#author("2021-02-13T11:47:21+09:00","default:kuzan","kuzan") [[三島由紀夫]] 綾倉伯爵は[[京訛]]のとれない、まことに温柔な人柄で あの御所言葉をまじえた古風な[[京都弁]]、風にかすかに揺られる几帳のような、無表情でいて淡い無数の色とりどりの表情をちらつかせる京都弁 祖母は郷里の者が来ると、誰憚らぬ[[鹿児島弁]]で話したが、清顕の母や清顕には、多少楷書風なぎこちなさのある[[東京弁]]、それも「が」の[[鼻濁音]]を欠いているために一そう武張ってきこえる言葉で話した。それをきくと、清顕は、祖母がことさらそのような訛りを保つことによって、彼が難なく発する東京風の鼻濁音の軽薄さを、それとなく非難しているように感じた。 なよやかな美しく澄んだ発声をきこしめした。