肥爪周二「ハ行子音をめぐる四種の「有声化」」
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肥爪周二
「[[ハ行子音]]をめぐる四種の「有声化」」
茨城大学人文学部紀要 人文学科論集 37
pp.97-118
2002
①連濁、②連声濁、③ハ行転呼音、④ɦ音化
http://ci.nii.ac.jp/naid/110000108392
// <!--
// 肥爪周二「ハ行子音をめぐる四種の「有声化」」
//
// 序
// 前稿「日本韻学用語攷(一)1清濁 」(本論集33号、二〇〇
// 〇.三)においては、日本の伝統的な韻学用語である「清音」...
// 音」「半濁音」に関係する概念・術語の用法の考察を行った...
// は、江戸時代以前の音分類意識の多様性を示すことに主要な...
// あり、紙幅にも制約があったため、明治以降の清濁に関わる...
// ついては、必要に応じて簡単に紹介するにとどまり、積極的...
// らの適否を評価し、私見を述べることはしなかった。また、...
// 関わる諸現象については説明を省いたものも多いし、多岐に...
// 問題相互の関連にも立ち入らなかった。そこで、本稿では、...
// 問題が交錯するハ行子音の「有声化」の問題にしぼって、前...
// れた諸現象のうちのいくつかを、日本語史の流れの中で捉え...
// とを目指し、その過程で、濁音および連濁の起源について、...
// はやや異なる解釈を提出する。
// なお、本稿でも、前稿と同様に「清音」「濁音」等の伝統...
// を積極的に用いることにする。「清音」「濁音」はモーラを...
// る呼称とし、頭子音のみを問題にするときは、「清子音」「...
// と呼ぶ。日本語の清濁を「無声/有声」と単純に言い換えた...
// 子音を「有声阻害音」と括ったりするのは、多くの但し書き...
// であり、かえって煩雑であるし、さらに、方言や凵本語史に...
// 広げれば、こうした言い換えそのものが不適切なものである...
// 明である。その意味で、本稿のタイトルにおいて「有声化」...
// 表現を用いたのは本意でないし、明らかに誤りを含んでいる...
// 稿の考察対象となっている諸現象を、一括して的確に表現す...
// は存在しないので、便宜的に鉤括弧付きの「有声化」という...
// 採用した。
// さて、ここでいう四種の有声化とは、①連濁、②連声濁、③...
// ①連濁 とは、「ひし+かた↓ひしが.た」「こ+さる↓こ瀏る」...
// み+たな↓かみだな」のように、主に後項が和語である複...
// において、後項の初頭が濁音化する現象である。ハ行音...
// る例としては、「むぎ+はたけ↓むぎばたけ」「ね+ひき↓...
// き」などがある。
// 九七
// ◎2002 茨城大学人文学部(人文学部紀要)
// 106]
// ---------------------[End of Page 27]-----------------...
// ②連声濁 には二つの現象が含まれる。一つは「かぎて↓かい
// で」「とびて↓とん.で」「わらぐつ↓わらうつ」のような...
// に後接する清音の濁音化現象である。ハ行音が関わる例と...
// は、「かがふる↓か調る」「かぐはし↓かう圃し」などがあ...
// もう一つは、「ヘン+ケ↓ヘンゲ(変化)」「ワウ+シ↓ワウジ
// (皇子)」「カム+す↓カム(感)ず」のような、漢字音の鼻音韻
// 尾に後接する清音の濁音化である。ハ行音が関わる例として
// は、「サム+ヒヤク↓サムビャク(三百)」「コウ+ホフ↓コウ
// 剥フ(弘法)」などがある。これらの二つの現象は、鼻音に後
// 接する清音の濁立日化として一括することができるので、...
// 「連声濁」と呼ぶことにする。
// ③ハ行転呼音とは、「いは↓いわ」「かふ↓かう」のように、語
// 中語尾のハ行子音がワ行音化した現象で、凵本語史上の重...
// 出来事の一つである。十一世紀初頭ごろから一般化したと...
// られている。
// ④昼音化とは、「おはよう」[。量9】・「ゴハン」[O。コ9三...
// に、母音間のハ行子音が有声化する現象であり、現代共通...
// おいてもしばしば見られる。
// これらの現象が日本語に登場したのは、①↓④の順であると...
// られるが、本稿では、時代をさかのぼる形で、④↓①の順で考...
// てゆく。
// 一.H音化
// 九八
// このH音化現象の語例として、音声学の概説書では「は.ば,
// ...
// 【冨留】」「お國よう【O⑦包Ω]」「ゴ刈ン[㊤O諭9・三」「...
// つ
// などが挙げられている。いずれも語の意味の区別に関わらな...
// 声レベルでの変異である。
// 平安時代にハ行転呼現象が生じ、語頭および複合語の後項...
// 以外のハ行音がワ行音化した結果、現代語において、ハ行音...
// 著な位置制限が存在する。つまり、語頭・複合語の後項の初...
// にハ行音が現れるのは、「うはうは」「のほほん」のような...
// ペや、「アロハシャッ」「コーヒー」「カフス」のような外...
// 原則として限定されるのである。和語においても、「はは(...
// ほ(頬)」「あふれる」「あひる」「やはり」のような例があ...
// れらは個別の事情によるもので、説明可能な例外である。
// 昼音化の例としてしばしば挙げられる「おはよう」「ゴハ...
// ヘンジ」は、それぞれ「お+はよう」「ゴ+ハン」「ゴ+ヘン...
// 分析できる複合語である。これらの語に且音化が生じるのは...
// 語構成意識がゆるんだからであると解釈できる。つまり、「...
// らい」「まひる」「コウハク(紅白)」のような、十分語構成...
// 保たれている複合語では、このn音化は起こりにくいのであ...
// ある程度の速度をもって、ぞんざいに発音すれば、これらの...
// 複合語においても、この6音化が起こりうることは、すでに...
// コ
// れているところである。
// [105]
// ---------------------[End of Page 28]-----------------...
// この且音化が起こる位置は、連濁現象において清子音が濁...
// 変わる位置とほとんど共通するし、有声化した方が熟合度が...
// いう意味でも、連濁現象とよく似ている。しかし、連濁は語...
// 識のゆるみを前提とはしない現象であるし、後項に濁音が含...
// いる場合には連濁が起こらないというライマンの法則(後述)...
// この行音化には適用されない。むしろ前後の母音の広さの方...
// 音化に影響しやすいであろう。このn音化と連濁とは、かな...
// の異なる現象なのである。
// ニ ハ行転呼音
// ハ行転呼現象は、現代語の共時分析においては、ほとんど...
// されることはない。しかし、「買わない〜買って」「会わな...
// て」のように、ワ行五段活用の動詞が促音便をとることは、...
// がハ行四段活用に由来することを考慮しなければ、合理的に...
// きないであろうし、「あわれ/あっぱれ」「さわやか/さっぱ...
// クワ(六羽)/ロッパ(六羽)」のようなワ行・バ行にまたがる...
// 対応も、ハ行転呼現象を考慮に入れないと、うまく結びつけ...
// いであろう。「合同(ゴウドウ)/合唱(ガッショウ)」「雑巾(...
// ン)/雑誌(ザッシ)」のような対応も、「ガフ〉ガウ」「ザフ...
// ウ」などの「フ入声」におけるハ行転呼現象が関与している...
// 語においても、ハ行転呼現象が起こる以前の、非転呼形の痕...
// 所に残っているのであって、現代語を十分に理解するために...
// 「ハ行子音をめぐる四種の「有声化」」
// の歴史的変化をまったく考慮に入れないわけにはいかないの...
// る。
// 前稿で整理したように、ハ行転呼音が生じた音声的経緯に...
// は、大きく分けて二つの解釈がある。
// 一つの解釈は、母音に挟まれたハ行子音[-合山が、前後の...
// もう一つの解釈は、当時の清子音・濁子音の対立が、「無...
// 古代日本語の響が前鼻音を伴っていたことは動かない事実で...
// 九九
// ---------------------[End of Page 29]-----------------...
// 肥爪 周二
// ムっこ
// ろう。それをさらに推し進め、清子音が母音間で有声的であ...
// しかし、この早田説とハ行転呼現象とを直接結びつけるに...
// どちらの解釈によっても、ハ行転呼現象は「ハ行子音の母...
// 次に、ハ行転呼現象が起こる位置を確認しておく。
// 通常、ハ行転呼音は、「語中語尾」のハ行音のワ行音化で...
// ---------------------[End of Page 30]-----------------...
// ハ行転呼現象は、一種の調音のゆるみであるわけだが、例...
// 音節+2音節の複合語「○<・○<+○<・Q〈」を考えた場A冂、ハ
// 行転呼現象の起こる位置を手がかりに、調音のゆるみやすさ...
// みが生じる序列)を考えると、「ρ・P>∩どということになろ...
// この序列は、前節のH音化にも適用可能なものである。
// ところで、しばしば指摘されているように、「ワ行音はも...
// 語頭以外に現れることが少なかったため、ハ行転呼現象が生...
// とによって語の区別に混乱が生じることがほとんどなく、こ...
// がスムーズに進行した」ということはたしかに言えよう。し...
// それはあくまで変化を受け入れる側の問題であって、語頭以...
// 行音が「空き間」に近い状態であったこと自体が、ハ行転呼...
// 引き起こす動因にはならないのは当然のことである。変化を...
// こす圧力が十分に強ければ、…機能負担量の大きな対立も解...
// るというのが筆者の見通しである。例えば、琉球方言には、...
// 一、♂〉⊆という狭母音化による、五母音の三母立日化が広く...
// る。げ翼一、♂翼⊆の機能負担量が小さかったとはとうてい思...
// いが、文脈や常識による判断の他、子音の調整・アクセント...
// 整・接辞による語形補強・言い換えなど、さまざまな手段を...
// て、情報伝達に際して生じる不都合を回避したのである。音...
// 究においては、「言い換え」はあまり重視されないが、この...
// 換え」は大きな音韻変化を乗り切るにはかなり有効な手段で...
// 腹話術師が、バ行・バ行・マ行の音(多くの人は、口を動か...
// 「ハ行子音をめぐる四種の「有声化」L
// 近似の音を出すことができない)を使わず、言い換え(ママ↓...
// んなど)によって二れらの音を回避していても、観客はまっ...
// れに気づかないものである。日本語に℃〉一、σVO、∋〉=のよ
// うな変化が起こったとしても、それほどは不都合が生じない...
// ないかとさえ思える。
// いずれにしても、言語とは、多少無理な変化をも受け入れ...
// の柔軟性を持ったものであり、言語の側にも、変化の進行に...
// て、さまざまな手段によって当該対立の機能負担量を減らし...
// という面もあるのではないだろうか。
// 三・○ 連声濁
// ここで「連声濁」として一括するものは、大きく二つに分...
// とができる。一つは「とびて〉とんで(飛)」「かりびと〉か...
// 剖(狩人)」のような、和語の音便にともなう清音の濁音化であ
// り、もう一つは「サムボン(三本)」「レンゲ(蓮華)」「ショ...
// 死)」のような、漢字音の鼻音韻尾に後接するという条件下...
// 音の濁音化である。いずれも「鼻音+清音」が「(鼻音+)濁音」
// に変化する現象として捉えることができ、日本語において生...
// 音韻現象であったのも同じ時期と考えられる。
// 一〇一
// [102)
// ---------------------[End of Page 31]-----------------...
// 肥爪 周二
// 三・
// 音便に伴う連声濁
// この現象は、現代語においても、五段活用動詞の連用形に、
// 「て」・助動詞「た」が接続した場合に、規則的に現れる。
// 書きて〉書いて
// 継ぎて〉継いで
// 立ちて〉立って
// 死にてV死んで
// 買ひて〉買うて
// 呼びて〉呼んで
// 読みて〉読んで
// 取りて〉取って
// (買つて)
// (呼うで)
// (読うで)
// 助詞
// 一見して明らかなように、音便拍が濁音あるいは鼻音行(...
// ナ行音)に由来するときに、後続の「て」「た」が濁音化す...
// じようにイ音便であっても、「書いて」は濁らず、「継いで...
// る、というその違いは、まさに来源の清濁に対応している。...
// は、この現象(連声濁)が生産的であった時期に、日本語の濁...
// は前鼻音が伴われており、それが濁音を特徴づける重要な要...
// あったからである。だからこそ、「鼻音+清音」は、ほぼ規...
// 「(鼻音+)濁音」に転じたと考えられるのである。イ音便・...
// は、現代共通語ではいずれも鼻音性を欠いているが、濁音・...
// 一〇二
// に由来するイ音便・ウ音便は、古くは「つぎて〉ついで ㎝
// 冒己o]」、「よみてVようでロo&①]」のように、鼻音性を帯...
// いた(鼻母音であった)。
// 上記の五段活用動詞の音便以外でも、「あきびとVあきう...
// 人)」「いかにか〉いかが」「ふみて(文手)〉ふで(筆)」「...
// 〉わらうつ(藁靴)」「かみつけ(上つ毛)〉かうづけ(上野)」...
// うな語彙にその例を拾うことができる。いずれの場合も、音...
// 濁音あるいは鼻音行に由来するという点で一貫している。し...
// 動詞の音便形とは異なり、これらの語の場合は散発的に生じ...
// であり、体系性を利用して原形に復することが不可能である...
// 音便および連声濁によって語構成が不透明になるという性質...
// る。
// この音便に伴う濁音化には、ハ行音のバ行音化の例もある。
// かがふる〉かぶる・かうぶる
// かぐはし〉かうばし
// おもほす〉おぼす
// ときには〉ときんば
// たまふ〉たぶ・たうぶ
// のたまはく〉のたばく・のたうばく
// ?くぐひVくび
// ---------------------[End of Page 32]-----------------...
// 匳匪 、
// ぎFし
// ハ行音の濁音化が関与してくるのは、いずれも散発的に起...
// 便現象であり、やはり語構成が不透明になっているという共...
// ある。
// この音便に伴う濁音化現象は、現代語においても、五段動...
// 用形に「て」「た」が接続して音便形をとる場合、動詞に「...
// (〈つみ)」「ふん(〈ふみ)」等、撥音で終わる接頭辞がつく...
// ど、ある程度は生産性をもっているように見える。しかし、...
// で、それは過去の音韻現象が特定の語群に残した痕跡に過ぎ...
// であり、もはや現代語では「鼻音+清音」が「(鼻音+)濁音」に
// 規則的に転じることはない。現代語では、「あなた〉あんた...
// みのところVきみんところ」「まけぬき〉まけんき」「しら...
// 〉しらんぷり」のように、音便によって生じた鼻音が、後続...
// を濁音化しないのが原則なのである。
// 三・二 鼻音韻尾に伴う連声濁
// ここでは、漢字音の鼻音韻尾が後続の清音を濁音化する現...
// 濁)を扱う。漢字音の鼻音韻尾は、日本漢字音で「〜ン」「...
// で現れるほか、喉内鼻音韻尾めは「〜ウ」「〜イ」で現れる...
// 鼻音韻尾に由来する「〜ウ」「〜イ」は、母音韻尾-⊆・亠に...
// る「〜ウ」「〜イ」とは異なり、かつては鼻音性を有してい...
// 母音であった)ので、やはり後続の清音を濁音化する力を持...
// 「ハ行子音をめぐる四種の「有声化」」
// たのである。この濁音化規則は、字音の熟語のみではなく、
// 詞「す」を後続ぎせるときにも適用される。
// ヘン+ケ↓ヘンゲ(変化)
// サム+ヒヤク↓サムビヤク(三百)
// ワウ+シ↓ワウジ(皇子)
// コウ+ホフ↓コウボブ(弘法)
// カム+す↓カム(感)引
// シヤウ+す↓シヤウ(生)ず
// メイ+す↓メイ(命)引
// サ変動
// しかし、和語の立日便によって生じた鼻音が、ほぼ規則的...
// 音を濁音化させたのに対し、この漢字立日の鼻音韻尾による...
// は、それほど絶対的なものではなかったようである。『日葡...
// に「安心(アンジン)」「根本(コンボン)」「空中(クウヂウ)...
// (ヤウジ)」「晴天(セイデン)」のような、現在では濁らなく...
// る語例がかなり見られるところから、さらに時代が遡れば、...
// 尾に後続するという条件下では、規則的にこの濁音化が起こ...
// たと推定されることもあるのだが、現実には、そのような証...
// 在しない。加えて、呉音系字音に比べて、漢音系字音では連...
// ハ ソ
// 起こりにくかったという指摘もある。そもそも、呉音系字音...
// 漢音系字音にせよ、日常的に使われる語もあれば、書物の上...
// 的に学ばれる語もあって当然であるので・連声濁という日本...
// 一〇三
// ---------------------[End of Page 33]-----------------...
// 肥爪 周二
// 音変化が、すべての字音語に及ぶわけはないのである。
// しかし、鼻音韻尾による濁音化が、かなり広範に見られた...
// のは事実である。そして、時代とともにこの濁音化が抑制さ...
// いったのは、冂本語の濁音の弁別特徴が、鼻音性から有声性...
// 行していったからと説明されることになろう。
// 四・○ 連濁
// ここでいう連濁とは、「ひし+かた↓ひしがた」「こ+さる↓...
// る」「かみ+たな↓かみだな」「むぎ+はたけ↓むぎばたけ」の...
// に、主に後項が和語である複合語において、後項の初頭の清...
// 濁子音化する現象のことである。「キク(菊)」「トク(得)」...
// 「カッパ」「キセル」などのような、字音語や外来語が後項...
// 合語にもこの現象がおよぶことがある。ハ行音の場合、現代...
// いて清子音と濁子音の対立が、\ミ"ミという形で現れ、単...
// 声/有声」では捉えられない対応を示す。これは、日本語の...
// 音が歴史的に大きく変化してきたことによるもので、連濁現...
// こった当時の(語頭の)ハ行子音は、\℃丶[℃]であったと推定...
// この連濁現象には、さまざまな不可解な点があるため、早...
// 多くの日本語話者や凵本語研究者の興味を引いてきた。すな...
// 同じような構成の複合語であっても、連濁を起こす場合と起...
// い場合とがあるので、どのような条件下で連濁が起こるのか...
// らないのか)、という点を中心に、室町時代あたりから、さ...
// 一〇四
// 考究が行われてきたのである、
// 連濁に関わる条件については多くの研究の蓄積があり、そ...
// ハブ
// は「連濁を妨げる条件」という方向からの整理である。現在...
// 提案されている諸条件は、広く受け入れられているものから...
// ような傾向があることすら疑わしいものまでさまざまである...
// もそも例外が皆無である条件というのは一つも存在しない。...
// 本稿での論考に直接関わる条件に限定して概説しておく。
// 連濁を妨げる最も重要な規則は、「後項にあらかじめ濁音...
// れる場合には、連濁は起こらない」という、ライマンの法則...
// り
// れているものである。「はるかぜ」「ひとりたび」「すりき...
// のように連濁を起こさない多くの語例があり、「おおとかげ...
// くらべ」のように、濁音が後項の三拍目以降にある場合にも...
// れる、かなり強力な規則である。しかし、「ふでばこ」「な...
// 「ふじだな」のように、前項に濁音が含まれること自体は、...
// 妨げる条件にはならない。
// この規則は、小倉進平氏がライマン氏の論文を紹介したの...
// かけに広く知られるようになったため、現在でも「ライマン...
// 則」と呼び慣わされている。しかし、この現象はライマン以...
// 知られていたものであって、賀茂真淵の『語意考』(一七六...
// 七八九刊)や、本居宣長の『古事記伝』(一七六七年頃起稿、...
// 成、一八二二年刊行終了)にも指摘が見られる。宣長は、以...
//
// に述べている。
// [99]
// ---------------------[End of Page 34]-----------------...
// ツボキノタヨリ
// 此を濁音によむは非なり。凡て連便によりて、下ノ言の頭
// を濁るは、常多けれども、其ノ言に濁音あれば、其ノ頭は必濁
// な ヒ ヂ ヂ
// らざる例なり。此も比地の地濁音なれば、此は濁るまじき例な
// るをや(巻三 宇比地邇神・須比地邇神の条)
// さらにさかのぼって、ロドリゲス『日本大文典』(一六〇...
// 〇八)に、当時の日本人の間で「<鷲。・⊆∋o冨×冨巳αq。毎9×...
// <図。巳σqo≡(上清めば下濁る、下清めば上濁る)」という諺...
// バリ
// たことが指摘されている。「上清めば下濁る」 の例としては
// 「人々」「国々」などを挙げ、「下清めば上濁る」について...
// げられていない。詳細は不明なのであるが、これらが濁音が...
// にくいことを述べているのならば、ライマンの法則を含んで...
// 能性があり、この連濁を妨げる条件は室町時代にはすでに知...
// いたのかもしれない。
// 現在、ライマンの法則は、「(和語の)単純語中に濁音が共...
// い」という音韻規則の下位規則に位置づけられている(「単...
// ハロ
// 具体的規定には立ち入らないでおく)。「ふんじばる」(これ...
// く連声濁の例)など、若干の例外はあるものの、ほとんど異...
// い強力な規則として、日本語の音韻規則の中でも重要なもの...
// る。
// また、「おお+かさたて(9おおがさ)」「めす+しまうま(9...
// ざる)」のように、後項があらかじめ複合語である、【≧U⇔Ω...
// ハ...
// 合語の場合には連濁が起こりにくいというのも重要である。...
// 「ハ行子音をめぐる四種の「有声化」」
// は「おおぶろしき」「みみどしま」「なわばしご」のような...
// る。
// また、「山と川」の時は「やまかは」(「山の川」の時は...
// は」)、「尾とひれ」の時は「尾ひれ」(「尾のひれ」の時は...
// というように、前項と後項とが同格関係にある場合には連濁...
// らないという規則があり、これはほとんど例外がない。「五...
// の笛太鼓(ふえだいこ)」のようなものはきわめて異例である。
// また、「窓ふき/水ぶき」「爪きり/微塵ぎり」「跡とり/...
// のように、前項が後項に対して目的語相当の場合と、そうで...
// 場合とで、「非連濁/連濁」が分かれることがあるのも注意...
// ればならない。「瀬ぶみ」「人ごろし」「出足ばらい」など...
// 件には例外がかなり多いのではあるが、この条件に大きく依...
// いる連濁の起源説もあるので、連濁の起源について論じる際...
// 何らかの言及が必要であろう。
// この他にも、さまざまな条件が提案されているが、多かれ...
// れ例外が存在し、各研究者の立場によって、その例外を無視...
// 重視したりしているというのが現状である。そして、それも...
// 得ないと思われるほど、現実の連濁・非連濁の現れ方は気ま...
// で、時代差.方言差・個人差(ときに個人においてすらゆれる...
// 在し、そこから絶対的な規則を見いだすのは困難なのである。
// …〇五
// [981
// ---------------------[End of Page 35]-----------------...
// 肥爪 周二
// 四・
// 連濁の起源(山田説)
// 連濁現象の起源についての音声学的説明としては、山田孝...
// ロ
// よるものが早い。山田氏は連濁現象を同化現象の一種とみな...
// 音間において無声子音が有声化したものとする解釈を提出し...
// る。つまり、音声の側から見ると、調音のゆるみによって無...
// が有声化し、機能の側から見ると、その有声化によって語構...
// 前後が一体であることを標示する、という解釈である。
// この山田氏の同化説は、概説書の類では同様の説明を採用...
// るものもあるけれど、その後の連濁現象の起源についての研...
// いては、必ずしも受け入れられてはいない。おそらく、以下...
// なものが主要な理由であろう。
// ①「有声化」の起こる位置の不自然さ
// 2立日節+2音節の複合語、「∩一く・∩N<十∩鴇く・∩轟く」...
// えてみよう。n音化現象の場合、ρおよびρが有声化しやすく、Q
// の有声化はぞんざいな発音において現れるものであった。ハ...
// 現象の場合、無声子音が有声化するのは、ρおよびρのみであ...
// ρが有声化するとすれば、それはこの複合語の語構成が完全...
// れられ、全体が一体として発音されるときと考えられる。連...
// 調音のゆるみによる同化現象として捉える場合、基本的には...
// やハ行転呼現象と同様の振る舞いをするはずである。つまり...
// が起こる位置(○)は、複合語の各要素の内部の子音(ρおよびρ)
// 一〇六
// よりも相対的に有声化しにくい、有声化するとすれば、各要...
// 部の子音よりも後となる位置であるはずなのである。
// この連濁の起こる位置の不自然さに対して、連濁現象を母...
// おける無声子音の有声化であるという前提によりつつ、山口...
// バ
// は以下のような説明を与えた。
// 語頭以外の無声子音がやたらに有声化してしまうと、大きな混
// 乱が生じる。たとえば、カス(滓)に有声化が起こってスが濁
// 音化してしまうと、カズ(数)との区別がつかなくなるといっ
// たことが生じるからである。
// ところが、語頭に濁音が立たない状態においては、トリ
// (鳥)に対立するドリの形をもった語はあり得ないから、ヤマ
// (山)+トリ(鳥)がヤマドリになっても、混乱は生じない。そ
// こには、有声化を抑止する条件がない。すなわち、連濁は、日
// 本語に存する語頭以外の無声子音の有声化という傾向を利用し
// て、複合標示機能を果たさせたものと解せられる。
// 確かに、結果の側から見ればその通りであって、連濁現象...
// て、語の意味の区別に混乱が生じることはほとんどない。し...
// 「ワ行音はもともと語頭以外に現れることが少なかったため...
// 転呼現象が生じることによって語の区別に混乱が生じること...
// んどなかった」という事実が、ハ行転呼現象を受け入れる側...
// であるのと同様に、「後項の初頭は、濁音化しても語の意味...
// (97]
// ---------------------[End of Page 36]-----------------...
// に混乱は生じない」という事実も、変化を受け入れる側の問...
// ぎず、変化を引き起こしたり誘導したりする力はないと考え...
// のまとまりを標示する同化現象という前提と、後項の初頭の...
// 声化させるという結果の形とは、かなり隔たりのあるものと...
// るを得ない。例えば、「サト+ヒト」に由来する「サトビト...
// う音形は、アクセントなどの助けがなければ「サ/トビ/ト」...
// う語構成であるという誤解を招きかねない形式なのである。...
// させずに複合語を構成するという選択肢も存在しているのに...
// ぜ、わざわざ語構成を誤解させることになりかねない、中途...
// 有声化を起こしたのかが、同化説では十分に説明できないで...
// う。連濁の起源についての説は、この「有声化」の位置の不...
// を説明できるものであるべきである。
// ②古代語の濁音の音価の問題
// すでに言及したように、日本語の濁音が、ある時期には前...
// 伴うものであったというのはまず動かない事実である。そし...
// の時期の清濁は「非鼻音/鼻音」で対立していた蓋然性が高...
// の状態を連濁現象の発生時期まで遡らせることができるかど...
// めり
// 現在のところ不明である。しかし、清濁の弁別的特徴が、「...
// 有声」↓「非鼻音/鼻音」↓「無声/有声」というような歴史的変
// 化を経たと解するよりは、単に「非鼻音/鼻音」↓「無声/有...
// という歴史的変化を想定する方がシンプルである。そもそも...
// 音/鼻音」という状態以前に「無声/有声」という状態があっ...
// 「ハ行子音をめぐる四種の「有声化」」
// ハ り
// とを裏付ける、直接的な証拠は存在しない。むしろ、「連濁...
// 源」や「濁音の発生」を説明するために、清濁の対立を「無...
// 声」と想定している節さえある。
// ③ライマンの法則との関係
// ライマンの法則は、同一要素の隣接(あるいは近接)による...
// 上の生理的負担を避けるための「異化現象」として説明され...
// が多い。しかし、「おおとかげ」「うでくらべ」のように、...
// 拍目以降に濁音がある場合にも適用される一方で、「ふでば...
// がぐつ」「ふじだな」のように、前項が濁音で終わっている...
// は適用されないという点が問題になってくる。この事実に対...
// は、この異化現象が複合語内部の境界でブロックされると説...
// ることになろう。しかし、この強固なブロックと「調音のゆ...
// より、前項と後項を一体化させる同化現象」として連濁を捉...
// 提とは、はたして調和するのであろうか?言語現象としての...
// さを欠いた説明という印象は拭いがたい。
// ④濁音の分布制限および機能の問題
// ライマンの法則は、「単純語中に濁音が共存しない」とい...
// り抽象度の高い規則にまとめることができた。一方で、日本...
// 音が、アクセントに似た機能・性質を持っていることが亀井...
// よって指摘されて以来、さまざまな角度から、濁音のプロソ...
// ハロリ
// クな性質が考察されてきた。そして、この二つの研究の流れ...
// 〇七
// [96]
// ---------------------[End of Page 37]-----------------...
// 肥爪 周二
// ...
// 音が「卓立」…機能を持つという方向で統合されることにな...
// した濁音研究の流れの中で、濁音は「(濁子音11)有声阻害音...
// 純に括れる以上の特別な性質を持つものであるとの発想が、...
// 語学者の間に広がっていったのである。
// 連濁の起源を同化説によって説明する場合、連濁現象と従...
// されてきた日本語の濁音の特質とは、どのように有機的に関...
// られるのであろうか。
// ⑤説明困難な非連濁形の存在
// 既述したように、同化説では、「窓ふき/水ぶき」「爪き...
// ぎり」のような、語構成により非連濁・連濁の相違が出てく...
// スに対する説明がしにくい。また、「もち+て」「あか+き」...
// +つる」のような、結合度が十分に高いと考えられるのにも...
// らず、連濁を起こさないケースもある。特に係助詞「は」は...
// を起こさなかった一方で、後世にはハ行転呼することになる...
// 違いが生じた理由を同化説で説明することが可能であろうか。
// 四・二 連濁の起源(異説)
// 連濁の起源については、山田説とは異なる解釈も提出され...
// る。以下に紹介する解釈は、必ずしも、如上の研究の流れの...
// てきたわけではないが、現実の多くの言語に通じている研究...
// とっては、母音間の無声子音の有声化という素朴な説明は、...
// に受け入れがたいものであったのであろう。
// 一〇八
// ゆ
// 一つは、ライマンによって提出された解釈である。ライマ...
// 有声音が消失した時には必ず連濁が生じると説明した。具体...
// 失した有声音としては、「n」、助詞「の」、助詞「に」、...
// 詞「ん」、助詞「で」を挙げている.具体的な語例が挙げら...
// ないので推定によるが、前節で扱った連声濁に相当すると思...
// ものを除外すると、連濁が、助詞「の」「に」「で」の消失...
// 生じることがあると解釈していることになろう。
// これとは別に、村山七郎氏は、タガログ語の一一σqきおと...
// ハぬ
// て、連濁を起こす連辞ぎを想定した..この村山説とライマン...
// を受け継ぐ形で、平野尊識氏は、日本語の複合語の連濁規則...
// 成との関係を丹念に整理し、タガログ語の=σ・pεおとも対照...
// ハコね
// つ、日本語に=αq㊤8∋。(連濁素)ぎ〜dを想定した。日本語の...
// (あるいは形成)に関わる比較研究は、本稿の枠を大きく越え...
// で、ここでは、平野氏が一一αqp8ヨ。を導き出す前作業とし...
// 日本語の連濁現象について整理した部分のみを取り上げる。
// 平野氏は、連濁の起こる条件と起こらない条件を、内部構...
// いて、前項と後項との間に介在させる事のできる要素の違い...
// る口旦ハ体的には、
// 起こらない条件∵。、宀。、み・
// 起こる条件∵コ。、良、-α。〈皀8
// [95亅
// ---------------------[End of Page 38]-----------------...
// のように整理した。近年、ライマン〜平野説を積極的に再評...
// らじ
// ている、高山倫明氏の論考に従って簡略に示すと次のように...
// く。そして、何よりも、連濁の起こる位置の不自然さに対し...
// 確な説明が可能になるのである。
// 明
// ヤマ宀♀カワ↓ヤマカワ
// アトー≦♀トル↓アトトリ
// ワラー≦Oーフク↓ワラフキ
// ///
// ヤマ出㌣カワ↓ヤマガワ
// サキ良-トル↓サキドリ
// ワラ良串フク↓ワラブキ
// つまり、本節で扱っている「連濁」も、前節で扱った「連...
// と同様に、鼻音の関与した濁音化現象として捉えることにな...
// ある。
// これらの説(以下一括してライマン説と呼んでおく)には優...
// いくつかある。
// まず、「連濁/非連濁」の差を、規則的な音声現象に還元...
// ことがある。平野氏も、複合語の形成において、現実レベルで
// 「を」「と」「て」の脱落を想定しているわけではないよう...
// 単純に二つの名詞を並べるだけで複合語を形成することもあ...
// 考えるのが、諸言語の例から考えても穏当であろう(ただし...
// 場合には連濁を起こさないと考えなければならない)。する...
// 結びつけることができるような関係であっても、遡源形に「...
// 当のものがあれば連濁、なければ非連濁と説明すればよくな...
// で、連濁を決して任意の現象ではないものとして捉えられる...
// なる。また、語構成の違いによって「連濁/非連濁」の差が...
// こと(熟合度の差とは考えにくいものもあった)にも合理的な...
// 「ハ行子音をめぐる四種の「有声化」」
// ここで、このライマン説の問題点についても整理しておこ...
// まず、前項と後項の間に、助詞「の乙」を想定することに...
// 合語について言及しておく。しばしば指摘されることである...
// 代語において、助詞「の乙」はかなり柔軟な運用が許される...
// ハ
// あった。「会はむ日の形見(11次二会ウ日マデノ形見)(万葉...
// 三)」「すざく院の行がう(11朱雀院ヘノ行幸)(源氏物語・若...
// かしのちかきゆかり(11普カラノ近イ縁)(同・夕霧)」「あな...
// うそこかよふ程(1ーアチラH刀御消息ガ通ウ問)(同・夕霧)」...
// に、現代語ならば格助詞と組み合わせて用いるのが自然であ...
// なくともその方が親切である)場合にも、直接「の乙」のみ...
// し、格関係そのものの理解は、文脈や常識にゆだねられるこ...
// しくない。「露の命(万葉集・三九三三)」のような比喩用法...
// あった。つまり、後項が名詞であれば、前項と後項が同格以...
// 係にあるほとんどの場合に、「の乙」を想定することができ...
// のである。連濁するかしないかを、遡源形での助詞「の乙」...
// に求める場合、恣意的にその存在を想定できることになり、...
// しての面白みはやや減じてしまう。
// 一方、このライマン説が最も有効に機能するのは、「あと...
// さきどり」「まどふき/みずぶき」「いしけり/あしげり」の...
// に、前項が名詞、後項が他動詞の連用名詞形のときであった...
// 一〇九
// ---------------------[End of Page 39]-----------------...
// 肥爪 周二
// に対し、前項が目的語に相当するときには連濁が起こらず、...
// 「にて(〉で)」で表示されるような関係に相当するときには...
// 起こるという傾向が、たしかに存在するのである。通常、こ...
// については、「熟合度」の問題として説明されることが多い...
// あるが、それならば、統語論の側からの何らかの裏付けが必...
// ろう。
// ただし、この現象に対しては別の解釈も可能である。例え...
// 「あととり」は「あと+とる」のような動詞句全体が名詞化...
// ハコリ
// 形であり、「さきどり」は「さき」と連用名詞形「とり」と...
// ...
// 形であるとも解釈できるのではないだろうか。つまり、「目...
// 他動詞」「主語+非対格自動詞」のような内項による動詞句...
// は、全体としての名詞化が可能であったと仮定して、この問...
// えてゆくのである。もし、「あめふり/土砂ぶり」「ふだつ...
// づき」のような「非連濁/連濁」の対応関係が、「主語+非対...
// 動詞」の方にも想定することが許されるのであれば(実際に...
// が多いのであるが)、この考え方が成り立つ蓋然性も高くな...
// う。そして、「酒づくり」「人ごろし」「出足ばらい」のよ...
// 項が三拍語である場合に、むしろ連濁が起こりやすい事実に...
// も、従来とは異なる説明が可能になってくる。すなわち、こ...
// 「酒つくる」のような動詞句が名詞化した形に由来するもの...
// く、「酒」のような名詞と「つくり」のような連用名詞形と...
// 形と解釈することになり、そのような形が選ばれるのは、動...
// さが制約となって、動詞句全体としての名詞化がしにくくな...
// 一一〇
// ら、あるいは、二拍動詞に比べて、三拍動詞の連用名詞形は...
// ての自立性が高いから、と説明すればよいことになる。
// このように解釈すると、連濁を起こす場合の前項と後項と...
// 想定すべきものは、「に」「にて(〉で)」ではなく、「の乙...
// ことになる。すると、ライマン説はいずれも「の乙」の脱落...
// シンプルな形に整理し直すことができるし(そもそも「にて...
// 助詞「で」が発達するのは平安中期以降と考えられ、それ以...
// は脱落しそうになかった)、従来は例外とされてきた「命ご...
// くり」「人ごろし」のようなものも、前項と後項との問に「...
// を想定することになるので、例外ではなくなる。
// いずれにしても、現代語のみによる考察では十分に明らか...
// たい面があるので、古代語にさかのぼって、以上の問題を慎...
// 討してゆく必要があろう。なお、右で述べているのは、あく...
// 理の成立についてのみであり、現実の個々の語がすべて以上...
// な経緯で成立したということを主張しているわけではない。
// さて、ライマンの連濁の起源説の大きな問題点は、いわゆ...
// マンの法則を十分には説明できないという点である(異化説...
// て説明せざるを得なくなる)。
// ところで、「おお+かさたて(9おおがさ)」「めす+しまう...
// めすざる)」のように、複合語の後項がすでに複合語である...
// 連濁を起こしにくいということは、しばしば指摘されること...
// た(例外も多い)。そして、本居宣長が『漢字三音考』(一七...
// [93]
// 尊-
// ---------------------[End of Page 40]-----------------...
// 凱『顱贋
// 」!.ご
// ハぎ ...
// で示唆し、ライマンも同様の見解を提出している、「日本語...
// 来は濁音が存在せず、後赴の濁音はいずれも連濁によって生...
// のである」という可能性とを合わせ考えるとき、自ずとライ...
// 法則に対する一つの解釈が浮かび上がってくる。すなわち、...
// 濁立日が含まれるときに連濁が起こらないのは、後項がすで...
// であるからであり、前項に濁音が含まれること自体が連濁の...
// はならないのは、前項が複合語であることは連濁を妨げる条...
// ならないからであるという解釈である。高山倫明氏も、「ラ...
// の法則も、後部の濁音の存在よりも、本来【〉冖じu∩ヒのよ...
// が関与的であった可能性もあろう」と、その可能性を示唆し...
// の
// る。ライマンの法則を異化現象の一種とする説明に疑問があ...
// 上、これはかなり魅力的な解釈の方向性である。
// しかし、一般論として、関係を標示する形態素を介在させ...
// 介在させない形の複合形式が併存しているとき、階層が下の...
// に形態素を介在させる一方で、より階層が上の結合部に介在...
// しないというのは、あまり自然なあり方ではないように思わ...
// [茨城[経済研究所]]
// [[茨城経済]研究所]
// 茨城の経済研究所〜茨城の経済の研究所
// *茨城経済の研究所
// 茨城経済の研究所〜茨城の経済の研究所
// ?茨城の経済研究所
// 連濁は、語の熟合を標示するのみで、関係までは標示してい...
// 「ハ行子音をめぐる四種の「有声化」L
// と考えざるをえないのではないだろうか。ライマン説に依拠...
// 今には、このことに対して、何らかの説明が必要になるであ...
// 以上のライマン説に対するもう一つの説は、村山七郎氏が...
// を起こす連辞ぎ」説を出す以前に提唱していた解釈である(以
// ハみ
// 下、旧村山説)。村山氏自身は方向転換したが、一つの解釈...
// して、依然として有効性は保たれていると思われる。
// 村山氏は、「かしこ・き」「もち・て」など、結合が緊密...
// もかかわらず連濁の起こらない語が存在することを根拠に同...
// 疑い、連声濁が連濁よりも新しい音韻現象であるとの見通し...
// ライマン説にも疑義を呈した。そして、「ぐつ」「ごゑ」な...
// 形は、「くつ」「こゑ」の派生形ではなく本来の形であると...
// 本来の形が複合語内では保存され、語頭においては子音の無...
// 被って「くつ」「こゑ」に転じたとする仮説を唱えたのであ...
// の仮説は、朝鮮語・満州文語・ツングース語・蒙古語との比...
// から導かれたものである。(比較研究の部分は、村山氏自身...
// いる以上、考慮する必要はないであろう)。
// この旧村山説は、まさしく逆転の発想であり、連濁・非連...
// が生じる理由を、遡源形の違いに帰すことができる点がきわ...
// 理的である。「あととり/さきどり」のように、語構成によ...
// 濁・連濁の違いが出てくる現象についても、本稿で提出した...
// ン説に対する修正案の、複合語形成過程の部分を応用すれば...
// なくなる。これといった反論の思い浮かばない、同時に検討...
// 一
// ---------------------[End of Page 41]-----------------...
// 肥爪 周二
// 困難な連濁の起源説である。
// 以上のライマン説も旧村山説も、連濁の起源を、純粋な音...
// に還元しようという姿勢で一致している。いずれも、連濁の...
// 位置の不自然さを合理的に説明すると同時に、連濁を起こす...
// こさない語があるのも必然的な現象として解釈してゆくので...
// このような方向性こそが、正統な言語学の発想なのであろう。
// 自律分節理論による連濁現象の分析など、この他にも興味...
// 究があるが、連濁の起源についての考察とは別次元のものな...
// 本稿では省略することにする。
// 四・三 連濁の起源(試解)
// 以上紹介した連濁の起源説は、いずれも連濁の起源を音声...
// して説明しようとした点で一致しており、言語学的説明とし...
// 当な方向性を持っていると言えよう。しかし、同化説は連濁...
// る位置の不自然さを説明するのが困難であるという欠点があ...
// イマン説も説明ができない事柄がかなり残されている。ライ...
// が最も効果を発揮する、「あととり/さきどり」のように語...
// より「非連濁/連濁」の差が現れる現象も、本稿の立場では...
// しも他の起源説に対する優位を意味しない。旧村山説は、明...
// 欠点はないものの、「濁音」の性質に関する従来の研究の蓄...
// 和しにくい面があるので、簡単には賛同を得られそうにない...
// 一一二
// 方、濁音(にごり)をプロソディの一種と割り切ってしまえば...
// の問題を回避できるものの、諸言語に類例が指摘しがたい以...
// 声性なり鼻音性なりがプロソディックな振る舞いをするに至...
// について、言語学的に普遍性のある説明が欲しいところであ...
// いずれにしても、連濁の起源についての考察は、文献によ...
// 認できる日本語(古代語の連濁現象は、現代語のそれと大き...
// い)よりも前にさかのぼって、推定によって行わざるを得な...
// 困難があるのである。
// もし、ライマン説・旧村山説のように奔放な推定が許され...
// ば、連濁の起源には、もう少し別の考え方も可能になってく...
// すでに紹介したように、本居宣長は『漢字三音考』におい...
// 「凵本語にはもともと濁音が存在せず、後世の濁音はいずれ...
// によって生じたものである」という可能性を示唆した。具体...
// は、以下のように述べている。
// ハジメ
// 一音ノ言二濁ル例ナク。又二音三音ヲ合セタル言ニモ。首ヲ濁
// ル例ナシ。凡テ濁ハタ.・其中下ニノミアリ。然ルニ上へ他...
// ヲ連ネテ合セ云フトキハ。首ヲモ濁ル事多シ。月ヲモ望月ナド
// ト云トキハ。ヅヲ濁リ。川ヲモ谷川ナドト云トキハ。カヲ濁ル
// ガ如シ。此例ヲ以見レバ.一言ノウチノ中下二濁アル者モ.其
// 本ハニ言ノ連合セルモノナラムカ。其意得ヤスキ者ヲ一ッニッ
// オヂオバ ヤノキ マド
// 例ニイハバ。祖父祖母ハ大父大母ノ義。柳ハ箭之木。憲ハ間
// rgl]
// ---------------------[End of Page 42]-----------------...
// ソ デ フミデ フ イタ
// 戸。袖ハ衣手。筆ハ文手。札ハ文板ニテ。皆二言ノ一言ニナレ
// ルニテ。濁音ハ何レモ厘聲ノ便也。然レベ此除ノ。義ノ知ガタ
// キ言ノ濁音モ。皆此類ナルベキカ。サレドコレハ決メテハイヒ
// ガタシ。
// 連濁によるものと連声濁によるものが混在しているが、こ...
// げられている例そのものは、おおむね妥当なものである。宣...
// 様の見解はライマンにも見られた。その後も、国語学者・言...
// を問わず、「古代語では清濁の区別が曖昧であった」「清濁...
// 音声的対立から音韻的対立へと歴史的に発展した」「清濁の...
// プロソディから狭義の音韻へと変化した」など、宣長の示唆...
// る部分を持つ説明が繰り返されることになる。近年では、大...
// により、「一次的濁音(連濁・連声濁によらない濁音)」の一...
// 論が提出されてい翫.確かに・連濁のような現象が存在する...
// 自体が、清濁の音韻的対立を疑わせる事実であった。つまり...
// の対立そのものの存在と連濁現象とは、密接に関わるものと...
// れるべきなのである。
// 以下、文献以前の日本語に清濁の音韻的対立が存在しなか...
// いう前提で、連濁現象の起源を考察してみよう。同様の立場...
//
// 解釈は、浜田敦氏にも見られたが、清濁分化の原理について...
// が不十分であったので、これを補正する形で考えてゆくこと...
// る。
// 「ハ行子音をめぐる四種の「有声化」L
// 清濁の対立がない、すなわち阻害音のグループに無声・有...
// 立が存在しなかったとするレ一、朝鮮語・現代北京官話・ア...
// ど、この対立を持たない多くの言語で見られるように、語頭...
// 声音、それ以外では有声音(任意ではなく必須であったと仮...
// く)という異音分布をなしていた蓋然性が高い。例えば、「...
// \閃碧魯\は[冨α巴二、「かは」涛巷ミは[冨げ彑のように...
// になる。複合語の場合なら、「小川」\≦o冨℃ミ冨oσq㊤σ彑...
// \≦奨巷ミ[蓁αq㊤σ彑のように発音される。この有声化によ...
// してのまとまりが標示されることになるが、この形のままで...
// 際の連濁形と結びつかないのは明らかである。
// ところで「小川」の場合、「を」と「かは」の問に意味の...
// が存在することを意識して発音するならば、「か」の子音を...
// させずに写o-冨σ彑のように発音する可能性もあろう。しか...
// の「非有声化」による境界標示は、同格関係・後項が複合語...
// などのケースを除き、原則として複合語内部の境界標示には...
// れなかったと考えておこう。それでは、有声音のまま(結合...
// ることを標示したまま)、前項と後項との間の意味の境界を...
// 標示するには、どのような手段があるだろうか。
// 一つの方法として、子音の強弱(具体的には閉鎖の強弱・...
// よって、語構成を音声的に標示するという可能性がある。「...
// は」を例にすると、「か」の子音の閉鎖は強く、「は」の子...
// は弱く(場合によっては摩擦音化して)実現することになる。...
// とっても聞き手にとっても意識しにくい差ではあっても、語...
// 一一三
// [90亅
// ---------------------[End of Page 43]-----------------...
// 肥爪 周二
// 知覚にこのような微妙な音声的差違が利用されることは、
// 話ではしばしばあることである。
// 「強閉鎖
// 【≦o-αq㊤9]
// 「弱閉鎖
// 「強閉鎖
// 冨ゆαq㌣げ彑
// 「1弱閉鎖
// 現実の会
// 右のように、閉鎖の強弱による音声的な差違によって語構...
// 示するというのが、一つの手段として考えられた。そして、...
// 声的差違がより明瞭になるように発音しようとするならば、...
// を維持しつつ声帯振動を十分に保つために、軟口蓋と咽頭後...
// 閉鎖をゆるめて、鼻腔に呼気の.一部を逃がし、声道内の気...
// ることが考えられる(圧ぬき)。すると、強閉鎖の子音の前に...
// 要素が発生することになる(冨Ooq呂9=蓁α。習彑)。この「圧...
// ための前鼻音の発達は、諸言語に見られる現象であるけれど...
// 音節が存在せず、音節末に鼻子音が立たない口本語であった...
// そ、この前鼻音が弁別的要素として音韻の区別へと発達しや...
// たのであろう。
// 以上をまとめると、語を一体のものとして発音しようとす...
// 声化」と、複合語内部の境界を標示するための「閉鎖の強調...
// う、相反する動因が、前鼻音の発達を促したと考えられるこ...
// る。そして、この閉鎖の強弱に由来する音声的差違が、前鼻...
// る弁別の発達につれて音韻の別として意識されるようになり...
// 一四
// に時代が下って、語頭濁音の発達および撥音の発達に並行す...
// で、より普遍性の高い「無声/有声」の対立へと転換してい...
// であると考えるのである。あえて極端な要約をするならば、...
// は、語と語との結合そのものを標示するための現象というよ...
// すでに結A口している語の内部構造を標示するために発達し...
// あるということになる。
// 以上のように解釈するならば、ライマンの法則、すなわち...
// に濁音が含まれる場合には連濁が起こらない」という規則が...
// る理由は、以下のように説明されることになる。
// すでに見たように、数ある連濁規則の中に、「後項がすで...
// 語である場合には連濁を起こしにくい」というものがあった...
// ば、「おお+かさたて(大きな傘立て)」「もん+しろちょう(...
// る白い蝶)」などは連濁を起こさない。もし連濁を起こして...
// がさたて」「もんじうちょう」となったならば、語構成が「...
// さ+たて(大きな傘を立てる器具?)」
終了行:
肥爪周二
「[[ハ行子音]]をめぐる四種の「有声化」」
茨城大学人文学部紀要 人文学科論集 37
pp.97-118
2002
①連濁、②連声濁、③ハ行転呼音、④ɦ音化
http://ci.nii.ac.jp/naid/110000108392
// <!--
// 肥爪周二「ハ行子音をめぐる四種の「有声化」」
//
// 序
// 前稿「日本韻学用語攷(一)1清濁 」(本論集33号、二〇〇
// 〇.三)においては、日本の伝統的な韻学用語である「清音」...
// 音」「半濁音」に関係する概念・術語の用法の考察を行った...
// は、江戸時代以前の音分類意識の多様性を示すことに主要な...
// あり、紙幅にも制約があったため、明治以降の清濁に関わる...
// ついては、必要に応じて簡単に紹介するにとどまり、積極的...
// らの適否を評価し、私見を述べることはしなかった。また、...
// 関わる諸現象については説明を省いたものも多いし、多岐に...
// 問題相互の関連にも立ち入らなかった。そこで、本稿では、...
// 問題が交錯するハ行子音の「有声化」の問題にしぼって、前...
// れた諸現象のうちのいくつかを、日本語史の流れの中で捉え...
// とを目指し、その過程で、濁音および連濁の起源について、...
// はやや異なる解釈を提出する。
// なお、本稿でも、前稿と同様に「清音」「濁音」等の伝統...
// を積極的に用いることにする。「清音」「濁音」はモーラを...
// る呼称とし、頭子音のみを問題にするときは、「清子音」「...
// と呼ぶ。日本語の清濁を「無声/有声」と単純に言い換えた...
// 子音を「有声阻害音」と括ったりするのは、多くの但し書き...
// であり、かえって煩雑であるし、さらに、方言や凵本語史に...
// 広げれば、こうした言い換えそのものが不適切なものである...
// 明である。その意味で、本稿のタイトルにおいて「有声化」...
// 表現を用いたのは本意でないし、明らかに誤りを含んでいる...
// 稿の考察対象となっている諸現象を、一括して的確に表現す...
// は存在しないので、便宜的に鉤括弧付きの「有声化」という...
// 採用した。
// さて、ここでいう四種の有声化とは、①連濁、②連声濁、③...
// ①連濁 とは、「ひし+かた↓ひしが.た」「こ+さる↓こ瀏る」...
// み+たな↓かみだな」のように、主に後項が和語である複...
// において、後項の初頭が濁音化する現象である。ハ行音...
// る例としては、「むぎ+はたけ↓むぎばたけ」「ね+ひき↓...
// き」などがある。
// 九七
// ◎2002 茨城大学人文学部(人文学部紀要)
// 106]
// ---------------------[End of Page 27]-----------------...
// ②連声濁 には二つの現象が含まれる。一つは「かぎて↓かい
// で」「とびて↓とん.で」「わらぐつ↓わらうつ」のような...
// に後接する清音の濁音化現象である。ハ行音が関わる例と...
// は、「かがふる↓か調る」「かぐはし↓かう圃し」などがあ...
// もう一つは、「ヘン+ケ↓ヘンゲ(変化)」「ワウ+シ↓ワウジ
// (皇子)」「カム+す↓カム(感)ず」のような、漢字音の鼻音韻
// 尾に後接する清音の濁音化である。ハ行音が関わる例として
// は、「サム+ヒヤク↓サムビャク(三百)」「コウ+ホフ↓コウ
// 剥フ(弘法)」などがある。これらの二つの現象は、鼻音に後
// 接する清音の濁立日化として一括することができるので、...
// 「連声濁」と呼ぶことにする。
// ③ハ行転呼音とは、「いは↓いわ」「かふ↓かう」のように、語
// 中語尾のハ行子音がワ行音化した現象で、凵本語史上の重...
// 出来事の一つである。十一世紀初頭ごろから一般化したと...
// られている。
// ④昼音化とは、「おはよう」[。量9】・「ゴハン」[O。コ9三...
// に、母音間のハ行子音が有声化する現象であり、現代共通...
// おいてもしばしば見られる。
// これらの現象が日本語に登場したのは、①↓④の順であると...
// られるが、本稿では、時代をさかのぼる形で、④↓①の順で考...
// てゆく。
// 一.H音化
// 九八
// このH音化現象の語例として、音声学の概説書では「は.ば,
// ...
// 【冨留】」「お國よう【O⑦包Ω]」「ゴ刈ン[㊤O諭9・三」「...
// つ
// などが挙げられている。いずれも語の意味の区別に関わらな...
// 声レベルでの変異である。
// 平安時代にハ行転呼現象が生じ、語頭および複合語の後項...
// 以外のハ行音がワ行音化した結果、現代語において、ハ行音...
// 著な位置制限が存在する。つまり、語頭・複合語の後項の初...
// にハ行音が現れるのは、「うはうは」「のほほん」のような...
// ペや、「アロハシャッ」「コーヒー」「カフス」のような外...
// 原則として限定されるのである。和語においても、「はは(...
// ほ(頬)」「あふれる」「あひる」「やはり」のような例があ...
// れらは個別の事情によるもので、説明可能な例外である。
// 昼音化の例としてしばしば挙げられる「おはよう」「ゴハ...
// ヘンジ」は、それぞれ「お+はよう」「ゴ+ハン」「ゴ+ヘン...
// 分析できる複合語である。これらの語に且音化が生じるのは...
// 語構成意識がゆるんだからであると解釈できる。つまり、「...
// らい」「まひる」「コウハク(紅白)」のような、十分語構成...
// 保たれている複合語では、このn音化は起こりにくいのであ...
// ある程度の速度をもって、ぞんざいに発音すれば、これらの...
// 複合語においても、この6音化が起こりうることは、すでに...
// コ
// れているところである。
// [105]
// ---------------------[End of Page 28]-----------------...
// この且音化が起こる位置は、連濁現象において清子音が濁...
// 変わる位置とほとんど共通するし、有声化した方が熟合度が...
// いう意味でも、連濁現象とよく似ている。しかし、連濁は語...
// 識のゆるみを前提とはしない現象であるし、後項に濁音が含...
// いる場合には連濁が起こらないというライマンの法則(後述)...
// この行音化には適用されない。むしろ前後の母音の広さの方...
// 音化に影響しやすいであろう。このn音化と連濁とは、かな...
// の異なる現象なのである。
// ニ ハ行転呼音
// ハ行転呼現象は、現代語の共時分析においては、ほとんど...
// されることはない。しかし、「買わない〜買って」「会わな...
// て」のように、ワ行五段活用の動詞が促音便をとることは、...
// がハ行四段活用に由来することを考慮しなければ、合理的に...
// きないであろうし、「あわれ/あっぱれ」「さわやか/さっぱ...
// クワ(六羽)/ロッパ(六羽)」のようなワ行・バ行にまたがる...
// 対応も、ハ行転呼現象を考慮に入れないと、うまく結びつけ...
// いであろう。「合同(ゴウドウ)/合唱(ガッショウ)」「雑巾(...
// ン)/雑誌(ザッシ)」のような対応も、「ガフ〉ガウ」「ザフ...
// ウ」などの「フ入声」におけるハ行転呼現象が関与している...
// 語においても、ハ行転呼現象が起こる以前の、非転呼形の痕...
// 所に残っているのであって、現代語を十分に理解するために...
// 「ハ行子音をめぐる四種の「有声化」」
// の歴史的変化をまったく考慮に入れないわけにはいかないの...
// る。
// 前稿で整理したように、ハ行転呼音が生じた音声的経緯に...
// は、大きく分けて二つの解釈がある。
// 一つの解釈は、母音に挟まれたハ行子音[-合山が、前後の...
// もう一つの解釈は、当時の清子音・濁子音の対立が、「無...
// 古代日本語の響が前鼻音を伴っていたことは動かない事実で...
// 九九
// ---------------------[End of Page 29]-----------------...
// 肥爪 周二
// ムっこ
// ろう。それをさらに推し進め、清子音が母音間で有声的であ...
// しかし、この早田説とハ行転呼現象とを直接結びつけるに...
// どちらの解釈によっても、ハ行転呼現象は「ハ行子音の母...
// 次に、ハ行転呼現象が起こる位置を確認しておく。
// 通常、ハ行転呼音は、「語中語尾」のハ行音のワ行音化で...
// ---------------------[End of Page 30]-----------------...
// ハ行転呼現象は、一種の調音のゆるみであるわけだが、例...
// 音節+2音節の複合語「○<・○<+○<・Q〈」を考えた場A冂、ハ
// 行転呼現象の起こる位置を手がかりに、調音のゆるみやすさ...
// みが生じる序列)を考えると、「ρ・P>∩どということになろ...
// この序列は、前節のH音化にも適用可能なものである。
// ところで、しばしば指摘されているように、「ワ行音はも...
// 語頭以外に現れることが少なかったため、ハ行転呼現象が生...
// とによって語の区別に混乱が生じることがほとんどなく、こ...
// がスムーズに進行した」ということはたしかに言えよう。し...
// それはあくまで変化を受け入れる側の問題であって、語頭以...
// 行音が「空き間」に近い状態であったこと自体が、ハ行転呼...
// 引き起こす動因にはならないのは当然のことである。変化を...
// こす圧力が十分に強ければ、…機能負担量の大きな対立も解...
// るというのが筆者の見通しである。例えば、琉球方言には、...
// 一、♂〉⊆という狭母音化による、五母音の三母立日化が広く...
// る。げ翼一、♂翼⊆の機能負担量が小さかったとはとうてい思...
// いが、文脈や常識による判断の他、子音の調整・アクセント...
// 整・接辞による語形補強・言い換えなど、さまざまな手段を...
// て、情報伝達に際して生じる不都合を回避したのである。音...
// 究においては、「言い換え」はあまり重視されないが、この...
// 換え」は大きな音韻変化を乗り切るにはかなり有効な手段で...
// 腹話術師が、バ行・バ行・マ行の音(多くの人は、口を動か...
// 「ハ行子音をめぐる四種の「有声化」L
// 近似の音を出すことができない)を使わず、言い換え(ママ↓...
// んなど)によって二れらの音を回避していても、観客はまっ...
// れに気づかないものである。日本語に℃〉一、σVO、∋〉=のよ
// うな変化が起こったとしても、それほどは不都合が生じない...
// ないかとさえ思える。
// いずれにしても、言語とは、多少無理な変化をも受け入れ...
// の柔軟性を持ったものであり、言語の側にも、変化の進行に...
// て、さまざまな手段によって当該対立の機能負担量を減らし...
// という面もあるのではないだろうか。
// 三・○ 連声濁
// ここで「連声濁」として一括するものは、大きく二つに分...
// とができる。一つは「とびて〉とんで(飛)」「かりびと〉か...
// 剖(狩人)」のような、和語の音便にともなう清音の濁音化であ
// り、もう一つは「サムボン(三本)」「レンゲ(蓮華)」「ショ...
// 死)」のような、漢字音の鼻音韻尾に後接するという条件下...
// 音の濁音化である。いずれも「鼻音+清音」が「(鼻音+)濁音」
// に変化する現象として捉えることができ、日本語において生...
// 音韻現象であったのも同じ時期と考えられる。
// 一〇一
// [102)
// ---------------------[End of Page 31]-----------------...
// 肥爪 周二
// 三・
// 音便に伴う連声濁
// この現象は、現代語においても、五段活用動詞の連用形に、
// 「て」・助動詞「た」が接続した場合に、規則的に現れる。
// 書きて〉書いて
// 継ぎて〉継いで
// 立ちて〉立って
// 死にてV死んで
// 買ひて〉買うて
// 呼びて〉呼んで
// 読みて〉読んで
// 取りて〉取って
// (買つて)
// (呼うで)
// (読うで)
// 助詞
// 一見して明らかなように、音便拍が濁音あるいは鼻音行(...
// ナ行音)に由来するときに、後続の「て」「た」が濁音化す...
// じようにイ音便であっても、「書いて」は濁らず、「継いで...
// る、というその違いは、まさに来源の清濁に対応している。...
// は、この現象(連声濁)が生産的であった時期に、日本語の濁...
// は前鼻音が伴われており、それが濁音を特徴づける重要な要...
// あったからである。だからこそ、「鼻音+清音」は、ほぼ規...
// 「(鼻音+)濁音」に転じたと考えられるのである。イ音便・...
// は、現代共通語ではいずれも鼻音性を欠いているが、濁音・...
// 一〇二
// に由来するイ音便・ウ音便は、古くは「つぎて〉ついで ㎝
// 冒己o]」、「よみてVようでロo&①]」のように、鼻音性を帯...
// いた(鼻母音であった)。
// 上記の五段活用動詞の音便以外でも、「あきびとVあきう...
// 人)」「いかにか〉いかが」「ふみて(文手)〉ふで(筆)」「...
// 〉わらうつ(藁靴)」「かみつけ(上つ毛)〉かうづけ(上野)」...
// うな語彙にその例を拾うことができる。いずれの場合も、音...
// 濁音あるいは鼻音行に由来するという点で一貫している。し...
// 動詞の音便形とは異なり、これらの語の場合は散発的に生じ...
// であり、体系性を利用して原形に復することが不可能である...
// 音便および連声濁によって語構成が不透明になるという性質...
// る。
// この音便に伴う濁音化には、ハ行音のバ行音化の例もある。
// かがふる〉かぶる・かうぶる
// かぐはし〉かうばし
// おもほす〉おぼす
// ときには〉ときんば
// たまふ〉たぶ・たうぶ
// のたまはく〉のたばく・のたうばく
// ?くぐひVくび
// ---------------------[End of Page 32]-----------------...
// 匳匪 、
// ぎFし
// ハ行音の濁音化が関与してくるのは、いずれも散発的に起...
// 便現象であり、やはり語構成が不透明になっているという共...
// ある。
// この音便に伴う濁音化現象は、現代語においても、五段動...
// 用形に「て」「た」が接続して音便形をとる場合、動詞に「...
// (〈つみ)」「ふん(〈ふみ)」等、撥音で終わる接頭辞がつく...
// ど、ある程度は生産性をもっているように見える。しかし、...
// で、それは過去の音韻現象が特定の語群に残した痕跡に過ぎ...
// であり、もはや現代語では「鼻音+清音」が「(鼻音+)濁音」に
// 規則的に転じることはない。現代語では、「あなた〉あんた...
// みのところVきみんところ」「まけぬき〉まけんき」「しら...
// 〉しらんぷり」のように、音便によって生じた鼻音が、後続...
// を濁音化しないのが原則なのである。
// 三・二 鼻音韻尾に伴う連声濁
// ここでは、漢字音の鼻音韻尾が後続の清音を濁音化する現...
// 濁)を扱う。漢字音の鼻音韻尾は、日本漢字音で「〜ン」「...
// で現れるほか、喉内鼻音韻尾めは「〜ウ」「〜イ」で現れる...
// 鼻音韻尾に由来する「〜ウ」「〜イ」は、母音韻尾-⊆・亠に...
// る「〜ウ」「〜イ」とは異なり、かつては鼻音性を有してい...
// 母音であった)ので、やはり後続の清音を濁音化する力を持...
// 「ハ行子音をめぐる四種の「有声化」」
// たのである。この濁音化規則は、字音の熟語のみではなく、
// 詞「す」を後続ぎせるときにも適用される。
// ヘン+ケ↓ヘンゲ(変化)
// サム+ヒヤク↓サムビヤク(三百)
// ワウ+シ↓ワウジ(皇子)
// コウ+ホフ↓コウボブ(弘法)
// カム+す↓カム(感)引
// シヤウ+す↓シヤウ(生)ず
// メイ+す↓メイ(命)引
// サ変動
// しかし、和語の立日便によって生じた鼻音が、ほぼ規則的...
// 音を濁音化させたのに対し、この漢字立日の鼻音韻尾による...
// は、それほど絶対的なものではなかったようである。『日葡...
// に「安心(アンジン)」「根本(コンボン)」「空中(クウヂウ)...
// (ヤウジ)」「晴天(セイデン)」のような、現在では濁らなく...
// る語例がかなり見られるところから、さらに時代が遡れば、...
// 尾に後続するという条件下では、規則的にこの濁音化が起こ...
// たと推定されることもあるのだが、現実には、そのような証...
// 在しない。加えて、呉音系字音に比べて、漢音系字音では連...
// ハ ソ
// 起こりにくかったという指摘もある。そもそも、呉音系字音...
// 漢音系字音にせよ、日常的に使われる語もあれば、書物の上...
// 的に学ばれる語もあって当然であるので・連声濁という日本...
// 一〇三
// ---------------------[End of Page 33]-----------------...
// 肥爪 周二
// 音変化が、すべての字音語に及ぶわけはないのである。
// しかし、鼻音韻尾による濁音化が、かなり広範に見られた...
// のは事実である。そして、時代とともにこの濁音化が抑制さ...
// いったのは、冂本語の濁音の弁別特徴が、鼻音性から有声性...
// 行していったからと説明されることになろう。
// 四・○ 連濁
// ここでいう連濁とは、「ひし+かた↓ひしがた」「こ+さる↓...
// る」「かみ+たな↓かみだな」「むぎ+はたけ↓むぎばたけ」の...
// に、主に後項が和語である複合語において、後項の初頭の清...
// 濁子音化する現象のことである。「キク(菊)」「トク(得)」...
// 「カッパ」「キセル」などのような、字音語や外来語が後項...
// 合語にもこの現象がおよぶことがある。ハ行音の場合、現代...
// いて清子音と濁子音の対立が、\ミ"ミという形で現れ、単...
// 声/有声」では捉えられない対応を示す。これは、日本語の...
// 音が歴史的に大きく変化してきたことによるもので、連濁現...
// こった当時の(語頭の)ハ行子音は、\℃丶[℃]であったと推定...
// この連濁現象には、さまざまな不可解な点があるため、早...
// 多くの日本語話者や凵本語研究者の興味を引いてきた。すな...
// 同じような構成の複合語であっても、連濁を起こす場合と起...
// い場合とがあるので、どのような条件下で連濁が起こるのか...
// らないのか)、という点を中心に、室町時代あたりから、さ...
// 一〇四
// 考究が行われてきたのである、
// 連濁に関わる条件については多くの研究の蓄積があり、そ...
// ハブ
// は「連濁を妨げる条件」という方向からの整理である。現在...
// 提案されている諸条件は、広く受け入れられているものから...
// ような傾向があることすら疑わしいものまでさまざまである...
// もそも例外が皆無である条件というのは一つも存在しない。...
// 本稿での論考に直接関わる条件に限定して概説しておく。
// 連濁を妨げる最も重要な規則は、「後項にあらかじめ濁音...
// れる場合には、連濁は起こらない」という、ライマンの法則...
// り
// れているものである。「はるかぜ」「ひとりたび」「すりき...
// のように連濁を起こさない多くの語例があり、「おおとかげ...
// くらべ」のように、濁音が後項の三拍目以降にある場合にも...
// れる、かなり強力な規則である。しかし、「ふでばこ」「な...
// 「ふじだな」のように、前項に濁音が含まれること自体は、...
// 妨げる条件にはならない。
// この規則は、小倉進平氏がライマン氏の論文を紹介したの...
// かけに広く知られるようになったため、現在でも「ライマン...
// 則」と呼び慣わされている。しかし、この現象はライマン以...
// 知られていたものであって、賀茂真淵の『語意考』(一七六...
// 七八九刊)や、本居宣長の『古事記伝』(一七六七年頃起稿、...
// 成、一八二二年刊行終了)にも指摘が見られる。宣長は、以...
//
// に述べている。
// [99]
// ---------------------[End of Page 34]-----------------...
// ツボキノタヨリ
// 此を濁音によむは非なり。凡て連便によりて、下ノ言の頭
// を濁るは、常多けれども、其ノ言に濁音あれば、其ノ頭は必濁
// な ヒ ヂ ヂ
// らざる例なり。此も比地の地濁音なれば、此は濁るまじき例な
// るをや(巻三 宇比地邇神・須比地邇神の条)
// さらにさかのぼって、ロドリゲス『日本大文典』(一六〇...
// 〇八)に、当時の日本人の間で「<鷲。・⊆∋o冨×冨巳αq。毎9×...
// <図。巳σqo≡(上清めば下濁る、下清めば上濁る)」という諺...
// バリ
// たことが指摘されている。「上清めば下濁る」 の例としては
// 「人々」「国々」などを挙げ、「下清めば上濁る」について...
// げられていない。詳細は不明なのであるが、これらが濁音が...
// にくいことを述べているのならば、ライマンの法則を含んで...
// 能性があり、この連濁を妨げる条件は室町時代にはすでに知...
// いたのかもしれない。
// 現在、ライマンの法則は、「(和語の)単純語中に濁音が共...
// い」という音韻規則の下位規則に位置づけられている(「単...
// ハロ
// 具体的規定には立ち入らないでおく)。「ふんじばる」(これ...
// く連声濁の例)など、若干の例外はあるものの、ほとんど異...
// い強力な規則として、日本語の音韻規則の中でも重要なもの...
// る。
// また、「おお+かさたて(9おおがさ)」「めす+しまうま(9...
// ざる)」のように、後項があらかじめ複合語である、【≧U⇔Ω...
// ハ...
// 合語の場合には連濁が起こりにくいというのも重要である。...
// 「ハ行子音をめぐる四種の「有声化」」
// は「おおぶろしき」「みみどしま」「なわばしご」のような...
// る。
// また、「山と川」の時は「やまかは」(「山の川」の時は...
// は」)、「尾とひれ」の時は「尾ひれ」(「尾のひれ」の時は...
// というように、前項と後項とが同格関係にある場合には連濁...
// らないという規則があり、これはほとんど例外がない。「五...
// の笛太鼓(ふえだいこ)」のようなものはきわめて異例である。
// また、「窓ふき/水ぶき」「爪きり/微塵ぎり」「跡とり/...
// のように、前項が後項に対して目的語相当の場合と、そうで...
// 場合とで、「非連濁/連濁」が分かれることがあるのも注意...
// ればならない。「瀬ぶみ」「人ごろし」「出足ばらい」など...
// 件には例外がかなり多いのではあるが、この条件に大きく依...
// いる連濁の起源説もあるので、連濁の起源について論じる際...
// 何らかの言及が必要であろう。
// この他にも、さまざまな条件が提案されているが、多かれ...
// れ例外が存在し、各研究者の立場によって、その例外を無視...
// 重視したりしているというのが現状である。そして、それも...
// 得ないと思われるほど、現実の連濁・非連濁の現れ方は気ま...
// で、時代差.方言差・個人差(ときに個人においてすらゆれる...
// 在し、そこから絶対的な規則を見いだすのは困難なのである。
// …〇五
// [981
// ---------------------[End of Page 35]-----------------...
// 肥爪 周二
// 四・
// 連濁の起源(山田説)
// 連濁現象の起源についての音声学的説明としては、山田孝...
// ロ
// よるものが早い。山田氏は連濁現象を同化現象の一種とみな...
// 音間において無声子音が有声化したものとする解釈を提出し...
// る。つまり、音声の側から見ると、調音のゆるみによって無...
// が有声化し、機能の側から見ると、その有声化によって語構...
// 前後が一体であることを標示する、という解釈である。
// この山田氏の同化説は、概説書の類では同様の説明を採用...
// るものもあるけれど、その後の連濁現象の起源についての研...
// いては、必ずしも受け入れられてはいない。おそらく、以下...
// なものが主要な理由であろう。
// ①「有声化」の起こる位置の不自然さ
// 2立日節+2音節の複合語、「∩一く・∩N<十∩鴇く・∩轟く」...
// えてみよう。n音化現象の場合、ρおよびρが有声化しやすく、Q
// の有声化はぞんざいな発音において現れるものであった。ハ...
// 現象の場合、無声子音が有声化するのは、ρおよびρのみであ...
// ρが有声化するとすれば、それはこの複合語の語構成が完全...
// れられ、全体が一体として発音されるときと考えられる。連...
// 調音のゆるみによる同化現象として捉える場合、基本的には...
// やハ行転呼現象と同様の振る舞いをするはずである。つまり...
// が起こる位置(○)は、複合語の各要素の内部の子音(ρおよびρ)
// 一〇六
// よりも相対的に有声化しにくい、有声化するとすれば、各要...
// 部の子音よりも後となる位置であるはずなのである。
// この連濁の起こる位置の不自然さに対して、連濁現象を母...
// おける無声子音の有声化であるという前提によりつつ、山口...
// バ
// は以下のような説明を与えた。
// 語頭以外の無声子音がやたらに有声化してしまうと、大きな混
// 乱が生じる。たとえば、カス(滓)に有声化が起こってスが濁
// 音化してしまうと、カズ(数)との区別がつかなくなるといっ
// たことが生じるからである。
// ところが、語頭に濁音が立たない状態においては、トリ
// (鳥)に対立するドリの形をもった語はあり得ないから、ヤマ
// (山)+トリ(鳥)がヤマドリになっても、混乱は生じない。そ
// こには、有声化を抑止する条件がない。すなわち、連濁は、日
// 本語に存する語頭以外の無声子音の有声化という傾向を利用し
// て、複合標示機能を果たさせたものと解せられる。
// 確かに、結果の側から見ればその通りであって、連濁現象...
// て、語の意味の区別に混乱が生じることはほとんどない。し...
// 「ワ行音はもともと語頭以外に現れることが少なかったため...
// 転呼現象が生じることによって語の区別に混乱が生じること...
// んどなかった」という事実が、ハ行転呼現象を受け入れる側...
// であるのと同様に、「後項の初頭は、濁音化しても語の意味...
// (97]
// ---------------------[End of Page 36]-----------------...
// に混乱は生じない」という事実も、変化を受け入れる側の問...
// ぎず、変化を引き起こしたり誘導したりする力はないと考え...
// のまとまりを標示する同化現象という前提と、後項の初頭の...
// 声化させるという結果の形とは、かなり隔たりのあるものと...
// るを得ない。例えば、「サト+ヒト」に由来する「サトビト...
// う音形は、アクセントなどの助けがなければ「サ/トビ/ト」...
// う語構成であるという誤解を招きかねない形式なのである。...
// させずに複合語を構成するという選択肢も存在しているのに...
// ぜ、わざわざ語構成を誤解させることになりかねない、中途...
// 有声化を起こしたのかが、同化説では十分に説明できないで...
// う。連濁の起源についての説は、この「有声化」の位置の不...
// を説明できるものであるべきである。
// ②古代語の濁音の音価の問題
// すでに言及したように、日本語の濁音が、ある時期には前...
// 伴うものであったというのはまず動かない事実である。そし...
// の時期の清濁は「非鼻音/鼻音」で対立していた蓋然性が高...
// の状態を連濁現象の発生時期まで遡らせることができるかど...
// めり
// 現在のところ不明である。しかし、清濁の弁別的特徴が、「...
// 有声」↓「非鼻音/鼻音」↓「無声/有声」というような歴史的変
// 化を経たと解するよりは、単に「非鼻音/鼻音」↓「無声/有...
// という歴史的変化を想定する方がシンプルである。そもそも...
// 音/鼻音」という状態以前に「無声/有声」という状態があっ...
// 「ハ行子音をめぐる四種の「有声化」」
// ハ り
// とを裏付ける、直接的な証拠は存在しない。むしろ、「連濁...
// 源」や「濁音の発生」を説明するために、清濁の対立を「無...
// 声」と想定している節さえある。
// ③ライマンの法則との関係
// ライマンの法則は、同一要素の隣接(あるいは近接)による...
// 上の生理的負担を避けるための「異化現象」として説明され...
// が多い。しかし、「おおとかげ」「うでくらべ」のように、...
// 拍目以降に濁音がある場合にも適用される一方で、「ふでば...
// がぐつ」「ふじだな」のように、前項が濁音で終わっている...
// は適用されないという点が問題になってくる。この事実に対...
// は、この異化現象が複合語内部の境界でブロックされると説...
// ることになろう。しかし、この強固なブロックと「調音のゆ...
// より、前項と後項を一体化させる同化現象」として連濁を捉...
// 提とは、はたして調和するのであろうか?言語現象としての...
// さを欠いた説明という印象は拭いがたい。
// ④濁音の分布制限および機能の問題
// ライマンの法則は、「単純語中に濁音が共存しない」とい...
// り抽象度の高い規則にまとめることができた。一方で、日本...
// 音が、アクセントに似た機能・性質を持っていることが亀井...
// よって指摘されて以来、さまざまな角度から、濁音のプロソ...
// ハロリ
// クな性質が考察されてきた。そして、この二つの研究の流れ...
// 〇七
// [96]
// ---------------------[End of Page 37]-----------------...
// 肥爪 周二
// ...
// 音が「卓立」…機能を持つという方向で統合されることにな...
// した濁音研究の流れの中で、濁音は「(濁子音11)有声阻害音...
// 純に括れる以上の特別な性質を持つものであるとの発想が、...
// 語学者の間に広がっていったのである。
// 連濁の起源を同化説によって説明する場合、連濁現象と従...
// されてきた日本語の濁音の特質とは、どのように有機的に関...
// られるのであろうか。
// ⑤説明困難な非連濁形の存在
// 既述したように、同化説では、「窓ふき/水ぶき」「爪き...
// ぎり」のような、語構成により非連濁・連濁の相違が出てく...
// スに対する説明がしにくい。また、「もち+て」「あか+き」...
// +つる」のような、結合度が十分に高いと考えられるのにも...
// らず、連濁を起こさないケースもある。特に係助詞「は」は...
// を起こさなかった一方で、後世にはハ行転呼することになる...
// 違いが生じた理由を同化説で説明することが可能であろうか。
// 四・二 連濁の起源(異説)
// 連濁の起源については、山田説とは異なる解釈も提出され...
// る。以下に紹介する解釈は、必ずしも、如上の研究の流れの...
// てきたわけではないが、現実の多くの言語に通じている研究...
// とっては、母音間の無声子音の有声化という素朴な説明は、...
// に受け入れがたいものであったのであろう。
// 一〇八
// ゆ
// 一つは、ライマンによって提出された解釈である。ライマ...
// 有声音が消失した時には必ず連濁が生じると説明した。具体...
// 失した有声音としては、「n」、助詞「の」、助詞「に」、...
// 詞「ん」、助詞「で」を挙げている.具体的な語例が挙げら...
// ないので推定によるが、前節で扱った連声濁に相当すると思...
// ものを除外すると、連濁が、助詞「の」「に」「で」の消失...
// 生じることがあると解釈していることになろう。
// これとは別に、村山七郎氏は、タガログ語の一一σqきおと...
// ハぬ
// て、連濁を起こす連辞ぎを想定した..この村山説とライマン...
// を受け継ぐ形で、平野尊識氏は、日本語の複合語の連濁規則...
// 成との関係を丹念に整理し、タガログ語の=σ・pεおとも対照...
// ハコね
// つ、日本語に=αq㊤8∋。(連濁素)ぎ〜dを想定した。日本語の...
// (あるいは形成)に関わる比較研究は、本稿の枠を大きく越え...
// で、ここでは、平野氏が一一αqp8ヨ。を導き出す前作業とし...
// 日本語の連濁現象について整理した部分のみを取り上げる。
// 平野氏は、連濁の起こる条件と起こらない条件を、内部構...
// いて、前項と後項との間に介在させる事のできる要素の違い...
// る口旦ハ体的には、
// 起こらない条件∵。、宀。、み・
// 起こる条件∵コ。、良、-α。〈皀8
// [95亅
// ---------------------[End of Page 38]-----------------...
// のように整理した。近年、ライマン〜平野説を積極的に再評...
// らじ
// ている、高山倫明氏の論考に従って簡略に示すと次のように...
// く。そして、何よりも、連濁の起こる位置の不自然さに対し...
// 確な説明が可能になるのである。
// 明
// ヤマ宀♀カワ↓ヤマカワ
// アトー≦♀トル↓アトトリ
// ワラー≦Oーフク↓ワラフキ
// ///
// ヤマ出㌣カワ↓ヤマガワ
// サキ良-トル↓サキドリ
// ワラ良串フク↓ワラブキ
// つまり、本節で扱っている「連濁」も、前節で扱った「連...
// と同様に、鼻音の関与した濁音化現象として捉えることにな...
// ある。
// これらの説(以下一括してライマン説と呼んでおく)には優...
// いくつかある。
// まず、「連濁/非連濁」の差を、規則的な音声現象に還元...
// ことがある。平野氏も、複合語の形成において、現実レベルで
// 「を」「と」「て」の脱落を想定しているわけではないよう...
// 単純に二つの名詞を並べるだけで複合語を形成することもあ...
// 考えるのが、諸言語の例から考えても穏当であろう(ただし...
// 場合には連濁を起こさないと考えなければならない)。する...
// 結びつけることができるような関係であっても、遡源形に「...
// 当のものがあれば連濁、なければ非連濁と説明すればよくな...
// で、連濁を決して任意の現象ではないものとして捉えられる...
// なる。また、語構成の違いによって「連濁/非連濁」の差が...
// こと(熟合度の差とは考えにくいものもあった)にも合理的な...
// 「ハ行子音をめぐる四種の「有声化」」
// ここで、このライマン説の問題点についても整理しておこ...
// まず、前項と後項の間に、助詞「の乙」を想定することに...
// 合語について言及しておく。しばしば指摘されることである...
// 代語において、助詞「の乙」はかなり柔軟な運用が許される...
// ハ
// あった。「会はむ日の形見(11次二会ウ日マデノ形見)(万葉...
// 三)」「すざく院の行がう(11朱雀院ヘノ行幸)(源氏物語・若...
// かしのちかきゆかり(11普カラノ近イ縁)(同・夕霧)」「あな...
// うそこかよふ程(1ーアチラH刀御消息ガ通ウ問)(同・夕霧)」...
// に、現代語ならば格助詞と組み合わせて用いるのが自然であ...
// なくともその方が親切である)場合にも、直接「の乙」のみ...
// し、格関係そのものの理解は、文脈や常識にゆだねられるこ...
// しくない。「露の命(万葉集・三九三三)」のような比喩用法...
// あった。つまり、後項が名詞であれば、前項と後項が同格以...
// 係にあるほとんどの場合に、「の乙」を想定することができ...
// のである。連濁するかしないかを、遡源形での助詞「の乙」...
// に求める場合、恣意的にその存在を想定できることになり、...
// しての面白みはやや減じてしまう。
// 一方、このライマン説が最も有効に機能するのは、「あと...
// さきどり」「まどふき/みずぶき」「いしけり/あしげり」の...
// に、前項が名詞、後項が他動詞の連用名詞形のときであった...
// 一〇九
// ---------------------[End of Page 39]-----------------...
// 肥爪 周二
// に対し、前項が目的語に相当するときには連濁が起こらず、...
// 「にて(〉で)」で表示されるような関係に相当するときには...
// 起こるという傾向が、たしかに存在するのである。通常、こ...
// については、「熟合度」の問題として説明されることが多い...
// あるが、それならば、統語論の側からの何らかの裏付けが必...
// ろう。
// ただし、この現象に対しては別の解釈も可能である。例え...
// 「あととり」は「あと+とる」のような動詞句全体が名詞化...
// ハコリ
// 形であり、「さきどり」は「さき」と連用名詞形「とり」と...
// ...
// 形であるとも解釈できるのではないだろうか。つまり、「目...
// 他動詞」「主語+非対格自動詞」のような内項による動詞句...
// は、全体としての名詞化が可能であったと仮定して、この問...
// えてゆくのである。もし、「あめふり/土砂ぶり」「ふだつ...
// づき」のような「非連濁/連濁」の対応関係が、「主語+非対...
// 動詞」の方にも想定することが許されるのであれば(実際に...
// が多いのであるが)、この考え方が成り立つ蓋然性も高くな...
// う。そして、「酒づくり」「人ごろし」「出足ばらい」のよ...
// 項が三拍語である場合に、むしろ連濁が起こりやすい事実に...
// も、従来とは異なる説明が可能になってくる。すなわち、こ...
// 「酒つくる」のような動詞句が名詞化した形に由来するもの...
// く、「酒」のような名詞と「つくり」のような連用名詞形と...
// 形と解釈することになり、そのような形が選ばれるのは、動...
// さが制約となって、動詞句全体としての名詞化がしにくくな...
// 一一〇
// ら、あるいは、二拍動詞に比べて、三拍動詞の連用名詞形は...
// ての自立性が高いから、と説明すればよいことになる。
// このように解釈すると、連濁を起こす場合の前項と後項と...
// 想定すべきものは、「に」「にて(〉で)」ではなく、「の乙...
// ことになる。すると、ライマン説はいずれも「の乙」の脱落...
// シンプルな形に整理し直すことができるし(そもそも「にて...
// 助詞「で」が発達するのは平安中期以降と考えられ、それ以...
// は脱落しそうになかった)、従来は例外とされてきた「命ご...
// くり」「人ごろし」のようなものも、前項と後項との問に「...
// を想定することになるので、例外ではなくなる。
// いずれにしても、現代語のみによる考察では十分に明らか...
// たい面があるので、古代語にさかのぼって、以上の問題を慎...
// 討してゆく必要があろう。なお、右で述べているのは、あく...
// 理の成立についてのみであり、現実の個々の語がすべて以上...
// な経緯で成立したということを主張しているわけではない。
// さて、ライマンの連濁の起源説の大きな問題点は、いわゆ...
// マンの法則を十分には説明できないという点である(異化説...
// て説明せざるを得なくなる)。
// ところで、「おお+かさたて(9おおがさ)」「めす+しまう...
// めすざる)」のように、複合語の後項がすでに複合語である...
// 連濁を起こしにくいということは、しばしば指摘されること...
// た(例外も多い)。そして、本居宣長が『漢字三音考』(一七...
// [93]
// 尊-
// ---------------------[End of Page 40]-----------------...
// 凱『顱贋
// 」!.ご
// ハぎ ...
// で示唆し、ライマンも同様の見解を提出している、「日本語...
// 来は濁音が存在せず、後赴の濁音はいずれも連濁によって生...
// のである」という可能性とを合わせ考えるとき、自ずとライ...
// 法則に対する一つの解釈が浮かび上がってくる。すなわち、...
// 濁立日が含まれるときに連濁が起こらないのは、後項がすで...
// であるからであり、前項に濁音が含まれること自体が連濁の...
// はならないのは、前項が複合語であることは連濁を妨げる条...
// ならないからであるという解釈である。高山倫明氏も、「ラ...
// の法則も、後部の濁音の存在よりも、本来【〉冖じu∩ヒのよ...
// が関与的であった可能性もあろう」と、その可能性を示唆し...
// の
// る。ライマンの法則を異化現象の一種とする説明に疑問があ...
// 上、これはかなり魅力的な解釈の方向性である。
// しかし、一般論として、関係を標示する形態素を介在させ...
// 介在させない形の複合形式が併存しているとき、階層が下の...
// に形態素を介在させる一方で、より階層が上の結合部に介在...
// しないというのは、あまり自然なあり方ではないように思わ...
// [茨城[経済研究所]]
// [[茨城経済]研究所]
// 茨城の経済研究所〜茨城の経済の研究所
// *茨城経済の研究所
// 茨城経済の研究所〜茨城の経済の研究所
// ?茨城の経済研究所
// 連濁は、語の熟合を標示するのみで、関係までは標示してい...
// 「ハ行子音をめぐる四種の「有声化」L
// と考えざるをえないのではないだろうか。ライマン説に依拠...
// 今には、このことに対して、何らかの説明が必要になるであ...
// 以上のライマン説に対するもう一つの説は、村山七郎氏が...
// を起こす連辞ぎ」説を出す以前に提唱していた解釈である(以
// ハみ
// 下、旧村山説)。村山氏自身は方向転換したが、一つの解釈...
// して、依然として有効性は保たれていると思われる。
// 村山氏は、「かしこ・き」「もち・て」など、結合が緊密...
// もかかわらず連濁の起こらない語が存在することを根拠に同...
// 疑い、連声濁が連濁よりも新しい音韻現象であるとの見通し...
// ライマン説にも疑義を呈した。そして、「ぐつ」「ごゑ」な...
// 形は、「くつ」「こゑ」の派生形ではなく本来の形であると...
// 本来の形が複合語内では保存され、語頭においては子音の無...
// 被って「くつ」「こゑ」に転じたとする仮説を唱えたのであ...
// の仮説は、朝鮮語・満州文語・ツングース語・蒙古語との比...
// から導かれたものである。(比較研究の部分は、村山氏自身...
// いる以上、考慮する必要はないであろう)。
// この旧村山説は、まさしく逆転の発想であり、連濁・非連...
// が生じる理由を、遡源形の違いに帰すことができる点がきわ...
// 理的である。「あととり/さきどり」のように、語構成によ...
// 濁・連濁の違いが出てくる現象についても、本稿で提出した...
// ン説に対する修正案の、複合語形成過程の部分を応用すれば...
// なくなる。これといった反論の思い浮かばない、同時に検討...
// 一
// ---------------------[End of Page 41]-----------------...
// 肥爪 周二
// 困難な連濁の起源説である。
// 以上のライマン説も旧村山説も、連濁の起源を、純粋な音...
// に還元しようという姿勢で一致している。いずれも、連濁の...
// 位置の不自然さを合理的に説明すると同時に、連濁を起こす...
// こさない語があるのも必然的な現象として解釈してゆくので...
// このような方向性こそが、正統な言語学の発想なのであろう。
// 自律分節理論による連濁現象の分析など、この他にも興味...
// 究があるが、連濁の起源についての考察とは別次元のものな...
// 本稿では省略することにする。
// 四・三 連濁の起源(試解)
// 以上紹介した連濁の起源説は、いずれも連濁の起源を音声...
// して説明しようとした点で一致しており、言語学的説明とし...
// 当な方向性を持っていると言えよう。しかし、同化説は連濁...
// る位置の不自然さを説明するのが困難であるという欠点があ...
// イマン説も説明ができない事柄がかなり残されている。ライ...
// が最も効果を発揮する、「あととり/さきどり」のように語...
// より「非連濁/連濁」の差が現れる現象も、本稿の立場では...
// しも他の起源説に対する優位を意味しない。旧村山説は、明...
// 欠点はないものの、「濁音」の性質に関する従来の研究の蓄...
// 和しにくい面があるので、簡単には賛同を得られそうにない...
// 一一二
// 方、濁音(にごり)をプロソディの一種と割り切ってしまえば...
// の問題を回避できるものの、諸言語に類例が指摘しがたい以...
// 声性なり鼻音性なりがプロソディックな振る舞いをするに至...
// について、言語学的に普遍性のある説明が欲しいところであ...
// いずれにしても、連濁の起源についての考察は、文献によ...
// 認できる日本語(古代語の連濁現象は、現代語のそれと大き...
// い)よりも前にさかのぼって、推定によって行わざるを得な...
// 困難があるのである。
// もし、ライマン説・旧村山説のように奔放な推定が許され...
// ば、連濁の起源には、もう少し別の考え方も可能になってく...
// すでに紹介したように、本居宣長は『漢字三音考』におい...
// 「凵本語にはもともと濁音が存在せず、後世の濁音はいずれ...
// によって生じたものである」という可能性を示唆した。具体...
// は、以下のように述べている。
// ハジメ
// 一音ノ言二濁ル例ナク。又二音三音ヲ合セタル言ニモ。首ヲ濁
// ル例ナシ。凡テ濁ハタ.・其中下ニノミアリ。然ルニ上へ他...
// ヲ連ネテ合セ云フトキハ。首ヲモ濁ル事多シ。月ヲモ望月ナド
// ト云トキハ。ヅヲ濁リ。川ヲモ谷川ナドト云トキハ。カヲ濁ル
// ガ如シ。此例ヲ以見レバ.一言ノウチノ中下二濁アル者モ.其
// 本ハニ言ノ連合セルモノナラムカ。其意得ヤスキ者ヲ一ッニッ
// オヂオバ ヤノキ マド
// 例ニイハバ。祖父祖母ハ大父大母ノ義。柳ハ箭之木。憲ハ間
// rgl]
// ---------------------[End of Page 42]-----------------...
// ソ デ フミデ フ イタ
// 戸。袖ハ衣手。筆ハ文手。札ハ文板ニテ。皆二言ノ一言ニナレ
// ルニテ。濁音ハ何レモ厘聲ノ便也。然レベ此除ノ。義ノ知ガタ
// キ言ノ濁音モ。皆此類ナルベキカ。サレドコレハ決メテハイヒ
// ガタシ。
// 連濁によるものと連声濁によるものが混在しているが、こ...
// げられている例そのものは、おおむね妥当なものである。宣...
// 様の見解はライマンにも見られた。その後も、国語学者・言...
// を問わず、「古代語では清濁の区別が曖昧であった」「清濁...
// 音声的対立から音韻的対立へと歴史的に発展した」「清濁の...
// プロソディから狭義の音韻へと変化した」など、宣長の示唆...
// る部分を持つ説明が繰り返されることになる。近年では、大...
// により、「一次的濁音(連濁・連声濁によらない濁音)」の一...
// 論が提出されてい翫.確かに・連濁のような現象が存在する...
// 自体が、清濁の音韻的対立を疑わせる事実であった。つまり...
// の対立そのものの存在と連濁現象とは、密接に関わるものと...
// れるべきなのである。
// 以下、文献以前の日本語に清濁の音韻的対立が存在しなか...
// いう前提で、連濁現象の起源を考察してみよう。同様の立場...
//
// 解釈は、浜田敦氏にも見られたが、清濁分化の原理について...
// が不十分であったので、これを補正する形で考えてゆくこと...
// る。
// 「ハ行子音をめぐる四種の「有声化」L
// 清濁の対立がない、すなわち阻害音のグループに無声・有...
// 立が存在しなかったとするレ一、朝鮮語・現代北京官話・ア...
// ど、この対立を持たない多くの言語で見られるように、語頭...
// 声音、それ以外では有声音(任意ではなく必須であったと仮...
// く)という異音分布をなしていた蓋然性が高い。例えば、「...
// \閃碧魯\は[冨α巴二、「かは」涛巷ミは[冨げ彑のように...
// になる。複合語の場合なら、「小川」\≦o冨℃ミ冨oσq㊤σ彑...
// \≦奨巷ミ[蓁αq㊤σ彑のように発音される。この有声化によ...
// してのまとまりが標示されることになるが、この形のままで...
// 際の連濁形と結びつかないのは明らかである。
// ところで「小川」の場合、「を」と「かは」の問に意味の...
// が存在することを意識して発音するならば、「か」の子音を...
// させずに写o-冨σ彑のように発音する可能性もあろう。しか...
// の「非有声化」による境界標示は、同格関係・後項が複合語...
// などのケースを除き、原則として複合語内部の境界標示には...
// れなかったと考えておこう。それでは、有声音のまま(結合...
// ることを標示したまま)、前項と後項との間の意味の境界を...
// 標示するには、どのような手段があるだろうか。
// 一つの方法として、子音の強弱(具体的には閉鎖の強弱・...
// よって、語構成を音声的に標示するという可能性がある。「...
// は」を例にすると、「か」の子音の閉鎖は強く、「は」の子...
// は弱く(場合によっては摩擦音化して)実現することになる。...
// とっても聞き手にとっても意識しにくい差ではあっても、語...
// 一一三
// [90亅
// ---------------------[End of Page 43]-----------------...
// 肥爪 周二
// 知覚にこのような微妙な音声的差違が利用されることは、
// 話ではしばしばあることである。
// 「強閉鎖
// 【≦o-αq㊤9]
// 「弱閉鎖
// 「強閉鎖
// 冨ゆαq㌣げ彑
// 「1弱閉鎖
// 現実の会
// 右のように、閉鎖の強弱による音声的な差違によって語構...
// 示するというのが、一つの手段として考えられた。そして、...
// 声的差違がより明瞭になるように発音しようとするならば、...
// を維持しつつ声帯振動を十分に保つために、軟口蓋と咽頭後...
// 閉鎖をゆるめて、鼻腔に呼気の.一部を逃がし、声道内の気...
// ることが考えられる(圧ぬき)。すると、強閉鎖の子音の前に...
// 要素が発生することになる(冨Ooq呂9=蓁α。習彑)。この「圧...
// ための前鼻音の発達は、諸言語に見られる現象であるけれど...
// 音節が存在せず、音節末に鼻子音が立たない口本語であった...
// そ、この前鼻音が弁別的要素として音韻の区別へと発達しや...
// たのであろう。
// 以上をまとめると、語を一体のものとして発音しようとす...
// 声化」と、複合語内部の境界を標示するための「閉鎖の強調...
// う、相反する動因が、前鼻音の発達を促したと考えられるこ...
// る。そして、この閉鎖の強弱に由来する音声的差違が、前鼻...
// る弁別の発達につれて音韻の別として意識されるようになり...
// 一四
// に時代が下って、語頭濁音の発達および撥音の発達に並行す...
// で、より普遍性の高い「無声/有声」の対立へと転換してい...
// であると考えるのである。あえて極端な要約をするならば、...
// は、語と語との結合そのものを標示するための現象というよ...
// すでに結A口している語の内部構造を標示するために発達し...
// あるということになる。
// 以上のように解釈するならば、ライマンの法則、すなわち...
// に濁音が含まれる場合には連濁が起こらない」という規則が...
// る理由は、以下のように説明されることになる。
// すでに見たように、数ある連濁規則の中に、「後項がすで...
// 語である場合には連濁を起こしにくい」というものがあった...
// ば、「おお+かさたて(大きな傘立て)」「もん+しろちょう(...
// る白い蝶)」などは連濁を起こさない。もし連濁を起こして...
// がさたて」「もんじうちょう」となったならば、語構成が「...
// さ+たて(大きな傘を立てる器具?)」
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