を表現するのでなく、...
74
---------------------[End of Page 88]---------------------
論
第二章語
内容との關係を表現するものであるために、進んで、話手と表...
次のやうな差別の表現が考へられてゐる。印ち、萄表現内容が...
聞手に近い關係にあるか、或は兩者に對して第三者的…關係にあ...
の識別の表現であ伶例へば、表現内容になつてゐる人物や事物...
いつ」「あいつ」「どいつ」といふ語が對立するのはそれであ...
様に、「ここ」「そこ」「あそこ」「どこ」、或は「こちら」...
どと區別するのである。一般に代名詞に於ける近稱、中稱、遠...
事實で、この關係の識別の表現は、國語に於いては、諸外國語...
てゐる事實である。(一)これらの代名詞に於いて、關係概念を...
「そ」「あ」「ど」であるところから、佐久間博士は、代名詞...
て把握して居られることは注意すべきことである。このやうに...
は、すべて話手との關係を規定し表現するところに特色がある...
の讐或は名詞と明かに區別せられなければならないものなので...
は、話手の屬性的概念の表現にあるのでなく、全く話手との關...
75
---------------------[End of Page 89]---------------------
文法研究に於いて、犖霧慮されねばならない;の事例といふこと...
以上述べて來た 代名討は、話手との關係概念を表現すると...
事物の概念をも含めた表現であるが故に、これらを體言或は名...
名詞的代名詞と云つてもよい譯である()。
次に、左の文について見るに、
この繪は立派な繪ですね。この作者は誰ですか。
ここに用ゐられてゐる「この」といふ語は、「庭の櫻」「川...
の」等が、或る事物的概念を表現して、「櫻」或は「水」の修...
して、話手と事物との關係概念を表現して、「繪」或は「作者...
で、既に述べて來た代名詞の性質に共通してゐるものである。...
質的には右の代名詞の範疇に所屬せしむべきものなのである。...
或は名詞的代名詞と異なるところは、「この」の「こ」が、話...
を表現して、そのやうな關係にある物を含めてゐないといふこ...
形式は、このやうな關係概念だけを表現すべきものであるかも...
---------------------[End of Page 90]---------------------
論
第二章語
も含めるといふことは、代名詞と名詞との複合語と認むべきも...
のかた」は、「話手とこのやうな關係にある方」の意味で、「...
めることも出來るのである。「ここ」は「
めることも出來るのである。「ここ」は「こ|處《へ》 こと...
ことである。前の例文に於いて、「この繪」の「こ」が、純粹...
とは以上の如くであるが、同じ例文中の「この作者」の場合の...
手と作者との關係を云つたものではなく、 この話手とこの繪...
の關係に置かれた事物即ちここでは、「繪」をも含めて表現し...
かである。して見れば、この第二の場合は、既に述べて來た名...
きものである。
御意見は結構ですが、その具體案を示して下さい。
いつか承つた事件、あの結末はどうなりましたか。
右の「そ」「あ」は共に「その御意見」「あの事件」の意味...
右のやうな「この」「その」「あの」「どの」等については...
離して他の助詞に結合して用ゐられることなく、常に「の」と...
77
---------------------[End of Page 91]---------------------
詞
三
用ゐられることから、これを一語と見るべきであるといふ説が...
させる考方があるが、既に述べたやうに、これらの語は、話手...
から、代名詞以外の品詞に所屬させることは、理論上からも實...
はない。ただし、人稱代名詞、指示代名詞が名詞に對應すると...
名詞と名づけたと同樣に、「この」「その」等を連體詞的代名...
であらう。
以上のやうな理由で、次のやうな語もこれに所屬させること...
こんな そんな あんな どんな
形容詞といふ名稱を、もし連體修飾語として用ゐられる語の...
るならば、これらの語に形容詞的代名詞の名稱を用ゐることが...
連體修飾語的代名詞に對して、次のやうな例が見られる。
かう、こんなに
かう忙しくてはやり切れない。 こんなにも考へられま...
さう、そんなに
---------------------[End of Page 92]---------------------
さう忙しくては本も讀めないでせう。 そんなに考へて...
ああ、あんなに
ああ忙しくては體に惡いのではないのですか。 あんな...
何とかするつもりでせう。
どう、どんなに
どうするつもりなのですか。 どんなに考へて見ても駄...
右のやうな語は、連用修飾語としてのみ用ゐられるので、こ...
ことが許されるであらう。
第二章語論
79
---------------------[End of Page 93]---------------------
情態
一
O
O
こんな
かう
こんなに
そんな
さう
そんなに
あんな
ああ
あんなに
どんな
どう
どんなに
關 方
所
係
○
O
この
その
あの
副詞的代
名詞
どの
連體詞的
代名詞
角
○
○
こちら
こつち
そちら
そつち
あちら
あつち
どちら
どつち
○
○
ここ
そこ
あそこ
どこ
物 人
○
○
茫
そそ
れ
あ
あれ
どど
れ
わたくし
僕
あなた
君
このかた
そのかた
あのかた
どのかた
どなた
名詞的代
名詞
/
/
/の關係「話
話手と
鶲類/∠(第
手
聞
廴
人稱)「(第二人稱)宮
稱
中嚠
汽咋
f↑
遠
稱
不定稱
事
柄
(第三人稱)
80
代名詞分類表
---------------------[End of Page 94]---------------------
9
論
語
輩
二
右の表についての説明
一 右の表を理解するについては、第一に、言語の成立條件...
される事柄の關係とそれらの性質をよく理解しなければならな...
二 話手及び聞手は一般に人であり、表現される事柄は、人...
態等の種々のものが含まれる。
三 代名詞の最も基本的なものは、右の表の中の「關係」を...
れは常に「の」と結合して潼體修飾語としてしか用ゐられない。
四 その他の代名詞は、この關係概念を表はす代名詞に、そ...
含めて云つたものである。「このかた」は「こ」の關係にある...
五 以上のやうであるから、.代名詞は、體言や名詞の中の一...
體詞や副詞と並ぶ一類の品詞でもなく、それらに對應して別個...
てあることが分る。代名詞が、常に話手を軸として、それとの…...
他の品詞との根本的な表現上の相違を見出すことが出來る。
...
(一) 佐久悶鼎『現代日本語の表現ど語洪』前篇 第五
---------------------[End of Page 95]---------------------
詞
三
V(二) 『國語學原論』總論 第五項
82
二代名詞(二)
,訴
〜こ、しP ハ'二
以上、私は、』、磐代名詞と呼ばれて來た品詞の性質を吟味し...
事柄との關係概念を、話手の立場に於いて表現するものと解し...
柄は、その事物的概念の相違にかかはらず、話手との關係をひ...
例へば、商人であれ、官吏であれ、使用人であれ、その人が話...
る時、これを、「あなた」「君」「おまへ」と呼ぶことが出來...
法上第二人稱の代名詞と呼ぶのである。この代名詞中の小變異...
區別ですらも、聞手そのものの事物的概念によるのではなく、...
よるのであるが、これらの代名詞が、代名詞と云はれる根本の...
對立する聞手であるといふ關係の表現にかかつてゐる譯である...
特質を持つた語を從來代名詞と稱して來たのであるが、ここに...
うな語を代名詞と呼ぶことの可否である。代名詞といふ名稱が...
レ』『蘯響璽靨巳鼕 ー
---------------------[End of Page 96]---------------------
論
語
章
二
第
ひ表はしてゐると見るべきか、或は名稱と事實とは全く別のも...
の邊の事情を明かにして置かないと、思はぬ混亂が生じないと...
最初に、これは極めて通俗的、常識的な用語法に屬すること...
人とは、理窟ばかり逹者で、實行力を件はない人間を云ふ代名...
場合の代名詞の名義である。これは云はば名詞に代用される別...
味に用ゐられた場合で、嚴密な文法上の用語法とは云ふことが...
名詞の皮相な觀察から、右のやうな代名詞觀が生まれて來ない...
と呼ぶ代りに「あなた」と呼び、同じ人を「先生」と呼んだと...
生」も、「鈴木さん」といふ名稱の代用であるから代名詞であ...
ることである。このやうな見解からは、代名詞の眞義が理解出...
りである。
次に、從來屡ー用ゐられて來た代名詞の定義は、代名詞はも...
方に基づくものである。
代名詞とは名目をいふ代りに用ゐる詞の義にして、體言の...
63
---------------------[End of Page 97]---------------------
詞
三
を直接にあらはさずして、ただ其を間接にさすに|用ゐらるる...
84
代名詞は事物を指していふ語です。(昌)
なほ、佐久間鼎博士は、代名詞を「指す語」の體系として述...
代名詞を指す語として規定することは、これも外國文法の飜...
代名詞を指す語として理解することにはなほ多くの問題がある...
根本に於いて表現であるとする時、代名詞の特質としての「指...
如何なることを云ふのであるかを明かにしなければならない。...
ると見る考方に從ふならば、表現される事柄と表現との關係に...
によって、表現される事柄をさすものであるといふことが出來...
「物事をさし顯して詞となる」(弓と云つてゐるのは、正にその...
である。語が常にそのやうな性質のものであるならば、代名詞...
定することは不充分である。代名詞を「指す語」と規定した一...
ことは、既に述べたやうに、代名詞は表現される事物そのもの...
概念しか表現しない。`例へば、一個の机を「これ」と云つたと...
---------------------[End of Page 98]---------------------
を意味するとは受取られない場合が多い。何となれば、「これ...
机の上の紙でも鉛筆でも意味することが出來るからである。そ...
に、指なり、眼なりによつて、事物それ自體を指示することが...
「指す語」と規定するやうになつた一の理由ではないかと考へ...
うだとすれば、それは代名詞の表現の特質を云つたものである...
結果について云つたものであるから、そこに我々は代名詞の特...
さなければならないのである。
既に述べて來たところで明かにされたやうに、「代名詞が、...
とに於いて、他の詞と共通するのであるが、その概念が、話手...
ることに於いて、他の詞と根本的に相違するものであるPこのこ...
代名詞を規定したことになるのである。
論
隻二章語
本項を終はるに當つて、代名詞研究の重要性について一言し...
究の重要性は、要するに、言語の表現上から云つて、代名詞が...
---------------------[End of Page 99]---------------------
味するのである。
第一に、代名詞は、話手と事柄との關係の概念的表現である...
る一切の事柄を、すべて同一の代名詞を以て表現することが出...
らしい經濟である。會話の場合などは、環境の補助によつて、...
することは、あまねく知られてゐることである。しかしながら...
關して、ただその關係概念か、事柄の極めて抽象的な概念しか...
聞手は、屡ー同一關係にある數種の事柄の中、いづれを採るべ...
は當然である。そこに誤解の原因が生ずるのであるから、代名...
が表はす事柄が、明瞭に理解出來るやうに用ゐられなければな...
言語の場合でも、また文字言語の場合でも同じであるが、現場...
・確實性を追求する機會もなく、かつ比較的複雜な内容を表現...
合には、特に細心の注意が拂はれなければならない。例へば、
一般の歴史の上に於いて、民衆に關する研究は、あまり多...
究さるべきものであつて、しかも歴丱ハ棚究から逸し、かつ...
---------------------[End of Page 100]---------------------
といふやうな文章に於いて、傍線のある「これ」といふ代名詞...
る事柄を承けてゐることは事實である。そこで、それが何であ...
は、直前の「民衆に關する研究」を承けて層るのではないかと...
こで、この語をもう一度再現して來れば、次のやうになる。
……あまり多く開けてゐない。民衆に關する研究は研究さる...
並も:.:.
これで意味が通じないといふ譯ではないが、「研究は研究さる...
表現は上乘のものとは云ひ得ない。そこで、「これは」によつ...
うに改めることによつて、その承接を一暦論理的にすることが...
民衆に關することの研究は、あまり多く開けてゐない。...
あつて、
即ち、後文は前文を承けて、「民衆に關することは研究さるべ...
る。しかしながら、また、前文を虚心に讀み下して行くならば...
次のやうな文の展開を導く方がより自然のやうにも考へられる...
---------------------[End of Page 101]---------------------
詈詞
民衆に關する研究は、あまり多く開けてゐない。これ(「...
ことが出來る。」)は研究の困難に原因するのである。
とでも展開すべき勢を持つてゐる。何となれば、「これ」とい...
の最も近い關係を表はし、かつそのやうな關係にある事柄を表...
し以上のやうな展開が最も自然であると假定するならば、それ...
文章の理解を難澁にし、時にはその論理的把握を誤らせる結果...
單に一語によつて表はされる事柄を承けるばかりでなく、右に...
つて表はされるやうな複雜な事柄をも表はすものであることも...
代名詞は、文章の理解を正しくするためにも、また表現を確...
意されなければならないことである。このことは、本書の文章...
ることである。
ゾ
((ノ画丶
ゝノ))
『日本文法學概論』一一九頁
『新文典別記初級用』五二頁
『現代日本語の表現と語法』前篇
第四
88
---------------------[End of Page 102]---------------------
/四)
『言語四種論』界ミマへ
ホ 形式名詞と形式動詞
第二章語論
形式名詞といふ用語は、從來文法學上用ゐられたものであり...
いても學者の間で問題にされたことである。(一)木枝塘一氏は...
られる。(昌)
實質名詞といふのは名稱に對してそれに相當する一定の實...
的にせよ)のあるものを言ひ、形式名詞といふのはその名稱に...
をもつてゐないもので、單に名詞としての一般的形式しかも...
ある。從つてこの形式名詞を用ひる時は、その上に必ず之を...
なければならないのである。
それはどのやうな語を指すかといふのに、例へば、
そはわが欲するところにあらず。
すつぼんのことを上方にてはまるといふ。
89
---------------------[End of Page 103]---------------------
詞 前後の事情から考へてそんな矧がない。
三
に於ける「ところ」「こと」「筈」のやうな語を指すのであ...
としての一般的形式しかもつてゐないと見ることは疑問であ...
念を表現するものであることは間違ひないであらうが、ただ...
的であるために、常にこれを補足し限定する修飾語を必要と...
方が適切である。從つて、これらの語が表現する概念内容が...
接尾語と極めて近いのであるが、異なるところは、接尾語は...
語を構成することが出來るのに對して、形式名詞は、他の語...
した名詞と同じやうに用ゐられるが、それだけで獨立して用...
とである。例へば、接尾語「さ」は、「暑さ」「淋しさ」...
るが、形式名詞「こと」は、「あついこと」「さびしいこ...
「あつこと」「さびしこと」などとは云はれない。形式名...
の概念内容の問題ではなく、それが常に何等がの修御語を...
なり、述語なりに立ち得る非獨立性の名詞であるといふ點...
90
---------------------[End of Page 104]---------------------
問
第_章
三二托
Il純
形式體言として、數詞と代名詞とを擧げて居られるが、(三)こ...
を表現するものではあるが、ここにいふ形式の意味とは異なる...
の項に述べるやうに、話手と或る事柄との關係概念を表現する...
に云ふ形式名詞の中に入れるべきものではない。形式名詞とい...
當ではあるが、ここでは既に述べたやうに、概念内容の極めて...
出來ない名詞について云ふことにする。もし形式名詞、形式動...
するならば、不完全名詞、(穹不完全動詞の名稱を用ゐる方がよ...
の名稱は、一般には、活用形の整はない、例へば、「敢へ」「...
ふ場合に用ゐるので、ここではこれを避けることとした。
形式名詞の例
たび(度) このたび 私が會ふたびに
筈 そんな筈はない。 行く筈です。
ため 子供のためを考へる。 雨が降つたた...
まま 思うたままを書く。
---------------------[End of Page 105]---------------------
詞
窕
の
わ
け
折
やう
こと
うへ
ゆゑ
|間《かん》
件
點
あげく
もの
さういふ譯です。
私が話したのは誤です。(橋本博士はこれを準體助詞として助詞...
入れられたが、形式名詞と考へるのが適當であらう。佐久間博...
詞とされる。)
參上の折
人のやうでもない。
嬉しいことだ。
お目にかかつた上で
病氣のゆゑを以て
その間
お話しの件 使用の件 購入の件 雜件 用件
指摘して下さつた點は
散々使つたあげくに
馬鹿にしたものでもない。
92
---------------------[End of Page 106]---------------------
ーー-ー
ー盈墨}ゴノ
丶
論
第二章
111
ところ あなたの云ふところは正しい。
よし 病氣のよし
形式名詞(體言)に對して、當然、形式動詞或は形式用言が考...
連して、形式用言の名稱が、山田博士の文法學によつて一般に...
博士の形式用言の説について見ることにする。
山田博士は、從來動詞に所屬させられて居つた「あり」を動...
を形式用言と命名された。これと他の實、質用言としての動詞...
云へば、
實質用言とは陳述の力と共に何らかの其體的の屬性觀念の...
にして、形式用言とは陳述の力を有することは勿論なるが、...
示す屬性の意味甚だ稀薄にして、ただその形式をいふに止ま...
のはただ存在をいふに止まり、進んでは單に陳述の力のみを...
り。(識)
と述べて居られるやうに、ここで形式的といふのは、概念内容...
93
---------------------[End of Page 107]---------------------
詞
軍
94
れてゐるのであるから、博士のいふところの形式用言は正に上...
の性質を同じくするものであると考へて差支へないのである。...
の表現する概念内容の異同といふことを、根本的な基準として...
あるが、本書のやうに、表現性の相違といふことを語の類別の...
ば、形式用言を特に實質用言と區別する必要を認めないことは...
ある。そこで、璃書では、形式用言といふものを特立せず、動...
て稀薄にして、從つてそれには常に何等かの補足する語を必要...
詞として述べようと思ふ・9}この場合でも、形式名詞の場合と...
えず注意する必要がある。
形式動詞としてまず注目されるのは「ある」であるが、今日...
を表現する助動詞として・廣く用ゐられてはゐるが(助動詞の項...
あまり用ゐられず、むしろ「ゐる」を多く用ゐてゐる。
「ゐる」は極めて抽象的な存在、袱態の概念を表現するため...
定する修飾語を必要とする。例へば、
---------------------[End of Page 108]---------------------
花が嘆いてゐる(文語の「花咲きてあり」「花咲きたリ」に...
川が流れてゐる。
右は、「花」「川」の存在、状態を表現してゐるのであるが、...
では全く意味をなさず、連用修飾語「険いて」「流れて」を伴...
る。これは形式名詞が連體修飾語を作つて始めて意味が完全に...
「する」も同樣で、
暖かくしてお出かけなさい。寒いから、
見もしないで、あんなことをいふ。
びくびくする。ぬらぬらする。
それが駄目だとすれば、かうやつて見よう。
何としてもそれはまつい。
右は「す」(爲)の一般的な意味である身體的な動作の意味から...
の極めて漠然とした形式動詞になつたために、多くの場合、こ...
必要とする。,このやうに「する」の表現する内容が稀薄である...
---------------------[End of Page 109]---------------------
詞
冒
表はす辭に轉換して行つたと同様な徑路をとつて、殆ど陳述を...
合もある。
君にしては、上出來だつた。
月清くして、風涼し(文語)。
「なる」もまた形式動詞に數へることが出來る。
水がぬるくなる。
あの方もおいでになる。
私は實業家になる。
氣が樂になる。
右は「水がなる」「私はなる」では意味の表現が全く不完全で...
して、「ぬるく」「實業家に」といふ連用修飾語を必要とする...
全く完全な意味を表はすことの出來ない動詞の意味を補ふため...
といふことがある。形式動詞について、もし補語を認めるなら...
もこれを補語とすべきであるといふ湯澤幸吉郎氏の論は傾聽に...
96
---------------------[End of Page 110]---------------------
第二章譜
また文法操作の上に、便宜なものであると考へられる。曇
「なす」は「す」と殆ど同義語で、一般に敬讓の接尾語を添...
用ゐられる。
お讀みなさる。
はらはらなさるQ
御出席なさる。
「いたす」も前項と同様、「す」と同義語である。
おねがひいたす。 承知いたす。
「やる」「もらふ」「あげる」「くださる」等の語も、それ...
でなく、次のやうに用ゐられた時、やはりこれを形式動詞とい...
甲が乙に讀んでやる。
甲が乙に讀んであげる。
甲が乙に讀んでもらふ。
甲が乙に讀んでくださる。
97
---------------------[End of Page 111]---------------------
詞
「給ふ」「申す」「あそばす」についても同じである。
-(一)
(二)
〆(三)
(四)
・(五)
(六)
『日本文法學概論』一〇三頁。
『高等國文法薪講』品詞篇 七五頁
『日本文法學概論』一〇四頁
吉澤義則『高等國文法』
『日本文法學概論』一八九頁
『修飾語に關する考察』(國語と國文學
へ 動 詞
昭和六年五月)
動詞は用言の一種である。用言は體言に對立する品詞の總括...
の用法に從つて語形の變化するものをいふ。語形が變化する語...
が、動詞は形容詞と異なつて、語尾が五十音圖の行に從つて變...
である丿㌧∵、〔 .
動詞の定義には、しばしば、その表現する概念内容から、「...
存在をいふ語である」といふことが云はれて居り、動詞といふ...
L■ーし集夢
---------------------[End of Page 112]---------------------
毒亀-
ジ
.ノ丶号
、
論
第二章語
な意味を示してゐるやうに考へられるが、概念内容の上から動...
場合と同樣、國語の性質から見て適切でない。本書では、動詞...
である語形變化といふ點から規定することとした。
動詞を觀察するには、次の諸點に注意しなければならない。
一 活用と接續 二 語尾と語幹 三 活用形 四 ...
一 活用と接續
動詞の品詞的性質が、語形の變化する語であることは既に述...
ことを別の語で云へば、活用或は活用するといふことである。...
なことは、動詞における活用の意味である。語が變化するとい...
ば、英語、ドイッ語、フランス語等のく①Hびのoo且q㎎㊤氏o目...
出來るのであるが、oo⇔冒σQ9試○目と國語の活用とは、同じ語形...
的に異なつてゐる。8且¢σq㊤怠o昌は、一語が、人稱、單複數...
ることを意味するのであるが、國語の場合は、これと異なり、...
或はそれ身で登したりする場合に起こる語形變化である。幗携...
---------------------[End of Page 113]---------------------
詞 詞の斷續による語形變化であつ|匡これを動詞の活用といふ...
三
が以上のやうなものであることは、活用研究の雁史が明かに...
ば、本居宣長の門下である鈴木朖に、『活語斷續譜』といふ...
険か ーき ーく ーけ
のやうに、排列するやうになつた結果、活用とは、語形の變...
動詞の活用と、oo且qσqp怠o昌の相違は以上述べた通りであ...
100
---------------------[End of Page 114]---------------------
こる變化の現象であるとするならば、これと活用の相違はどの...
ひ消或は連用修飾的陳述、連體修飾的陳述等に應ずるところの...
♂しすべての動詞を通じて法則的に行はれるところに特色があ晩...
引 イきれい劇水
・ 流れる陥水
-、『イの連體修飾的陳述を表はす指定の助動詞「な」に相當す...
⑳論によつて表現されず曇記號になつて居るが、その語に相當す...
101
---------------------[End of Page 115]---------------------
踊である。活用現象はたしかに陳述の機能を含むものではある...
花は険かない。
花が険き、鳥が歌ふ。
花が咲く。
右の三の例の「咲く」は皆述語として、そこには陳述が想...
二 語尾と語幹
語尾とは、動詞がそれだけで絡止したり、他の語に接續し...
1U2
---------------------[End of Page 116]---------------------
第二章
ば、「険けーば」の「け」が語尾であるといふことになる。今...
険かない。
険きます。
嘆く時、
嘆けば、
嘆d。
右の傍線の部分が、接續而或は絡上面であつて、この接續面或...
越えない。
越えます。
越える時、
103
---------------------[End of Page 117]---------------------
詞
三
越えれば、
越える。
右のやうに、「ない」「ます」に接續する語尾は、「え」であ...
ある動詞については、語幹と語尾が同じになつてゐて、語幹...
三 活用形
動詞について活用形といふことを云ふ場合、一往それは動詞...
104
---------------------[End of Page 118]---------------------
論
第二章語
語形であるといふことが出來る。例へば、「険けば」といふ句...
1C5
---------------------[End of Page 119]---------------------
詞
の語群に應ずる活用形として、未然形、連用形といふ名稱が成...
未然形 連用形 絡止形 連體形 假定形(文語では巳然形...
未然形 助動詞「ない」が附く語形。
讀まない 起きない 來ない
連用形 敬讓の助動詞「ます」が附く語形。
受けます します
終止形 切れる語形。
書く。 考へる。
連體形 體言例へば、「時」が附く語形。
見る時 する時
---------------------[End of Page 120]---------------------
論
第二章語
假定形 助詞「ば」が附く語形。
起きれば 考へれば
命令形 命令を表はし、或は命令の意味の助詞「よ」が附く...
押せ。 投げよ。
このやうな活用形の研究は、近世においては、全く文語を基礎...
り、明治以後になつて、やうやく口語の活用形が整へられるや...
は、一般の動詞については、絡止形に接續する語群と、連體形...
續關係の相違を認めることが出來ないので、むしろこれを統合...
用形を立てることも一の方法であるが、文語法との關連上から...
については、今日なほ連體形「な」「の」の形が行はれてゐる...
形、連體形の名稱を保存する理由もあるのである(指定の助動詞...
活用形についてその接續關係を考へる時、助動詞「た」は、...
る。即ち、
圓耐た
107
---------------------[End of Page 121]---------------------
詞
三
立つた
譖矧だ
これらを「た」の接續する特殊の活用形と見て、學者によつて...
て呼ぶことがある。(e現代口語の事實に即するならば、確かに...
たやうな特殊な語形から接續するのであるが、このやうな接續...
行動詞を除いたものについて存在し、サ行四段及びその他の活...
す」の一群に屬する語と同樣に、一律に連用形に接續する。印...
劃Uた
劉た
劑た
して見れば、「た」は原則的には連用形接續の語と認め、「険...
「い」「つ」「ん」は、連用形の語尾の變形したものと認める...
かつこれを歴史的に見れば、或る時代には、「険い」「立つ」...
「讀み」の音便現象として並立して行はれたのであるから、こ...
108
---------------------[End of Page 122]---------------------
論
第二章語
別の活用形として立てる理由はないのである。以上述べた音便...
の根本に觸れる問題を含んでゐるのであつて、文法的處理は、...
することは許されないのであつて、現象の奥にひそむ法則を探...
されるのである。さればと云つて、現象を無硯して法則を立て...
の事實に浩はないこととなる。現象の奥にひそむ法則の探求と...
語學的證明に堪へるものがなければならないのは當然である。
次に、活用形の名稱について屡}起こる誤解について説明をし...
未然形といふ名稱から、「行か」「受け」といふ語形そのもの...
あると考へるのは大きな誤解である。この名稱は、この語形に...
とつて借りに命名したのであるから、誤解を避ける意味からす...
形と名づけ、順次、第二、第三と命名するのも一方法と思ふの...
除くならば、從來の名稱も便宜であるのでこれに從ふこととし...
四 動詞の活用の種類
動詞において活用形が明かにされるといふことは、その動詞...
109
---------------------[End of Page 123]---------------------
調
ことを意味する。活用形の研究によって、動詞の接續關係は簡...
に進んで、それぞれの動詞の活用形の語尾を整理分類すること...
それぞれに一定數の基本形式に分屬させることが可能である。...
たものが動詞の活用の種類である。動詞の種類の分類は、いろ...
することが出來るであらう。例へば、自動詞、他動詞による分...
動詞と歌態性動詞等の別が考へられるであらうが、動詞の品詞...
する語印ち用言にあり、そのことは換言すれば、活用形の變化...
點に着目して分類することは、國語の動詞の性質の上から見て...
當然のことである。活用形の變化は、これを動詞の語尾の變化...
る。そして語尾の變化は、これを五十昔圖の假名の上に配當す...
することが出來る。例へば、語尾が、五十音圖の何行のあいう...
が何行四段活用であり、同樣にして、い及びい段に「る」、「...
るものが上一段活用である。ここに「|上《カミ》」といふのは...
界にして、あいうが上であり、うえおが下であると考へたとこ...
110
●バト
---------------------[End of Page 124]---------------------
1
萩』丶」-丿14
第二章語 論
して今日、口語において認められてゐる活用の種類は次の通り...
四段活用
上一段活用
下一段活用
外に「來る」「する」の二語だけが、例外的な活用をするので...
る。
か行變格活用
さ行變格活用
以上正格三種、變格二種あはせて五種の活用が認められてゐる...
りである。
動詞について何行といふのは、語尾の音韻に即していふので...
れた假名に即していはれてゐることである。故に、「笑ふ」が...
のは、この動詞の語尾が、五十音圖の「は」行文字に活用する...
尾を表音的に訂正した場合のことについては、總論第六項を參...
111
---------------------[End of Page 125]---------------------
詞
三
(一) 『國語學史』一五七頁。今日の活用表に當る。
(二) 橋本進吉『新文典』初年級用
112
●
}
---------------------[End of Page 126]---------------------
f鴫ー
〜翼・9《覧響」尾亅ワ{亀4
〜
活用の種類を示す表
第二章語論
活
用
重詞 形
の種類
四段活用
(書く)
上一段活用
(起きる)
下一段活用
(捨てる)
力行變格活
用
(來る)
サ行變格活
用
(爲る)
未然形
1か
-き
1て
一
せし
連用形
1き
ーき
1て
き
し
終止形
1く
!きる
1てる
くる
する
連體形
ーく
1きる
ーてる
くる
する
假定形
ーけ
ーきれ
1てれ
くれ
すれ
命令形
ーけ
ーき
1て
一
せし
五
十
普
圖
配
當
一
㊨⑯⑤②お
あ⑭うえお
あいう②お
あ⑭⑤え⑤
あ⑭⑤えお
あ⑯⑤②お
113
---------------------[End of Page 127]---------------------
詞
三
ト
動詞の派生語
接尾語が、體言的なもの、用言的なものを通じて、語の構成...
作ることは後に述べる豫定である。接辭が附いて出來た語を派...
であるが、ここでは、これら派生語の中で、極めて普遍的に行...
て述べることにする。
一 自動詞と他動詞との對立
日本語では、客語(或は目的語)○び冨9を表示する記號が無い...
有無といふことで、太來的に動詞について、自動、他動を決定...
意味の上から、或は接尾語によつて、動詞の對立が考へられる...
といひ、他を他動詞といふことがある。
(一)自・他ともに同じ活用形のもの
、塘す (自、サ行四段) 水が培す。
〆塘す (他、サ行四段) 水を塘す。
114
邇
陰}覧ー
---------------------[End of Page 128]---------------------
ー
{
ご'
〜
、
第二章語論
、吹く (自、カ行四段) 風が吹く。
〆吹く (他、力行四段) 火を吹く。
ヘニ) 自.他が活用の種類は同じで、行の相違によつて分れる...
{
あまる (自、ラ行四段) 費川があまる。
あます (他、サ行四段) 費用をあます。
{
おこる (自、ラ行四段) 事件がおこる。
おこす (他、サ行四段) 事件をおこす。
(三) 自.他が活用の行は同じで、種類の相違によつて分れるもの
hあく (自、力行四段) 門があく。
〆あける (他、カ行下一段) 門をあける・
{
くだける (自、力行下一段) 氷がくだける。
くだく (他、カ行四段) 氷をくだく。
(四) 自・他が活用の行と種類の相違によつて分れるもの
駄埋まる (自、ラ行四段) 堀が埋まる。
115
---------------------[End of Page 129]---------------------
調
ミ
〆埋める (他、マ行下一段) 堀を埋める。
揚がる (自、ラ行四段) 旗が揚がる。
{
揚げる (他、力行下一段) 旗を揚げる。
(五) 自動詞の語尾(未然形)に、他動の意味を表はす接尾語...
附いて自・他に分れるもの。
癖す
思ふ
{
思はせる
護る
〆寢させる
二 受身
動詞の語尾に、
(自、力行四段)
(他、サ行四段)
(自、ハ行四段)
(他、サ行下一段)
(自、ナ行下一段)
(他、サ行下一段)
子供が驚く。
子供を驚かす。
昔を思ふ。
昔を思はせる。
子供が寢る。
子供を寢させる。
受身を表はす接尾語「れる」「られる」をつけ...
活用の未然形に、「られる」はその他の活用の未然形につく。
116
、
》
'
bb〜りーみ
---------------------[End of Page 130]---------------------
〜
ーノ」7 、
ノナ も
論
第二章語
丶笑ふ .(自、他ハ行四段) 子供が(を)笑ふ。
〆笑はれる (受、ラ行下一段) 弟に笑はれる。
丶蹴る (他、ラ行四段) 石を蹴る。
|厂《ノ》蹴られる (受、ラ行下一段) 馬に蹴られる。
また、サ變の動詞が受身になる場合は、「しられる」とは云は...
〔議論する
八
厂議論される
不問にする
{
不問にされる
右のやうに、受身の動詞を作る接尾語「れる」「られる」は、...
れて來たのであるが、その項にも述べるやうに、これらの接尾...
屬するものではなく、詞の中の用言に屬する接尾語として考へ...
る。一般に助動詞の附いたものは、例へば、「授けない」は「...
の句であつて、どこまでも二語として取扱はなければならない...
117
---------------------[End of Page 131]---------------------
詞 いたものは、「授けられる」のやうに、これを複合動...
匿 出來るのである。從つて、主語との照應も受身の場合...
てその述語となることが出來る。
ぐ戸訴嚼陂は賞を與へない.(主語「彼」に對する述語は「姐三...
、/彼は賞を與へられる。(主語「彼」に.對する述語は...
以下、可能、自發、敬譲、使役についても同じこと...
三 可能
動詞の語尾に、可能を表はす接尾語「れる」「られ...
る」の接續のしかたは、前項の受身の揚A口と同じであ...
へ讀む (マ行四段) 私は本を讀む。
〆|讀《、》まれる (可能 ラ行下一段) 私は...
》寢る (ナ行下一段) 早く寢る。
ノ广寢られる (可能 ラ行下一段) 私はよく...
可能を表はすには、自他の野立の場合の(三)のやうに...
118
ーら塾f6【ー
ーゝ》ポー匳》廴夛ー丶ドー3k櫨ーp3'
}ート、L尸'
---------------------[End of Page 132]---------------------
ど丶ー』弓、」署塾「-
電
」ー丶ー.ー、
`へ
1潤
第二章語
も表はすことが出來る。
水を飲む。 マ行四段
この水は飲める。 マ行下一段
四段以外の動詞についても、「起きられる」を「起ぎれる」、...
「受けられる」を「受けれる」などといふこともある。可能の...
を用ゐることはない。
四 自發或は自然可能
動詞の語尾に、自發或は自然可能を表はす接尾語「れる」「...
「れる」「られる」の接續のしかたは、前項の受身、可能の揚…...
用ゐないことは可能の場く口と同じである。
、北日のことを思ひ川す(サ行四段)。
〆昔のことが思ひ出される(ラ行下一段)。
、あなたの來るのを待つ(タ行四段)。
〆あなたの來るのが待だ,れる(ラ行下一段)。
119
---------------------[End of Page 133]---------------------
詞
三
自發と可能との間には意味の本質的な區別があるわけではな...
五 敬讓
動詞の語尾に、敬讓を表はす接尾語「れる」「られる」をつ...
る」の接續のしかたは前項と同じで、この場合には時に命令形...
私は今日出かける(力行下一段)。
{
先生は昨日出かけられた(ラ行下一段)。
人の厚意を受ける(力行下一段)。
{
人の厚意は素直に受けられよ(ラ行下一段)。
敬讓の接尾語による敬讓の表現は、話手の敬意の表現と考へ...
の敬讓の意の直接的表現ではなくして、事柄について、それを...
て表現するところに右のやうな敬譲の表現が成立つのである。...
亅20
---------------------[End of Page 134]---------------------
論
第二章語
と比較するとこ暦明かにすることが出來る。
先生は昨日出かけられた。
先生は昨日お出かけなされた。
先生は昨日お出かけになつた。
即ち、或る動作を、事實そのままのものとして表現せず、「...
を用ゐて、そのやうな事實が、「出來する」「威就する」とい...
それが敬讓の表現となるのと同じである。
以上述べた受身、可能、自發、敬譲の表現に用ゐられる接尾...
その起源に於いては、恐らく、存在を意味する動詞「あり」の...
悉のではあるまいかと考へられる。
また、これらの接尾語がついたものは、一語として考へられ...
も考へられるのであつて、次のやうな用例についてこれを見る...
如何に困難であるかを知られるのである(『夜明け前』、原...
右の「知られる」は「知る」と「れる」との結合した複合動...
121
---------------------[End of Page 135]---------------------
詞
語と見れば、當然右の文は、「困難であるかが知られる」とな...
るが、例文のやうに、「……を知られる」となつてゐるのは、「...
語として、「……を」といふ助詞が用ゐられたものと解されるの...
島と島との間を見通せないので(『志賀直哉全集』巻七)
右の「・…:の聞を」は、「見通す」(他動、サ行四段)の客語...
下一段の可能の動詞として次へ續いて行くのであるから、この...
一語でありながら、意味的には二語の複合語と同じやうに用ゐ...
妻を殺きれ、子を殺されて、われ亦死しては竟に釜なし(『...
「殺す」の客語は、「妻」及び「子」で、その主語はその殺...
主語は、この文の話手「われ」であつて、「殺され」といふ動...
同様に、二語に分離して用ゐられてゐる。
私は電話をかけられて困つた。
事の顳末を報告されて、私も安心した。
右の文は、次の文とは當然意味が異なつて來る。
122
---------------------[End of Page 136]---------------------
事の顛末が報告されて、 一切が明かになつた。
前の文では、「肇の顴末」は、「報告す」の客語であるが、...
六 使役
他動詞の語尼に、更に他動を表はす接尾語「す」「せる」「...
讀ます (使、サ行四段) 本を讃ませば、讀め...
讀ませる (使、サ行下一段) 本を讃ませれば、讀...
受けさせる (使、サ行下一段) 試驗を受けさせた。
「す」「せる」は必しも和通じて用ゐられるとは限らないや...
ゐられる。
、やらした やらせば、やります(「す」を附けた場八口...
〆やらせた やらせれば・やります(「せる」を附けた場...
、持たした 筆を持たせば、立派に書く。
123
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詞
一に
戸持たせた 筆を持たせれば、立派に書く。
サ變の他動詞を使役にする場合には、「發見しさせる」とは云...
使役とは、他動詞に更に他動の接尾語が付いたものであるか...
いふことが出來る。それが複合語的性絡を持つて分離されるこ...
ある。
私は彼に劇をやらせた。
右に於いて、「私」は「やらせ」の主語であるが、「劇」は「...
使役の構成は、二重他動にあるのであるから、自動詞に「す...
ても使役にはならない。
沈む(自)
一
霈輪)(使讐す(他)
浮く(自)
{浮かす(他)浮か茎他)
124
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〆
ー亅4生ー
'
-气〜ー1《
尸浮かさせる(使)
喜ぶ(自)
{
喜ばす(他) 喜ばせる(他)
寢る(自)
{
寢す(他) 寢かす(他) 寢かせる(他)
寢させる(使) 寝かさせる(使)
ただ、「せる」「させる」のついた他動詞は、そのまま使役に...
ある。
論
第二章語
チ形容詞
、鴫.ババ灯ハ◎巽
〔形容詞は用言の一種であつて、動詞と異なるところは、活用...
は無關係に、一律に「く」「い」「けれ」と活用す磁ことであ...
關係から活用形を持つが、それぞれの活用形に接續ナる語は、...
また、動詞の場合には、語尾變化だけで命令を表はすことが出...
125
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詞
ξ
指定の助動詞「ある」を附け、その命令形によつて表はすから...
化としては命令形を缺いてゐる。また、動詞の場合ては、活用...
との出來る推量、並に過去及び完了は、形容詞の場合には、指...
て附く。
命令の表現
正しくあれ(「あれ」は形容詞の連用形に附く)。
推量の表現
寒からう(寒くーあらーう)。
過去及び完了の表現
美しかつた(美しくーあつーた)。
形容詞の活用形は次の通りである。
未然形 助動詞「ない」が附く語形。(こ
正しくない。 高くない。
連用形 助詞の「て」或は用言が附く語形。
126
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論
第二章
塑1
5覧;■
丸くて大きい。 美しく見える。
終止形 切れる語形。
流れが早い。 損害が大きい。
連體形 體言、例へば「こと」が附く語形。「
勇ましいこと 高い山
假定形 助詞「ば」が附く語形。
早ければ待ちませう。 恥かしければ止めよ。
語尾及び語幹については既に動詞の項で觸れたが、|動詞の語...
(一) 手なが 足ばや 待ち倒
(二) 高値 遠ざかる 細長い
三)瀏さ矧さ 珈
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詞
竇
はた、「ほそぼそ」「近々」のやつに覊を重ねて一語を構成し...
や到着した」のやうに一語としての機能を持つことが多い。
以上のやうな形容詞の語幹の性質から到斷して、形容詞の語...
よりも、むしろ活用を持つた接尾語と見る方が適切であると云...
語として、「しい」「ない」「らしい」「がましい」等がこれ...
的には接尾語或は獨立の一語と見るべきものもあるであらうが...
語尾と語幹は全く一語に結合して殆ど遊離性を持たない點で形...
(一) 助動詞「ない」の代りに、打消助動詞「ぬ」を用ゐる...
のやうにいふ。この場合「ある」は形容詞の連用形につ...
面白からぬ傾向(面白くーあらーぬ)
リ
いはゆる形容動詞の取扱ひ方
黛、
㌃(
Y ㌔
歌
本書では、形容動詞の品詞目を立てなかつた。そこで、從來...
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4
論
第二童語
まつ、形容動詞と考へられて來た語を擧げて見るのに、
一 「白からう。」「白かつた。」といふ云ひ方に於いて、...
詞の活用形と認めるのである(文語に於いて第一種形容動詞とい...
二 「靜かだ。」「丈夫だ。」の如き類である(文語に於い...
の)。
三 「堂々たる風采」「確乎たる意志」に於ける「堂々たる...
活用形と認めるのである(文語に於いて第三種形容動詞といはれ...
橋本進士口博士に從へば、右の中、第一の場合は、活用形も...
ゐられず、かつ助動詞「う」と「た」とに接續する場合だけで...
活用系列の中に收めて、特に第二種形容動詞といふものを立て...
については、體言に連る場合にかぎられるから、これを連體詞...
して取扱ふ必要はないとされた。(一)かくして、口語で形容動...
第二種形容動詞に當るものだけに限られ、その活用形は次のや...
129
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詞
三
靜か 纛釐
だら 未然形
にでだつ 連用形
終亅}=形連體形
な
なら 假定形
命令形
1eo
以上は橋本博士の見解であつて、これは國定教科書に採用さ...
である。なほ、他の學説も紹介すべきであるが、それらについ...
附説することにして、ここでは直に本書の見解を述べることと...
第一に、「靜かだ」「丈夫だ」を一語と考へ、そこからこれ...
てるべきであるといふ考へが出て來るのであるが、これらの語...
一の問題として取上げられなければならない。一般に我々の常...
「靜か」「丈夫」といふやうな語は、「親切」「綺麗」「勇敢...
などの語と共に、一語として考へられ、辭書に於いても一般に...
これは、文法を取扱ふ上の一の重要な根據である。橋本博士は...
ゐられないことを理由として、一語と認めることを不穩當であ...
ー
匪
・監■瞹
---------------------[End of Page 144]---------------------
癰竃、ー|耄《・ 鮨》亅1墾量丿ヨ墾・〜弓
2Jq{・
論
第二章語
「たちまち」「すぐ」といふやうな語も、連用修飾語以外に主...
ことのない、用法の限られた語であるが、これを一語でないと...
つ、「靜かだら」「靜かなら」といふやうな語もそれだけ單獨...
これを一語とすることは不穩當であると云はなければならない...
今、「靜か」「丈夫」を一語とするならば、「靜かな」「靜...
髀言 指定助動詞
彼は私の親友だ。
髀言 指定助動詞
彼は親切だ。
ただ右の二例について懾別されることは、意味の上から云つて...
131
---------------------[End of Page 145]---------------------
詞
三
であるのに對して、後者の「親切」が形容詞的であり、從つて...
に」といふやうな連用修飾語を加へることが出來る。しかし、...
とで、「親友」「親切」の二語が語性を異にしてゐるためであ...
へば、「健康」「單純」「單調」といふやうな語をとつて見て...
彼は健康を誇にしてゐる。
彼は非常に健康だ。
單純を選ぶ。
極めて單純な事柄。
單調に飽いた。
すこぶる單調だ。
これらがいづれを名詞とし、いづれを形容動詞とするかは容易...
あつて、教育上からも極めて困難な問題である。これらの相違...
らるべき事柄ではなくして、名詞の意味論に所屬する問題であ...
ゐる語の中にも次のやうな用法がある。
132
---------------------[End of Page 146]---------------------
論
第二章話
明日から學校だ。
水に入つたら、てんで金槌だ。
名詞や體言が、連用修飾語をとることについては、文論の述語...
形容動詞を立てることの不合理は、その敬語的表現の説明に...
「静かだ」に對應する敬語的表現は「靜かです」となるのであ...
動詞と立てるならば、「静かです」も當然形容動詞としてその...
ばならない筈であるが、國定教科書に於いては、「です」を斷...
「靜かです」は形容動詞の語幹に「です」が附いたものといふ...
なつたのであるが、もし「靜か」を一語と見ることが出來ない...
ば、「靜…かです」も當然それだけで一語と見なければならない...
斷定を表はす語であると見ることも出來ない譯である。本書に...
は「靜かでございます」の場合も、「静かだ」の場合と同樣に...
「でございます」が附いたものとして説明した。
橋本博士は、「確かである」「立派でございます」のやうな...
133
---------------------[End of Page 147]---------------------
三謁
「立派です」などとは別で、副詞「確かで」と、補助用言「あ...
(一) 『國語の形容動詞について』橋本進吉博士著作集 第...
(二) 『新文典別記』上級用(昭和十三年二月版)二九八頁
(三) 『國語の形容動詞について』橋本進吉博士著作集 第...
(四) 『新文典別記』 口語篇 三七.}只
134
---------------------[End of Page 148]---------------------
語
讌
鍬
日本語に於いて認定される單語は、一般に格の記號を持たな...
格性であるといふことが出來る。從つて、そこから導き出され...
念を件はない。これに反して、ヨーロッパの言語のあるもの、...
語の如きに於いては、名詞は必ず何等かの格記號を件ふのが常...
「机」といふ語に和賞するラテン語、ドイツ語を考へることは...
には、主格を以て代用するのである。印歐語は元來このやうに...
そこから導き出された品詞の概念の中には、他の語との關係の...
騨&Φo怠く①鴇㊤αくΦHび のやうな口m詞は、これらの語が、常...
的關係から命名されたものである。動詞くΦ筈に對する見方にも...
詞の陳述をすることに、その本質的性格を認めようとするので...
の概念的表現とが不可分離のものとして融合してゐる。
以上のやうな印歐語の性格に對して、國語に於いては、格は...
135
---------------------[End of Page 149]---------------------
'
詞
冒
つて表現される。從つて、名詞と格表現との結合である句が、...
る一語に相當する譯である。同様にして、國語の動詞は、用言...
て理解される以外に、それが陳述の機能を持つと考へることは...
於ける陳述の表現參照)。
ところが國語に於いても、}或る種類の語は、連體修飾語か、...
れないといふやうなものがある。即ちこれらの語は、格表現が...
てゐると見るべきものなのである。そこで、これらの中、連體...
るものを連體詞といひ、連用修飾語としてのみ用ゐられるもの...
これらの名稱は、體言、用言、動詞、形容詞等の品詞の概念が...
質に基づいてゐるのに對して、文構成上の役目をも含めて呼ぶ...
見出すのである。これらの品詞と他の品詞との關係を明かにす...
いて説明を試みてみる。
イ 昔のことです。(體言)
ロ ある日のことです。(連體詞)
136
---------------------[End of Page 150]---------------------
論
第二章語
イの「昔」といふ語は、助詞「の」を件つて、下の體言「こと...
つてゐるが、修飾的陳述の表現である「の」を除いた「昔」と...
それは他の別の格にも立つことが出來る語である。換言すれば...
語に用ゐられてゐるので、ここでは、體言としての品詞の性質...
別のものと考へられる。これに反して、ロの「ある」は、語形...
一往體言とすることが出來るが、この語は、英語のけぼρ爵暮等...
ゐられたものを、αΦ日8ω零暮ぞ①㊤&Φo試くΦと呼ぶやうに、その...
語であるから、その文構成上の職能をも含めて連髏詞と呼ぶこ...
といふ名稱は、近頃の學者の考案したものであるが、既に總論...
て置いたやうに、いはゆる形容詞といふ名稱は、このやうな形...
めに保留して、連體詞と呼ぶ代りに、これらをこそ形容詞と呼...
ふ。從つて、これらの語は、形容詞的職能を持つ品詞の意味に...
稱は、このやうに職能を含めた名稱であるから、これを擴張し...
の」を、その修飾的陳述を表はす「の」を含めて、連體詞と云...
---------------------[End of Page 151]---------------------
る譯である。嚴密な意味に於ける連體詞に於いて、右のやうな...
一 本問題 該事件等の漢語に屬するもの。
二 とんだ災難 いはゆる秀才型 大きな(一).家 ...
三 イ こんな話 あんな出來事
ロ この本 その時
三は、これらの語の性質上、むしろ代名詞の系列に所屬させ...
次に、副詞について述べる。
イ 昔おちいさんとおばあさんがありました。
ロ 會議はすでに終つてゐた。
---------------------[End of Page 152]---------------------
論
第二賣語
イの「昔」は、逋體詞の場合と同樣に、品詞としては體言であ...
語として用ゐられたものである。ところが、ロの「すでに」は...
等のいはゆる形容動詞と云はれてゐる語が、「靜か」と「に」...
解して二語の結合と考へられるのに對して、これだけで一語と...
そしてイの場合と異なるところは、この語が體言として種々の...
性のものではなく、逋用修飾語として以外には用ゐられない語...
用修飾語としての性質をその中に持つてゐると見ることが出來...
にして概念と同時に修飾的陳述を含む語を特に副詞と名づける...
な例に於いて、
花が美しく喚いてゐる。
「美しく」を形容詞と見るべきか、副詞と見るべきかについて...
詞と見る立場は、この語を用言の一活用形と見るのであつて、...
文に於ける職能といふものは考慮の外に置かれてゐる。それは...
用言として、本來、無格性のものであるから、この語の品詞が...
---------------------[End of Page 153]---------------------
ば、右のやうに答へるのは當然である。今、この語を副詞と見...
用修飾的陳述をも含めて云ふのであつて、實は、そのやうな連...
形式を以てこの語に別に加へられたものと解することは、無格...
に於いて當然認められなければならないことである。これを圖...
鬨し-π
即ち、「美しく」と、零記號の陳述とを含めて始めて副詞とい...
もし副詞の名稱も廣義に解するならば、この語の、この場合の...
とが許されるのは、連體詞の場合と同樣である。しかし、「美...
らば、
美しく、赤い花
とも云はれるやうに、連體修飾語にも立ち得る語であり、更に...
ならば、一義的に副詞とは云へないことは明かである。ヨーロ...
を添加して連用修飾語的職能を一語の中に表示するのと異なり...
決して格を表示するものではないのであるから、一語に郎して...
140
---------------------[End of Page 154]---------------------
論
第二章
容詞の連用形を副詞といふことは出來ないのである。ところが...
のやうに、一語の中に連用修飾的陳述を含めてゐるのがあるの...
取扱ふのである。
ここで連體修飾語及び連用修飾語の名稱について一言するな...
とは、活用形の名稱の適用であると思ふのであるが、この名稱...
續關係を形式的に云つたもので、そこには、文の職能に關する...
ある。文の構成要素の間の職能關係は、體言、用言等の品詞別...
係に於いて成立するのであるから、文構成の職能に關する用語...
形容詞的修飾語及び副詞的修飾語の名稱を使用するのが合理的...
詞、副詞の名稱は、語の意味的な機能關係について云はれるこ...
きつばりお言ひでしたか。
明日から學校だ。
に於いて、「きつぱり」は常に副詞的修飾語に用ゐられる語で...
づけることは既に述べた。そしてこの語は、下の「お言ひ」と...
141
---------------------[End of Page 155]---------------------
量
を修飾する關係に立つてゐる。しかし、「きつばり」といふ副...
係してゐるのでなく、この語の持つ動作的意味に關係してゐる...
日」は、助詞「から」によつて格が表示され、連用修飾語に立...
一般には、用言との關係が豫想されるのであるが、ここでは、...
る。これも、實は體言そのものが關係してゐるのでなく、「學...
關係するのである。「學校」は、ここでは建築物の意味でなく...
ゐられ、動作、歌態を意味するのである。從つて、「明日」と...
ふよりは、副詞的修飾語と呼ぶのが適切である。橋本博士は、...
飾語、特に形容詞的修飾語の名稱は、適當でないとして、連用...
つて居られるが、三)それは、形容詞の名義が國語に於いては特...
て居ることが理由とされるからである。右に述べた私の提案は...
ゆる連體詞の名稱に保溜した場合にのみ成立するものであるこ...
副詞の修飾關係を右のやうであるとして見れば、
一 大履靜かな家 もつと穩かな日
142
---------------------[End of Page 156]---------------------
論
第二蕈
安r紀
質日
に於いて、副詞「大騒」「もつと」は、從來、形容動詞「靜…か...
ると考へたので、連用修飾語として差支へなかつたのであるが...
定して、これを、體言「靜か」「穩か」と「な」の結合とした...
然體言を修飾するものと考へなければならない。これらの副詞...
状態的意味の修飾語と考へられるのである。
二もつとゆつくり歩け。
だいぶんはつきり見える。
右の傍線の副詞は、「ゆつくり」「はつきり」といふ體号口に...
同樣に、これらの語の歌態的意味に關係することによつて副詞...
三 わつか三人で仕上げた。
すこし右へよれ。
ずつと晋の話
右の例は、甚[だ難問であつて、確實な説明は下しにくいが、「...
人」が量的な歌態を表はしたものと考へられる。「すこし右」...
143
---------------------[End of Page 157]---------------------
詞
一二
方向でなくして、そこには、動作の概念が含まれて居るものと...
場合の「昔」も同樣に、時間を遡つて行くといふ思考上の動作...
つて、過去の年代が決定されて居る場合、例へば、「ずつと寛...
ない。「はるか頂上には雲がただよつてゐる。」といふやうな...
に視覺的な動作が拌ふが故に云はれることであらうと思ふ。右...
り歩き」「いちや漬け」のやうな複合語の要素聞の關係につい...
かと思ふ。これらに於いては、「ひとり」「いちや」はそれぞ...
味に對して副詞的修飾語に立つてゐるのではないかと思ふ。
最後に、從來副詞の用法として擧げられて來たものの中で、...
ものは、いはゆる陳述の副詞と云はれてゐるものである。例へ...
明日は恐らく晴天だらう。
彼はあのことを決して忘れない。
もし君が行けば、僕も行く。
右の傍線のある「恐らく」「決して」「もし」は、それぞれ「...
144
---------------------[End of Page 158]---------------------
メ
勺月u
、丿i>
論
第二章語
けLの零記號の陳述に「ば」を伴つた假定的陳述を修飾してゐる...
一般に云はれてゐる。今まで述べて來た副詞の諸例は、そのす...
あるが、ここに擧げた陳述副詞は、辭を修飾するのであるから...
めて異例に屬するものと云はなければならない。そこで、これ...
所屬して副詞と云ふことが出來るものであるかどうかといふ疑...
思ふに、これらは、副詞として詞に所屬するものでなく、辭に...
話手に對立する一切の事柄を表現するのである。「おほかた仕...
だいた。」等の傍線の語は、事柄のありかたを表現して詞であ...
に關係する事柄に通じて用ゐることが出來る。ところが、これ...
に、更に話手の心持ちに關する表現に限定されるやうになると...
やうになる。
おほかた 仕事もすむ頃だらう。
45
多分 うまく行くだらう。 ...
---------------------[End of Page 159]---------------------
詞 右の「おほかた」「多分」は、十中八九は斷定し得るが、...
三
氣持を表現してゐるのである。これらが、辭とみなされる理...
第三者の心持ちの表現匹は用ゐることが出來ないからである...
な語も、本來は「誰が見ても異議がなく」の意味で、
勿論、次のやうな場合は例外である。
,のやうに用ゐられるのであるが、これが次第に話手のことに...
の表現として陳述の辭と呼應して來る。「斷じて」といふ語...
通じて、「斷じて行へば、鬼祚も遞く」といふやうに用ゐら...
明かであるが、この語が、話手の心持ちの表現に限定されて...
氣持の表現として、特に否定辭と呼應して、「斷じて不正は...
れる。この場合、「行ふ」の主語が、どのやうな人稱に屬し...
手の否定に關して云はれることである。かうなると、もはや...
ければならない。
佐久間鼎博士は、
146
---------------------[End of Page 160]---------------------
論
第二章語
この料理は だんじてうまい。
あの映識は だんじておもしろかつた。
といふやうな方言的用例を擧げて居られるが、これは述語の状...
詞としての副詞の轉義であるから陳述に關係がない。・四
以上のやうに、陳述副詞と云はれてゐるものは、云はば、陳述...
れたもので、「無論……だ」「決して……ない」「恐らく……だらう...
きであら亀古く話手の禁止表現として行はれた
吹く風をな來その關と思へども
の「な……そ」と同類と見ることが許されはしないか。暫く疑ひ...
ことにした。次に、いはゆる陳述副詞の例を擧げるならば、
響「だ」「です」或は用言の零記諜譚應する.
きつし
決してノ
---------------------[End of Page 161]---------------------
詞
三
とても
斷じて
おほかたμ
恐らく、
どうか〆
強い否定の「ない」に呼應する。
どうぞ楓
想像、推量の辭「だらう」「でせう」に呼應する。
もし
懇願を表はす辭即ち命令形に呼應する。
假定的陳述に對應する。
148
(一) 「大きな」は、「靜かな」「ほがらかな」等のいはゆる...
容動詞の場合には、「靜か」「ほがらか」を一語として、...
來ることについては前項に述べたが、「大きな」について...
出來ない。「大き」といふ語には一語としての意識がない...
以外には用ゐられない語である。
(二) 「曲つた」の「た」は、起源的には「たり」から出たも...
ゐる」といふ訣態を表はす詞としての用法と、過去及rび完...
次第に助動詞的用法に移つて行つたのであるが、「たり」...
---------------------[End of Page 162]---------------------
の用法が並立してゐる。詞としては、「尖った帽孑」「腐...
れるが、これはすべての動詞について規則的に云はれる譯...
「倒れた人」等は、「走ってゐる」「泳いでゐる」「倒れ...
た、右の状態を表はす詞としての「た」は、ただ連體形と...
に用ゐられるので、「帽子が尖った」は「帽子が尖ってゐ...
見れば、右の朕態を表はす「た」は、連體修飾語としてし...
するのが遖切である。右のやうな「た」は、状態を表はす...
(接頭語と接尾語の項及rび過去及び完了の助動詞の項參照)。
(三) 『改制新文典別記』 口語篇 一コニ○頁
(四) 佐久聞鼎『現代日本語法の研究』九〇頁
ル接頭語と接尾語
第二章語
接頭語、接尾語は、接頭辭、接尾辭ともいひ、これを總括し...
することの出來るやうな語をいふのである。從つて、それは、...
149
---------------------[End of Page 163]---------------------
詞 考へられ、これを研究するのは、文法學以前の語の語源學...
三
接頭語、接尾語の多くは、古くは一語としての獨立の機能と...
つて來るのであつて、これを全く語の内部的な構成要素と見...
を認めるかといふことは、國語の構造の問題にも關連し、ひ...
重要な關連を持つ問題となつて來るのである。
一 接頭語
接頭語は、鷲Φ臣図の譯語で、明治以後新しく加へられた文...
籾立した一語としての機能を持たない造語成分を云ふのである...
められるものもあり、かつそれだけで一定の意味を有するも...
出・來た語は、複合語と認むべきものである。現代語として...
擧げるならば、
す
15J
---------------------[End of Page 164]---------------------
す足 すつばだか すがほ
お
お米 おいそがしい おつかれ
ま(まつ)
ま夜中 ま新しい まつか(貫赤)
こ
こうるさい こぎれい こやかましい
びく
ひつたくる ひつかく ひきはがす
ぶつ
ぶつたたく ぶつかける ぶちのめす
なほこの外に漢語起源のものを擧げれば、
ふ(不)
不案内 ふたしか 不都合
151
ぶんなぐる
まつくら
---------------------[End of Page 165]---------------------
詞
三
ぶ(無)
無器量 ぶしつけ 無風流
ご(御)
御馳走 倒苦勞 dたいそう
ぜん(全)
全日本體育連盟
二 接尾語
勤翻尾萱、qh・図の譯語で、獨亠ユした壽としての機能を持た...
あるが、英語などと比較して、國語の接尾語は、機能上、單...
|第《、》壽として取扱ふ方が適切で巉英語などの麓語も、起源...
持つたものが、相當多かつたのであらうか、今日接尾語と云...
部的構成要素となつてしまつてゐるものについて云はれる。...
の品詞性を與へるものと考へられてゐる。例へば、ζを附け...
しての資格が與へられる。このやうな接尾語の概念を、その...
152
---------------------[End of Page 166]---------------------
論
二章語
ことが出來るかは甚だ疑問である。例へば、山田孝雄博士は、...
ふるものと、一定の資格を與ふるものとし、後者に於いて、更...
資格を盥ハふるもの、形容詞の資格を與ふるもの、動詞の資格...
與ふるものといふ風に分類して居られる。(一)しかしながら、...
語の性格を如實に説明出來るかどうかは甚だ疑はしい。第一に...
尾語と云はれてゐるものは、單純に或る品詞性を附與するもの...
が、皆それぞれに或る概念内容を持つものであることに於いて...
甚しく相違する。例へば、動詞の資格を與ふる接尾語として山...
見ると(山田博+は接尾辭と云はれてゐる)
めく-春めく 時めく
がるーおもしろがる 見たがる
が擧げられてゐるが、これらの接尾語は、もとの語に、ある別...
であるといふよりは、更に別の意味を加へてゐるものであるこ...
れ自身が或る概念内容を表現してゐるのである。英語で昌oび一...
153
---------------------[End of Page 167]---------------------
罰 ンス語でげ①霞Φq図からげΦ母ΦqωΦ日①昌けが出來る場合...
三
の品詞を決定するもので、語の意味に新しいものを附...
に、國語に於いては、接尾語は他の語との關係に於いて...
と考へられることである。例へば、次の例、
私に何か云ひたげにしてゐた。
地に屆きさうな様子です。
㌃あなたにほめられた瀏にそん董をするのです・
に於いて、⇒接尾語と云はれてゐる「げ」「さう」「さ」...
絢、塔さう」「ほめられたさ」で壽を襞してゐるのでは奮、「...
知 「あなたにほめられた」に附いたものと考へなくては...
を以て、「私に何か云ひたい」といふ句全體によつて修...
罫それは一語の構成要素といふ吉も、それ|自《ノ》竺語として...
・・ 合してゐるものである。異なるところは、一般の語で...
子」といふ風に、これも形容詞を構成する接尾語と云は...
154
---------------------[End of Page 168]---------------------
論
第二'3
一庄
【1口
續するのに對して、この場合は、語幹から直に接續してゐる。...
である。そしてまた、「げ」「さ」「さう」は、それだけで獨...
かの修飾語を件ふといふ相違がある。國語の接尾語は以上のや...
これらと、他の語、特に獨立しない語との間に明確な一線を劃...
ば、助數詞と云はれる「二羽」「三羽」の「朋」、「四本」「...
れてゐるが、これらと獨立した用法を持つ「二箱」の「箱」、...
或は動詞的接尾語の中、「ばむ」「めく」の如きものと、獨立...
る」「時めかす」の「ぶる」「めかす」と本質的に異なつたも...
である。そこで、一國語の接尾語をもし定義するならば、比較...
て一語を構成することの出來る語とでも云はなければならない...
來るといふ點で、いはゆる形式名詞のやうなものと區別するこ...
いてはその項に既に述べた。
右のやうな接尾語の概念は、これ.を潼途mの場く口にも遖用出...
館(寫眞館、本館) 店(商店、藥店)
---------------------[End of Page 169]---------------------
調 手(歌手、運轉手) 人(病人、役人、軍人、法人)
霊 以上のやうなものと、獨立した用法もある長(驛長)、感(讀...
的な相違は認め…難い。
1,r
體言的接尾語の例
げ 1文語的な云ひ方に殘る。
がた ー殿がた あなたがた
かた ー讀みかた 泳ぎかた
がてら1人を訪ねがてら、京都へ行きました。(e
たしさささ
ちなうま
1寒さ
ー1-山下さま(敬稱)
-悲しさうな顏 あの人は、うれしいさうです。
1東京を立ちしなに
ll君たち
---------------------[End of Page 170]---------------------
丶
[岡
第二章語
だらけi泥だらけ
ども1私ども
て -賣詞 讀みて(「てがない」といふ時は獨立する)
なみ 1軒なみ 足なみ 人なみ(人と同等の意)
ながらー本を譲みながら歩く 皮ながら食べる
「こはいながらも通りやんせ」「芳いながらしつかりし...
たややもめみ
うと
域
ー赤み すごみ
ーこはいめ 三番め つぎめ
t枕もと手もと
1書きやう 今やう 返事のしやう
1餅や わからずや
1尖つ掴 曲つだ(これが附いた豁は、連體詞と認むべきことは...
の項で述べた。)
ー職域地域
157
---------------------[End of Page 171]---------------------
詞
三
然線觀化間
ー1東京大阪聞 一年開(「その聞」などと用ゐられる時は形式...
1能率化 具體化
-世界觀側面觀
-東海道線本線
-政治家然 殿樣然
糞㌘4鳶
用言的接尾語の例
がる 寒がる 悲しがる いやがる
がましいーおしつけがましい 催促がましい
がたい1讀みがたい 濟度しがたい
きる ーやりきる 食べきる
しい(い)i赤い 目星い 大人しい 腹立た図 たのも図
させる(使役)1起きさせる 受けさせる
じみる1世帶じみる 老人じみる
158
'
・-ーーー ー 畢レ¶
サ
4
---------------------[End of Page 172]---------------------
、
聲,ー6喝〜も
亀丶1■
第二章語 論
す(他動)ーおこす あるかす
だつ 1殺氣だつ 目だつ きはだつ
だす 1動きだす(始める意) さぐりだす(出す意)
たがる1行きたがる 見たがる
たい -行きたい 見たい
つく 1産氣つく 怖氣つく 物心づく
つける1行きつける 見つける 叱りつける 呼びつける
なす 1山なす大波 瀧なす汗
ばむ 1汗ばむ 黄ばむ
ぶる ー大人ぶる 學者ぶる
めく 1春めく 田舍めく
らしい-ー男らしい 馬鹿らしい いやらしい
れる、られる1叱られる 受けられる
159
---------------------[End of Page 173]---------------------
三
用言的接尾語の中、動詞に規則的に附く受身、可能、使役、...
γ(こ『日本文法學概論』五八〒五全ハ頁
(二) 木枝氏は,『高等國文法薪講 品詞篇』 八蝋=一頁に...
160
ヲ結
以上述べた詞の下位分類の中には、形式名詞、形式動詞の...
競一釁口(名詞を含む)
! 二 用言
イ 動詞
---------------------[End of Page 174]---------------------
ロ 形容罰
三 代名詞
ノ・ 名詞的代名詞
ロ 連體詞的代名詞
ハ 副詞的代名詞
四 連體詞
五 副詞
四 辭
論
二章語
イ總 論
辭は、「ジ」「てには」「てにをは」と呼ばれ、語の二大別の...
161
---------------------[End of Page 175]---------------------
四辭
大體次のやうに要約することが出來る。
(一) 表現される事柄に對する話手の立場の表現である。
(二) 話手の立場の直接的表現であるから、つねに話手に關...
(三) 辭の表現には、必ず詞の表現が豫想され、詞と辭の結...
(四) 辭は格を示すことはあつても、それ自身格を構成し、...
ロ 接續詞
接續詞は、一般に、語、句、文を續ける語であると定義され...
---------------------[End of Page 176]---------------------
第二章語
イ 山また山を越えてゆく。
ロ 彼は英語も話せ、かつドイッ語も讀める。
ハ それは私も讀んだ。しかし面白い本ではない。
右の例の傍線の語は、それぞれに、語、句、文を接續する接續...
---------------------[End of Page 177]---------------------
四辭
立場の相違で、「かつ」はそのやうな立場の表現を明かにした...
彼は英語が話せ、ドイツ語が讀める。
ハの場合も同様で、ただ事實をそのまま記述するならば、
私も讀んだ。面白い本ではない。
となるのであるが、この二の事實に因果關係を見出すのは、話...
---------------------[End of Page 178]---------------------
接續詞の性質を理解するためには、これを詞との關係に於い...
イ いづれまたおうかがひいたします。
ロ 昨日はお邪魔しました。またその節は御馳走樣になり...
イの場合の「また」は、「おうかがひいたします」といふ動作...
「なほ」といふ語についても、
イ そんなことをされては,なほ困る。
ロ 明日御注文の品をお屆けします。瀏その時くはしく御...
イは前項の「また」と同様、困りかたの度が一暦はげしくなる...
165
---------------------[End of Page 179]---------------------
四辭
副詞的修飾語として用ゐられたので、詞に屬する。ロは、説明...
次に、接續詞は、意義上、接續助詞といはれる一群の助詞と...
山と、山を越えて行く(助詞)。 山また山を越えて行く(...
166
---------------------[End of Page 180]---------------------
それは私も讀んだが、面白い本ではなかつた(助詞)。 ...
彼は英語も話せるし、ドイツ語も讀める(助詞)。 彼は...
上段の助詞の場合は、形式上、上の語或は句に密接し、それで...
けれども、私は行かなければなりません。
しかし、もう駄目です。
のやうな文は、それに先行するものとして、「今日はひどい雨...
167
---------------------[End of Page 181]---------------------
盡しました。」といふやうな思想を受けて、はじめて「けれど...
ここに接續詞と接續助詞との密接な關係が考へられるのであ...
雨がひどく降つた。だが道はさほど惡くない。
「だが」は、先行文の陳述を「だ」で受け、それに助詞「が」...
また次のやうな例に於いて、
雨が止んだ。すると急に鳥が鳴き出した。
雨が止んだ。それで鳥が鳴き出した。
168
---------------------[End of Page 182]---------------------
第二章語
「すると」の「する」は、「雨が止む」といふ動詞を受けたも...
雨が止んだ。と急に鳥が鳴き出した。
そこで、前項、の「だが」「が」を接續詞と認めたと同様な意...
以上の説明の中、「それで」といふ接續詞については、なほ...
169
---------------------[End of Page 183]---------------------
四辭
ある。「それで」は、その成立について云へば、「それ」と助...
170
---------------------[End of Page 184]---------------------
二章 語
な關係を持つことは以上の論明によつて明かにされたと思ふ。
それならば、接續詞はどのやうにして、二の思想を結ぶので...
雨が止んだ。それで鳥が鳴き出した。
右の接續詞を伴ふ表現は、その意味に於いて、
雨が止んで、鳥が鳴き出した。
と同じである。そして、「雨が止んで」を一般に、副詞的(或は...
171
---------------------[End of Page 185]---------------------
四
辭
それはただ思想の轉換することを直接的に表現したので、「そ...
イ 彼は私に水を飮ませて呉れました。それから路銀のた...
ロ 私は○月東京に着いた。それから急いで彼の家にかけつ...
右の中、イの場合は、辭としての「また」「なほ」と同樣に、...
172
---------------------[End of Page 186]---------------------
を明かに承けてゐるので、「それ」を下の述語の副詞的修飾語...
接續詞の概念を明かにするために、凡そ語・句・丈の接續の...
一 語に關して
1 接續詞による
犬或は猫 老人及び病人
2 單に語を並べる(この場合符號の助を借りることがある)
山川草木 金・銀・釧∵鐵
二 句或は節に關して
173
---------------------[End of Page 187]---------------------
1 接續詞による
鳥が鳴き、そして花が咲く。
風が吹き、かつ雨がはげしい。
2 接續助詞による
鳥が鳴いて、花が倹く。
春が來たけれども、花が嘆かない。
3 用言、助動詞の連用中止法による
鳥が鳴き、花が咲く。
風が寒く、温度が降る。
彼は健康で、氣分も朗かだ。」
三 文に關して
コ 接續詞による
鳥が鳴く。そして花が咲く。
風が吹く。団れど寒くない。
174
---------------------[End of Page 188]---------------------
第二章語
2 文をただ連ねる
鳥が鳴く。花が咲く。
風がはげしく吹きつける。船は木の葉の樣に奔弄され...
思想の展開、接續は大體以上のやうな方法で表現されるのであ...
175
---------------------[End of Page 189]---------------------
四辭
零記號の辭の未完結形式(用言の連用中止法)ー接續助詞ー...
以上述べたところによつて明かなやうに、接續詞の持つ機能...
とは充分に認められてよいのではないかと思ふ。
接續詞として認められてゐるものを左に掲げて置く(中に問題...
が かつ けれど(も)
さて さらに されば
しかし しかしながら したがつて しかるに
すると すなはち
そうすると そうして そこで そして そもそも その...
それで(も) それとも それに それどころか それ故
それから それなら それだから そのくせ
ただ ただし だが だから だつて だけど だのに ...
176
---------------------[End of Page 190]---------------------
ついては つぎに
で では でも ですが でしたら
》}
ところが ところで とはいふものの
なほ ならびに
はた はなしかはつて
また または もつとも
ゆゑに よつて
論
二章話
(一) この場合の「と」を助詞と考へることについては、次の...
本書に於いては、右のやうな「と」を不完全形式を持つ指...
雨が止んだ。雨が止み急に鳥が鳴き出した。
右の傍線の概念内容冖を省略し、ただその陳述性のみを殘...
177
---------------------[End of Page 191]---------------------
辭 雨が止んだ。と急に鳥が鳴き出した。
四 になると見ることが出來る。從つて、この「と」は...
雨が止んだ。[]固急に鳥が鳴き出した。
同じやうなことは、助動詞「だ」の連用形「で」につ...
雨が止んだ。で急に鳥が鳴き出した。
右のやうな助動詞の連用形が、用言の連用形と共に、...
ノ〆(二) 『日本文法學概論』三九二頁以下
178
ハ 感動詞
感動詞は、感歎詞、間投詞とも云はれ、話手の感情や呼びか...
出來ゐい感動詞が常に話手の感情、應答の表現であつて、第二...
---------------------[End of Page 192]---------------------
や、應答を、「おや」とか「まあ」といふ風に表現出來な...
第二章語
一主客未剖の表現であると見るべきで逡礎つて虐動詞は、それ...
「感動詞は右に述べたやうに、主客未分の表現であるから、感...
179
---------------------[End of Page 193]---------------------
四辭
ああ、面白い本だ。
に於いて、「面白い本だ。」といふ表現は、「ああ」といふ感...
の相違が以上の如くであり、かつ、感動詞を後續文の修飾語と...
感動詞は、感動と應答の音聲的表現であるが、それならば、...
180
---------------------[End of Page 194]---------------------
.X一) 『日本文法學餌悃論』 三{ハ九百ハ
二 助 動 詞
論
語
章
二
助動詞の名稱が不適當なものであり、從つて今日一般に文法...
以上述べたやうに、助動詞は辭に屬するものとして、辭の一...
181
---------------------[End of Page 195]---------------------
四辭
ることの出來ないものであり、常に詞と結合して始めて其體的...
相鵞贈繁立場の翫募讐郵繋ガで萱そのことのために・
助動詞は、多くの場合に活用を持つことになるのであゐb用言は...
の場合は、一般には零記號の形に於いて陳述が表現される。換...
|劇が|劇日 |嚠だコ。(「な」「だ」は指定の助動詞...
|暖《用言》かい日 暖かい。(「な」「だ」に相當する...
助動詞によつて表現される陳連と、それに屬する語は次のや...
一 指定 だ ある
二打消 ないぬまい
三 過去及び完了 た
四 意志及び推量 う よう だらう らしい べし
182
---------------------[End of Page 196]---------------------
五 敬譲
ー指定
ー打稍
-推量
ます です でございます ございまず
ません でありません ありません
でせう
(一) 指定の助動詞 だ
論
第二章語
だ 語活劉
で 未然形
とにで 連用形
だ 終止形
のな 連體形
なら 假定形
o)零1形L
〆
」
め
指定の助動詞は、話手の單純な肯定到斷を表はす語である。...
は、從來助詞として取扱はれてゐたものであるが、下に擧げる...
183
---------------------[End of Page 197]---------------------
四 辭
る。本書に於いては、形容動詞を立てないから、從來形容動詞...
未然形(一)
體が健康でない。
連用形
體が健康である。(「ある」は指定の助動詞であるから、こ...
とが出來る)
體が健康であらう。(健康だらう)(二)
體が健康で、性質が楡快だ。(中止の場合)
私は健康で働いてゐます。(連用修飾的陳述を表はす場合)
月明かに、風涼し。(中止の場合、文語だけに用ゐられる)
元氣団、楡快悶、働いてゐる。(連用修飾的陳述を表はす)
隊伍整然と行進する。(連用修飾的陳述を表はす)
184
---------------------[End of Page 198]---------------------
論
二章語
花が雪と散つてゐる。(右に同じ)
「今日は行かない」と(三)云つてゐた。(右に同じ)
野となく、山と(鴎)なくかけまはる。
終止形
今日は日曜だ。(さ
連體形さ
それが駄目な時
僅かの御禮しか出來ない、
假定形(さ
明日おひまなら、お出かけ下さい。
氣分が惡いなら、お止めなさい。
あなたが行くなら、一緒に行きませう。
(ごつ跡動詞「ない」の癢する活用形を未然形の「で」としたの...
一般に未然形に付くのを原則とするところから、考へたこ...
185
---------------------[End of Page 199]---------------------
四辭
助動詞として「ない」の外に「う」があるが、「で」の場...
(二) 「であらう」の結合した「だらう」を本書では、別に推...
分析的に考へれば、「で」は指定、「あら」も指定、「う...
(三) 引用文を受ける「と」も全く同じで、引用文全體に、連...
(四) この場合も前例と同樣であるが、打消の助動詞「ない」...
とある家の側に(「と」の上にあるべき連體修飾語が省略...
一っとして上手に出來たものがない。
186
---------------------[End of Page 200]---------------------
第二章語
また次のやうな例も同樣に考へることが出來る。
雪子は晋を戀ふるあまり、さういふ義兄の行動を心の中...
つと白分と同樣に感じて、草葉の蔭から義兄を批難して...
やうどその時分、ー父が死んで間もない頃(『細雪』上)
(五) 「だ」はどのやうな品詞に接續するかと云へば、
(一) 名詞及び體言 山だ。 それは僕の生命だQ 行くの...
元氣だ。 駄目だ。
(二) その他、方言では用言の零記號の陳述の代用に用ゐ...
それはいけないだQ もつとやらすだ。
從來、形容動詞の終止形の語尾と考へられたものは全部こ...
嬢) 「な」「の」は、屡ー共通して用ゐられるが、語によつて...
場合とがある。「駄日の」「僅かな」とも云ふことが出來...
「の」がつき、「親切」「孤獨」「あやふや」等には、大...
(七) 「なら」は「ならば」とも用ゐられる。體言について假...
く。この場合は、用言の假定形に「ぱ」のついたものと同...
の指定の助動詞とが同じ價値になるわけである。
187
---------------------[End of Page 201]---------------------
四 跡
188
(二) 指定の助動詞 ある
楚
ある
未然形
あら
連用形
あり
終止形
ある
逹體形
ある
假定形
あれ
命令形
あれ
指定の助動詞「ある」は、元來、詞としての動詞「あり」が...
もので、指定の意味から云へば、前項の「だ」と同じであるが...
い「に」「と」と結合して、「なり」「たり」といふ助動詞を...
は、他の用言或は助動詞の接續機能を助ける役目を持つ。「あ...
表はす助動詞であるから、これが附いても、陳述の内容に變化...
めるやうな場合もある。前項の「だ」に於いて、推量の陳述を...
らば、未然形に「う」を附ければよいのであるが、「だ」の場...
---------------------[End of Page 202]---------------------
第二章語論
「う」を附けることが出來ない。そこで、「で」と「う」の中...
彼は正直でーあらーう(正直だらう)。
從つて、意味は、單に陳述に推量の加つたものに過ぎない。こ...
合にも適用される。
風が寒くーあらーう(寒からう)。
形容詞の零記號の陳述が、「ある」といふ助動詞に置換へられ...
ある。同樣のことが、過去及び完了を表はす場合にも起こる。
彼は正直でーあつーた(正直だつた)。
風が寒くーあつーた(寒かつた)。
「あり」が附いても、陳述の内容に變化が無いから、前項の「...
る」を加へても、同じ意味を表はすことが出來る。.肯定到斷が...
陳述が一層念入りになつたとも見ることが出來る。伊∵距ご。
彼は政治家でーあり、また音樂家でーある(政治家で、音樂...
189
---------------------[End of Page 203]---------------------
四辭
波がおだやかでーあれば、楡快でーある(おだやかなら楡快だ...
「ある」が否定を表はす打消助動詞に加つた時も、從つて、打...
我が生活樂にならずーあり(ならぎり、ならず。文語)。
未然形(一)
君はいやであらう。
花もちき咲くであらう。
連用形
今日は休日であり、大變な人出です。
昨日は寒くあつた(寒かつた)。
終止形
成績は良好である(「良好だ」と同じ)。
色は紅にーあり(紅なり。文語)。
前途洋々とーあり(洋々たり。文語)o
連體形
190
---------------------[End of Page 204]---------------------
彼が健在であることは輯もしい(「健在なこと」と同じ)。
假定形
正直であれば、きつと成功する(「正直なら」と同じ)。
命令形
勤勉であれ。
(】) 「であらう」は「だらう」ともいひ、それ全體で推量の...
謝剔詞の項点少照)o
(三) 打消の助動詞 ない
(推量の助
第二章語 論
γ
ない
未然形
○
連用形
なく
終止形一纛形
ない
ない
假定形
なけれ
命令形
O
未然形(一) 口語では用ゐられない。
191
---------------------[End of Page 205]---------------------
四辭…
連用形(昌)
風も吹かなくて、楡快な遠足でした。
體も丈夫でなく、余り無理は出來ない。
氣温も寒くなく、快適だ。
終止形
一向本も讀まない。
今日は暑くはない。
體は丈夫でない。
本も讀まないで、遊んでゐる。
病氣はたいして惡くないらしい。
連體形
あの人が來ないのは珍らしい。
このことを知らない人はありませんの
假定形
192
---------------------[End of Page 206]---------------------
勉強しなければ、駄目だ。
寒くなければ、出かけよう。
接續のしかたは、動詞形容詞においてはその未然形に附く。た...
机の上には本がない(「本があらない」とは云はない)。
また、助動詞「だ」の未然形「で」にも附く。
論
二章語
(一) 一般に未然形に附く推量の「う」は、連用形から「ある...
病氣ではなくーあらーう(なからう)と思ふ。
また、「食べなくない」「なくない」といふ二重の打消…も...
的少いので、未然形を缺くこととした。
(二) 動詞の未然形に附く「ない」は、 一般に助動詞と認め...
「ない」は、助動詞でなく、形容詞であるとされてゐる。...
寒くはない。 寒くもない。
といふやうに、形容詞と「ない」との間に、助詞「は」「...
らといふのであるが、それは、この「ない」を形容詞であ...
193
---------------------[End of Page 207]---------------------
四 辭
動詞に附く時と同樣に、打消であることに變りはないP動詞に附...
助詞を次甲のやうにして用ゐる。
流れはしない。 流れもしない。
即ち、動詞の場合には、「しない」が打消助動詞と同じ資格に...
の「し」は、形式動詞の項に述べたやうに、殆ど陳述性のみの...
が出來る。このやうな表現法は、文語の形容詞の否定表現にも...
寒くはあらずQ 寒くもあらず。
に於いて、「あら」は、詞としての動詞から陳述の表現である...
が全體で否定の辭としての役目をしてゐる。印語形容詞にっく...
置換へられたも.であ琢幽礁助鞠詞と考へられなければならない。
右・
194
(四) 打消の助動詞 ぬ
弖筏
口目
活用
ぬ
未然形
O
連用形
ず
終止形
連體形
ぬ(ん) ぬ(ん)
假定形
ね
命令形
O
---------------------[End of Page 208]---------------------
鎌二章語論
{亀⊆1弓{も
打消助動詞「ぬ」は、文語の殘存形として、或は方言として...
未然形 口語では用ゐられない。
連用形
飮まず、食はず、歩く。
そんなことにとんちやくせず、仕事を續ける。
絡止形
そんなことは引受けられん。
誰も來んね。
連體形
早くやらんことには、間に合はん。
假定形
切符を買はねば乘れません。
接續のしかたは、動詞においては未然形に附く。ただし四段活...
い。必要のある時は、形容詞の「ない」を用ゐることは、打稍...
195
---------------------[End of Page 209]---------------------
四辭
同じである。
サ變の動詞に附く時は、「しぬ」と云はずに、「せぬ」と云...
であるために、文語γ變動詞の未然形に接續する形が殘されてゐ...
形容詞においては、そのまま附かずに、助動詞「ある」を介...
暑からず、寒からず、まことに楡快だ(暑くーあらーず、寒...
好ましからぬ評到を聞く。
「ぬ」は右に述べた活用系列の外に、連用形の「ず」に「あ...
はれるが文語的用法である。
いらざることを云ふものだ(「いらずーあるーこと」の意、...
思はざるも甚しい。
橋本進吉博士は、右のやうに、「ず」と「ある」とが結合し...
の一助動詞として居られる。さうすれば、同樣に、「ない」「...
「べくーある」の結合した「なかる」「べかる」も一助動詞と...
なる。
196
---------------------[End of Page 210]---------------------
二章語論
(五) 打消の助動詞 まい
活用
語
まい
未然形
O
連用形
O
終止形
まい
疆迄假定形
(まい)
○
命令形
○
終止形
その話は知るまい。
つまらぬことは考へまい。
連體形
あるまいことでもない。
接續のしかたは、四段活用の動詞においてはその絡止形に、そ...
の未然形に附く。
「まい」は、第一人稱に關する動詞に附く時は、打消に意志...
197
---------------------[End of Page 211]---------------------
辭 動詞に附く時は打消に推量の意が件ふ(「多分、私は行かれ...
四 私は行く剖(意志)。
あの人は行くまい(推量)。
(六) 過去及び完了の助動詞 た
tg8
騒
た
未然形
たら
連用形
○
終止形
た
連體形
た
假定形
たら
命令形
○
「た」は、起源的には接續助詞「て」に、動詞「あり」の結...
意味の上から云つても、助動詞ではなく、存在或は歌態を表は...
をみなへしうしろめたくも見ゆるかなあれ刳宿にひとり立...
老いたる人
右のやうな例は、「荒れてゐる」「老いてゐる」の意味である...
---------------------[End of Page 212]---------------------
丶
論
語
章
二
る。このやうな「てあり」の「あり」が、次第に辭に轉成して...
存在、状態の表現から、事柄に對する話手の確認到斷を表はす...
助動詞と云はれるものはそれである。過去及完了と云へば、客...
やうに受取られるが、この助動詞の本質は右のやうな話手の立...
習慣に從つて過去及び完了の語を用ゐることとした。山田孝雄...
ふ語を用ゐて居られるのは以上のやうな理由に基づくのであら...
「た」の起源が以上のやうな有樣であるために、現在でも、...
尖つた帽子 曲つた道 さびた刀
しかしこのやうな用法はすべての動詞にあるわけではなく、...
「讀んだ人」は、「走つてゐる」「泳いでゐる」「讀んでゐる...
のやうな存在、状態を表はす「た」は接尾語と見て「尖つた」...
として連體詞に所蜀させるのが遖當である。そして、單語とし...
と認めるべきである。
199
---------------------[End of Page 213]---------------------
未然形
汽車が着いたらう。
終止形(昌)
昨日は風が吹いた。
勝負はきまつた。
風が寒かつた(寒くーあつーた)。
連體形
君に逡つた手紙
私が讀んだ本
假定形
着いたら、電報を下さい。
話したらば、驚くでせう。
接續のしかたは、動詞にはその連用形に附き、形容詞には、助...
の連用形に附く。
200
---------------------[End of Page 214]---------------------
サ行以外の四段活用の動詞に附く時は、その連用形は音便に...
は、「た」が連濁になつて、「だ」となる。
書いた( 書いた(イ|音《む》 勝つた(|促音...
勝つた(|促音便)
呼んだ( 呼んだ(|撥《む 》 ,、(一) 『日本...
,、(一) 『日本文法學概論』錦十五章複語尾各説
く一→ゾ 「た」が事柄の・客觀的な状態の表現でなく、話手の...
ル|朕《ロ》
ント、
\
論
第二章語
すものであることは、例へば、「勝負はきまつた」といふ表現...
勝負が既に完了した時ばかりでなく、話手が、勝負の數を見通...
な場合でも云ふことが幽來るのである。甲は「勝負はきまつた...
のやうに表現しない場合がある。話手の立場によつて定まるの...
ない。しかしながら、そのやうな話手の立場は、事柄の客観的...
この兩者には相互に密接な關連がある。(「|手《\》紙が來な...
到斷は同時に、『手紙」「風」についての…状態を表現してゐる...
ない」をそ憑七れ形容嗣と謬こ壕催譲學原論』二憾八頁、註を...
201
---------------------[End of Page 215]---------------------
四
(七) 意士心及び推量一の助動詞
う よう
202
肇
、ハノ
未然形
○
よ、つ
O
連用形
O
○
終止形
、つ
よ・つ
連體形
(う)
(よう)
假定形
○
○
命令形
O
O
「う」「よう」は、起源的には話手の推量の意を含めた陳述...
今日ではむしろ意志を表はす助動詞と云つた方が適切である。...
容をなす述語は、第一人稱に限られてゐる。例へば、
明日は出かけよう。
と云へば、述語「出かける」の主語は、第一人稱の「私」で...
ではない。從つて、第二人稱或は第三人稱の動作に關しては用...
---------------------[End of Page 216]---------------------
論
第二章語
父は明日出かけよう。
あなたは明日出かけよう。
などとは云ふことが出來ない。
しかしながら、「う」「よう」は、本來、推量を表はす助動...
には今日でも例外的に推量を表はすものとして用ゐられてゐる。
月が登らうとしてゐる。
そんなこともあらう。
それもよからう(よくーあらーう)。
「う」「よう」が話手の意志の表現に轉用されるやうになつ...
別に用意されるやうになつた。それが次項に述べる「だらう」...
ての人稱を通じて推最を表はす語として用ゐられてゐる。
絡止形
今日は大にがんばらう。
もう起きよう。
203
---------------------[End of Page 217]---------------------
四 辭
さぞうれしからう(推量)。
それを云は引としてゐた(推量)。
連體形
そんなことを信じよう筈がない(推量)。
接續のしかたは、「う」は四段活用動詞の未然形に附き、「...
形に附く。形容詞には、助動詞「ある」を介して附く。
204
(八) 推量の助動詞 だらう
楚
だらう
未然形
O
連用形
O
終止形
だらう
連體形
(だらう)
假定形
O
命令形
○
前項に觸れて置いたやうに、
終止形
話手の推量的陳述を表はす。
---------------------[End of Page 218]---------------------
第'烹章語
彼も多分來るだらう。
さぞかし淋しいだ酬-引σ
あれは山だらう。
今夜は風もおだやかだらう。
連體形
彼が承諾するだらうことは望めない。
接續のしかたは、「う」「よう」が專ら動詞に附くのに對し...
205
---------------------[End of Page 219]---------------------
辭 「だらう」が一語として機能するのに對して、「だつた」...
四
寒いだつた」とは云はれないから、「だつた」はやはり「で...
2C6
(九) 推量の助動詞 らしい
ら 語
し1い 活紛
iO 未然
形
ら 連
し 用
く 形
ら 終
し 止
い 形
ら 連
し 體
い 形
○ 假定
形
○ 命令
形
丿
一
「う」「よう」は、時間的に見て、將來起こり得る事實に對...
あるに對して、「らしい」は現在起こつてゐる事實に對する推...
父は出かけるらしい。
「出かける」といふ動作は、現在の事實であるが、それが確...
そのやうに推測されるといふことを表はす。
♪
---------------------[End of Page 220]---------------------
〜、、
論
第二章語
頭が痛いらしい。
「頭が痛む」といふ事實は、現に起こつてゐる事實であらう...
から推量される場合である。「らしい」といふ到斷には、常に...
到斷の根據になつてゐる點で「だらう」と異なる。
「頭が痛いだらう」といふ推量到斷には、必しもそのやうな...
状況を必要としないが、「らしい」といふ推量到斷が、右のや...
るところから、接尾語の「らしい」と密接な關連を持つことが...
玄關に來たのはお客さんらしい(推量の助動詞)。
すつかり商人らしくなつた(接尾語)。
〜|前《フ》者は、「お客さん」であると推定される客觀的條件...
讐は・籟的状況の商人的であることを一至てゐるので・そこに...
るのではなくして、事柄の屬性概念が表現されてゐる。後者の...
結合して一個の複合形容詞を構成してゐるのであるb
連用形
---------------------[End of Page 221]---------------------
四辭
彼は氣分が惡いらしく、ふさいでゐた。
あまり氣乘りしないらしうございます。
大變心配らしかつた(らしくーあつた)。
どこかへ出かけるらしくて、いそいでゐた。
終止形
父は喜んでゐるらしい。
母は淋しいらしい。
海はおだやからしい。
雨が大分降つたらしい。
連體形
そのことには不服らしい樣子です。脚
何か起こつたらしいけはひだ。
接續のしかたは、「らしい」は動詞、形容詞の絡止形及び體言...
「ない」「た」の終止形にも附く。
208
}
---------------------[End of Page 222]---------------------
「らしい」は元來推量的陳述を表はす語であるから、當然そ...
てゐる筈であるが、時に次のやうに、指定の助動詞「である」...
計豊の實行は困難であるらしい(「困難らしい」と同じ)い左
(一〇)推量の助動詞べし
楚
べし
未然形
O
連州形
べく
終止形
○
連體形
べき
假定形
○
命令形
○
論
第二章語
「べし」は本來、文語の助動詞であるが、口語の中にも屡≧こ...
ただし、その用法は次のやうに極めて限定され、終止形が全然...
助動詞が口語特有のものでないことを示してゐる。
方言では、「ぺし」の轉訛した「べい」が終止形として用ゐ...
連用形
209
---------------------[End of Page 223]---------------------
四辭
御期待に添ふべく、努力しよう。
それは云ふべくして、行はれない。
連體形
そんなことはなすべきことではない。
恐るべき病處のとりことなつた。
多かるべき筈がない。
接續のしかたは、動詞にはその終止形に附き、形容詞には、...
止形)を介して附く。
多かるべき筈がない(多くーあるーベき)。
210
(一一) 敬讓の助動詞 ます です ございます でござい...
話手が聞手に對する敬讓の心持ちを表現する語の中で、特に...
助動詞といふ。「あの方は私の先生です。」といふ表現で、「...
關する語であるが、「,です」は、この表現の相手である聞手に...
---------------------[End of Page 224]---------------------
ジ
魂
{ノq,
第二章語 論
表現する語であつて、敬讓の意を含めない、通常の指定の助動...
ある。
既に述べて來たやうに、陳述を表はす助動詞は、(一)指定 (...
び完了 (四)意志及び推量に分類されるが、聞手に對する敬讓...
あるわけであるから敬譲の助動詞は、次のやうに分類すること...
(一) 指定の敬讓助動詞
(二) 打消の敬譲助動詞
(三) 過去及び完了の敬讓助動詞
(四) 推量の敬譲助動詞(意志を表はす敬讓の助動詞は含まな...
これらの敬讓助動詞は、それぞれに、通常の指定、打消、過...
に對應するので、これを表に示せば次のやうになる。
211
---------------------[End of Page 225]---------------------
四辭
!
瓢/
《隨口匹》|《ズ 》|/
/1
/待1
タ
/遇
/
指
定
打
消
ます
ございます
です
でございます
ません
ありません
でありません
ございません
でございませ
・ん
1了完び及去過
ました
でした
ございました
でございまし
た
敬讓 の 表 現
雨が降ります(逋語が勤詞の場合)
今日は寒うございます薤語が形容詞の場合)
今日は天氣です(遞語が體言の場倉
今日は天氣でございます(逋語が體言の揚倉
逋常 の 表現
雨が降る嬲
今日は寒い翳
今日は天氣だ
今日は天氣だ
天氣である
天氣である
雨が降りません(逋語が動肖の場合)
今日は寒くありません読語が嘱容詞の場合)
今日は天氣でありません广諦語が體言の場合)
今日は寒く(う)ございませ細(講鷹攤舮容)
今日は天氣矧ございません(讖鷹軅餾)
昨日は雨が降りました
昨日は天氣でした
昨日は寒うございました
昨日は天氣でございました
雨が降らない
今日は寒くない
今日は天氣でない
今日は寒くない
今日は天氣でない
}昨日は雨が降つ矧
昨日は天氣だつた天氣であつた
昨日は寒かつた(寒くあつた)
昨日は天氣だつた天氣であつた
=
212
、
要
、
塾。 隻
参
}も
---------------------[End of Page 226]---------------------
論
第二章語
ませう(意志)
でせう
ございませう
推
でございませ
、つ
量
らしいです
らしうござい
ます
行きませう 受けませう
明日は雨が降るでせう
明日は塞いでせう
明日は天氣でせう
明日は寒うございませう
明日は寒いでございませう
明周は天氣でございませう
今日は雨が降るらしいです
今日は寒いらしいです
今日は天氣らしいです
今日は雨が降るらしうございます
行かう受けよう
明日は雨が降るだらう
明日は寒いだらう
明日は天氣だらう
明日は寒いだらう
明日は寒いだらう
明日は天氣だらう
今日は雨が降るらしい
今日は寒いらしい
今日は天氣らしい
今日は雨が降るらしい
一
ノ〉今
日 日
は は
天寒
氣い
ら ら
し し
、 、
つ つ
ご ご
ざ ざ
い い
ま ま
すす
一
今今
日 日
は は
天i寒
氣い
ら ら
し し
い い
輻一一 一
213
---------------------[End of Page 227]---------------------
四辭
右の表についての總括的補足的説明。
一 右の表は、話手の聞手に對する敬讓の表現が、通常の表...
するかを示したものである。敬讓と通常の表現を含めて待遇と...
一一 「ます」に對應する通常表現の説明に用ゐた盥の記號...
に表現されてゐないことを示す。「ます」といふ敬讓の助動詞...
零記號の陳述に對應するものである。
三 指定の敬讓助動詞に、「あります」「であります」を加...
用形について「寒くあります」、體言について「天氣でありま...
の用法は打消の場合には、「寒くありません」「天氣でありま...
られる。
四 「です」が動詞の終止形について「降るです」と用ゐら...
はない。形容詞の終止形について「寒いです」といふ云ひ方は...
になつた。それは、「寒い」と「寒うございます」の中間に位...
ると考へられるためであらう。
214
---------------------[End of Page 228]---------------------
第二章
蕪
rl口
五 「ます」の命令形「ませ」「まし」は、「くださる」「...
け附く。
六 「降らない」「寒くない」「天氣でない」の打消敬讓...
「寒くないです」「天氣でないです」などといふ云ひ方もある...
逆になつたものである。
七 過去及び完了の敬讓表現には、「降つたです」「塞かつ...
八 「ませう」は、意志ばかりでなく「降りませう」といふ...
る。また、「降るでせう」「寒うございませう」などを、「で...
せう」「寒うございますでせう」などともいふ。陳述の累加し...
なる。
九 種類の異なつた陳述を重ねた場合には、敬讓の表現は、...
雨が降つたらしうございます,(過去及び完了と推量)
雨が降らなかつたでせう(打消、過去及び完了と推量)
215
---------------------[End of Page 229]---------------------
四辭
ホ 助 詞
ρ
)ね
乙
二貿、
%
誌・sも
1丶
む
㌔/
216
(一)總説
助詞が辭として持つ一般的性質については、辭の總論の項に...
詞と助詞との相違點についても、助動詞の項に概略を附説した...
に陳諦ち到斷襄はすものであり、從つて、その點、文の中に用...
樣に、その連用上、多く活用を且ハ備するのであるが、助詞は...
活用を持たな㌫近世の國語學者がこれを靜辭と云つたのは、活...
文法上、助詞をどのやうに分類、整理するかについては種々...
その一は、他語との接續關係から分類することである。助詞は...
詞と結合して句を構成するものであるところから、最近は、專...
の見地からこれを整理することが行はれて來た。(一)
橋本博士の助詞の分数法は、博士の文法體系が、詞と辭の結...
---------------------[End of Page 230]---------------------
論
第二章語
る文節を出發點とするところから、詞との接續關係に重點が注...
常然の歸結であるが、辭を常に詞との接續關係に於いて見るこ...
とであらうか。辭の根本的意義は、客體的な事柄に對する話手...
つて、如何なる詞と結合するかといふことは、辭の根本的性質...
文論の總論に於いて述べるやうに、辭には常に客體的な事柄を...
ことを考へるなちば、それらが、話手のどのやうな立場の表現...
現を有機的に理解し、文の構造を明かにする上に大切なことで...
朝起きてから、夜癪るまで勉張した。
に於いて、助詞「から」「まで」、助動詞「た」が、それぞれ...
そこで、本書では、助詞を次の四種に分つこととした。
217
---------------------[End of Page 231]---------------------
辭 格を表はす助詞
四
限定を表はす助詞
接續を表はす助詞
感動を表はす助詞
右に述べた助詞によつて表現される格以下の思想内容は、...
雨測。
となり、「か」は感動を表はす助詞として詞と結合してゐる...
218
---------------------[End of Page 232]---------------------
第二章語
このことは、格を表はす助詞についても云へることである。次...
乙 甲と乙と二の棒が、右のやうな關係に置...
/〈甲「甲が乙によりかかつてゐる」と云ふ認定≒「乙が...
(一) 橋本逖吉博士の『新文典』には、語を獨立する詞と附...
(二) 格を表はす助詞
事柄に對する話手の認定の中、事柄と事柄との關係の認定を...
が 風が吹いてゐる。 病氣が恐ろしい。(じ
は 萬葉集は歌集である。(e
219
---------------------[End of Page 233]---------------------
四辭
の
に
へ
を
と
から
より
で
まで
(一)
(二)
(三)
(四)
(五)
池の水
庭に木を植ゑる。
町へ行く。
木を切る。
茶碗と箸
はじめから絡りまで
そんなことよりこれをおやりなさい。
庭で遊んでゐる。
どこまで行くのですか。
上の「が」が主格を表はすのに對して、下の「が」は對象格...
(三)の「限定を表はす助詞」の「は」
上の「の」は、所屬格を表はし、下の
れら「の」は、指定の助動詞「だ」の連體形の
「政治家になる」といふ場合の「に」は、指定の助動詞「だ」
「に」は場所、「へ」は方向を表はすのであらうが、現代口...
海の見える丘。へ三)
甲にひとしい。へ四}
紙へ書いて置いた。(玳)
梯子をのぼる。
友だちと出かける。
そんなことから失敗するのだ。
夏より暑い。
耳で聞く。(さ
夏まて續ける。(七)
(文論對象格の項參照)。
と相違して、他と區別する意味はない。
「の」は、從屬句の主格を表はす時に用ゐられる。こ
「の」とは異なる。
の連用形であるo
220
---------------------[End of Page 234]---------------------
守られてゐない。ただし、その區別が極めて明かな場合に...
のやうに、「に」「へ」の囁別を有效に使ひわけるやうで...
(六) 「耳で聞く。」「健康「で暮す。」「節約で切拔ける。...
(七) 限定を表はす「まで」と比較すれば、格を表はす助詞の...
論
第二章 語
(三) 限定を表はす助詞
「限定を表はす」といふ説明が當つてゐるかどうかは疑問で...
括することとした。實例を以て云ふならば、例へば、甲が勉強...
の表現は、ただこの事實そのものが表現を成立させるばかりで...
話手の事實に對する認定に相違があり、從つて表現も異なる。...
外に、乙も丙も勉強してゐる場合、甲以外は乙も丙も勉強して...
が勉強してゐる場合、優等生である甲が勉強してゐる場合等に...
の認定のしかたを異にする。從つて次のやうな表現が成立する。
甲が勉強してゐる。
221
---------------------[End of Page 235]---------------------
四辭
甲も勉張してゐる。
甲でも勉強してゐる。"
甲は勉強してゐる。
甲だけ勉強してゐる。
甲ばかり勉強してゐる。
甲まで勉張してゐる。
右の表現における助詞には、話手の甲に對する期待、評價、...
とが分る。
さやもはか
へ
ばかり(ご
ペンか鉛筆・かを貸して下さい。 行くか止めるかを決めよう。
ぼくは駄目です。 日曜は家です。
私もお件します。 笑ひもしません。
みかんや林檎がある。 あれやこれやと忙しい。
これさへ出來れば、あとは簡單だ。 一寸顏を出しさへすれば...
水ばかり飮む、 百圓ばかり貸して下さい。
222
---------------------[End of Page 236]---------------------
嘉
へ
ノ
第二章語 論
ぐらゐ(昌)
やだほづきこたなしだで
らのどつりそりりかけも
二里ぐらゐある。
お茶でも飮みませう。
百圓だけ貸して下さい。
君しか持つて來ない。
日なり耳なり働かせなさい。
寢たり起きたりの生活です。
それこそ私の得意のところ。
それきり何とも云つて來ない。
三つづつ・配る
一時間ほど經つた時
ああだのかうだの云つてゐる。
靴やら下駄やらがいつばいです。
など これなどはよい方です。
これぐらゐはかまはない。
明日でもお屆けします。
見るだけでよろしい。
そんなことしか出來ない。
行くなり止まるなり、君の御隨意です。
讀んだり書いたり出來ますか。
ようこそお出で下さいました。
二日きりしかもたない。
五人つつに組を分ける。
私ほど愚かなものはない。
本だのペンだのが散らばる。
譬者を呼ぶやら藥を買ひに行くやら、大變
です。
「大丈夫だ」などと云ふものですから
223
---------------------[End of Page 237]---------------------
四辭
まで三)衣類は勿論、族費まで惠んで呉れた。 そんなにまで...
(一) 「ばかり」には二の意味がある。上はその事柄に集注さ...
ドは、漠然たる限定を表はす。
(二) 「くらゐ」は元來、程度を意味する體言であったものが...
漠然たる限定を表はす。
このくらゐ飮んでも差支ない(飮んで差支ない分量を云ふ。...
これぐらゐ飮んでも差支ない(飮んで差支ない物の範圍を云...
ただし、第二の「これ」が分量を云ふ時は、第一と同じ意...
(三〉 格助詞の「まで」と比較する必要がある。
224
(四) 接續を表はす助詞
同時的に存在する物と物との關係は、格助詞によつて表現さ...
時的に存在する動作及び行僞、或は時間的に繼起する事柄と事...
よつて表現される。この一群に屬する助詞は、陳述に件ふ點で...
のである。元來、陳述と陳述との關係は、用言の活用形の中、...
---------------------[End of Page 238]---------------------
論
第二章語
るのであるが、特殊な關係は、更にそれに助詞を加へることに...
用言の活用形が、辭と同じ機能を持つものであることは既に述...
に所屬する助詞を考へるに當つては、まづそのことを念頭に置...
雨が降り、地が固まる(零記號の陳述に相當する用言の連用...
雨が降ると、地が固まる(「と」は指定の助動詞「だ」の連...
する)。
雨が降るなら、地が固まる(「なら」は指定の助動詞「だ」...
「と」に相當する)。
雨が降つて、地が固まる(因果關係を明かにするために、陳...
右の「て」は、「雨が降る」といふ事實が原因であることの...
文に即して云へば、前句を後句に結合する役目をしてゐるやう...
を表はす助詞と一般に呼んでゐるのであるが、語そのものが接...
のは、單に比喩的にのみ云ふことが許されるものであることを...
必要があるのである。
225
---------------------[End of Page 239]---------------------
四辭
ばが
ててと
も§i∋
から
けれど(けれども)
し 雪も降るし、風も吹いて來た。
ながら(三) 話を聞きながら、記録する。
のに 雨が降るのに、出かけた。
ので 雨が降るので、止めた。
つつ 惡いと知りつつ、やつてしまつた。
老人だが、元氣だ。 私も知つてゐるが、彼は親...
雨が降れ圃、中止する。 風がつめたけれぱ、のどを...
れない。
腰をかけると、窓を閉めた。 谷へ下りると、水がある。
圖書館に行つて、しらべて見る。 外をのぞいて見る。
話しても、だめでせう。 體が小さくても、元氣です。
本を讀んでも、頭に入らない。
水が出るから、お洗ひなさい。 氣候がはげしいから、風を...
叱るけれど、ききめがない。 暖いけれど、風...
山は高いし、谷も深い。
貧しいながら、よく勉強する。
學生なのに、一向勉張しないΩ
學生なので、遠慮した。
水は次第に減少しつつある。
226
---------------------[End of Page 240]---------------------
(一) このやうな「と」を一般に接續の助詞として取扱つてゐ...
連用形の中止法と認むべきではないかと思ふ。古くは、こ...
「に」が通用して用ゐられたやうである。
いそぎ滲らせ御覽ずるに、めづらかなる兄の御かたちな...
外日しつればふと忘るるに、にくげなるは罪や得らむと...
(二) 「て」は同哮的な事柄、繼起的な事柄のいづれの接續に...
(三) 「ながら」は状態の持續をいふ體言であつたものが、接...
と下との「ながら」に意味の相違が認められるが、それは...
ちとしては、兩者とも、「その趺態に於いて」の意眛に過...
論
第二章語
(五) 感動を表はす助週鉾N氾柔ゐ願
か(こ これはあなたの帽子ですか。
おや、雪か。
かしら 今日は雨かしら。
よ 鳥が飛んでゐるよ。
蝶よ。舞へく。
そんなことが分らないのか。
今日はやつて來るかしら。
これを御覽よ。
227
---------------------[End of Page 241]---------------------
四 辭
な(なあ) よく廻るな(なあ)。
ね(ねえ) 可愛いいね。
さ 早く起きるさ。
な 枝を折るな。
ろ(よ) みんな起きろ。
そ そら、押すそ。
わ 私も行きますわ。
ものか(もんか) 行つてやるものか。
とも
の
や
こと
(一)
勉強するとも。
いらつしやいますの?・
花や、一寸おいで。
まあ、すばらしいこと。
第二の限定を表はす「か」と根本的に區別があるわけではな...
持ちを表現する場合は、これを限定の助詞と見て麗く。
名人だな(なあ)。
よく出來たねえ。
その道の逹人さ。
ぐつくするな。
じつくり考へて見よ。嚇
これは大金だぞ。
綺麗ですわ。
悲しいもんか。
それでいいとも。
いいえ、いただきませんの。
そんなことよせや。
お利口だこと。
ここに舉げた例は、陳逑に拌ふ場合で、
228
4
---------------------[End of Page 242]---------------------
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第三章文論
230
總説
文が、語或は文章とともに、文法學の對象として、言語にお...
文の性質を説明する方法として、從來一般にとられた方法は...
---------------------[End of Page 244]---------------------
この統一原理を明かにすることが、文の性質を明かに...
文の性質を規定するものとして、大體、次の三つの條...
具體的な思想の表現であること。
神抱三)統程があることQ
…6 (三) 完結性があること。
以下、右の三點について説明を加へようと思ふ。
論
女
諌
(一) 具體的な思想の表現であること。
語も、文と同じく思想の表現であるが、語は、話手の客體的...
231
---------------------[End of Page 245]---------------------
説
總
はどのやうなものであるかと云へば、人間は絶えず外界の刺戟...
犬だ。
といふ表現になると、客體界の表現「犬」と同時に、それに對...
---------------------[End of Page 246]---------------------
論
第一曽章
犬だ。
具體的な思想の表現と云つても、それは常に主體的表現と客...
まあ!驚いた。
「まあ」は主體的な感情の表現であるが、この表現には、こ...
犬!
においては、 一單語の表現のやうに見えるが、ここには語と...
233
---------------------[End of Page 247]---------------------
説
一總
國語においては、用言は一般にはそれだけで概念と同時に陳...
あぶない。
右の表現は、表面上は一語でありながら、零記號の陳述が件...
以上述べるところは、説明が演繹的になつてゐるが、實は素...
234
(二) 統一性があること ...
---------------------[End of Page 248]---------------------
第霊賣
て、客體的な表現が纏まりを持ち、統一性を獲得するのであゐ⑩...
國語において、主體的なものの表現として辭があり、その中...
更に、用言に伴ふ零記號の陳述を、陳述を表はす指定の助動...
---------------------[End of Page 249]---------------------
一總
一 用言に件ふ陳述 二 助動詞 三 助詞
次に、これらの語が、どのやうな形式において文に統一性を...
一 用言に伴ふ陳述
裏の小川がさらさら流れる。
右の表現において、これを統一する陳述は、特別な語によつ...
園の小川がさらさら流れ降互.芋、.∴、,.、、v
即ち、陽記號で示される話手の陳述が、「裏の小川云々」全...
236
---------------------[End of Page 250]---------------------
の鬪形の示すやうな統一形式と著しい野照をしてゐる。英・佛...
二 助動詞
今日は波の音も靜かだ。
右の表現における陳述は、明かに語の形式をとつて、「だ」...
---------------------[End of Page 251]---------------------
三 助詞
今日もまた雨か。
右の表現においては、陳述「である」が省略されて、助詞「...
238
(三) 完結性があること
よ、『つ文の成立條件として、統一性があるといふことは、同...
裏の小川はさらさらと流れ
といふ表現において、陳述は零記號の形式で存在はしてゐる...
---------------------[End of Page 252]---------------------
ながら、更に展開する姿勢を取つてゐる。換言すれば、この表...
の最後が、終止形にょつ毒態珍楚劉".嘉必譽條件となる・國語...
概法の場合を除いて、文の終りが完結形式でなければならない...
も云ふことが出來るであらうφのことは、活用における羅の現象...
であ毎
助動詞によつて統一された場合も同様で、それが終止形によ...
助詞の場合も同じで、ヂベての助詞は、それの附く語に或る...
---------------------[End of Page 253]---------------------
二詞と辭との冠叺的關係
以上は、文をその構成要素によつて挽明せず、文成立の基本...
二 詞と辭との意味的關係
詞と辭によつて表現される思想内容を、思想内容そのものと...
2≦0
---------------------[End of Page 254]---------------------
第三章女論
於いて、話手の感動を表はす「よ」といふ語は、この場合、話...
「故郷の山」に對する感動の表現であつて、この主體、客體の...
Aを言語主體(話手)とする時、弧...
B
客體界の表現、點線A8は、客體界C...
cA④Dの耄あぞA皇CDあ間に些志向作用恚向
對象との關係が存在し、ABCDが即...
であると云ふことが出來るのである。國語に於いては、この主...
故|郷《魔尠》の山|よ
この關係は、また別の言葉で云へば、客體的なものを、主髏...
241
---------------------[End of Page 255]---------------------
二 詞と辭との意味的關係
に於いては次のやうに圖解することにする。
一故郷の凹固或は故郷の山測
客體的表現、詞が、主體的表現、辭によつて包まれ、また統...
書家によつて選ばれる。客體的なものに羯する豊家の志向の表...
---------------------[End of Page 256]---------------------
論
第三章文
れによつて繪を包み、かつ統一し、この兩者によつて繪がはじ...
本書に於いて、圖解に用ゐた[(11は机の難と引手との關係を羲...
このやうな詞と辭との關係は、鈴木朖も既に次のやうな譬喩...
詞 辭(てにをは)
物事をさし顯はして詞となり、 其の詞につける心の聲なり
詞は器物の如く それを使ひ動かす手の如し
詞はてにをはならでは働かず 詞ならではつく所なし
かくして、
字を書く。
字も書く。
字だけ書く。
243
---------------------[End of Page 257]---------------------
二 詞と辭との意味的關係
宇ばかり書く。
に於いて、複線を以て示した語は、すべて辭であり、單線を以...
汽車が來ます。
汽車が來ました。
汽車が來るらしい。
複線の語は辭であつて、この場合も前例同樣に、ただ「汽車...
凡そ辭と云はれるものは、すべて右のやうな性質を持つてゐ...
244
---------------------[End of Page 258]---------------------
第三章文
は常に話手の認定の對象になる客體的なものと密接に結びつき...
辭のうちで、感動詞はいささか特例と考へられるのであつて...
詞と辭の關係が、以上のやうに、客體的なものとい・轟睡的...
245
---------------------[End of Page 259]---------------------
---------------------[End of Page 260]---------------------
論
第三章文
詞辭の結合が完結形式をとつて、「春だ。」と云はれる時は...
句が、詞と辭の結合で音聲的に一のまとまりをなして居ると...
ここに句切れが出來ると云つても、それは單なる生理的條件...
サクラガ サイタ(櫻が険いた)。
247
---------------------[End of Page 261]---------------------
三 句とス子墾構造(一)
は、決して
サクラ ガサ イタ
と云はれないのは、辭は常に上の詞と結合して一まとまり(句)...
國語に於いては、用言には特に陳述を表はす辭を用ゐること...
いふことが出來る。
日程を變へ翊、明日出發する薩
辭を件はないのは、用言の場合ばかりでなく、前例の「明日...
次に、句と句との闇には、意味上或は構造上、どういふ關係...
梅の非化が険いた。
248
---------------------[End of Page 262]---------------------
論
第登章文
といふ文は、これを句に分つて見れば、これを次のやうに圖解...
桐d一柑洲嘆い彑
即ち三の句に分つことが出來る。召れならば、文は句がこの...
梅の花が
右の圖解によつても明かなやうに、「が」といふ辭は、詞「...
249
---------------------[End of Page 263]---------------------
三 句と入子型構造(一)
右の辭「た」は、ただ單に「咲く」といふ語だけに附いたもの...
では「梅の花」)を持つた述語に附いて句をなすと考へなくては...
は次のやうに圖解されることとなる。
梅の花が険いた
即ち、右の文は、全體として、詞と辭の結合した句と見なす...
杓の花が険いた
この圖型を、既に用ゐた枡型式に改めるならば、
羸回花窶∴因
のやうになる。右の圖形によつて、語の連結がどのやうにして...
250
---------------------[End of Page 264]---------------------
論
第只章
このやうな單位の排列と統一の形式を照ヂ型構造と呼ぶので...
中盃bは、更に小盃aをその上に載せて、...
た三段組の盃を構成してゐる。abcはそれ...
部分の關係に立つと同時に、bがcに對す...
に對するのではなく、aを含んだbとして...
cは盃自體として見れば一の統一體ではあ...
更に含むことにょり三重の盃としての統一を完成するのである...
以上述べた入子型構造は、物質に關することであり、かつ察...
251
---------------------[End of Page 265]---------------------
四 句と入子型構造(二)
とするならば、以上のやうな入子型構造に於いて理解するのが...
四 句と入子型構造 (二)
前項に於いて、私は、主體的意識に於ける詞と辭との表現性...
A利がここに句と呼ぶところのものは、實は橋本進吉博士が文節...
に對する批到の上に成立つてゐ燈ので、まづそのことを明かに...
「橋本博士は、文に於ける切Rを文節と命名されたが、それは音...
252
---------------------[End of Page 266]---------------------
に對して、博士の文節は、必しも文に於ける單なる思想表現の...
從つて撚節の分析は、思想表現の意味的曲折及びその統一形...
253
---------------------[End of Page 267]---------------------
四 句と入子型構造(二)
久方の一ひかりのどけき一春の凵に一静心なく一花の散る...
に於いて、初句は一文節から成り、二句は「光」「のどけき」...
光猛のどけき幽
右は句を含む句と考へられるから、文節としても當然二句全...
花の散るらむ
以上のやうにして、句は句を含んで思想の統一が完成して行...
254
---------------------[End of Page 268]---------------------
ることを知るのである。更に一二三句を合して上句といひ、四...
天つ風雲のかよひ路ふきとちよ
少女の姿しばしとどめむ
に於いて、上句は、そこで思想が完結するにもかかはらず、な...
---------------------[End of Page 269]---------------------
五 用言に於ける陳逮の表現
いのであつて、文法上から云へば句と呼ぶことが出來ないこと...
句の名稱は、またbぽ9ω①の譯語として一般に通用してゐる。...
(一) 『國語學概論』橋本進吉博士著作集 第一巻 二三頁...
256
五 用言に於ける陳述の表現
詞は、それが概念作用による事柄の客體化の表現として、辭...
山、川、犬、猫等は前者でこれを鶻言といひ、走る、受ける...
---------------------[End of Page 270]---------------------
第匿章文論
これを用言といひ、その中に動詞と形容詞とが區別されること...
犬が走る。
篌が
のやうに、それは概念ばかりでなく、判斷即ち文法上にいはゆ...
抑も用言の用言たる所以はこの陳述の能力あることによるこ...
と述べて、用言に於ける陳述性を彊調して居られる。ところが...
---------------------[End of Page 271]---------------------
載 用言に於ける陳述の表現
ふかは重要な問題である。外形だけから考へるならば、陳述は...
関が圏言
蘭候が暖い吻
右のやうな説明法は、「故郷の山よ」といふ表現に於いて、...
瘋郷の凹翻
として圖解説明するのと同じである。
以上のやうに、國語に於いては、用言は常にそれだけで別に...
268
---------------------[End of Page 272]---------------------
第三三章女
を以て陳述を表現することがある。また、「日中は暖い。だが...
用言に零記號の陳述を想定することは、以上のやうな述語的...
流れる小川
寒い夜
右の用言「流れる」「塞い」は、それぞれ「小川」「夜」の...
259
---------------------[End of Page 273]---------------------
五 用言に於ける陳連の表現
在してゐると見なければならない。更に次のやうな例に於いて...
さらさら流れる小川
ひどく寒い夜
修飾的陳述は、「さらさら流れる」「ひどく寒い」を統一し...
國語に於ける用言と陳述との關係を右の如く解する時、ヨー...
〉`α○啝→目βω・
のやうな表現は、一般に次のやうに論明されてゐる。
》α。ひqヨ饕巨晨即ち[旧冨臼巴
のやうに、陳述を表はす辭が、Aと13との中間にあつて、兩者を...
260
---------------------[End of Page 274]---------------------
犬 走る。
といふ表現は、AB二の觀念の配列に於いて英語の場合と全く同...
これを次の如く解さなければならない。
犬走る互
即ち、AB二觀念を統一する辭は、AB二觀念の外から、これを...
てゐるのである。前者を天秤型統一形式と呼ぶならば、後者の...
ゾ(一) 『日本文法學概論』六八一頁
2Gユ
---------------------[End of Page 275]---------------------
六 文の威分と格
六 文の成分と格
2G2
イ總説
前數項に亙つて述べて來たことを、ここで一往概括して昆る...
…詞 画
次に、右のやうな文の構造を構成するものの中、主體的な辭...
文に於いては、詞は常に辭と結合して句を構威してゐるので...
---------------------[End of Page 276]---------------------
第三章文論
考察するといふことは、そのやうに辭によつて規定された詞に...
文の成分及び格の概念は以上の如くであるから、h成分及び格...
花が嘆いた。
右の表現に於ける文の成分は、句「花が」「険いた」から助...
ロ 述語洛と主語格
すべて陳述の助動詞或は零記號の陳述によつて統一されたもの...
2G3
---------------------[End of Page 277]---------------------
六 丈の成分と格
勉彊家です。
靜かだ。
暖い笏。
2G4
飛んでゐる翻。
右の例は、すべて辭と結合して句をなしてゐるが、それらの...
彼は勉強家です。
波が靜かだ。
風は暖い。
鳥が飛んでゐる。
これら傍線の部分は、語の結合であるが、陳述によつて統一...
---------------------[End of Page 278]---------------------
「波」と、「勉彊家」「静か」との間に文の成分上の關係が問...
論
第監章文
彼1
は1
匿
右の鬪形は、「です」によつて統一されたものとして、「彼...
265
---------------------[End of Page 279]---------------------
六文の成分と格
いL「腹が立つ」「氣が長い」等の語が、それぞれに一の詞とし...
次に、春の圖形から結論することが出來る轟な點は・副語に於...
對立するものではなくて、述語の中から抽出されたものである...
特性として、主語の省略といふことが云はれるが・右の鑾から...
述語に對する主語の關係を以上のやうに見て來るならば、f誰...
---------------------[End of Page 280]---------------------
私には出來ません。
「私」は、述語に對して、事實としては「出來ません」とい...
ハ述語絡と客語、補語、賓語格
論
第胃章 文
主語が、述語から抽出されたものであり、修飾語と異なると...
267
---------------------[End of Page 281]---------------------
ナ丈の威分と格
飾語を、客語、時には目的語、或は補語といふことが出來、ま...
橋を渡る。
空を飛ぶ
右の傍線の語のやうなものは、單に行爲の行はれる場所を云...
補語は、述語に對する論理的關係によつて規定された成分で...
268
---------------------[End of Page 282]---------------------
第豈童文
窒を暖かくする。 私はびくびくする。
氣が樂になる。 科學者になる。
右の傍線の語を除けば、この文は成立しないことになる。し...
7國語に於いて、主語、客語、補語の間に、明確な區別を認める...
實は、それらが、すべて述語から抽出されたものであり、述語...
私は六時に友人を驛に迎へた。
に於いて、「私」「六時」「友人」「驛」といふやうな成分が...
---------------------[End of Page 283]---------------------
六 女の成分と格
に對して、同じ關係に立つてゐるのである。その點ヨーロッパ...
ただし、國語に於いて、成分の間の關係を表はす格助詞の分...
次に、賓語について云ふならば、從來の文法書では、用言は...
波が靜かだ。
に於いて、「静かだ」を用言に匹敵するものと考へたので、更...
270
---------------------[End of Page 284]---------------------
べき資格はない。陳述された内容が述語であるから、右の例に...
○日本文法學概論 ○本書
述格 陳述と述語格とに分れる
賓格 述語格
補格 客語、補語等の修飾語格
論
第三章文
註 山田博士の述格は、實質概念と陳述との結合を意味する場...
271
---------------------[End of Page 285]---------------------
六文の成分と格
を峻別する立場をとつた。從って、山田博まの賓格に相當する...
二 修飾語格
修飾語の問題としては、 慧黛編煮害吻
(一) 前項に述べたやうに、諭凶語の構造上、主語、客語、...
次のやうな例文をとつて見るのに、
學校に行く。
親切に世話する。
「學校に」「親切に」の「學校」「親切」はともに體言であ...
---------------------[End of Page 286]---------------------
第三章女
じく修飾語であると云つても兩者に何等かの相違があるべき筈...
親切に世話する。……心よく嬲世話する。
すみやかに流れる。……早く鰯流れる。
そして、これらの修飾語は、事柄の屬性概念の表現であること...
六時に出發した。
東京に着く。
電車に乘る。
のやうに、事柄それ自髏の屬性ではなく、事柄に關係する外的...
このことは、助動詞「と」と、助詞「と」の間にも云はれる。
雨諷U散る。……はげしく翩故る。
茫然と暮す。……淋しく嬲慕す。
273
---------------------[End of Page 287]---------------------
格 右は助動詞の場合であるが、
飢 1ー
成 友と遊ぶ。
如 甲は嵐同じ・
六
は助詞の場合であつて、兩者の間には前の「に」と同様の...
《 ー粛r上のやうにして、修飾語と云つても、格助詞の附いた...
一.ン搾では、事柄の外部に關するものと、内部に關するものと...
-沈のやうに區別するかが問題にならなければならないのである...
いて、格助詞と認むべき場合と、助動詞と認むべき場合と...
ので、この問題は必ずしも容易ではないのである。ともか...
表現を識別するに役立つであらう。
近く見える。
近くに見える。
前者は、「見え方」の如何を云つたものであり、後者は...
---------------------[End of Page 288]---------------------
第三章文
(二) 修飾語と被修飾語との關係は、結局、語と語との關係...
體言であるか、用言であるかに從つて、連體修飾語と連用修飾...
星が美しく輝いてゐる。(連用修飾語、形容詞連用形)
星が澤山に輝いてゐる。(連用修飾語、體言、助動詞「に」...
美しい星が輝いてゐる。(連體修飾語、形容詞連體形)
澤山な星が輝いてゐる。(連體修飾語、體言、助動詞「な」...
連用修飾語は、用言へ接續するのであるから、一般に用言の...
今日は、お早い御出發ですね。(修飾語は連體形、被修飾語...
今日は、お早く御出發ですね。(修飾語は連用形、被修飾語...
275
---------------------[End of Page 289]---------------------
六丈の成分と格
即ち、述語が體言であるにもかかはらず、潼用形を以て修飾...
的な意味を持つためである。一般に個體的な意味に決定されて...
修飾語が用ゐられるが、歌態性、動作性の意味を持つ體言に對...
ことが可能になつて來る。
綺麗な花です。(連體修飾語)
勉強する學生だ。(連體修飾語)
明日から學校です。(連用修飾語)
一所懸命に勉強です。(連用修飾語)
以上のやうに見て來ると、連體とか連用とかの名稱が、既に...
で、これに對して、形容詞的修飾語、副詞的修飾語の名稱を用...
考へられる。これに關しては、もちろん、品詞としての形容詞...
に保留されることを前提とするのである(總論「文法用語」滲照...
276
---------------------[End of Page 290]---------------------
論
第三章
この一般には用ゐられてゐない術語を、ここに用ゐる理由は...
現・象に基づくのである。まつ、
山が高い。 川が流れてゐる。
の例に於いて、述語「高い」「流れてゐる」の主語が、それぞ...
容易に理解されることである。ところが、
仕事がつらい。 算術が出來る。
の例に於いて、「仕事」「算術」を、「つらい」「出來る」の...
ふと、ここに問題がある。主語は、それとは別に、
私は仕事がつらい。 彼は算術が出來る。
に於ける「私」「彼」を主語と考へるべきではないかといふ議...
術」をどのやうに取扱ふべきかが問題になる。ここで、「私」...
るので、「仕事」「算術」は、述語の概念に對しては、その對...
いふところから、これを對豫計と名づけることとしたのである...
山が見える。
277
---------------------[End of Page 291]---------------------
六 文の膩分と格
汽笛が聞える。
犬がこはい。
話が面白い。
等の傍線の語は、皆同じやうに、主語ではなく、對象語と認む...
しかしながら、以上の諸例に於ける傍線の語を、主語として...
と考へられないのは何故であらうか。素朴な態度を以て、以上...
ば、當然、主語として考へられるであらう。これは、次のやう...
の諸例に於ける述語、例へば、「見える」「こはい」をとつて...
は、∠方では、主觀的な知覺、感情の表現であると同時に、他方...
感情の機縁、條件となる客觀的な事柄の屬性を表現してゐる。...
觀、客觀の總合的な表現で、我々がこれらの語を用ゐる時、必...
だけを表現してゐるのでもなく、また、客觀的なものだけを表...
の場合に從つて、「山が見える」と云へば、客觀的なものの表...
と云へば、主觀的なものを意圖してゐるのである。一この點、...
---------------------[End of Page 292]---------------------
第.章女
るLに於いては、述語「高い」「流れてゐる」は、全く客觀的な...
主語が一義的に決定される。また一方、「足が痛い」「水がほ...
い」「ほしい」は、全く主觀的な感覺感情の表現であるから、...
ことは全然許されない?ここに對象語の概念が必要になつて來る...
の中間に位する語については、主語と認めるか、對象語と認め...
なつてゐると見なければならないのである。對象語の概念は以...
主語と對象語とは、全く相排斥する矛盾概念ではないのである...
用ゐられる用言の意味に關係することで、それは同一時代、同...
異なつて、
町が淋しい。(「淋しい」は、客觀的な状態、「町」は主語)
獨りでゐるから、淋しい。(「淋しい」は主觀的な朕態、主...
のやうに用ゐられると同時に、時代によつても異なる。
琴の音ゆかし。(「ゆかし」は琴の昔が聞きたいといふ希望...
語、主語は省略)
---------------------[End of Page 293]---------------------
六丈の鼠分と絡
人柄がゆかしい。(「ゆかしい」は、人柄の歌態を意味し、「人...
へ 獨立語格
280
以上述べた諸格は、すべて述語を基本にして、そこから抽出...
概念の表現として、それら相互には、相對的な關係があつた。...
であり、對象語は、主語及び述語に對する關係から規定された...
格は、すべて陳述によって統一されるので概括していふならば...
が出來る。ここに獨立語格といふのは、右のやうな相對的な關...
獨の格を云ふのである。画へば、驚きの感情を以て「火事!」と...
於いて既に述べたやうに、この表現は、感情(この場合に零記號...
象である一の事柄の詞的表現である「火事」との結合であるか...
ればならない。この文の格は、この表現の詞について云はなけ...
この詞は、「火事だ」といふ表現のやうに、指定の助動詞「だ...
ではないから、述語絡とはいふことが出來ない。このやうな格...
---------------------[End of Page 294]---------------------
論
第三章文
この場合、「火事」といふ語は、驚きの感情の對象であるから...
疑問が起こるであらうが、格は常に客體界の秩序で、詞相互の...
場合の感情は、詞として表現されてゐないのであるから、「火...
出來ないのである。
火事がこはい。
といふやうな場合は、全く別で、この時は、感情が「こはい」...
てゐるのであるから、この「こはい」といふ詞(この場合は述語...
に對して、「火事」を對象語といふことが出來るのである。獨...
伴ふことがあるが、それが獨立語に統合されて、結局、一語と...
獨立語は一語文と認むべきものである。
荒海や佐渡に横たふ天の川
右の文は、「荒海や」「佐渡に横たふ天の川」の二の獨立語...
てゐる。そして、それは次のやうに鬪解される。
[鬮凹圖 關闘凹吻
281
---------------------[End of Page 295]---------------------
六文の成分と絡
上の文は、詞である「荒海」が、感動を表はす助詞「や」に...
こには陳述による統一がなく、感動による統一があるだけであ...
を持たず、それだけで獨立格をなす。下の丈は、「佐渡に横た...
で全體を一語として取扱ふことが出來、かつこれを統一するも...
零記號の感動であるから、形式としては、上の丈と全く同じ獨...
て、この上下二つの文は、感動に包まれた、自然の二つの情景...
體の景觀を想像させたものであると云ふことが出來る。
このやうな獨立語による表現は、外形上の形式は同じでも次...
るものである。
昨日は何處へ行つたの?・箱根。
右の問に對する「箱根」といふ答は、「箱根です」或は「箱...
省略形で、そこには、陳述が省略されてゐると認められるので...
含まれる修飾語格と見なければならないのである。
また、次のやうなものも獨立語とは認められない。
282
---------------------[End of Page 296]---------------------
しかしその電燈の光に照らされた夕刊の紙面を見渡しても...
く、世間はあまりに凖凡な出來事ばかりでもちきつてゐた...
漬職事件、死亡廣告。1私はトンネルへはいつた。(芥川龍...
右の傍線の語は、それぞれ獨立語を構成してゐるのではない...
述の省略された述語或は主語とは認められない。換言すれば、...
味に於いても、文或は文の一部とは云へないのである。それな...
廣告。」までは、何と解すべきであらうか。それは、この作者...
次々に語として表現したのであるから、それは、語の羅列に過...
論の總論にも述べたやうに、語は、文より歸納されたものとし...
が一の單位として扱はれると同樣に、語もまた言語の一單位と...
するものであることを示すのである。
2S3
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第四章文章論
2S4
總説
文章研究が、文法學上の一單位として、その一領域を占める...
二 文の集合と文章
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第四章 交章論
文の集合が決して文章にならないことは明かである。一日の...
書或は日記の記事のやうなものと、漱石の草枕や午家物語のや...
あるとは考へられない。前者は單なる文の集合であるのに對し...
一された全體である。文の性質が、語の集合として理解するこ...
の性質が文の集合として、或は語の推積として論明することは...
文章は文の説明原理とは別の原理を以て説明されなければなら...
ことは、常識的にも大體想像されることであつて、我々が文章...
題を問題にし、結論を尋ね、或はその結構、布畳の如何を問題...
丈以上のものであることを常識的に認定してゐるためである。...
章の性質を文によつて説明しようとし、或は語によつて規定し...
が、文法學において正當な位置を要求されてゐないことにもよ...
て物を、その究極の構成要素によつて説明し、説明することが...
方によることが多いのではないかと思ふ。
285
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三文章の構造
三 文章の構造
文章はその根本において言語的表現であるから、文章の性質...
言語としての性質を持つものであることが確認されなければな...
は、これを音樂的表現、繪書的表現、彫刻的表現などと對比す...
特質を把握することが出來る。云ふまでもなく、言語は、それ...
とにおいて、著しく音樂的表現に類似し、繪書、彫刻などと相...
表現においても同樣であるが、特に文章表現において著[しく目...
間的な流動展開といふことが、文章の性質を規定する重要な點...
の文章研究において、ややもすれば看過されて居たことである...
比較され、平面的構造、或は空間的構造のものとして理解され...
て分析されることが多かつた。作文を意味する○○といふ語にも...
な文章觀が反映してゐるのではないかと思ふ。
286
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第四簟女章論
このことは、藝術的な文章の觀察において著しく現れて來るや...
其體的な例を以て説明するならば、ある一の文章が藝術的で...
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三文章の構造
れることと、對照をなすものである。文章に於ける右のやうな...
288
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四 文章の成分
第四章文章論
文の成分が、個々の單語でなくして、格と云はれるものであ...
289
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五 文章論と語論との關係
文章の直接の成分的要素は、文でもなく、語でもないが、文...
290
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第四章文章論
代名詞についても同様なことが云へる。文論の範圍では、代...
291
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六 その他の諸問題
(一) 文を如何なる基準によつて分類するかの問題と同樣に...
(二) 語論においても、文論においても、これを歴史的に考...
(三) 文章論は、文章の類型を求め、一般法則を抽象するこ...
(四) 音樂に於いて、テンポが表現效果に重要な關係がある...
292
---------------------[End of Page 306]---------------------
れる。短い文の連續は、思想の急速度の轉換を意味し、そこに...
(五) 文體の問題も、文章研究に於いてはじめて取上げるこ...
(六) 繪畫が、歴史的物語をそのままに描出すことが出來な...
(七) 文論に於いて、主體的表現と客體的表現とを論じたや...
文章論については、なほ多くの課題が考へられるであらうが...
293
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索引
あ
あげく(形式名詞)92
あげる 97
あける(形式動詞)97
あそばす(形式動詞)98
脚結《あゆひ》抄 104
あり 93,121,18
あり(指定の助動詞)188
ある(形式動詞)94,126
ある(──日) 136
或は 173
安藤正次 13
あんな 138
い
意志及び推量の助動詞 202
已然形 106
いたす 97
一語文(sentence equivalent) 233
一囘過程の表現 50
ゐる 94
入子《いれこ》型構造 246,251,252
いはゆる 138
う
う(意志及び推量の助動詞) 202
受身 116
──の接尾語 117,160
──の動詞を作る接尾語 117
動くてには 18|1
打消の助動詞 191,194,197
うへ(形式名詞)92
お
お(接頭語) 151
を(格を表はす助詞) 220
恐らく 144,148
おほかた 145,148
大きな 138
大概文彦 28,32
及び 173
和蘭字典文典の譯述起原 28
をり (形式名詞) 92
音聲 18,19
音聲言語 86
音便形 108
か
か(感動を表はす助詞)227
か(限定を表はす助詞) 222
が(格を表はす助詞)219
が(接續を表はす助詞) 167, 226
が(接續詞) 176
概念 73,231
概念化 60
概念過程 60
概念的 240
か行變格活用 111,113
格 66,135,140,162,262
一を表はす助詞 219
かくて 291
確認 201
過去及び完了の助動詞 198
かしら(感動を表はす助詞) 227
かた(接尾語) 156
がた(接尾語) 156
がたい(接尾語)158
かつ(接續詞) 163,167,174,176
活語斷續譜 100
活用 99,125,216
一の種類 109
活用形 104,140
─(形容詞の) 126
活用表 100
假定形 106,107,127
過程的言語觀 17
假定的陳述 148
がてら(接尾語)156
可能 118
──を表はす接尾語 118, 160
がましい(接尾語) 158
上一段活用 110,111,113
から(格を表はす助詞)220
から(接續を表はす助詞)226
がる(接尾語) 153,158
かん(間,形式名詞)92
關係 81
關係概念 74,75,76,81,291
關係語 58
漢語 71,155
觀察的立場 19
感歎詞 178
間投詞 178
感動詞 62,178,245
觀念語 58
き
木枝檜一 89
聞手 18,73,81
起句 289
技術 19
既然形 106
きつと 147
客觀的 199,201,207,278
客語 114,267
客體化 60,62,66,256
客體界 66,232,240,241
客體的 179,217,231,262,278
客體的概念的表現 66,246
客體的表現 242
きり(限定を表はす助詞)223
きる(接尾語) 158
切字《きれじ》 239
く
句 246,247,253
句切れ 247,255
具體的思想 182,232,241
具體的思想表現 66,162,231
くださる(形式動詞)97
ぐらゐ 223
け
げ(接尾語)154,156
形式動詞 89
形式名詞 70,89
形式用言 93
敬讓 120
──を表はす接尾語120,160
──の助動詞 210
形容詞 29,98,125,137,142,161
──的修飾語 31,141
──的代名詞 78
──の語幹 127
形容動詞 54,70,128
結句 289
決して 144,147
けれど(接續を表はす助詞) 226
けれど(も)(接續詞) 176
けれども(接續詞) 167,174
けれども(接續を表はす助詞) 226
けん(件,形式名詞)92
言語 17,18
──に於ける單位 14,20
──の成立條件 18,81
──の本質 14,20
──の要素 15
言語過程觀 17,45
言語構成觀 15,57
言語主體 18,44,73,240
言語的表現の特質 286
言語本質觀 14
現代かなづかい 8,37
限定を表はす助詞 221
こ
こ(接頭語) 151
ご(接頭語) 152
語 21,44
──の構造 49
──の認定 54
──の分類 56
口語文法の教授4
──の研究 3
合成語 52
構成的言語觀 15,18,19
構成要素 154
語幹 102,127
語形の變化 68,71,99
心の聲 62
ございます(敬譲の助動詞) 210
語辭體語 32
五十音圖 35,110
語辭用言 32
こそ(限定を表はす助詞) 223
こと(感動を表はす助詞) 228
こと(形式名詞) 92
事柄 66,81,162,166,217,219,256
この 138
語尾 102,127
これ 291
コンジュゲイション(conjugation) 99
こんな 138
コンプリメント(complement) 271
コンポジション(composition) 286
さ
さ(感動を表はす助詞) 228
さ(接尾語) 154,156
さう(接尾語) 154,156
さへ(限定を表はす助詞) 222
さ行變格活用 111,113
佐久間鼎 75,84,146
指す語 83,84,85
させる(助動詞) 181
させる(接尾語) 123,158
さて(接續詞)176
さま(接尾語) 156
さらに(接續詞) 176
さらば(接續詞)176
去る 138
ざる(打消の助動詞)196
されば 291
し
し(接續を表はす助詞) 167, 226
詞 56,62,65,165,240,241,243
──と辭との意味的關係 240
辭 32,56,62,146,161,181,240, 241,243
──の根本的意義 217
しい(い)(接尾語) 158
使役 123
──の接尾語 160
しか(限定を表はす助詞) 223
しかし(接續詞) 163,167,176
しかしながら(接續詞) 176
しかるに(接續詞) 176
時間的流動 286
次元の相違 63
指示代名詞 74
自然可能 119
──を表はす接尾語 119
思想 18
──の展開 175
思想傳逹の形式 18
したがつて(接續詞) 176
實質用言 93
實踐的行爲 19
指定の助動詞 131,134,183,188
自動詞 114
しな(接尾語)156
しない(打消)194
自發 119
──を表はす接尾語 119
事物 74
事物的概念 76
じみる(接尾語) 159
下一段活用 111,113
終止形 106,127
修飾語 170
──と被修飾語との關係 275
修飾語格 272
修飾的陳連 137,139,260
主觀客觀の總合的な表現 278
主觀的な 278
──情意 61
主客の合一 233
主語 170,230,266
主語格 263
主體 66
主體的意識 47,54,55
主體的立場 19,47,234
主體的な 231,262
──感情 179
主體的表現 242
述語 170,230,266
述語格 263,267
述語と主語との關係 266
承句 289
助詞 32,58,62,168,216,238
助數詞 155
助動詞 32,62,168,181,237
す
す(接頭語) 150
す(接尾語) 123,159
ず(打消の助動詞)194
推量の助動詞 204,206,209
數詞 91
すこし 143
鈴木朖 60,62,84,100,243
すつ(接頭語) 151
ずつと 143
すでに 138
すなはち(接續詞) 176
する(形式動詞) 95
すると(接續詞) 168,176
せ
靜辭 32,216
接辭 149
接續 173
接續を表はす助詞 165,224
接續詞 62,65,162,290
接頭語 71,149
接尾語 71,90,94,114,128,149,181,199
せる(助動詞) 181
せる(接尾語) 123
ぜん(接頭語)152
前置詞 65
そ
そ(感動を表はす助詞) 228
そうして(接續詞) 176
そうすると(接續詞) 176
屬性的概念 75
そこで(接續詞)176
そして(接續詞)174,176,291
その 138
そのうへ(接續詞) 176
そのくせ(接續詞)176
そもそも(接續詞)176
それから(接續詞)172,176,291
それだから(接續詞)176
それで(接續詞) 168
それで(も)(接續詞)176
それどころか(接續詞) 176
それとも(接續詞) 176
それなら(接續詞)176
それに(接續詞) 176
それ故(接續詞) 176
た
た(過去及び完了の助動詞) 198,199,201
た(助動詞) 107
一た(連體詞) 138,148,157,199
だ(過去及び完了の助動詞) 201
だ(指定の助動詞) 107,129,131,134,183,187,237,280
たい(接尾語)155,159
體 67
髄言 30,66,75,127,131,142,144,160,165,257
體言的代名詞 76
對象語格 276
大暦 142
だいぶん 143
代名詞 34,72,82,138,161,170
──の遠稱 75
──の近稱 75
──の中稱 75
代名詞分類表 80
だが(接續詞) 168,176
だから(接續詞) 176
たがる(接尾語) 153,159
だけ(限定を表はす助詞)223
だけど(接續詞)176
だす(接尾語)159
ただ(接續詞)176
ただし(接續詞)176
たち(接尾語) 157
だつ(接尾語)159
だつたら(接續詞)176
だつて(接續詞)176
他動詞 114
だの(限定を表はす助詞)223
だのに(接續詞)176
たび(度)91
多分 145
たまふ(給ふ,形式動詞)98
ため(爲)91
たら(過去及び完了の助詞) 198
だらう(指定の助動詞) 189
だらう(推量の助動詞) 148,186,204
だらけ(接尾語) 157
たり(指定の助動詞) 188
たり(限定を表推す助詞)223
たる(連體詞の)129
たる(過去及び完了の助動詞) 198
たる(指定の助動詞) 186
單位 14,20,22,26,44
單語 16,21,26,46
断じて 146,148
断續 100
ち
直接的表現 162,219
陳述 55,101,135,147,216,256
──と陳述との關係 224
──の副詞 144
つ
ついては(接續詞) 177
つぎに(接續詞)177
つく(接尾語) 159
つける(接尾語)159
つつ(接續を表はす助詞)226
つつ(限定を表はす助詞)223
て
て(接續を表はす助詞) 174, 226
て(接尾語)157
で(格を表はす助詞)220
で(指定の助動詞) 131,134,174,183
で(接續詞)177
であらう 186
である 134
でございます(敬讓の助動詞) 133,134,210
でしたら(接續詞)177
です(敬譲の助動詞)133,134,210
ですが(接續詞)177
でせう(想像・推量の辭)148
でなく(打消の助動詞)192
てにをは 32,58
てには 32,56
|手爾葉《てには》大概抄 56
では(接續詞) 177
ても(接續を表はす助詞)226
でも(限定を表はす助詞)223
でも(接續詞)177
てん(點,形式名詞)92
轉句 289
天秤型統一形式 237,261
テンポ 292
と
と(接續詞)169,177
と(指定の助動詞)183
と(格を表はす助詞)220
と(接續を表はす助詞)226
とある 186
どうか 148
動詞 98,135,169
重力辭 32
東條義門 68
どうぞ 148
獨立語格 280
獨立する語 59
ところ(形式名詞)93
ところが(接續詞)177
ところで(接續詞)177
とする 186
とても 148
とはいふものの(接續詞) 177
とも(感動を表はす助詞)228
ども(接尾語) 157
とんだ 138
な
な(指定の助動詞) 101,107,183,187
な(感動を表はす助詞) 228
なあ(感動を表はす助詞)228
ない(打消の助動詞)191,193
ない(否定の)148
ながら(接續を表はす助詞) 226
ながら(接尾語) 157
なす(形式動詞)97
なす(接尾語) 159
など(限定を表はす助詞) 223
|靡《なびき》 104
なほ(接續詞)165,177
なほ(副詞) 165
なみ(接尾語) 157
なら(指定の助動詞) 131,183, 187
ならびに(接續詞)177
なり(限定を表はす助詞)223
なり(指定の助動詞)188
に
に(格を表はす助詞)220
に(指定の助動詞) 131,132,18
日本文法學の目的 1
日本文法學の由來1
人稱代名詞 72
ぬ
ぬ(打消の助動詞)128,193
ぬ(ん)(打消の助動詞) 194
ね
ね(打消の助動詞)194
ね(感動を表はす助詞)288
ねえ(感動を表はす助詞) 288
の
の(形式名詞)92
の(格を表はす助詞)220
1の(感動を表は鋤詞)228
1の(指定の助動詞) 107,137, 183,187
ので(接續を表はす助詞)226
のに(接續を表はす助詞)226
は
は(格を表はす助詞)219
は(限定を表はす助詞)222
ば(接續を表はす助詞)226
ばかり(限定を表はす助詞) 222
橋本進吉 3,12,16,33,34,59,129,142,252
場所 74
はず(筈,形式名詞)91
派生語(動詞の一) 114
はた(接續詞)177
はたらく 6|7
はなしかはつて(接續詞)177
話手 18,73,81
──の感情 178
──の立場 162,164,166,181,182,217
ばむ(接尾語)159
パラグラフ (paragraph) 253
ひ
ひく(ひつ(接頭語)151
表現 17,18
表現過程 17
表現される事柄 81
表現性の相違 94,246
表現の主體18
ひらく 6|7
賓語 270
品詞 56
ふ
ふ(接頭語)151
ぶ(接頭語) 152
不完全動詞 91
不完全名詞 91
複合語 52,53,121,127
複合動詞 118,121
複語尾 33
副詞 135,161
副詞的修飾語 141,165,171
副詞的接續詞 173
副詞的代名詞 79,161
冨士谷成章 104
附屬語 216
附屬する語 59
ぶつ(接頭語) 151
不定稱 75
ぶる(接尾語)159
フレイズ(phrase)256
プレディケイト(predicate) 271
風呂敷型統一形式 261
文 21,239
──の完結性 238
──の構成要素170
──の集合 284
──の職能 141
──の性質 230
──の成分と格 262
──の統一性234
文章 21,170,284
──の藝術性288
──の藝術的價値
──の構造 286
──の成分 162,289
──の美 287
──の分類 292
──の歴史的研究 292
文章論 284,292
一と語論 290
文節 16,33,34,47,59,217,245,252
丈和當のもの(sentence equiva]ent) 179
文法 12
文法學の對象 11,24
文法用岳 27
ヘ
へ(絡を表はす助詞)220
べい(推量の助動詞・方言) 209
べし(推量の助動詞)209
變格活用 111
ほ
方角 74
補語 96,268
補助用言 134
|發句《ほつく》 255
ほど(限定を表はす助詞) 223
ま
ま(接頭語) 151
まい(打消の助動詞)197
まうす(申す,形式動詞)98
ます(敬讓の助動詞)210
また(助詞) 166
また(接續詞)163,165,166,177
また(副詞) 165
または(接續詞) 177
まつ(接頭語) 151
まで(格を表はす助詞)220
まで(限定を表はす助詞)224
まま(形式名詞)91
み
み(接頭語) 157
未然形 106,126
む
無論 146
め
め(接尾語)157
名詞 66,69,75,132
──的代名詞 76,τ61
命令形 106,107,148
めく(接尾語) 153,159
も
も(限定を表はす助詞)222
目的意識 19
目的語(object)114
もし 144,148
勿論 146
もつと 143
もつとも(接續詞) 177
もと(接尾語)157
本居宣長 62,100
もの(形式名詞)92
ものか(感動を表はす助詞) 228
もらふ(形式動詞)97
もんか(感動を表はす助詞)228
丈字 18,19
丈字言語 86
や
や(限定を表はす助詞)222
や(感動を表はす助詞) 228
や(接尾語) 157
やう (接尾語) 157
やう(形式名詞)92
山田孝雄 12,26,33,44,57,67,68,90,93,153,171,180,199,257
やら(限定を表はす助詞) 223
やる(形式動詞) 97
ゆ
ゆえ(ゆゑ,形式名詞) 92
ゆゑ(形式名詞) 92
ゆゑに(接續詞) 177
湯澤幸吉郎 96
よ
よ(感動を表はす助詞)227
よう(意志及び推量の助動詞) 202
よう(やう,形式名詞) 92
よう(やう,接尾語) 157
用 67
用語 30,66,69,98,160,257
──の陳述性 236
要素 15
よし(由,形式名詞) 93
四段活用 111,113
よつて(接續詞) 177
より(格を表はす助詞) 220
ら
らしい(接尾語) 159,207
らしい(推量の助動詞) 206
られる(助動詞) 181
られる(接尾語) 117,118,120,159,181
り
理解過程 17
理解の主體 18
零記號 101
──の陳述 140,145,147,175,182,214,234,236,259
れ
歴史研究 86
歴史的假名づかひ 39
れる (助動詞) 181
れる (接尾語) 117,118,120,159
連體形 106,127
連體詞 31,129,135,149,161,199
一的代名詞 78,138,161
連體修飾語 77,81,95,136,141
連體修飾的陳述 101
連用形 106,126
連用修飾語 79,95,133,136,141
連用修飾的陳述 101,140
連用中止法 174,175
ろ
ろ(感動を表はす助詞)228
わ
わ(感動を表はす助詞) 228
わけ(譯,形式名詞) 92
わづか 143
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時枝誠記
1900年東京に生る.
1925年東大文学部卒業,国語学を
専攻,東大名誉教授,文学博士.
著書:「国語学史」「国語学原論」
「国語研究法」「国語問題と国語教育」「日本文法文語篇」
日本文法口語篇
岩波全書114
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