#author("2021-02-13T11:24:30+09:00","default:kuzan","kuzan") #author("2024-02-21T10:28:53+09:00","default:kuzan","kuzan") [[三島由紀夫]] [[小林秀雄]] 対談 三島由紀夫対談集『源泉の感情』河出文庫 pp.7-39 #amazon(4309407811, , ) (『文藝』昭和三十二年一月号) pp.36-37 > 小林 […]テレビ見てるんだ。この間、感心したのはね、僕は名前知りませんけどね、大阪のほうの芝居ですよ。それはなぜ感心したかというと、[[大阪弁]]でやってたからでね、大阪弁でやると、とっても面白いんですよ。 三島 それはフォームじゃないかな、言葉の。 小林 台詞が生きてるんですよ。全部、言うことが生きてる。ところがね、近頃の新劇で使ってる台詞は、あれ、[[標準語]]でしょ、あの標準語っていうのは、今のところ死語だね。僕、大ッ嫌いなんですよ。映画もそうですよ。映画の台詞ね。これ、生きてない。その元兇は誰あたりか、僕にはよく解らない。[[小山内薫]]じゃないかと思ってるんだけどね、あれから発した芝居語というものがあるんだよ。これはいつまで経っても熟さないね..ますます悪くなっていく傾向があるね。あれ、一種のエスペラント語だよ。みんな同じ台詞を使いやがるんだな。それで死んでるんだ、みんな。 小林 台詞が生きてるんですよ。全部、言うことが生きてる。ところがね、近頃の新劇で使ってる台詞は、あれ、[[標準語]]でしょ、あの標準語っていうのは、今のところ[[死語]]だね。僕、大ッ嫌いなんですよ。映画もそうですよ。映画の台詞ね。これ、生きてない。その元兇は誰あたりか、僕にはよく解らない。[[小山内薫]]じゃないかと思ってるんだけどね、あれから発した芝居語というものがあるんだよ。これはいつまで経っても熟さないね..ますます悪くなっていく傾向があるね。あれ、一種のエスペラント語だよ。みんな同じ台詞を使いやがるんだな。それで死んでるんだ、みんな。 三島 死んでます。日常会話に近づけようとすればするほど、死ぬんです、言葉は。 小林 あれはあなたたちの責任だね(三島氏笑う)。だって、戯曲を書いて、演出してるんでしょ、責任だよ。あれ死語だね。歴然と解るんだもの。大阪弁でやると、全部生きる。やっぱり、生きた言葉っていうものをつかまえなきゃいけませんよ。役者は家へ帰りゃ別の言葉を使ってやがるんだからね。僕は何も江戸前の言葉を使ってくれとは言わないよ。これはむずかしい。教えるったって教えられやしない。これはダメだよ。だけどね、家へ帰りゃ、ちがう言葉を使ってるくせに……。これは僕は名優の出現を待つのみだね。 (以下略)