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[[久米正雄]]
小説
[[『大正の文豪』]]


鼻にかかった郷土弁を聞いていながら、故郷の小学校のことなぞを考えていた。


 「全くわれわれの第一の欠点というのは、口が重くていけないということですよ。お互いに黙っていてはだめです。あの重い[[東北弁]]をできるだけ早くすてて、思ったことをどんどん弁じ立てるのでなくちゃあ、これからの世の中では成功はしません。ことに商売人になりますとな」
 彼はそれとあてつけてかどうか、そんなことまで言いだした。傍で聞いていた私はカッとなった。けれども青年は前と少しも変わらぬ態度で、「はあ、そうでしょうな。私なぞも口が重いので、どうも不自由で困ります」と皮肉でもなんでもなく答えた。
 「全くですよ。私なぞは学問のつもりで[[東京弁]]を勉強しました。おかげさまでどうやらI」
 私はもう湛えられなくなった。それで一つには青年を救援するという考えで、わざと憎らしげにこう抑えた。
 「でも鼻にかかるのだけはなおらないとみえますね」


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