#author("2020-07-24T21:51:54+09:00","default:kuzan","kuzan") [[窪田空穗]] 「小庭矚目」のうち 『地上』大正9年8月号 「国訛り」 >国訛り妻がいふ聞けば信濃なるふる里の平思ほゆらくも 国訛り聞けばたのしも飲む酒の喉にしむなす身にしみ入りて 信濃なる筑摩郡に遠つ祖ゆ今にいひ継ぎ来ける言葉ぞ 恋しくも我がする母は父とゐてかくやもいひしかかる言葉もて 国なまり聞けば嬉しく云はむには云ひ難みすも久しくいはぬに 我が子らは親が国なまり一たびは怪しとし聞きはては笑ひつ 我等はもこの言葉ならで幼こころあらはす術は実知らざりき 鶯の巣にや生まれしほととぎす親が言に似て子等は語らふ